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等価電源の定理とは 複数の電源を含む回路網のある一つの端子対からその回路を見た場合、その回路は、単一の電源(電圧源或いは電流源)と単一のインピーダンスまたはアドミタンスからなるシンプルな電源回路と等価と見なせる。 ただし、上記の定理が成り立つためには、回路網に含まれる全ての電源が同一周波数(位相は異なっていても良い)の電源であることと、回路が線形である(重ね合わせの理が成り立つ)ことが前提となる。
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電源の内部インピーダンス(抵抗)とは? 乾電池(1.5V)の等価回路を描いてみよう もし、等価回路がこのようなら、 この電池に1Ωの抵抗Rを繋いだ場合、 抵抗Rで消費される電力Pは、 E (1.5V) + - R =1μΩ R =1Ω R =0.1Ω この電池に0.1Ωの抵抗Rを繋いだ場合、 抵抗Rで消費される電力Pは、 乾電池の等価回路は、現実的には このような形で表すことはできない この電池に1μΩの抵抗Rを繋いだ場合、 抵抗Rで消費される電力Pは、 それでは、実際の乾電池の等価回路は、 どのように描くべきか?

供給電力最大の法則 負荷(インピーダンス Z )に流れる電流 I は、 E Z0=R0+jX0 Z=R+jX R jX I 負荷 電源の内部インピーダンス 負荷インピーダンス 負荷(インピーダンス Z )に流れる電流 I は、 E Z0=R0+jX0 Z=R+jX R jX I 負荷 負荷で消費される電力 P は、 電源側 負荷側 リアクタンスは電力を消費しない 電圧源型 負荷(アドミタンス Y )の両端の電圧 V は、 Y0=G0+jB0 J Y=G+jB G jB 負荷 V 負荷で消費される電力 P は、 サセプタンスも電力を消費しない 電流源型

供給電力最大の法則 負荷で消費される電力 P はが最大となる条件を、以下の場合について考えてみよう ここでは電圧源型についてのみ扱うが、電流源型についても同様に扱える [1] R 一定、X 可変の場合 より、X = −X0 の時に P が最大となる つまり、電源から負荷に供給される電力が最大となる [2] R 可変、X 一定の場合 を R について微分し、dP/dR = 0 から、 と求まる もっと簡単に求めるには、 矢印は、素子の値が可変であるという意味 電源の内部インピーダンス E R0 R jX jX0 E R0 R jX0 jX 電源側 負荷側 電源と負荷とのインピーダンス整合              から上記が求まる

供給電力最大の法則 [3] R、X 両者可変の場合 E R0 R jX jX0 で、 X = −X0、 R = R0 の時に最大となり、 Pmaxは、電源から取り出し得る最大の電力で、電源の固有電力または有能電力と呼ばれる。 この場合、電圧源Eが発生している電力は、         であるから、P0の半分が電源自身のインピーダンス(R0)で、残りが負荷で消費される。 取り出し得る最大電力を電源から取り出したいのなら、電源の内部インピーダンス Z0の複素共役の値の負荷インピーダンス Z0* を繋げばよい。ただしその場合、半分の電力は電源内部で熱になって消費される。

乾電池の経済的な使い方 + 単一、単二、単三乾電池などの場合、E =1.5V ri + - 単一、単二、単三乾電池などの場合、E =1.5V ri の値は電池のサイズや種類によっても異なるが、一般的に ri (単一) < ri (単二) < ri (単三)、        ri (アルカリ乾電池) < ri (マンガン乾電池) となる 内部抵抗 今仮に、E = 2V、 ri = 1Wの電池を考えてみよう この電池に R = 1Wの負荷抵抗を繋いだ場合 乾電池の等価回路 内部抵抗 ri の複素共役 負荷抵抗 R に流れる電流は、1A E =2V ri =1W R =1W 1A 1W 従ってこの場合、 負荷抵抗 R で消費される電力も 内部抵抗 ri で消費される電力も共に等しく 1Wとなる 1W 1Wh 1Wh つまりこの場合、電池から取り出し得る最大電力を取り出していることになる 電池の性能として重要なものに電池の容量がある。容量とは電池に蓄えられているエネルギー量のことで、容量(mAh)=放電電流(mA)×放電時間(h)で与えられる  例えば 1000mAhの容量の電池の場合、1Aの電流を流し続けると、1時間でなくなる 従って上の例の場合、電池がなくなるまでに負荷が消費する電気エネルギーは1Wh 同じく 1Whのエネルギーが、電池の内部抵抗で熱となって消費される

乾電池の経済的な使い方 次に、この電池に R =3Wの負荷抵抗を繋いだ場合を考えてみよう E =2V ri =1W R =3W 0.5A 0.5Wh この場合、負荷抵抗 R に流れる電流は 0.5A 1.5Wh 従ってこの場合、 R で消費される電力は 0.75Wである 一方、内部抵抗 ri で消費される電力は 0.25Wとなる 1000mAhの容量の電池の場合、0.5Aの電流なら2時間流し続けることができる 従ってこの場合、電池がなくなるまでに負荷が消費する電気エネルギーは1.5Wh 一方、 電池の内部抵抗では、 0.5Whのエネルギーが熱となって消費される じゃあ、負荷抵抗 Rが 9Wの場合どうなるのか、考えてみてください E =2V ri =1W R =9W 0.2A 0.04W 0.36W 0.2Wh 1000mAhの容量の電池の場合、0.2Aの電流なら5時間流し続けることができる 1.8Wh この場合、電池がなくなるまでに負荷が消費する電気エネルギーは1.8Wh 一方、 電池の内部抵抗では、 0.2Whのエネルギーが熱となって消費される

インピーダンス整合 インピーダンス整合条件とは、 |Z| = |Z0| E Z0= R0+jX0 Z= R+jX 特に、Z = Z0* 即ち、 R = R0, X = −X0の時を 共役整合と言い、この時電源から最大電力を取り出せる 左側 右側 或いは を反射係数と言う Z0 = R0の時、r = r’ :電力(パワー)反射率 P を負荷で消費される電力とすると、 Pmax を負荷に向かう電力 より、 Z = R+jX 負荷から反射される電力 の関係が成り立つ P: 負荷で消費   される電力 インピーダンス整合条件においては、負荷で消費される電力は最大となり、特に共役整合においては、負荷に向かう電力 Pmax は全て負荷で消費され(P = Pmax )、反射電力はゼロとなる

信号源からの電力取り出し 例えば放送局などで、送信機から信号電力を取り出してアンテナへ送る場合 ← アンテナの記号 送信機 ← アンテナの記号 送信機 そこで整合回路を用い、整合回路の左右のインピーダンスが等しくなるようにしてやれば、送信機の電力を効率よくアンテナに伝えることができる 従って、これらを直接接続しても|Z0| ≫ |Z| のため、信号電力はアンテナに殆ど伝わらない 整合回路 Z0 jwL Z Z 真空管の場合 プレート損失と言う 送信機の終段真空管の出力インピーダンス Z0は通常数kWと高い 一方、アンテナのインピーダンス Zは通常50Wや75Wと低い ただし、このインピーダンス整合がとれるのは、ある特定の周波数 w の近傍のみ。周波数が大きくずれると、インピーダンス整合条件は崩れる また、アンテナに送られる電力に等しい電力が、送信機内で熱となって消費される

インピーダンス整合回路 インピーダンスが不整合状態の左右の回路間で、電力または信号を効率良く伝達させるために、インピーダンス整合(マッチング)回路が用いられる 例題8.7 L型インピーダンス整合回路の例 jX1 jX2 Zin Zout |Zin| < |Zout|の時 |Zin| > |Zout|の時 ZL 整合回路 ZR ZL ≠ ZR TVアンテナ用各種インピーダンス整合器(75⇔300Ω変換用) (マスプロ社製) (マスプロ社製) (ビクター社製)

L形インピーダンス整合回路 問題 特性インピーダンスの値が300Wのフィーダーを、特性インピーダンスが75WのアンテナにL形インピーダンス整合回路を介して繋ぎたい、具体的にどのような整合回路となるか? ただし、使用する周波数は1MHzである。 |Zin| > |Zout|なので、以下のL形整合回路を用いる ヒント jX2 jX1 Zin= 300W Zout= 75W フィーダー アンテナへ Zin, Zout などは、リアクタンス分を含まない実抵抗 Rと考えてよい 1 1’ 整合回路 端子1-1’から右を見たインピーダンスが300Wとなるような X1, X2の値を求め、それに対する具体的素子をあてはめれば良い。 X1がコイル L, X2がキャパシタ Cの場合と、その逆の X1が C, X2が Lの場合の2通りの実現方法が考えられるので、両方の場合について求めよ。

L形インピーダンス整合回路 jX2 jX1 R1= 300W R2= 75W 1 1’ 解答 従って、 上式が成り立つには、 上式からX1, X2 を求めると、 (ただし、複合同順)

L形インピーダンス整合回路 X1 > 0, X2 < 0の場合、右に示すようなL と Cからなる整合回路となる jX2 jX1 1230 pF 27.6 mH X1 < 0, X2 > 0の場合、右に示すようなL と Cからなる整合回路となる jX2 jX1 C L 20.7 mH 919 pF

インピーダンス整合 [4] X/R一定、|Z|可変の場合 n : 1 E Z0 E Z0= R0+jX0 Z= R+jX (一定) n2Z Z = 8W 高インピーダンス アンプ スピーカー マッチングトランス Z n : 1 E Z0 Z 左側を見たインピーダンス: Z0 右側を見たインピーダンス: n2Z 左右を見たインピーダンスの絶対値が等しい時、 左側 右側 つまり n2|Z|=|Z0| の時、インピーダンス整合条件 従って、負荷 Z で消費される電力は最大となる

消費電力最大の問題 演習問題(8.17) R で消費される電力が最大となるように R の値を定めよ 電源側 負荷側 E r R −jX jx 電源側のインピーダンスは、 これの絶対値に R を等しくとると、

消費電力最大の問題 例題 8.8 以下の回路で、R で消費される電力が最大となる可変回路素子の値を求めよ 電源側 負荷側 電源側 負荷側 E R0 R E jX0 R J jX0 R R0 (a) (b) (c) 電源側、負荷側でのインピーダンス整合([4]のケース)と考えて、 R = R0 電源側、負荷側でのインピーダンス整合([4]のケース)と考えて、 R = X0 電源側、負荷側でのインピーダンス整合([4]のケース)と考えて、

消費電力最大の問題 例題 8.8 以下の回路で、R で消費される電力が最大となる可変回路素子の値を求めよ E jX0 R −jX E jX0 (d) (e) (f) R 一定、X 可変の[1]のケースと考えると、 X0 = 0 この問題を電圧源型で考えると、実部も虚部も X の変数となってしまい、解析的に解けない。その場合は、電圧源を等価な電源源に変換し、電流源型として考えると、解析的に解けるようになる。 この問題も (e) と同様に電流源型として考える。

消費電力最大の問題 まず、(e)の問題を電圧源型(インピーダンス)で考えてみよう。 電源側 負荷側 負荷インピーダンス E jX0 Z R E jX0 この場合、負荷の実部も虚部も X の変数となってしまい、解析的には解けない。 従って、アドミタンスで考えてみよう。

消費電力最大の問題 電源を等価な電流源に変換して、アドミタンスで考えてみよう。 電源側 負荷側 電源側 負荷側 −jX E jX0 R 電源側、負荷側のアドミタンスを各々 Y0, Y とすると、 2枚目のスライドの電流源型で考えると、 に相当するので、R で消費される電力が最大となる X の値は、 より、 即ち、

消費電力最大の問題 次に、(f)の問題を考えてみよう。まず、電圧源型(インピーダンス)で考えてみる。 電源側 負荷側 電源を等価な電圧源に変換すると、 J jX0 R −jX jX0 R −jX E 電源側、負荷側のインピーダンスを各々 Z0, Z とすると、 従って、R で消費される電力が最大となる X0 の値は、 となり、簡単には求められない。

消費電力最大の問題 そこで、アドミタンス(電流源型)で考えてみる。 電源側 負荷側 電源側 負荷側 J jX0 R −jX B jX0 G 電源側、負荷側のアドミタンスを各々 Y0, Y とすると、 即ち、 R で消費される電力が最大となる X0 の値は、 より、 即ち、

電力の保存則 ある回路中の各電源(理想電源)が発生する瞬時電力の総和と、その他全ての回路素子が受け取る瞬時電力の総和は相等しい (言い換えると、回路中の全ての素子が出す瞬時電力の総和はゼロである) コイルやキャパシタ、変成器などのリアクタンス素子は電力を消費しない(一時的に蓄積することはある)ことを考えると、電源の実効電力の総和は、抵抗素子で消費される電力の総和に相等しい テレゲン(Tellegen)の定理 回路の各枝を流れる電流と、枝間の電位差の積の和は0となる 例えば、N本の枝を持つ回路で、 i 番目の枝を流れる電流を Ii (t) 、枝間の電位差を Vi (t) とし、電流の流れる方向に電圧降下が起こるとすると、 が成り立つ