2014年度 民事再生法講義 1 関西大学法学部教授 栗田 隆

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2014年度 民事再生法講義 1 関西大学法学部教授 栗田 隆 2014年度 民事再生法講義 1 関西大学法学部教授 栗田 隆 民事再生手続の概略 1章 総則

目的(1条) 対象 経済的に窮境にある債務者について、 対象  経済的に窮境にある債務者について、 手段  その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、 中間目的 当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、 最終目的  もって、当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ること 対象については、会社更生法1条と対比すること。 「窮境」の意味については、再生法21条と破産法15条・16条とを対比すること。 手段中の「再生計画」については、民事再生法の目次7章の各節を読み、次のようになっていることに注意する。 「再生計画案」の提出及び決議(再生債務者等が提出し、債権者集会が決議する) 「再生計画」の認可(再生計画案が可決されると再生計画になり、これ裁判所が認可する) 再生計画案で定める事項:154条 再生計画の効力:176条・178条・179条・181条 最終目的は、事業の再生であり、再生債務者が法人である場合に法人の存続は目標に含まれない。 事業を継続する者(再生債務者等) 再生債務者(38条1項) 管財人(66条・72条) 権利関係の調整の中心となるのは、再生計画において、再生債権の変更をどのように行うかである。 事業を全部譲渡して、再生債務者法人を消滅させることもできる。 再生法42条・ 43条(再生債務者である株式会社が債務超過である場合の事業譲渡の裁判所にある代替許可)。 破産手続にあっては、通常は、資産の分割売却となるが、包括的譲渡(事業の全部譲渡)も、しようと思えばできる:破産法36条・78条1項3号。 「経済生活の再生」は、個人である再生債務者にかかり、法人である再生債務者にはかからない。 会社更生法1条には、この言葉はない。 破産手続が開始されると、法人は消滅するのが大原則であり、法人の「経済生活の再生」はありえないが、破産法1条にはこの言葉がある(個人破産者にかかる目標である)。 T. Kurita

債権が満足に至るまでの概念的3段階 開始決定 差押え 弁済資金の調達 再生債権の確定と再生計画による変更 換価 不要資産の売却と 事業継続 金銭執行 民事再生 開始決定 差押え 積極財産 消極財産 弁済資金の調達 再生債権の確定と再生計画による変更 換価 不要資産の売却と 事業継続 配当 再生計画の遂行 消極財産の最終的確定はここでする 割合的弁済 通常は、事業を継続しながら分割弁済 T. Kurita

民事再生手続の概略(2条4号) 再生手続開始の申立て(21条) 第2章第1節 第2章第2節 再生手続開始の決定 再生手続 再生計画案の提出 再生手続の中核部分 再生計画案の提出 ・決議・認可 第7章 終結決定(188条1項) 第8章  再生手続の起点は、個々の条文で用いられる「再生手続」により異なる。民事再生法の多くの条文の「再生手続」は、再生手続開始決定時を起点とする。他方、会社更生法24条1項1号・50条1項の「再生手続」や民事再生法18条・19条における「再生手続」は、申立て時を起点とする。 ・第3章の見出しの「再生手続」も同様である。  「再生手続」の一般的な説明のなかでその起点をどこにするかについては、2つの説明方法がある。 申立て時とする説明  『新注釈民事再生法(上)』13頁(笠井正俊) 開始決定時とする説明  『注釈民事再生法(新版)上』9頁(山本克己) 再生計画 の遂行 通常は、事業を継続しながら分割弁済 終結決定(同条2・3項) T. Kurita

再生債務者(2条1号) 開始申立てから再生計画遂行の終了までの債務者を示す概念。途中終了あり。 民事再生能力者(再生債務者となりうる者) 権利能力者  個人、法人 法人でない社団・財団で代表者の定めのあるもの(18条、民訴29条。民再4条1項も参照) 外国人・外国法人も、日本人・日本法人と同一の地位を有する (3条)  内外人平等=非相互主義 「再生債務者」の概念の時間的範囲が「再生手続」の時間的範囲よりも広いことに注意。開始決定前も含まれ、また、終結決定後も含まれる。 T. Kurita

再生債務者等 (2条2号・85条の2・124条・142条等) 管財人の有無 無(DIP型) 有(管理型) 再生債務者等 再生債務者 管財人 管理処分権 38条1項 38条3項・66条 再生計画 提出義務者 163条1項 提出権者 再生債権者 (2項) 再生債務者・再生債権者(2項) 終結決定 188条1項・2項 188条3項 「再生債務者等」の概念が意味をもつのは、再生手続の終結まで。188条4項参照。 T. Kurita

再生法の債権区分と破産法の債権区分 再生法の区分 破産法の区分 共益債権 財団債権 一般優先債権 優先的破産債権 再生債権 破産債権 債権 手続外で随時弁済 債権 再生債権について、次の条文を比較すること 要件について、再生法84条と破産法2条5項 効果について、再生法85条1項と破産法100条1項;再生法39条1項・2項と破産法42条1項・2項。 一般優先債権について、 次の条文を比較すること 再生法122条1項・2項と破産法98条 手続内で弁済または配当 T. Kurita

国際管轄(4条) 債務者が日本国内に活動拠点を有すること 個人 営業所、住所又は居所 社団又は財団 営業所又は事務所 or 個人  営業所、住所又は居所 社団又は財団  営業所又は事務所 or 債務者が日本国内に財産を有すること 10億円の預金債権 債務者の営業所がない 債務者 の本店 銀行 日本 外国 T. Kurita

国内管轄(5条1項・2項) 債務者の日本における本拠を管轄する地方裁判所 営業者 主たる営業所の所在地 営業者  主たる営業所の所在地 非営業者・営業所を有しない営業者  普通裁判籍の所在地 1項では定まらないとき  再生債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所 T. Kurita

競合的広域管轄(5条8項・9項) 中規模再生事件(再生債権者 ≧ 500) 管轄裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所 大規模再生事件(再生債権者 ≧ 1000) 東京地方裁判所又は大阪地方裁判所 T. Kurita

関連裁判籍(5条3項-6項) 親法人と子会社 (3・4項) 親法人が子会社の議決権の過半数を保有する場合 大会社とその連結子会社(5項) 親法人と子会社 (3・4項)  親法人が子会社の議決権の過半数を保有する場合 大会社とその連結子会社(5項) 法人とその代表者(6項) T. Kurita

個人同士の関連裁判籍(5条7項) 連帯債務者の関係にある個人 主たる債務者と保証人の関係にある個人 夫婦 T. Kurita

選択可能な専属管轄 専属管轄(6条) ただし、複数の裁判所が管轄権を有するので、申立人は、その中から適当な裁判所を選択できる。これは、申立人にとって望ましい再生サービスを提供することについての裁判所間の競争の誘因となる。 債務者は迅速に手続を進行させてくれる裁判所に申し立てる傾向があり、手続進行が鈍重な裁判所には、事件が来なくなる。 T. Kurita

移送 管轄違いの移送(18条・民訴16条) 遅滞損害を避けるための移送(7条) いずれの移送の裁判についても即時抗告は許されない(9条前段)。ただし、aについては、許容説もある。 T. Kurita

裁判所における手続 任意的口頭弁論(8条1項)⇒裁判の形式は決定(民訴87条1項ただし書) 職権調査(8条2項) 不服申立て 即時抗告 即時抗告期間  公告があった場合は、効力発生の日から2週間 T. Kurita

公告(10条) 官報でする。新聞紙への掲載は不要 効力発生日  掲載日の翌日午前0時 代用公告 告知の効力 T. Kurita

代用公告が許されない場合 送達とともに公告が規定されている場合(10条3項ただし書) 個別の規定により許されないとされている場合(29条5項2文など)  例えば、29条5項2文についていえば、特定の者にのみ関係する重要な裁判であり、公告で代用する必要性が低いからである。 明文の規定がなくても、特定の者にのみ関係する重要な裁判の送達は、公告をもって代用することに適さない。例えば、28条3項の送達など T. Kurita

登記 非課税(14条) 法人の再生手続に関する登記(11条) 登記のある権利についての登記等(12条) 否認の登記(13条) 嘱託・申請をする者 原則  裁判所書記官による職権嘱託 例外  否認の登記は、監督委員又は管財人の申請 登録についても同じ T. Kurita

登記の効力 再生手続開始決定の効力は決定の時から生じ(33条2項)、ある者の行為の効力が第三者の善意・悪意に依存する場合には、公告との先後より推定がなされるので(47条)、その登記には商法9条の適用はない。 管理命令・保全管理命令の登記についても同様である(76条参照)。 監督命令の登記については、商法9条の適用は排除されない。 T. Kurita

記録の閲覧・謄写(16条・17条) 利害関係人の閲覧・謄写請求権(16条1項・2項) 制限 審理中(16条4項) 密行性の確保のため 審理中(16条4項)  密行性の確保のため 支障部分(17条) T. Kurita