J-PARC-HI 提案書へのコメント 高エネルギー原子核実験グループの立場から

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J-PARC-HI 提案書へのコメント 高エネルギー原子核実験グループの立場から 志垣 賢太 ( ) with inputs from 大山 健, 郡司 卓, 杉立 徹, 中條 達也, 浜垣 秀樹 J-PARC-HIが拓く高密度物質とストレンジネスの物理 2018 年 12 月 15 日 いばらき量子ビーム研究センター

J-PARC-HI 提案書へのコメント - 志垣賢太 Disclaimer 高エネルギー原子核実験グループ (特に ALICE-J) の意見集約に基づいています。 文責は志垣にあります。 2018/12/15 J-PARC-HI 提案書へのコメント - 志垣賢太

J-PARC-HI 提案書へのコメント - 志垣賢太 “充分な” 衝突エネルギーは必須 提案書冒頭に掲げた領域は √sNN ~ 6 GeV 現状の MR を基本とする表現 → √sNN ~ 5 GeV 陽子 30 GeV 相当 QCD 臨界点探索には √sNN ~ 6–8 GeV 以上 陽子 50 GeV 相当以上 相転移を含む系統的探求には √sNN ~ 10 GeV まで 陽子 120 GeV 相当 段階的増強計画は許容範囲 他にエネルギー増強を望む分野は? 連携? チャーム物理? 2018/12/15 J-PARC-HI 提案書へのコメント - 志垣賢太

J-PARC-HI 提案書へのコメント - 志垣賢太 陽子 30 GeV 相当で可能な物理 √sNN ~ 5 GeV QCD 臨界点探索は不可 ハドロン物質の状態方程式, 衝突動力学 物理としての重要性は近年の共通認識 しかし高強度高統計は本当に必要か? 2018/12/15 J-PARC-HI 提案書へのコメント - 志垣賢太

J-PARC-HI 提案書へのコメント - 志垣賢太 FAIR の 10 倍の高強度 加速器は (専門外なので) 目論見通りとして 検出器は本当に動作可能か 要詳細検討, 実試験 ALICE O2 技術輸入も非自明 この 10 倍の範囲にどれだけ重要な物理があるか 高統計を要する微分的解析? e.g. 揺らぎによる QCD 臨界点探索? 厳しい事象選択を要する現象? e.g. 高多重度事象での QCD 相転移? 衝突エネルギーの議論とも不可分 2018/12/15 J-PARC-HI 提案書へのコメント - 志垣賢太

J-PARC-HI 提案書へのコメント - 志垣賢太 FAIR (SIS-100) との競合 “コスト” パフォーマンス 加速器の建設費用が低いのは理解 FAIR で実験する方が時間も資金も少なくて済むのでは 利用可能時期 SIS100 での実験が 2025 年開始予定 これより早ければ魅力もあり人も集まるが 陽子 100 GeV 級 (〜 SIS-300) なら話は別か? 2018/12/15 J-PARC-HI 提案書へのコメント - 志垣賢太

J-PARC-HI 提案書へのコメント - 志垣賢太 (先行して?) 陽子ビームでの物理 高多重度事象で “小さな” QGP 生成が有力 高強度ビーム + 超高多重度トリガ 全事象読出 (cf. ALICE O2) よりは楽 ?? 原子核ビームに比べ 1.6 倍の √s(NN) ただし p+A での √s 閾値は未知 (検出器建設を急げば) FAIR に遅れずに ?? 2018/12/15 J-PARC-HI 提案書へのコメント - 志垣賢太

J-PARC-HI 提案書へのコメント - 志垣賢太 まとめ ⭕️ 最高エネルギーだけが物理ではない ❌ 衝突エネルギーは低くてもよい ❌ FAIR があるので不要 △ FAIR より安価なので推進すべき △ 結果的に惜しい ❌ 初めから惜しい 2018/12/15 J-PARC-HI 提案書へのコメント - 志垣賢太