「クリーンな仮想化」 と要素独立進化型の 仮想化ノード・アーキテクチャ

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「クリーンな仮想化」 と要素独立進化型の 仮想化ノード・アーキテクチャ 金田 泰 (日立) 中尾 彰宏 (東大 / NICT) 1

はじめに 共同研究プロジェクトにおいてネットワーク仮想化基盤を開発し,発展させている (本研究会報告 中尾彰宏: “VNode: A Deeply Programmable Network Testbed Through Network Virtualization” 参照). ネットワーク仮想化基盤の主役は仮想化ノード (VNode,ネットワーク仮想化機能をもつ物理ノード). VNode の特徴として 「要素独立進化型アーキテクチャ」 がある: VNode においては,その構成要素 (プログラマ,リダイレクタ) が独立に進化できるアーキテクチャを実現. この発表の内容 「クリーンな仮想化」 という概念を提案する. VNode は 「クリーンな仮想化」 をほぼ実現していることをしめす. 要素独立進化型アーキテクチャを実現するうえで 「クリーンな仮想化」 が重要である. VNode とくにその一部であるリダイレクタにおける要素独立進化型アーキテクチャ (と 「クリーンな仮想化」) 実現のしくみをしめす.

ネットワーク仮想化基盤 ひとつの物理ネットワーク上で独立かつ自由に設計された複数の仮想ネットワークが同時に動作する環境を実現している. スライス 1 スライス 2 スライス 3 スライス 4 実ネットワーク VNode VNode

VNode の構成要素 リダイレクタ (Redirector) プログラマ (Programmer) パケットを他の VNode 等から受信してプログラマにリダイレクトし,プログラマからのパケットを他の VNode などに送信する (ネットワーク・リソースをもつ). プログラマ (Programmer) パケットの加工や転送先の決定などの処理をおこなう (計算/ストレージ・リソースをもつ). スローパス (VM) とファストパス (NP) がある. 仮想化ノード・マネジャ (VNode Manager, VNM) VNode 全体の管理をおこなう構成要素. ネットワーク・プロセッサ VNode Redirector Programmer VNode Manager

VNode の要素独立進化型アーキテクチャ プログラマ-リダイレクタ 間のインターフェース (内部ネットワーク) を外部のネットワークから独立にするとモジュラーになる. 1) 多様なプログラマをひとつのリダイレクタに接続できる. 2) 多様なリダイレクタをひとつのプログラマに接続できる. このアーキテクチャを実装することが課題. これまでに部分的に実現. これから,より理想にちかづける. 外部ネットワーク VNode 内部ネットワーク Programmer Redirector

クリーンなネットワーク仮想化 既存のネットワーク仮想化 (たとえば GENI) はかならずしも “クリーン” でない. 不足があったり,隠蔽されるべきものがされていなかったりする. “クリーンなネットワーク仮想化” という概念を提案する. VNode (の実装) がめざしていたものを “クリーンなネットワーク仮想化” によって説明したい. クリーンなネットワーク仮想化 1. 仮想化情報の隠蔽 2. アドレスの独立性 3. ネットワークとノードの物理-論理間独立性と隠蔽 4. 自由なフレーム形式

1. 仮想化情報の隠蔽 × ○ スライス識別子 (たとえば VLAN ID) など,仮想化のための情報をスライスから隠蔽する. スライス上からみえるパケットにスライス識別子がはいらないようにする. VLAN ID = 11 VLAN ID = 12 VLAN ID = 13 VLAN ID = 14 スライス 1 スライス 2 スライス 3 スライス 4 N2 実ネットワーク スライス上からみえるパケット N1 N3 × ○ Slice ID スライス上のデータ スライス上のデータ

× × 2. アドレスの独立性 仮想化基盤のアドレスがスライスから隠蔽される. スライス上のアドレスは仮想化基盤のアドレスからは独立にきめられる. スライス × × N2 実ネットワーク N1 N3 IP アドレス MAC アドレス MAC アドレス xx-xx-xx-xx-xx-xx は基盤で使用するのでスライスではつかえない. スライス N2 実ネットワーク N1 N3

3. ネットワークとノードの物理-論理間独立性と隠蔽 ノードスリバー (仮想ノード) と物理ノードとのマッピングはスライス定義から隠蔽することができる. マッピングはスライス定義で指定することもできるが,指定されないときは隠蔽される. スライスのネットワーク構造は基盤から独立に設計できる. 基盤のネットワーク構造は スライスから隠蔽される. スライス定義 物理ノードとのマッピング Slice S … N1 … N2 … N3 p2 VirtualNode VN1 VL13 p1 p2 p1 VirtualNode VN2 p1 p2 VirtualNode VN3 p3 スライス 独立な構造 × N2 実ネットワーク N1 N3 構造の隠蔽

4. 自由なフレーム形式 スライス上で IP や Ethernet にしばられない任意のパケット・フォーマットがつかえる. アドレスの形式も自由 (アドレスが連続領域にあるとはかぎらない) アドレスはないかもしれない (Content-Based Networking のとき) 自由なフレーム形式は深いプログラマビリティを確保するために必要であり,またこれが深いプログラマビリティを要求する. 本来は 「仮想化」 の要件ではないかもしれない.

VNode における 「クリーンな仮想化」 の実現 1. 仮想化情報の隠蔽の実現 スローパスのノードスリバー (仮想ノード) ではスライス上のフレームしかみることができない (隠蔽されている). 4. 自由なフレーム形式の実現 プログラマから端末 (PC) まで自由なフレームがあつかえるようにしている (GRE でトンネルをはっている). 2. アドレスの独立性の実現 スライス上のアドレス形式は自由 (フレーム形式が自由だから). スライス上で Ethernet / IP をつかうときもアドレス形式は自由. 3. ネットワークとノードの物理-論理間独立性と隠蔽 これは基盤全体の問題 (ドメイン管理システムの領分) なので,VNode は関与しない. VNode Redirector Programmer 仮想化情報  Any Any VM 内部ネットワーク GRE/IPSEC/IP GRE/IP 端末 (PC) AGW (Gateway) VNode GRE/IP VNode

「クリーンな仮想化」 と 要素独立進化型アーキテクチャとの関係 1. 仮想化情報の隠蔽との関係 もし外部ネットワークにおける仮想化情報がそのままスライス上で参照できるようにすると,外部と内部のデータ形式を独立にできない. 4. 自由なフレーム形式との関係 自由なフレームがつかえることで,外部と内部のデータ形式の独立性がいきる. VNode Redirector Programmer 仮想化情報  Any 仮想化情報  Any 仮想化情報  Any VM 内部ネットワーク

「クリーンな仮想化」 と 要素独立進化型アーキテクチャとの関係 (つづき) 「クリーンな仮想化」 と 要素独立進化型アーキテクチャとの関係 (つづき) 2. アドレスの独立性との関係 もし基盤のアドレスがスライス上からみえると,内部ネットワークのアドレスを外部ネットワークのアドレスと独立にきめられない. AddrE: 外部ネットワークのアドレス AddrI: 内部ネットワークのアドレス AddrS: スライス上のアドレス 3. ネットワークとノードの物理-論理間独立性と隠蔽 これは VNode でなくドメイン管理システムの領分. VNode Programmer AddrE AddrS Any ? Redirector AddrE AddrS Any AddrI AddrS Any AddrI AddrS Any ? VM 内部ネットワーク

「クリーンな仮想化」 と要素独立進化実現のための リダイレクタの構造 外部情報, 内部情報の管理 外部-内部 データ変換のための NP 搭載ボード サービスモジュールカード (SMC) リダイレクタ・マネジャ (RM) Control Plane (C-Plane) Data Plane (D-Plane) リダイレクタ Internal Data Plane ハイエンド L3 スイッチ (RB)

Virtualization platform VNode 外部での仮想リンク (リンクスリバ) とその物理表現 (GRE/IP) との対応を管理する ― 2 個の VNode が連携 Slice Node sliver 1 Node sliver 2 Port11 Port12 Port21 Port22 Link sliver 12 VNode 1 VNode 2 Virtualization platform Programmer Programmer Redirector Redirector SMC 1 SMC 2 k12 IP11 IP12 GRE tunnel IP21 IP22

Virtualization platform VNode 内部での仮想リンク (リンクスリバ) とその物理表現 (VLAN) との対応を管理する ― プログラマとリダイレクタが連携 Slice Node sliver 1 PortN11 PortN12 PortL11 PortL12 VNode Virtualization platform Programmer VM 1 MACP11 MACP12 Redirector MACR11 MACR12 SMC 1

リダイレクタ (SMC) による 外部表現-内部表現 の変換 スライス上の任意フォーマットのデータをカプセル化/デカプセル化して VNode 間で転送する: SMC によって変換する. スループットは 10 Gbps (パケットサイズ 1000 B 程度のとき) Slice Node sliver 1 Packet Ps Node sliver 2 Any Port11 Port12 Port21 Port22 Link sliver 12 VNode 1 Virtualization platform VNode 2 Programmer Programmer VM 1 VM 2 MAC11 MAC12 MAC21 MAC22 Pm1 Pm2 MAC14 MAC12 … Any MAC21 MAC23 … Any Pi Redirector MAC13 MAC14 Redirector MAC23 MAC24 IP11 IP12 IP21 … GRE Any IP12 IP21 IP22 SMC 1 SMC 2 GRE tunnel

まとめ 仮想化ノード (VNode) には 2 つの特徴がある. 「クリーンな仮想化」 をほぼ実現: 仮想ネットワークから物理ネットワークを隠蔽し IP や Ethernet にしばられない自由なプロトコルが使用できる. 要素独立進化型アーキテクチャを実現するうえで,「クリーンな仮想化」 が重要である. VNode の構成要素であるリダイレクタが VNode 内の他の要素や VNode 間で連携して要素間の独立性を確保している. 謝辞: この研究発表は委託研究 「新世代ネットワークを支えるネットワーク仮想化基盤技術の研究開発」 課題ア の成果をふくむ.