電子ビームラインの構築と APDを用いた電子計測試験 東京大学理学部地球惑星物理学科 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻 小野寺 暁 2019/5/30
研究目的 中間エネルギー電子 (1-100 keV) を測定する検出器の較正を行うために電子ビームラインを構築する. 実際に,電子ビームラインを稼働させ,検出器 (APD) の特性を調べる. APD: アヴァランシェ・フォトダイオード Avalanche Photodiode の略.
中間エネルギー電子 1-100 keV 電子 電子の加速・加熱現象を象徴するエネルギー帯の1つ 磁気リコネクション領域およびその周辺 無衝突衝撃波面での電子加熱 放射線帯粒子の生成
電子計測技術 (1/2) 低エネルギー (~ 数十keV) ・・・ MCP (Micro-Channel Plates) 4
電子計測技術 (2/2) 低エネルギーと高エネルギーの電子計測技術の狭間 → 数十 keV の電子を精確に計測できる検出器. SSD (Solid State Detector) 問題点:数十keV 以下でエネルギー分解能が低下,ノイズ. 電子正孔対生成数:N PN接合ダイオード 逆バイアス電圧 + - エネルギー分解能 低エネルギーと高エネルギーの電子計測技術の狭間 → 数十 keV の電子を精確に計測できる検出器. 5
Avalanche Photodiode; APD 内部増幅作用を持つSSDの一種. 対生成・加速 アヴァランシェ増幅 +Vb アヴァランシェ増幅により,SSDの数十倍以上の信号を生み出す → 高エネルギー分解能が実現.
ビームライン構成図 初期加速電源 APD 線形加速部 データ取得系 フィラメント用電源 主加速電源 電源制御系 ターボ分子ポンプ バルブ =電子源 データ取得系 フィラメント用電源 主加速電源 電源制御系 ターボ分子ポンプ バルブ ロータリーポンプ 真空チェンバー 3kV PC1 10-80 kV 4 A 電流 PC2 WLAN
真空チェンバー 初期加速用電源 絶縁管(線形加速部) 初期加速部
真空チェンバー 絶縁管 ターボ分子ポンプ
電子のエネルギー・カウントデータの取得 波形整形アンプ MCA チャージアンプ 波高V → 波高V’ 電荷Q → 波高V APD ----------- PC カウント数 パルス高 時間 時間 チャンネル
電子ビームの波高分布 電子のエネルギー大→信号のチャンネル大 高エネルギー側でピークが2つに分かれる. 13keV 23keV 43keV
電子のエネルギーとピーク位置の関係 2つのピークのそれぞれが入射電子エネルギーに対して線形性を示した.
ダブルピークの原因の推定 ビームラインの構造的問題か? →他のビームラインでもダブルピークが見られる. APD固有の問題. 非一様なのではないか?
電子ビーム入射角依存性 (1/2) APDを取り付けた ケースの入射窓. 右回り30度 垂直入射(0度) 左回り30度 20mm 32mm
電子ビーム入射角依存性 (2/2) 垂直入射では2つのピーク,±30度では1つのピーク. ピーク位置がそれぞれ近い. 内部の電子増幅率が,左右方向に差があるのではな いかと推測できる.
まとめ及び今後の課題 電子ビームラインの構築作業がほとんど. 30keV を超える電子に対し,波高分析でダブルピークが見られた.APD内部の増幅率の違いによるものと考えられる. APDの手前にコリメータを設置して検証.