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特別講義信託法 テーマ 事業自体の信託 2008年12月16日 東京大学法学部信託法講義第10回 中央三井トラスト・ホールディングス株式会社

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1 特別講義信託法 テーマ 事業自体の信託 2008年12月16日 東京大学法学部信託法講義第10回 中央三井トラスト・ホールディングス株式会社
特別講義信託法  2008年12月16日  東京大学法学部信託法講義第10回  テーマ  事業自体の信託    中央三井トラスト・ホールディングス株式会社              法 務 部  田 中 和 明

2 事業自体の信託とは 事業の信託 ①事業型信託
・信託の仕組みを利用して事業が行われるもの。(神田秀樹教授「商事信託の法理について」(信託法研究22号)) ②事業自体の信託 ・継続している事業自体をそのまま信託(積極財産の信託と委託者の債務の引受け)するもの。

3 旧信託法下における事業自体の信託の可否 旧法1条の「財産権」という用語から、信託財産は「財産権」( ①金銭に見積もれるものであること、
 ②積極財産であること)でなければならない。 「事業そのもの(事業経営権)の信託も、認められない。ただし、信託された財産権を基礎として事業を営むことは(例、土地信託)、それが信託行為の定める目的の遂行上必要であるなら、認められよう。そのような事業の経営が営業受託会社に許されるか否かは、監督官庁の判断の問題である。」 (四宮和夫『信託法[新版]』(有斐閣 1989)133頁)

4 旧信託法下における受託者の債務負担行為 ・信託設定後に、債務を帰属させることは可能(民法の一般原則に従い債務を引受)。
・受託者は、信託行為で債務負担行為が認められている場合には、その信託財産の管理行為として債務を負担することが可能。 ・土地信託において、受託者が当事者となり、建物建設資金の借入契約・建築工事請負契約・設計・監理契約・建物賃貸借契約・不動産管理契約等を締結することは可能。

5 事業執行体としての信託の持つ特長 ①事業自体の譲渡が可能 ② 私的自治による自由で柔軟なガバナンスが可能
③ 出資者である受益者は、直接事業執行者である受託者に対する監視・監督権限を保有 ④ 出資者である受益者は、有限責任を確保 ⑤事業の執行者である受託者の倒産からの隔離 ⑥組織の変更、併合、分割が機動的に可能 ⑦信託債権者の公平性の確保 ⑧受益権の流通性の向上 ⑨事業執行者である受託者が有限責任を確保 ⑩新しい類型の信託の機能を選択的に利用可能

6 事業自体の信託に有用な規律の整備 ①信託設定時の委託者の債務の引受け ②受託者の義務・受益者の意思決定方法の任意規定化
③信託行為の定めで制限できない受益者の権利の整備 ④受託者の受益者に対する費用等の補償請求権の廃止 ⑤信託財産の独立性の確保 ⑥信託の変更、併合、分割の規律の整備 ⑦信託財産の破産制度の創設 ⑧受益証券発行信託の創設 ⑨限定責任信託の創設 ⑩自己信託の創設

7 ①信託設定時における委託者の債務の引受け
・信託財産責任負担債務の範囲に、「信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権にかかる債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの」が含まれる(新信託法21条1項3号)。 ・「事業」を積極財産と消極財産の束と考える。 ①積極財産の受託。 ②委託者の債務を受託者が引受けて信託財産が負担する債務とする。     「事業自体の信託」(と同じ経済効果)が可能。

8 ②受託者の義務・受益者の意思決定 ① 受託者の義務の任意規定化 ・忠実義務に関する規定の合理化 ・自己執行義務の緩和
① 受託者の義務の任意規定化    ・忠実義務に関する規定の合理化    ・自己執行義務の緩和 ② 受益者の権利行使の実効性・機動性を高める規律の整備   ・受益者が複数の信託における意思決定方法の    任意規定化

9 ③信託行為の定めで制限できない受益者の権利
裁判所に対する申立権、5条1項の催告権、23条5項又は6項の異議を主張する権利、24条1項の支払の請求権、27条1項又は2項(75条4項で用する場合を含む)の取消権、31条6項又は7項の取消権、36条の報告を求める権利、38条1項又は6項の閲覧又は謄写の請求権、40条の損失のてん補又は原状の回復の請求権、41条の損失のてん補又は原状の回復の請求権、44条の差止めの請求権、45条1項の支払の請求権、59条5項の差止めの請求権、60条3項又は5項の差止めの請求権、61条1項の支払の請求権、62条2項の催告権、99条1項の受益権を放棄する権利、103条1項又は2項の受益権取得請求権、131条2項の催告権、138条2項の催告権、187条1項の交付又は提供の請求権、190条2項の閲覧又は謄写の請求権、198条1項の記載又は記録の請求権、226条1項の金銭のてん補又は支払の請求権、228条1項の金銭のてん補又は支払の請求権、254条1項の損失のてん補の請求権

10 ③新信託法で新たに導入された主な受益者の権利
①受託者として指定された者に対する引受の催告権(5条1項) ②受託者の利益相反行為に対する取消権(31条6項、7項) ③競合行為の禁止に違反した場合の介入権的権利(32条4項) ④他の受益者の氏名等の開示請求権(39条1項) ⑤受託者の法令又は信託行為の定めに違反する行為に対する差止請求権(44条1項) ⑥受託者の公平義務違反行為に対する差止請求権(44条2項) ⑦受益権取得請求権(103条1項、2項) ⑧受益者集会の招集請求権及び招集権(107条1項、2項) ⑨信託の破産の申立権(破産法244条の4)

11 ④受託者の受益者に対する費用等の償還請求権
旧信託法(36条) 新信託法(48条) 前提 受益権は、権利と義務の総体 受益権は、権利の総体 原則 受託者は信託財産に関して負担した費用は信託財産だけではなく、受益者に対しても請求することができる。 受託者の受益者に対する費用等の補償請求権を削除した。 例外 36条3項(受益権の放棄) 放棄の可否については諸説ある。 ただし、受託者が受益者との間の合意で費用等の償還請求を行うことはできる。

12 ⑤分別管理義務の管理の方法 【 34条1項 2号、2項】 ①信託の登記・登録をすることができる財産
【 34条1項 2号、2項】 ①信託の登記・登録をすることができる財産 信託の登記・登録(受託者が経済的窮境に至ったときに、遅滞なく登記・登録をする義務があるとされていると認められる限り、信託行為の定めで登記・登録の免除は可能) ②動産(金銭を除く) 外形上区別することができる状態で保管(物理的分別) ③金銭と動産以外の財産 その計算を明らかにする方法(帳簿による分別) ④法務省令で定める財産 法務省令による ⑤①を除き信託行為の定めで免除は可能(任意規定)

13 ⑤信託財産と固有財産等との識別不能の規律
【旧信託法】(なし) 財産に属する財産と固有財産(又は他の信託財産)に属する財産とが、識別することができなくなった場合 受託者の倒産時に信託財産が保護されるかどうかは不明。 【新信託法】(18条) 左記の場合  ⅰその当時における各財産の価格の割合に応じて識別不能となった各財産の共有持分が当該信託財産と固有財産(又は他の信託財産)とに帰属するものとみなす。  ⅱ識別不能となった当時における価格の割合が不明である場合には、その共有持分の割合は均等であると推定する。 帳簿等により識別不能となった当時における価格の割合が明らかであれば信託財産は受託者の倒産から物権的に保護される。

14 ⑥信託の変更 事情変更への対応が困難(信託目的の達成が困難) (信託の変更= 信託の終了+信託の設定と捉えれば)関係当事者全員の合意で可能?
(信託の変更= 信託の終了+信託の設定と捉えれば)関係当事者全員の合意で可能? 管理方法のみ裁判所に変更申立てが可能(23条) 新信託法 原則は、委託者、受託者、受益者の合意で変更可能(149条1項) 特別の事情により受益者の利益に不適合となった場合に裁判所への変更申立が可能(150条) 一定の場合に合意省略可能(149条2項、3項) 旧信託法

15 ⑥信託の併合と分割(1) 受託者 信託の併合 受託者 =信託 =信託財産 受益者 受益者 受益者 受益者 吸収信託分割 新規信託分割 受託者

16 ⑥信託の併合と分割(2) 【信託の併合】(2条10項) 受託者を同一とするニ以上の信託の信託財産の全部を一の新たな信託の信託財産とすること
【吸収信託分割】(2条11項) ある信託の信託財産の一部を受託者を同一とする他の信託の信託財産として移転すること 【新規信託分割】 ある信託の信託財産の一部を受託者を同一とする新たな信託の信託財産として移転すること

17 ⑦信託財産の破産 ①信託財産の破産手続開始の原因(破産法244条の3)
ⅰ.支払不能(受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務のうち弁済期にあるものについて、一般的かつ継続的に弁済することができない状態) ⅱ.債務超過(受託者が、信託財産責任負担債務につき、信託財産に属する財産をもって完済することができない状態) ②破産手続開始の申立て(同法244条の4) ・信託債権者(責任財産を信託財産に限定しているもの)、受益者、受託者、信託財産管理者、信託財産法人管理人、裁判所の管理命令に基づく管理人

18 ⑧受益証券発行信託 受託者 ・ 占有者の適法な所持の推定 ・ 受益証券の善意取得 ・ 公示催告手続で無効 受益証券発行
受益権原簿 作成、備置き、閲覧等の義務 信託譲渡 受託者対抗要件は受益権原簿への記載・記録 委託者兼 受益者 受益者 譲渡 受益者○○ 受益者○○ 転換可能 交付が効力要件 無記名式 記名式

19 ⑧受益証券発行信託の権利義務の特例 善管注意義務(29条2項)における信託行為の別段の定めを排除(212条1項)
信託事務の処理の委託における第三者の選任・監督責任に関する義務(35条4項)についての信託行為の別段の定めを排除(212条2項) 制限を禁止されている受益者の権利(92条)の一部について信託行為の定めにより制限(213条) 受益者が2名以上の意思決定について信託行為に受益者集会における多数決による旨の定めがあるものとみなす(214条) 受益証券発行信託における委託者の権利の一部について受益者が行使(215条)

20 ⑨限定責任信託 【限定責任信託】 【一般の信託】 限定責任信託の効力要件(216条) ⅰ 信託行為の定め ⅱ 限定責任信託の登記 受託者
ⅰ 信託行為の定め ⅱ 限定責任信託の登記 受託者 受託者 固有財産への 強制執行不可 強制執行可能 債権者 債権者 債権 債権 =信託(信託財産) =信託(固有財産) ・ 名称に「限定責任信託」という文字を用いなければならない(218条) ・ 第三者に対する「限定責任信託」である旨の明示義務(219条) ・ 計算等の特例(222条~231条) ・ 限定責任信託の登記(232条~247条)

21 ⑧⑨受益証券発行限定責任信託 248条~257条 受益証券発行限定責任信託 (受益証券発行信託である限定責任信)
貸借対照表における負債が200億円以上であるものは会計監査人必置。 会計帳簿等を監査 会計 監査人 信託行為の定めにより会計監査人を置くことができる。 職務の執行について善管注意義務を負う。 任務懈怠責任として、損失てん補責任を負い、悪意若しくは重大  な過失があった場合には、第三者に対する損害賠償責任を負う。

22 ⑩自己信託 ① 信託の効力の発生(4条3項) ・ⅰ公正証書・公証人の認証を受けた書面・電磁的記録の作成、又は、ⅱ受益者として指定された者に対する確定日付ある証書による信託の通知が必要。 ②強制執行等の手続の特例(23条2項) ・委託者の債権者は、詐害信託取消の手続なく、信託財産に属する財産に対して強制執行、競売等が可能。ただし、受益者の全部又は一部が、受益者としての指定を受けたことを知った時、又は受益権を譲り受けた時に債権者を害することを知らなかったときを除く)。 ③法人の事業譲渡の特例(266条2項) ・会社法その他の規定による法人の事業譲渡に関する規定の適用を受ける。

23 ⑩自己信託に関する信託業法の規制 ① 受益者が50名以上となる場合 ② 投資ビークルを介在させ、実質的受益者が 50名以上となる場合
② 投資ビークルを介在させ、実質的受益者が 50名以上となる場合 ③ 同種内容の自己信託を繰り返し、受益者の合計数が50名以上となる場合 ・多数の者が受益権を取得する自己信託⇒内閣総理大臣の登録対象(信託業法の一部適用) ④ 受益権の個数が50個以上となる場合

24 新信託法下での事業自体の信託の利用法 ①事業集約 ②個人事業の事業承継 ③企業間の事業の提携・統合 ④企業の再構築 ⑤資金調達(事業全体の流動化) ⑥資金調達(高収益部門の信託)

25 ①事業集約目的への利用 事業者 事業者 事業者 事業者 優先 優先 配当 事業者 事業者 事業者 事業者 信託譲渡 優先 劣後 受託者 劣後
自己信託 劣後 優先 =事業(固有財産) =事業(信託財産) =受益権(固有財産)

26 ②個人事業承継目的への利用 子 子 子 事業者 承継 事業者 事業者 信託の終了・清算 受託者 承継予定 (信託行為で定める。
(事業者の子) 事業者 事業者 信託の終了・清算 受託者 承継予定 (信託行為で定める。 ただし、受益者変更権を留保。) 信託譲渡 配当 経営者として期待通りに 成長しない場合 受託者 受託者 事業者 受益者変更 =事業(固有財産) =事業(信託財産) =受益権(固有財産)

27 ③企業間の事業提携・統合への利用 A D A A A D A D A B B D c事業 d事業 c事業 追加 信託 配当 a事業 c事業
必要な 部分 a事業 c事業 (a+b) 併合 A D 分割 自己信託 c事業 d事業 A c事業 d事業 B 信託 譲渡 配当 b事業 B 配当 D =事業(固有財産) =事業(信託財産) =受益権(固有財産)

28 ④企業の再構築への利用 (DES類似の信託)
事業 会社 事業 会社 事業 会社 相殺 債権 債権 債権者 債権者 債権者 受益権の引受 (⇒債権発生) 監視・監督 自己信託 =事業(固有財産) =事業(信託財産) =受益権(固有財産)

29 ⑤資金調達への利用 (Whole Business Securitization類似の信託)
事業 会社 事業 会社 事業 会社 借入 金融 機関 担保権設定 受託者 信託譲渡 事業 会社 受託者 売却 or or 投資家 事業 会社 事業 会社 事業 会社 投資家 信託社債発行 自己信託

30 ⑥資金調達への利用(高収益部門の信託) 事業 会社 事業 会社 事業 会社 投資家 投資家 優良事業 売却 信託譲渡 配当 受託者 受託者
(信託償還期における一定価格での買取特約) 信託事務処理 (事業の執行) の委託 信託譲渡 配当 受託者 受託者 受託者 =事業(固有財産) =事業(信託財産) =受益権(固有財産)

31 ⑥高収益部門の信託のメリット ○総合的な企業価値が低い企業の資金調達 ・格付けが低いことから資金調達が不可能またはコストが多大なものとなる
・担保となる資産がない限り資金調達手段が限られる ○一部の優良事業を信託した場合 ・信託された事業に特化した格付けとなるため好条件での資金調達が可能 ・受益権譲渡・受益権への担保権設定による借入・信託社債の発行等資金調達手段の多様化

32 ⑥高収益部門の信託 (トラッキング・ストック類似の信託)
○部門業績連動型  トラッキング・ストック 利益相反取引等を通じて特定事業の業績操作がされるおそれ 他の部門の業績の悪化に伴う事業会社の倒産の問題 ○事業部門を部門ごと  分離して信託した場合 忠実義務違反の場合の厳しいサンクション 分別管理による事業会社の倒産からの隔離

33 事業自体の信託に関する法的問題点 ①債務引受手続の問題
・信託設定時における受託者による委託者の債務の引受手続(免責的債務引受)に、債権者の個別同意が必要   会社分割に劣後 ②労働者の雇用上の問題 ・労働者の個別同意が必要   労働者の保護 ③忠実義務の問題 ・事業自体のすべてが信託の対象となるため、固有財産における事業との間の利益相反が発生


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