東洋英和女学院大学「世界のメディア」 第13回 オーストラリア 東洋英和女学院大学「世界のメディア」 第13回 オーストラリア 多文化主義社会とマス・メディア 鈴木雄雅(上智大学) http://pweb.cc.sophia.ac.jp/s-yuga/ 東洋英和女学院大学(2019)
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2018年版 世界で最も住みやすい都市ベスト10世界で最も住みやすい都市ベスト10 英誌エコノミスト 2018年版 世界で最も住みやすい都市ベスト10世界で最も住みやすい都市ベスト10 英誌エコノミスト 1位:メルボルン(オーストラリア) 7年連続 2位:ウィーン(オーストリア) 3位:バンクーバー(カナダ) 4位:トロント(カナダ) 5位:カルガリー(カナダ) 5位:アデレード(オーストラリア) 7位:パース(オーストラリア) 8位:オークランド(ニュージーランド) 9位:ヘルシンキ(フィンランド) 10位:ハンブルク(ドイツ) 1位 ウィーン(オーストリア) 2位 メルボルン(オーストラリア) 3位 大阪(日本) 4位 カルガリー(カナダ) 5位 シドニー(オーストラリア) 6位 バンクーバー(カナダ) 7位 東京(日本) 8位 トロント(カナダ) 9位 コペンハーゲン(デンマーク) 10位 アデレード(オーストラリア)
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Quiz/ オーストラリアの国旗はどれ オーストラリア国歌 報道の自由度ランキング:2019 オーストラリア:21位 (19) cf.日本67位 (72) 機密公表容疑でABC捜索:2019/06 差別的発言? 東洋英和女学院大学(2019)
オーストラリア国旗 東洋英和女学院大学(2019)
オーストラリア社会の構成と特徴 人口2,300万人:2人/㎢⇔1.27億人:335人 シドニー、メルボルン:300万人都市 7~8割が海岸部に居住 白豪主義→多文化主義・多言語社会 オーストラリア人の国民性 東洋英和女学院大学(2019)
地政学的要素はマス・メディアに影響する 一大陸一国家(日本の20倍) 白豪主義オーストラリアから多文化、多民族国家オーストラリア 人口の4分の1が外国生まれの移民・難民 5人に2人は移民、あるいは両親ないしはいずれかの一方が海外出生者 cf. 日本の在留外国人=2% 「距離の暴虐」 東洋英和女学院大学(2019)
マス・メディア界の特色:寡占化、グローバル化 世界的なマス・メディア王、R.Murdochの新聞市場の寡占化 公共放送(ABC)、商業放送、多文化・多言語放送(SBS)ほか多彩な放送サービス 全国・大都市日刊市場の紙数減 夕刊紙の消滅/1都市1紙現象 メディア規制:外資保有規制 政治的意図(1990年代)→言論の多様性の確保 Australia Press Council 東洋英和女学院大学(2019)
オーストラリアの放送メディア+ 主務官庁:通信省(Department of Communication) 放送法、ABC法、無線通信法 公共放送:ABC、SBS 地上波商業放送:7,9,10(米:CBS)ネットワーク 有料TV:ケーブル(Foxtel,Optus) /衛星 放送局、送信事業体:テルストラ、オプタス 国際競争:規制緩和策 東洋英和女学院大学(2019)
3つのマルチカルチュラリズムの概念 エスノ(ethno-multiculturalism)=移民集団、エスニックコミュニティの特別なニーズ利益に焦点をあてること コスモポリタン(cosmopolitan multiculturalism)= グローバルな文化の多様性をオーストラリア人に広めることを促進すること ポピュラー(popular-multiculturalism)=文化的多様性がオーストラリア人の日常生活の基本構成要因になるようなマルチカルチュラリズム 東洋英和女学院大学(2019)
多文化主義とマス・メディア Multiculturalism 多文化主義政策の成立と背景 Ethnic Press オーストラリアが単一民族国家であったことはない 多文化主義政策の成立と背景 移民制限から白豪主義政策へ/同化政策 1970年代~ 多文化主義政策への転換 Ethnic Press 2000年1月現在、1万部以上を発行する非英語紙は約70紙 イタリア語紙(2.3%),中国語紙(1.7%),ギリシャ語紙(1.6%),アラビア語紙(1%) ベトナム、中国語紙の急増:移住者を反映 東洋英和女学院大学(2019)
エスニック・メディアの定義と性質 “エスニック集団のため” のメディア (白水、2004) 「当該国家内に居住するエスニック・マイノリティの 人々によって、そのエスニシティのゆえに用いられる、 当該国家内で編成・制作される情報媒体」 (白水、2004) “エスニック集団のため” のメディア
SBS:Special Broadcasting Service 「エスニック、アボリジニ/トレス諸島民を含めてのコミュニケーション・ニーズに貢献」 「国民に文化的、言語的、エスニックな多様性に理解と受容を促進すること」 SBS憲章:参考書(pp.92-93.) 1980s~1991年SBS法により設立 財源の9割は政府予算、残りが広告ほか 9割の視聴者をカバー; 5%の視聴率 60以上の言語放送(ラテ合わせて)、ニュース=18か国17言語 東洋英和女学院大学(2019)
SBS TV 放送 2015年度:総放送時間=9,000時間;70以上の言語 日本語番組は年251時間、ほぼ週1回程度 東洋英和女学院大学(2019)
SBSテレビ放送:上位10言語:2015-16年 東洋英和女学院大学(2019)
SBSの魅力SBS "6 Million stories and counting" Station 東洋英和女学院大学(2019)
SBSへのアクセス 2018年現在、週当たりオーストラリア国民の5割に達している 視聴率は6.9%(16歳以上、18-24時、州都市圏)>2006 年5.8% SBS Online: 月平均310万人がアクセス SBS Demand: 月平均2,650万人がアクセス SBS調査2016によれば、SBSの視聴者は、5大都市エリアでは非英語圏の者が36%、英語圏の者が27%であるのに対し、地方では前者が42%、後者はほぼ同じの28%というように、地方における非英語圏出生者の視聴が高いこと、また男女とも55歳以上の視聴者層が高いことが特徴となっている。地方における非英語圏出生者の視聴が高い。 3大ネットはチャンネル9系が常に30% 台;競争相手はch.7、3位がch.10で20% 台;ABCは10% 強;それがSBSとなると、6% 程度。 東洋英和女学院大学(2019)
【長所】 SBSの長所と短所 外国の映画やTV番組を外国語で視聴することができる。 オーストラリアだけでなく、世界的観点から捉えた ニュースや ドキュメンタリーなど、面白い番組が多 い。 ニュースレポートが誠実である。 ジャーナリスティックな視点と公平性のある番組。 誰もが楽しむことのできる、番組の種類の幅広さ、豊富 さ。 多様な文化的背景に触れ合うことができる。
【短所】 SBSの長所と短所 広告、コマーシャルが多すぎる。10年前はなかったのに …。 スポーツ番組が十分ではない。 どんどん新しい番組と入れ替わり、自分の好きな番組が なくなっていくので、面白くない。
SBSの改善点 もっと広告を減らすべきである。あるいは、なくすべき である。 さらにドキュメンタリー番組を増やすべき。 コメディのようなエンターテイメント系の番組を増やし てほしい。 より身近なリアリティのあるアジア系番組を増やすべき だ。 殺人や女性虐待などの内容が多い、ユーゴスラビアやウ クライナからの輸入番組は減らすべき。 SBSはより多くの国から、より多くの頻度で輸入映画を 集め、放送することができるはずだ。
SBSの役割と特徴:まとめ 「すべてのオーストラリアの人びとへの情報伝達、教育、娯楽 となる多言語、多文化のラジオ、テレビ放送を提供し、 それによってオーストラリアの多文化社会を反映することにある」 ( SBS 『実務規則』) 移民してきた人々と ホスト社会とを繋ぐ架け橋 SBS Australia Immigrants
★あらゆる言語や文化を他のエスニック・コミュニティを含めた SBS 移民してきた人々とホスト社会とを繋ぐ架け橋として彼らが必要とする情報を提供し、彼らの言語や文化を保持しながら継承していくと同時に、その言語や文化を他のエスニック・コミュニティを含めたオーストラリア社会全体に共有させる役割を担っているということだ。 ★あらゆる言語や文化を他のエスニック・コミュニティを含めた オーストラリア社会全体に共有させる役割
抱える問題点 経営:広告費の導入 スポーツのSBSか 字幕付き非英語放送:全放送時間量の95%を占める1,515時間が(英語)字幕付き使用した番組編成になっている エスニック・メディア ①集団内的機能、②集団間的機能、③社会的安定機能 労働人口の減少から悪名高かった白豪主義を大転換 ⇒「経済的メリットの強調」や国民統合の根源としての多文化主義」政策 ⇒次第に「新たなるナショナリズムを生む」「白人社会が非白人を入れることにより白人オーストラリア人こそがオーストラリア社会の支配者であるという白人自身のもつ主観的リアリティ」 東洋英和女学院大学(2019)
①集団内的機能 ・心理的集団形成機能 ★遠くに散居する エスニック集団のメンバーを心理的につなぐ
①集団内的機能 ・娯楽的、昇華的機能 ・生活情報提供機能 ★新天地での不安を取り除き 慰安を与える ★当該社会への適応を促進
①集団内的機能 ・地位付与、奨揚機能 ・世論唱導、啓発機能 ★メディアに取り上げること ★エスニック・アイデンティティ によって喜びを与える ・地位付与、奨揚機能 ・世論唱導、啓発機能 STAR!! I am American!! ★メディアに取り上げること によって喜びを与える ★エスニック・アイデンティティ の覚醒を促す
②集団間的機能 エスニック・メディア エスニック集団 日本社会・日本人 マジョリティ 様々な集団 ★エスニック集団と当該社会の をつなぐ
★コミュニティ同士の対立・抗争を防ぐ役割 ③社会安定機能 エスニック・メディア エスニック集団 日本社会・日本人 ★コミュニティ同士の対立・抗争を防ぐ役割 また、天災・事故時に混乱を防ぐ役割
まとめ:多文化主義の懸念される問題点 ①経済的不公平感(逆差別意識)と被害者意識の発生 ②民族紛争の輸入と国家主権への懸念 ③国民文化の優越性喪失による文化的逆差別感の醸成 ④言論の自由の喪失不安 日本は? 労働者:移民:~ファースト 東洋英和女学院大学(2019)
多民族・多文化国家 東洋英和女学院大学(2019)
オーストラリア:SNSの現状 オーストラリアでのSNS普及率 オーストラリアでSNSを利用している年齢層・性別 ① コミュニケーション・コネクション作り② エンターテイメント③ 情報収集 オーストラリアでよく利用されているSNS Facebook(フェイスブック)/Instagram(インスタグラム)/Snapchat(スナップチャット)/Twitter(ツイッター)/LinkedIn(リンクドイン) 東洋英和女学院大学(2019)
オーストラリア人の国民性 仲間意識と平等意識: Mateship/Fair Go オーストラリア人の国民性の特徴 (1) イギリス英語とも違う言語:「Good day」⇒「G’day(グッダイ)」、「afternoon」⇒「arvo(アーヴォウ)」、「Journalist」⇒「journo(ジャーノォウ)」 (2) 喫煙率 (3) アルコール消費量:アルコール消費量の国別ランキングでは、186カ国中オーストラリアは26位、日本は64位にランク オーストラリア人の国民性・気質 (1)「No worries」精神:「You’re welcome:どういたしまして」や「No problem:大丈夫ですよ」、「do not worry about that:気にしないでください」 (2) ユーモアセンスの違い 東洋英和女学院大学(2019)