マーケティング
マーケティングの定義 マーケテイングは,「顧客の創造と維持」を目的とした活動である。 企業は新規顧客により高い価値の提供を約束し,既存顧客には満足を提供し続けることによってこれら2つの目的を達成しようとする。そして,適切なマーケテイングを行い,顧客に満足を提供できた企業は,その満足に対する対価として利益を得られるのである。 マーケテイングはこうした「顧客に満足を提供し,利益を得る」という交換を実現するために企業が計画・実行する対市場行動である。そのため,アメリカ・マーケテイング協会(American Marketing Association)は,マーケテイングを,「個人と組織の目的を満たすような交換を生みだすために,アイデアや財やサービスの考案から,価格設定,プロモーション,そして流通に至るまでを計画し,実行するプロセスである」と定義している。
マーケテイング・ミックス 企業が顧客に製品・サービスを提供することは,ひとつの手法や方法だけで実現できない。マーケテイングは,さまざまなマーケテイング活動や手法を統合的に組み合わせることによって製品の提供を実現しようとする。 たとえば,製品の名前(ブランド)はどうすべきか,価格はいくらが適当か,どの小売店に流通させれば買ってもらいやすいか,どのような販売促進手法を便うかといった要素について,それぞれ意思決定が迫られる。 マーケテイングでは,あるターゲット市場に向けて企業が用いる活動や手法の組み合わせをマーケテイング・ミックスと呼ぶ。 マッカーシー(E.J.McCarthy)というマーケテイング研究者は,マーケティングの活動内容を整理し,製品(Product),価格(Price),流通(Place),販売促進(Promotion)の4つの要素に集約できると述べた。これらの4つの要素は,その英語の頭文字をとって4P(英語では4Psと書いてフォーピース)と呼ばれる
ターゲット市場 市場には無数の顧客が存在する。マーケテイングの理想を言えば,すべての顧客のニーズに対応することであろう。しかし,現実的には顧客のニーズは多種多様であり,企業が顧客1人ひとりの要望や欲求を満足させることは難しい。 そこで,「顧客は誰か」を見極める必要がある。顧客はさまざまなニーズを 持っているが,地域,年齢,ライフスタイルなどの特性によって独特の行動や 選好を示すことがある。 また,消費者は製品の購買経験の有無によって,異なる製品知識や評価をも つ傾向にある。 このように顧客は特性,行動などの要因によって明確にグループ化できる。 ひとつのグループは市場セグメントと呼ばれており,それぞれのセグメントは、あるマーケテイングに対して同じような反応を示す消費者の集合体である。 企業は複数の市場セグメントのうち,1つか複数のターゲット市場を選択し、そ の市場に対してマーケテイングを実施する。
製品のポジション 次は,選択したターゲット市場のなかで,製品・サービスをどのようなポジションに位置づけたいのかを決定する。 消費者は,多数の製品・サービスの情報にふれるなかで,製品の購買を簡単にすませるために製品を心の中でカテゴリーごとに整理し,製品の位置づけを製品属性にもとづいて定義する。その位置づけが,製品のポジションと呼ばれる。いわば,ある製品が競合他社の製品と比較して消費者の心の中を占める場所である。 ポジショニングとは,企業が自社の製品・サービスについて顧客の心の中で望ましいポジションを獲得するための計画である。製品のポジションは自明のことだと思われがちだが,企業が製品・サービスをどのようなカテゴリーに位置づけるかによって,製品のポジションやマーケテイングの成果が変わってくる。 ポジショニングの軸は,製品属性,使用される機会,競合製品との関係,製品の種類などである。企業は,これらのポジショニングの軸を組み合わせて,製品の位置づけを決定する。
◆セグメントなし ◆製品の差異は実質的になし 製品のポジション ◆セグメントなし ◆製品の差異は実質的になし ◆二つ以上のセグメント ◆製品差異が存在する ◆製品差異の効果が市場セ グメントによって異なる
製品のポジション
コンセプトの設定 続いて,企業が製品・サービスによって「顧客にどのようなベネフィットを提供しようとしているのか」を検討する。 コンセプトは,製品のアイデアや提供するものを顧客の言葉で表現したものである。 顧客は製品そのものが欲しいのではなくて,製品から提供されるベネフィットを求めている。