弱電離気体プラズマの解析(LXXII) 大気圧コロナ放電によるアセトンの分解過程 平成19年電気学会 全国大会 平成19年3月15日(木) 富山大学 五福キャンパス 放電化学・排ガス処理(Ⅰ) 弱電離気体プラズマの解析(LXXII) 大気圧コロナ放電によるアセトンの分解過程 Studies on weakly ionized gas plasmas (LXXII) Decomposition process of acetone using a corona discharge at atmospheric pressure 坂本 孝弘* 佐藤 孝紀 伊藤 秀範 (室蘭工業大学) T.Sakamoto*, K.Satoh and H.Itoh (Muroran Institute of Technology) 背景と目的 実験装置および実験条件 実験結果 ・ 赤外吸収スペクトル ・ 注入エネルギーに対する濃度変化 ・ アセトンの分解過程 4. まとめ MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
背景と目的 大気圧コロナ放電を用いた処理法 実験の目的 アセトンの分解生成物の調査および詳細な分解過程の考察 大気汚染防止法の改正[1] 法規制と自主的取組のベストミックスでVOC排出量を 抑制 ほぼ全てのVOC(メタノール・アセトンetc)が規制対象 従来まで未処理であった低濃度物質も含め, より効果的な処理方法が必要 2011年度までに2001年度比で30%削減 大気圧コロナ放電を用いた処理法 既存の処理法では処理が困難な数ppm程度の濃 度に対しても適用可能[2] 放電体積が大きく, 大量のガス流量に対して適合 性がある[3] 放電が不安定で火花放電へ移行し易い アセトン CH3COCH3 半導体の脱脂処理や有機溶剤として 多量に使用される 気化ガスを長時間吸入すると血液機能 低下や中枢神経障害を促す作用がある 針電極を密集させることでストリーマコロナ放電を安定に発生・維持が可能 実験の目的 合成空気(窒素-酸素混合ガス)にアセトンを添加した模擬汚染ガス中で,大気圧コロナ放電を発生させたときのアセトン分解特性を明らかにする アセトンの分解生成物の調査および詳細な分解過程の考察 [1] 環境省 : 大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行について (2005) MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY [2] J S Chang : 応用物理 69 3(2000)268 [3] 吉岡芳夫 :電学論A Vol.122-A (2002)676
実験装置 マクセレック(株)製 LS40-10R1 Infrared Analysis, Inc. ,10-PA O2純度 : 99.5% 平板電極(ステンレス製) 複数針電極 マクセレック(株)製 LS40-10R1 直径 : φ80mm 厚さ : 10mm 針電極数 : 13本 針電極 : φ4mm(ステンレス製) 針電極支持板 : φ50mm(真鍮製) 針密度 : 0.66本/cm2 Vmax : ±40kV Imax : ±10mA 放電チェンバー (ステンレス製) 内径 : φ197mm 高さ : 300mm Infrared Analysis, Inc. ,10-PA 光路長 : 10m O2純度 : 99.5% MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY N2純度 : 99.999% 純度 : 99.5%以上
実験条件 共通条件 電極構成 : 針(13本)対平板電極 電極間隔 : 30mm 初期アセトン濃度 : 約200ppm 共通条件 電極構成 : 針(13本)対平板電極 電極間隔 : 30mm 初期アセトン濃度 : 約200ppm 印加電圧 : +26kV(DC) 放電チェンバー内に封入したガスの混合比と分圧 窒素-酸素混合比 封入ガス圧 窒素分圧 酸素分圧 全圧 N2 /O2 (%) (hPa) 80 / 20 810 203 1013 90 / 10 912 101 95 / 5 962 51 98 / 2 993 20 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
赤外吸収スペクトル N2 / O2 = 98 / 2 (%) without discharge CO2 (bend : 667cm-1) without discharge with discharge at 11.0kJ(30min) NO2 (1700~1580cm-1) HCOOH (C-O str : 1105cm-1) ② CO (2050 ~2220cm-1) CO2 (anti str : 2349cm-1) O3 (anti str : 1042cm-1) ③ ④ HCN (bend : 712cm-1) N2O (2170~2260cm-1) ① wavenumber [cm-1] HCHO (CH2 a-str : 2843cm-1) アセトンの赤外吸収帯 CH4 (deg str : 3019cm-1) ①CH3 d-str : 3019cm-1 ②C=O str : 1731cm-1 ③CH3 s-deform : 1364cm-1 ④C-C str : 1216cm-1 アセトンの分解生成物 : CO2, CO, CH4, HCOOH, HCHO HCN バックグラウンドガスからの生成物 : O3, N2O, NO2 wavenumber [cm-1]
注入エネルギーに対する濃度変化 CO CH4 CO2 HCOOH HCN CH3COCH3 249ppm 38ppm 約40kJで完全に分解される バックグラウンドガスの混合比 の影響はない 高酸素濃度時に生成量 が多くなる 中間生成物 低酸素濃度時に生成量が多くなる 微量な中間生成物 CO2 38ppm 17ppm HCOOH HCN 酸素濃度には依存しない 最終分解生成物 低酸素濃度時に生成量が多くなる 微量な中間生成物 低酸素濃度時に生成量が多くなる 微量な中間生成物
アセトンの分解過程 CO CH4 CO, CH4 CH4 CH3COCH3 CO 高酸素濃度時に生成量が多くなる 249ppm 38ppm 高酸素濃度時に生成量が多くなる 低酸素濃度時に生成量が多くなる 高酸素濃度時に多く生成される物質 O, O3 低酸素濃度時に多く生成される物質 N, N2O, NO2 (NO) NO + H HNO CH4 H e O CH3COCH3 CH3 CH2 CH CO e e e CH3CO
アセトンの分解過程 HCOOH HCN HCOOH, HCN CH3COCH3 HCOOH HCN 低酸素濃度時に生成量が多くなる 38ppm 17ppm HCOOH HCN 低酸素濃度時に生成量が多くなる 低酸素濃度時に生成量が多くなる 低酸素濃度時に多く生成される物質 N, N2O, NO2 (NO) NO2 + H CH3COCH3 e e OH OH CH3 CH2 HCHO HCOOH NO2 + H e NO OH e H H CH C CN HCN CN C
まとめ 大気圧コロナ放電を用いて,窒素-酸素混合ガス中のアセトンを分解し,生成物を調査するとともに, 気相化学反応に基づいてアセトンの詳細な分解過程を考察した アセトンの分解生成物は, CO,CO2 ,CH4, HCOOH, HCHOおよびHCNである アセトンの分解は, バックグラウンドガス中の酸素濃度の影響を受けない COは主に, アセトンのフラグメントであるCH3COおよびCHから生成され, その際O 原子が重要な反応物質となる CH4は主に, アセトンのフラグメントであるCH3から生成され, その際HNOラジカルが 重要な反応物質となる HCOOHは主に, HCHOから生成され, その際OHラジカルが重要な反応物質となる HCNは主に, C原子から生成され, その際NOが重要な反応物質となる MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
反応速度定数 CH3COCH3の分解反応 CH4の生成反応 reaction formula rate constant : k unit [1] CH3COCH3 + e → CH3CO + CH3 1.33×1016 1/s [2] CH3COCH3 + OH → CH3COCH2 + H2O 1.16 ×108 l /mol・s [3] CH3COCH3 + O → CH3COCH2 + OH 3.57 ×105 CH4の生成反応 reaction formula rate constant : k unit [4] CH3 + H → CH4 1.43×1011 l /mol・s [5] CH3 + HNO → CH4 + NO 5.41 ×109 [6] CH3 + OH → CH4 + O 8.94 ×103 [7] CH3 + H2 → CH4 + H 8.68 ×10 [1] Ernst.J et al.:Ber. Bunsenges. Phys. Chem. 80 (1976) [5] Choi.Y.M et al.:Inter. J. Chem. Kinet. 37 (2005) 261 [2] Alvarez-Idaboy.J.R et al. :J. Phys. Chem. A 108 (2004) 2740 [6] Cohen.N et al. :J. Phys. Chem. Ref. Data 20 (1991) 1211 [3] Herron.J.T :J. Phys. Chem. Ref. Data 17 (1988) [7] Maity.D.K et al. :J. Phys. Chem. A 103 (1999) 2152 [4] Hase.W.L et al. :J. Am. Chem. Soc. 109 (1987) 2916