弱電離気体プラズマの解析(LXXII) 大気圧コロナ放電によるアセトンの分解過程

Slides:



Advertisements
Similar presentations
ゲームプログラミング講習 第2章 関数の使い方
Advertisements

サービス管理責任者等研修テキスト 分野別講義    「アセスメントと        支援提供の基本姿勢」 <児童発達支援管理責任者> 平成27年10月1日.
ヒトの思考プロセスの解明を目的とするワーキングメモリの研究
第27講 オームの法則 電気抵抗の役割について知る オームの法則を使えるようにする 抵抗の温度変化を理解する 教科書P.223~226
コラッツ予想の変形について 東邦大学 理学部 情報科 白柳研究室 山中 陽子.
コンパイラ 第3回 字句解析 ― 決定性有限オートマトンの導出 ―
第5章 家計に関する統計 ー 経済統計 ー.
公共財 公共経済論 II no.3 麻生良文.
VTX alignment D2 浅野秀光 2011年12月15日  放射線研ミーティング.
冷却フランシウム原子を用いた 電子の永久電気双極子能率探索のための ルビジウム磁力計の研究
生命情報学 (8) スケールフリーネットワーク
前半戦 「史上最強」風 札上げクイズ.

認知症を理解し 環境の重要性について考える
フッ化ナトリウムによる洗口 2010・9・13 宮崎市郡東諸県郡薬剤師会 学校薬剤師  日高 華代子.
食品の安全性に関わる社会システム:総括 健康弱者 ハイリスク集団 HACCP (食肉処理場・食品工場) 農場でのQAP 一般的衛生管理
規制改革とは? ○規制改革の目的は、経済の活性化と雇用の創出によって、   活力ある経済社会の実現を図ることにあります。
地域保健対策検討会 に関する私見(保健所のあり方)
公共政策大学院 鈴木一人 第8回 専門化する政治 公共政策大学院 鈴木一人
医薬品ネット販売規制について 2012年5月31日 ケンコーコム株式会社.
平成26年8月27日(水) 大阪府 健康医療部 薬務課 医療機器グループ
平成26年度 呼吸器学会からの提案結果 (オレンジ色の部分が承認された提案) 新規提案 既収載の変更 免疫組織化学染色、免疫細胞化学染色
エナジードリンクの危険性 2015年6月23日 経営学部市場戦略学科MR3195稲沢珠依.
自動吸引は 在宅を変えるか 大分協和病院 院長         山本 真.
毎月レポート ビジネスの情報 (2016年7月号).
医療の歴史と将来 医療と医薬品産業 個人的経験 3. 「これからの医療を考える」 (1)医薬品の研究開発 -タクロリムスの歴史-
社会福祉調査論 第4講 2.社会調査の概要 11月2日.
2015年12月28日-2016年3月28日 掲載分.
2010度 民事訴訟法講義 補論 関西大学法学部教授 栗田 隆.
腫瘍学概論 埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター 緩和医療科/緩和ケアチーム 奈良林 至
“企業リスクへの考え方に変化を求められています。 トータルなリスクマネジメント・サービスをプロデュースします。“
情報漏えい 経済情報学科 E  西村 諭 E  釣 洋平.
金融班(ミクロ).
第11回 2009年12月16日 今日の資料=A4・4枚+解答用紙 期末試験:2月3日(水)N2教室
【ABL用語集】(あいうえお順) No 用語 解説 12 公正市場価格 13 債権 14 指名債権 15 事業収益資産 16 集合動産 17
基礎理論(3) 情報の非対称性と逆選択 公共政策論II No.3 麻生良文.
浜中 健児 昭和42年3月27日生まれ 東京都在住 株式会社ピー・アール・エフ 代表取締役 (学歴) 高 校:千葉県立東葛飾高校 卒業
COPYRIGHT(C) 2011 KYUSHU UNIVERSITY. ALL RIGHTS RESERVED
Blosxom による CMS 構築と SEO テクニック
記入例 JAWS DAYS 2015 – JOB BOARD 会社名 採用職種 営業職/技術職/その他( ) 仕事内容 待遇 募集数
ネットビジネスの 企業と特性 MR1127 まさ.
Future Technology活用による業務改革
ネットビジネス論(杉浦) 第8回 ネットビジネスと情報技術.
g741001 長谷川 嵩 g740796 迫村 光秋 g741000 西田 健太郎 g741147 小井出 真聡
自然独占 公共経済論 II no.5 麻生良文.
Autonomic Resource Provisioning for Cloud-Based Software
Webショップにおける webデザイン 12/6 08A1022 甲斐 広大.
物理的な位置情報を活用した仮想クラウドの構築
ハイブリッドクラウドを実現させるポイントと SCSKのOSSへの取組み
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 第12回 情報デザイン(4) 情報の構造化と表現 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部
【1−1.開発計画 – 設計・開発計画】 システム開発計画にはシステム開発を効率的、効果的に実行する根拠(人員と経験、開発手順、開発・導入するシステム・アプリケーション・サービス等)を記述すること。 システム開発の開始から終了までの全体スケジュールを記載すること。 アプリケーション機能配置、ソフトウェア、インフラ構成、ネットワーク構成について概要を示すこと。
6 日本のコーポレート・ガバナンス 2008年度「企業論」 川端 望.
急成長する中国ソフトウェア産業 中国ソフトウェアと情報サービス産業の規模 総売上高は5年間で約5.3倍の成長
米国ユタ州LDS病院胸部心臓外科フェローの経験
公益社団法人日本青年会議所 関東地区埼玉ブロック協議会 JCの情熱(おもい)育成委員会 2011年度第1回全体委員会
次世代大学教育研究会のこれまでの活動 2005年度次世代大学教育研究大会 明治大学駿河台校舎リバティタワー9階1096教室
子どもの本の情報 大阪府内の協力書店の情報 こちらをクリック 大阪府内の公立図書館・図書室の情報
第2回産業調査 小島浩道.
〈起点〉を示す格助詞「を」と「から」の選択について
広東省民弁本科高校日語専業骨幹教師研修会 ①日本語の格助詞の使い分け ②動詞の自他受身の選択について   -日本語教育と中日カルチャーショックの観点から- 名古屋大学 杉村 泰.
■5Ahバッテリー使用報告 事例紹介/東【その1】 ■iphon4S(晴れの昼間/AM8-PM3) ◆約1時間で68%⇒100%
『ワタシが!!』『地域の仲間で!!』 市民が始める自然エネルギー!!
ポイントカードの未来形を形にした「MUJI Passport」
SAP NetWeaver を支える Microsoft テクノロジーの全貌 (Appendix)
ガイダンス(内業) 測量学実習 第1回.
Python超入門 久保 幹雄 東京海洋大学.
熱力学の基礎 丸山 茂夫 東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻
京都民医連中央病院 CHDF学習推進委員会
資料2-④ ④下水道.
Accessによる SQLの操作 ~実際にテーブルを操作してみよう!~.
Presentation transcript:

弱電離気体プラズマの解析(LXXII) 大気圧コロナ放電によるアセトンの分解過程 平成19年電気学会 全国大会 平成19年3月15日(木)  富山大学 五福キャンパス   放電化学・排ガス処理(Ⅰ) 弱電離気体プラズマの解析(LXXII) 大気圧コロナ放電によるアセトンの分解過程 Studies on weakly ionized gas plasmas (LXXII) Decomposition process of acetone using a corona discharge at atmospheric pressure 坂本 孝弘* 佐藤 孝紀 伊藤 秀範 (室蘭工業大学) T.Sakamoto*, K.Satoh and H.Itoh (Muroran Institute of Technology) 背景と目的 実験装置および実験条件 実験結果   ・ 赤外吸収スペクトル   ・ 注入エネルギーに対する濃度変化   ・ アセトンの分解過程 4. まとめ MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

背景と目的 大気圧コロナ放電を用いた処理法 実験の目的 アセトンの分解生成物の調査および詳細な分解過程の考察 大気汚染防止法の改正[1] 法規制と自主的取組のベストミックスでVOC排出量を   抑制 ほぼ全てのVOC(メタノール・アセトンetc)が規制対象 従来まで未処理であった低濃度物質も含め, より効果的な処理方法が必要 2011年度までに2001年度比で30%削減 大気圧コロナ放電を用いた処理法 既存の処理法では処理が困難な数ppm程度の濃 度に対しても適用可能[2] 放電体積が大きく, 大量のガス流量に対して適合 性がある[3] 放電が不安定で火花放電へ移行し易い アセトン CH3COCH3  半導体の脱脂処理や有機溶剤として   多量に使用される  気化ガスを長時間吸入すると血液機能   低下や中枢神経障害を促す作用がある 針電極を密集させることでストリーマコロナ放電を安定に発生・維持が可能   実験の目的 合成空気(窒素-酸素混合ガス)にアセトンを添加した模擬汚染ガス中で,大気圧コロナ放電を発生させたときのアセトン分解特性を明らかにする アセトンの分解生成物の調査および詳細な分解過程の考察 [1] 環境省 : 大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行について (2005) MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY [2] J S Chang : 応用物理 69 3(2000)268 [3] 吉岡芳夫 :電学論A Vol.122-A (2002)676

実験装置 マクセレック(株)製 LS40-10R1 Infrared Analysis, Inc. ,10-PA O2純度 : 99.5% 平板電極(ステンレス製) 複数針電極 マクセレック(株)製 LS40-10R1 直径 : φ80mm 厚さ : 10mm 針電極数 : 13本 針電極 : φ4mm(ステンレス製) 針電極支持板 : φ50mm(真鍮製) 針密度 : 0.66本/cm2 Vmax : ±40kV Imax : ±10mA 放電チェンバー (ステンレス製) 内径 : φ197mm 高さ : 300mm Infrared Analysis, Inc. ,10-PA 光路長 : 10m O2純度 : 99.5% MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY N2純度 : 99.999% 純度 : 99.5%以上

実験条件 共通条件 電極構成 : 針(13本)対平板電極 電極間隔 : 30mm 初期アセトン濃度 : 約200ppm 共通条件   電極構成 : 針(13本)対平板電極  電極間隔 : 30mm  初期アセトン濃度 : 約200ppm  印加電圧    : +26kV(DC)  放電チェンバー内に封入したガスの混合比と分圧  窒素-酸素混合比 封入ガス圧 窒素分圧 酸素分圧 全圧 N2 /O2 (%) (hPa) 80 / 20 810 203 1013 90 / 10 912 101 95 / 5 962 51 98 / 2 993 20 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

赤外吸収スペクトル N2 / O2 = 98 / 2 (%) without discharge CO2 (bend : 667cm-1) without discharge with discharge at 11.0kJ(30min) NO2 (1700~1580cm-1) HCOOH (C-O str : 1105cm-1) ② CO (2050  ~2220cm-1) CO2 (anti str : 2349cm-1) O3 (anti str : 1042cm-1) ③ ④ HCN (bend : 712cm-1) N2O (2170~2260cm-1) ① wavenumber [cm-1] HCHO (CH2 a-str : 2843cm-1) アセトンの赤外吸収帯 CH4 (deg str : 3019cm-1) ①CH3 d-str : 3019cm-1  ②C=O str : 1731cm-1 ③CH3 s-deform : 1364cm-1 ④C-C str : 1216cm-1 アセトンの分解生成物 : CO2, CO, CH4, HCOOH, HCHO                  HCN バックグラウンドガスからの生成物 : O3, N2O, NO2 wavenumber [cm-1]

注入エネルギーに対する濃度変化 CO CH4 CO2 HCOOH HCN CH3COCH3 249ppm 38ppm 約40kJで完全に分解される バックグラウンドガスの混合比   の影響はない 高酸素濃度時に生成量 が多くなる 中間生成物 低酸素濃度時に生成量が多くなる 微量な中間生成物 CO2 38ppm 17ppm HCOOH HCN 酸素濃度には依存しない 最終分解生成物 低酸素濃度時に生成量が多くなる 微量な中間生成物 低酸素濃度時に生成量が多くなる 微量な中間生成物

アセトンの分解過程 CO CH4 CO, CH4 CH4 CH3COCH3 CO 高酸素濃度時に生成量が多くなる 249ppm 38ppm 高酸素濃度時に生成量が多くなる 低酸素濃度時に生成量が多くなる 高酸素濃度時に多く生成される物質 O, O3 低酸素濃度時に多く生成される物質 N, N2O, NO2 (NO) NO + H HNO CH4 H e O CH3COCH3 CH3 CH2 CH CO e e e CH3CO

アセトンの分解過程 HCOOH HCN HCOOH, HCN CH3COCH3 HCOOH HCN 低酸素濃度時に生成量が多くなる 38ppm 17ppm HCOOH HCN 低酸素濃度時に生成量が多くなる 低酸素濃度時に生成量が多くなる 低酸素濃度時に多く生成される物質 N, N2O, NO2 (NO) NO2 + H CH3COCH3 e e OH OH CH3 CH2 HCHO HCOOH NO2 + H e NO OH e H H CH C CN HCN CN C

まとめ 大気圧コロナ放電を用いて,窒素-酸素混合ガス中のアセトンを分解し,生成物を調査するとともに, 気相化学反応に基づいてアセトンの詳細な分解過程を考察した  アセトンの分解生成物は, CO,CO2 ,CH4, HCOOH, HCHOおよびHCNである  アセトンの分解は, バックグラウンドガス中の酸素濃度の影響を受けない  COは主に, アセトンのフラグメントであるCH3COおよびCHから生成され, その際O   原子が重要な反応物質となる  CH4は主に, アセトンのフラグメントであるCH3から生成され, その際HNOラジカルが   重要な反応物質となる  HCOOHは主に, HCHOから生成され, その際OHラジカルが重要な反応物質となる  HCNは主に, C原子から生成され, その際NOが重要な反応物質となる MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

反応速度定数 CH3COCH3の分解反応 CH4の生成反応 reaction formula rate constant : k unit [1] CH3COCH3 + e → CH3CO + CH3 1.33×1016 1/s [2] CH3COCH3 + OH → CH3COCH2 + H2O 1.16 ×108 l /mol・s [3] CH3COCH3 + O → CH3COCH2 + OH 3.57 ×105 CH4の生成反応 reaction formula rate constant : k unit [4] CH3 + H → CH4 1.43×1011 l /mol・s [5] CH3 + HNO → CH4 + NO 5.41 ×109 [6] CH3 + OH → CH4 + O 8.94 ×103 [7] CH3 + H2 → CH4 + H 8.68 ×10 [1] Ernst.J et al.:Ber. Bunsenges. Phys. Chem. 80 (1976) [5] Choi.Y.M et al.:Inter. J. Chem. Kinet. 37 (2005) 261 [2] Alvarez-Idaboy.J.R et al. :J. Phys. Chem. A 108 (2004) 2740 [6] Cohen.N et al. :J. Phys. Chem. Ref. Data 20 (1991) 1211 [3] Herron.J.T :J. Phys. Chem. Ref. Data 17 (1988) [7] Maity.D.K et al. :J. Phys. Chem. A 103 (1999) 2152 [4] Hase.W.L et al. :J. Am. Chem. Soc. 109 (1987) 2916