反転対称性の無いCePt₃Siにおける、重い電子系と磁気秩序 B4 藤岡峻
Ceの入った重い電子系の超伝導体 重い電子系の超伝導体では、スピンの揺らぎによって従来とは異なる超伝導となると考えられているものがある。 電子の相互作用が近藤効果を示すものがあり、Ce,Yb,Uの化合物が超伝導を示す。
Ceの重い電子系超伝導体はまだ少なく、初期にはCeCu₂Si₂が0.7K以下で超伝導に。 最近、CeMIn₅も加えられた(MはCoやIr。それぞれ転移温度2.3K,0.4K)。構造はCeIn₃の変形。 CePt₃Siが重い電子系超伝導体で、広範囲で磁気秩序があることがわかった。
CePt₃Siの構造 ・CePt₃Bと同型で、Ceの直方体があり、それに少しずれてPtのピラミッド型が入る形のCePt₃の隙間にSiを挿入した形。 ・Siのために、直方体の構造に歪みがでる。 ・反転対称が無くなったために、物理的影響大。
CePt₃Siの性質 常磁性状態で、Curie-Weiss則を満たし、Curie温度はθp=ー46K。 Θpが大きく負なので、反強磁性を示す。 近藤効果の相互作用から、近藤温度はTk=11K。
比抵抗ρの温度依存 CePt₃Siの超伝導性を調べるのに、比抵抗ρを調べる。 比較に同じ構造で無磁性のCePt₃Siを用いる。
CePt₃Siのρは0.75Kで0に。 高温では対数的な増え方をするが、75Kと15Kで近藤相互作用による電場の効果のため屈曲する。 フォノンの寄与などから比抵抗の磁性の寄与がわかる 右図はCePt₃Siの低温における依存性。 2Kの周辺で勾配の変化がある。これは広範囲の磁性秩序を表す。
比熱Cpの温度依存性 CePt₃SiとCePt₃Siの比熱の温度依存性を調べる。 CePt₃Siの方は、2Kと0.7K付近で特異な振る舞い。
2.2K付近のλの様な動きは、広範囲の磁性秩序の始まり。 その温度未満のCpのT³依存は、反強磁性を表す。 構造の異方性により、短範囲の磁性相互作用が促進される。 磁気エントロピーSに関して、転移温度で2重に基底状態が縮退するために磁気モーメントが減少する。
ρと同様に0.7Kにおける特異性は超伝導状態への転移を表す。 T³依存性の推定より、常伝導状態のゾンマーフェルト値γnが求められる。 パラメータΔCp/γnTc≒0.25で、BCS理論による値より随分小さい。 超伝導における電子の比熱係数γsにおいても、 ΔCp/γnTs≒0.55で、同様に小さい。 スピン3重項の超伝導体Sr₂RuO₄でも小さい。
磁場のかかった場合 磁場が大きいほど転移温度は下がっていく。 臨界磁場Hc₂において、そのT微分は-8.5T/K。 極低温で比熱が少しあがるのは、核相互作用が原因。
特異性によって、フェルミ球面やきれい極限項や汚い極限項に関して、多くのパラメータを決定できる。 フェルミ面におけるエントロピーは、きれいな極限で3.7×10²º、汚い極限で3.5×10²ºとなる。 計算ではきれいな極限が用いられる。 コヒーレンス長ξoは、ひとつにはBCS方程式より、他にはμoHc₂よりです。 ギンツブルクーランダウパラメータλ/ξは超伝導と常伝導のエネルギー差から求める。
SsとShtの差異によって、フェルミ面の少しはクーパー対を作り、大部分は常伝導状態の磁気係数に関与する。 超伝導と広範囲の磁気秩序が共存する。 フェルミ面は、超伝導の部分と常伝導の領域にわかれる。 外部の影響によって、Tmagはゼロになり、量子臨界点がわかる。
ペアの対称性 強い電子の相互作用効果が、高い角運動量のペアの生成を起こす。 問題は反転対称性がないこと。 臨界磁場Hc₂は大きく、スピン3重項は成り立たないはずだが、存在する。 実際スピン3重項は残る。
まとめ CePt₃Siは重い電子系の化合物で、2.2Kで磁気転移、0.75Kで超伝導転移がおこる。 比ltr/ξ≒8できれいな極限の超伝導を示す。 クーパーペアは重い準粒子から成る。 ペアの生成に反転対称性の欠落が影響する。 Hc₂が大きいと、スピン3重項のペアがあるかもしれない。