第8章 ハードウェア技術 8.1 素子技術 8.2 本体系装置 8.3 通信制御装置 8.4 周辺装置
8.4 周辺装置 8.4.1 周辺装置の種類 8.4.2 補助記憶装置 8.4.3 入出力装置 8.4.4 入出力インターフェース 8.4 周辺装置 8.4.1 周辺装置の種類 8.4.2 補助記憶装置 8.4.3 入出力装置 8.4.4 入出力インターフェース 8.4.5 入出力制御
8.4.1 周辺装置の種類 (1) 入出力装置の分類 データを取扱う方法によって,次のように分類することができる. ① 対話型 8.4.1 周辺装置の種類 (1) 入出力装置の分類 データを取扱う方法によって,次のように分類することができる. ① 対話型 特別な媒体を必要とせず,利用者との直接やりとりによって入出力を行う。 ② シート型 人間が記入したり読むことができる媒体を通してやり取りを行う。 ③ 特殊媒体型 人間が記入したり読むことはできなかったり,困難ではあるが,特殊な媒体を通してやり取りを行う。
(2) 対話型 特別な媒体を必要とせず,利用者との直接やりとりによって入出力を行う。 [入力装置] キーボード 特別な媒体を必要とせず,利用者との直接やりとりによって入出力を行う。 [入力装置] キーボード マウスやタブレットなどのポインティングデバイス 音声入力装置 [出力装置] ディスプレイ 音声出力装置 シンセサイザ
(3) シート型 記録用紙など人間が記入したり読むことができる媒体を通してやり取りを行う。 [入力装置] 光学読み取り装置(OCR) 光学マーク読取装置(OMR) [出力装置] プリンタ プロッタ
(4) 特殊媒体型 人間が記入したり読むことはできなかったり,困難ではあるが, 特殊な媒体を通してやり取りを行う。 [入力装置] バーコード読み取り装置 磁気カード読取装置 デジタルカメラ イメージスキャナ 補助記憶装置として使用される ・磁気テープ ・フロッピーディスク ・CD-R/RW ・DVD 等もこの仲間に入れることができる.
(5) 補助記憶装置とは 入出力装置の中で,入出力両方の機能を持つため, メインメモリに入りきれない情報を,大量に記憶する装置として 使用される装置を,補助的な記憶装置として捉え補助記憶装置と呼ぶ。 なお,コンピュータ側からみると, 通信制御処理装置も入出力装置のひとつとしてみなすことができる。
8.4.2 補助記憶装置 (1) 磁気ディスク (a)磁気ディスクの構造 8.4.2 補助記憶装置 (1) 磁気ディスク (a)磁気ディスクの構造 磁性体を塗布した金属製円盤(磁気ディスク)を複数枚重ねて, 磁気的にデータを記録・読出しを行う装置。 固定ディスク装置,ハードディスク装置等とも呼ばれる。 回転 n … 2 1 0 シリンダ番号 1 2 3 4 ・ n トラック 番号 アクセスアーム 磁気ヘッド
磁気ディスクの構成要素 ① 1枚の磁気ディスク毎に読み書き用の磁気ヘッドがある。 ① 1枚の磁気ディスク毎に読み書き用の磁気ヘッドがある。 ② 磁気ヘッドを各ディスク面に位置付けて,データの読み書きを行う。 ③ 各ディスクの裏表をトラック, 位置付けるための番号をトラック番号という。 ④ 磁気ヘッドは,アクセスアームに固定されており, 水平にアクセスアームと同時に動く。 [ アクセスアーム 磁気ヘッド 回転 1 2 3 4 ・ n トラック 番号 n … 2 1 0 シリンダ番号
アクセス時間 ① シーク時間 アームがアクセス位置(シリンダと呼ばれる)まで移動する時間 ② サーチ時間 目的のデータが記録されている場所に回転してくるのを待つ時間 ③ データ転送時間 データアクセスを開始してからデータの転送が完了するまでの時間 ④ 磁気ディスクアクセス時間 =シーク時間+サーチ時間+データ転送時間
(b)磁気ディスクの記録方法 磁気ディスクの両面には,同心円状にデータが書きこまれているが, 内側と外側では円周の長さが異なるので,内側と外側では記録密度が異なる。 従って,記録密度は,平均の長さを基準に計算される。 [記録方法] ① バリアブル方式 トラックの任意の位置から任意のバイト数の記録/読出しができる方式。 各データ間にギャップを空けて記録する。 データ位置は,シリンダ番号,トラック番号,レコード番号で示される。 ② セクタ方式 セクタという単位でデータを記録する方式。 1セクタは,通常1トラックを20個程度に等分割した領域である。 データ位置は,シリンダ番号,トラック番号,セクタ番号で示される。 セクタの後に空きが生じるが,データ位置を短いバイトで表現できるので, パソコンのハードディスクやフロッピーディスクの管理に使われる。
(c)ピークシフト現象 磁気記録では,記録信号の微分により,立上り・立下り部分だけを RTZ(Return To Zero)符号として記録する. 再生時には,このRTZ符号を元の信号に戻さなければならないが, 記録密度をあげていくと,再生時に波形の位相がずれ, ピークシフト現象が起きる。 記録すべき信号 ピークシフト ピークシフト現象により記録波形を 再生できない状態 記録面を薄くしたり, 材料を改良することにより, 元の波形を再生できる程度まで, ピークシフトの 影響を軽減する.
(d)ピークシフトの原因 ピークシフトの原因は, ① 隣接する読出し波形の干渉 ② 以前書き込まれていたデータの消し残り ③ 残留磁化 ① 隣接する読出し波形の干渉 ② 以前書き込まれていたデータの消し残り ③ 残留磁化 等である。 記録密度を高めるために保磁力の強い材料を使うと, 隣接ビット間の干渉が強くなったり,残留磁化が大きくなって ピークシフトが頻繁におきる。
(e)ピークシフトに対する対策 [例]ピークシフトが起きにくい信号に書込みデータを変換する方法 ハードディスクやDATなど高密度磁気記録では, 8ビットのデータをピークシフトが起きない11ビットのデータに変換する 8-11変換が用いられる。 符号変換の処理時間, 変換の結果記録するビット数が増える 最近は波形干渉の程度に応じてPRML(Partial Response Maximum Likelihood), PR4,EPRML,EEPR4などの波形変換・信号処理によってピークシフトの 影響を軽減している。 たとえば,PRMLでは,1,0の判定を信号レベルの絶対値ではなく 信号の変化量に応じて前ビットの情報を元に判定。 これをパーシャルレスポンス判定と呼ぶ。 この判定を元に既知ピークシフトパターンにしたがって 最も確からしいビット列を推定する。
(2)フロッピーディスク (a)フロッピーディスクの構造と動作 「フロッピー(floppy)」とは,日本語で「ペラペラしている」という意味。 フロッピーディスク(FD:Floppy Disk)とは,文字どおりペラペラした 薄い円盤の表面に磁性体が塗布されたものである。 ① 旧来は,直径が8インチ,5インチのFDもあったが, 現在はほとんど使われていない。3.5インチのFDが一般的である。 ② 3.5インチのFDは,プラスチック性のジャケットでカバーされている。 ③ FDをドライブに挿入すると,FDはスピンドルモータにはめ込まれて 回転する。磁気ヘッドがディスクの磁性体部分をなぞることによって, 記録/読出しを行う.
(b)フロッピーディスクのアクセス時間 フロッピーディスクのアクセス時間も 磁気ディスクのアクセス時間と同じ計算式で求めることができる。 ① 平均シーク時間は磁気ディスクの約5倍 ② 回転速度は約10分の1 このように,アクセス速度は遅く,磁気気ディスク装置に比べて容量も 少ないが,携帯に便利であるためパソコン等で主に使用されている。
(c)フロッピーディスクの記録密度 過去には, ① 片面単密度 ② 両面倍密度(2DD:1枚当たり640M ~730Kバイト)等 ① 片面単密度 ② 両面倍密度(2DD:1枚当たり640M ~730Kバイト)等 があったが,現在使われているのは, 両面高密度(2HD:1枚当たり1.2M~1.44Mバイト) がほとんどである。
(3)磁気テープ (a)磁気テープとは ポリエチレン製のテープの表面に磁性体を塗布したもの。 テープの性格上,前の方から順々にデータを読み書きするので 高速アクセスができない。 ただし, ① ビット当たりのコストが安い。 ② 記録密度が高く,保管用スペースが少なくてすむ ので,大量データのバックアップ用媒体として用いられることが多い.
(b)磁気テープの記録方式 磁気テープでは,テープの走行方向に垂直にビット列を並べて, 1個の符号を表現する。 走行方向に垂直に並んだビットの集合を列と呼び, 並行に並んだビットの集合をトラックと呼ぶ。 テープの走行方向 列 トラック この例では9本のトラックが あるので9トラックという
記録方式に関する補足 ① トラック数には,過去7トラックのものもあったが, 8ビットのデータと1ビットのパリティビットがある ① トラック数には,過去7トラックのものもあったが, 8ビットのデータと1ビットのパリティビットがある 9トラックが主流である。 ② 磁気テープの先頭にBOT(Beginning Of Tape), 最後にEOT(End Of Tape)というマークがある。 これを検出して磁気テープの先頭と終わりを識別している。
(c)磁気テープの動作 ① まず停止しているテープを加速させ,一定速度にする。 ② 一定速度走行中にデータの入出力を行う。 ① まず停止しているテープを加速させ,一定速度にする。 ② 一定速度走行中にデータの入出力を行う。 ③ 終わったらテープを減速させて止める。 加速及び減速している間を起動停止時間という。 起動停止時間中はデータを記録しないので データが記録されない隙間が生じる。 これを,ブロック間隔(IBG : Inter Block Gap), または1レコード1ブロックの場合, レコード間隔(IRG : Inter Record Gap)と呼ぶ。 1レコード毎にデータを書き込むとIRGが多くなり, テープの利用効率が落ちるので, 通常は数レコードを1ブロックとして記録する。 1ブロック内のレコード数をブロック化因数と呼ぶ.
(4)CD装置 (a)CDとは CD(Compact Disk) レーザ光線の反射を利用してデータを読み込む装置。 記録媒体は,表面が硬質プラスチックで覆われているため, 傷や埃に比較的強い。 1枚の記憶容量が650Mバイトから720Mバイトと大容量である上, 持ち運びも便利なためソフトウェアの提供媒体として使われている。 CDは,コンピュータだけでなく, 音楽用など様々な用途に用いられており, このため,様々な仕様や規格がある。
(b)CDの種類 ① CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory) 読込み専用のCD。 ② CD-R(Compact Disk Recordable) 削除や書換えはできないがデータを追加できる。 CD-Rは盤表面に塗布した樹脂にレーザ光線を当てて, 溶かしてピットを作るので書換えできない. CD-Rで書きこんだCDはCD-ROMで読み込むことができる。 ③ CD-RW(Compact Disk ReWritable) データの書換えが可能。 CD-RWは,記録面の金属に加える温度を調節して結晶状態,非結晶状態を 作り,反射率の違いで消去状態と記録状態を切りかえる。 CD-RWで書きこんだ場合,CD-ROM装置では一部のデータしか 読み込むことができないことがある。 一方,CD-ROMやCD-RをCD-RWで読み込むことは可能である.
(c)ビットの記録方法 アルミ盤の表面に凹んでいる部分(ピットと呼ぶ.値1に対応)と そうでない部分(ランドと呼ぶ.値 0 に対応)を作る. ランドにあたった光はそのまま反射するが, ピット部分では光が拡散するため レンズで集めることができない性質を利用する。 なお,CD-RWのように,凹凸ではなく, 結晶状態と非結晶状態の反射率の違いを利用するCDもあるが, 反射率の違いを利用する点は一致している。
(d)CDのトラック CD-ROMのトラックは,磁気ディスクと異なり, レコード盤と同様,中心から外側に向けて らせん状に連なっているので, シーク時間は磁気ディスクより遅い。 データ転送速度は,音楽用CDプレイヤ(150Kバイト/秒)に比べて 何倍のデータを転送できるかで表現する.
(e)CDの回転動作 ① CLV(Constant Linear Velocity)方式 線速度一定。 CDの記録密度が内側と外側で同じであるため, 一定時間に読み込むデータ量を同一にする必要から 内側に行くほど回転速度を早くする方法である。 ランダムアクセスの場合,シークが繰り返されるので, 応答速度を向上させるのが難しい。 ② CAV(Constant Angular Velocity)方式 角速度一定。 回転速度を一定にしたまま,ヘッドを動かすだけで データを読み込むことができるので, ランダムアクセスの高速化を図ることができる。
(5)光磁気ディスク(MO) MOのトラックは,CDと同様らせん状である。 磁化された部分にレーザ光をあて反射した光の偏向方向で データを判別する。 [データの記録] ① 磁性体にレーザ光を当て加熱して磁気を消す。 ② 磁気ヘッドで磁極を上下方向に向かせて,0または1を記録する。 書き込む際,いったんデータを消去してから書きこむため, 書込み速度が遅くなる。 [特徴] ① CDや磁気ディスクほど記憶容量は多くない(128Mバイト, 230Mバイト,640Mバイト)が,FDより容量が大きいので バックアップ媒体としても使用される。 ② 大きさは,過去5インチサイズのものもあったが, 現在では3.5インチサイズが主流である.
(6) DVD(Digital Versatile Disk)装置 データ記録方法はCDとほぼ同じであるが, トラックのピッチやピットサイズを小さくし, 再生用レーザ波長をCDより短くすることによって 記録密度を上げている。 更に,0.6mmのディスクを2枚貼り合わせ, 両面に記録できるものもある。 特に,DVD-ROMではディスクの表面に半透明の記録層を置き, レーザの焦点を手前に合わせるか,奥に合わせるかで 記録層を切りかえる2層記憶方式を採用し, 更に記憶容量を高めている。 大容量を記憶できるので,長時間の動画や音声データを記録できる。 特に動画の場合,MPEG2という記録方式で圧縮するので, 長時間の動画記録には最適である.
DVDの種類 媒 体 読込み/書込み 片面容量(括弧内は両面の容量) DVD-RAM 書換え可能 2.6Gバイト ( 5.2Gバイト) 媒 体 読込み/書込み 片面容量(括弧内は両面の容量) DVD-RAM 書換え可能 2.6Gバイト ( 5.2Gバイト) DVD-R 一回のみ書込み可能 3.95Gバイト ( 7.9Gバイト) DVD-ROM 読込み専用 1層4.7Gバイト( 9.4Gバイト) 2層9.4Gバイト( 17Gバイト)
(8)ブルーレイディスクとHD DVD ブルーレイディスク(Blue-ray Disc) ① 従来のDVDが赤色レーザを用いるのに対して, より波長の短い青紫色レーザで記録する。 ② 対物レンズの開口率(NA:Numerical Aperture)を DVDの0.6から0.85に上げる。 ③ 保護層の厚さを0.1mmに薄くする等によって大容量を実現。 ④ 保護層を薄くすることで記録層保護の面で不利となるため, 表面の汚れやキズを防ぐために,カートリッジに格納する。 HD DVD(High Definition DVD) ① 東芝とNECが共同提案したAOD(Advanced Optical Disk)仕様 ② 読取には,ブルーレイディスクと同様,青紫色レーザで読み込む。 ③ DVD-ROMと同じ基板構造を採用し,ピックアップの開口率も DVD規格と同じにすることで,現行DVD規格との互換性を保つ。
(9)半導体記憶装置 ICメモリ等を使った補助記憶装置。 磁気ディスク装置等は,シークや回転など機械的な動作でアクセスするため, メインメモリ等に比べ数百倍のアクセス時間がかかる。 逆に,半導体記憶装置は機械動作がないので,高速化が容易である。 そのひとつ,半導体ディスク装置はメインフレーム等で使われている 記憶装置であり,主として,DRAMを大量に使って構成されている。 メインメモリの補助や,データ保持用に使用されるものに ① RAMカード(あるいはフラッシュメモリ) ② スマートカード ③ メモリスティック などがある。PDAやデジタルカメラのメモリ等として 一般的に使用されてきている。
8.4.3 入出力装置 (1) 入力装置 ① キーボード ② ポインティングデバイス 8.4.3 入出力装置 (1) 入力装置 ① キーボード ② ポインティングデバイス ③ 光学式文字読取装置(OCR : Optical Character Reader) ④ 光学式マーク読取装置(OMR : Optical Mark Reader) ⑤ バーコード読取装置 ⑥ 磁気カード読取装置 ⑦ デジタイザ ⑧ イメージスキャナ ⑨ ディジタルカメラ
入力装置(1) (a) キーボード キーを押すと,対応した文字コードを発生する装置.配列は,ASCIIやJISで決められているが,制御システムなどの特殊業務用に設計されたものもある.数字や算術演算子だけのキーを並べたテンキーもキーボードの仲間である. (b) ポインティングディバイス ディスプレイの座標位置を入力するための入力装置の総称.マウス,トラックボール,ジョイスティック,タブレット,タッチパネル/タッチスクリーン,ライトペンなどがある. (c) 光学式文字読取装置(OCR : Optical Character Reader) 文字が書かれた紙に光を当てて,その反射光により文字形状を認識し,基準となる文字と照合して識別する装置.JISでは,読取り可能文字としてOCR-A,OCR-B,OCR-Kの3種類が規定されている. 郵便番号読取装置のように認識文字の種類が極端に少ない場合,手書き文字OCRも実用化されている.画像としての入力でイメージスキャナを使い,印刷文字やワープロ等の文字を認識対象にしたOCRソフトは,装置として特別な装置は使ってはいないが,同様の入力方法として位置付けることができる.
入力装置(2) (d) 光学式マーク読取装置(OMR : Optical Mark Reader) マークシートやマークカード上の黒く塗りつぶしたマークを読み取る装置.OCRが画像としての文字のパターンを認識するのに対して,位置でデータを読み取る. (e) バーコード読取装置 バーコードを読み取る装置で,ペン型(LEDでバーコードをなぞる),タッチ型(LEDをバーコードに当てる),レーザ型(バーコードに直接触れなくても読むことができる)がある.このうちレーザ型は操作が簡単なので,スーパーマーケット等のレジに備えられたPOS端末に一般に使われている. (f) 磁気カード読取装置 磁気カードは,カードの表面に磁気ストライプ層が施され,情報を記憶させたもの.この磁気カードから情報を読み取る.キャッシュカード,テレホンカード等に使われている.磁気カードと同じカード型にマイコンや半導体メモリを内蔵し,記憶だけでなく処理機能をも持ったICカードも利用されている.
入力装置(3) (g) デジタイザ 図面等を入力するための装置.仕組みはタブレットと同じだが,大型で高性能なものをデジタイザと呼び,精度が要求されるCADや GIS 等のデータ入力に使われる.A3版以下の小型のものをタブレットと呼ぶ. (h) イメージスキャナ 絵や写真など画像データ(イメージデータ)を,小さな点(ドット)に分解し,反射光の強弱を電荷結合素子(CCD : Charged Coupled Device,半導体素子の一種)で読み取る装置.読取り精度は,1インチ当たりのドットの数(dpi : dots per inch)で表現する. (i) ディジタルカメラ 撮影した光の像をCCDによりデジタルデータに変換して記録し,コンピュータに入力できるカメラ.記録媒体としてはフラッシュメモリ等と呼ばれる半導体メモリが使用される.精度は,1写真あたりの画素数で表現される.
(2)出力装置 ① ディスプレイ ② プリンタ ③ プロッタ ④ 音声入出力 ⑤ MIDI(Musical Instrument Digital Interface)音源
出力装置(1) (a) ディスプレイ 過去,文字や記号だけを表示するキャラクタディスプレイと図形も表示できるグラフィックディスプレイと区別していたが,コンピュータのディスプレイがほとんどグラフィックディスプレイになったため,現在では区別しなくなっている. 一般にCRTディスプレイと液晶ディスプレイがある. (b) プリンタ コンピュータからの出力データを印刷する装置.印刷方式や印字単位により様々な種類がある(後述). (c) プロッタ 図面等を線画として高精度に出力する装置である.CAD(Computer Aided Design)やCAM (Computer Aided Manufacturing)の分野で使用されており,以下のような種類がある. ① XYプロッタ(アーム部分に鉛筆やボールペンを差し込み, 用紙上のX-Y方向にパルスモータを使ってペンを動かし,線画を描く) ② 静電プロッタ(電子写真方式で線画を描く) ③ インクジェットプロッタ(インクジェット方式で図形を描く) ④ カラープロッタ(複数の色を使うことができる)
出力装置(2) (d) 音声入出力 音声は基本的に時系列的な波形のアナログデータである.コンピュータ内に取りこむには,アナログデータを微小な時間間隔毎にサンプリングし,量子化してディジタルデータに変換(A/D変換:Analog/Digital変換)する.出力するには,ディジタルデータをアナログデータに逆変換(D/A変換:Digital Analog変換)してパワーアンプ等に出力する. 音声データは,サンプリング時間間隔を多くすればするほど大容量となる.従って,通常は圧縮して格納する. (e) MIDI(Musical Instrument Digital Interface)音源 音楽用のデータを,音の高さ(ノートナンバー,ノートネーム),音が鳴り始めるタイミングと鳴り止むタイミング(ノートオン,ノートオフ),音の強さ(ベロシティ),楽器の指定(チャネル)等によって表現する方式がある.これは,電子楽器とコンピュータの間でデータをやりとりするためのデータで,MIDI(Musical Instrument Digital Interface)規格として統一されている.時系列的にアナログデータをサンプリングするのではなく,記号化・数値化された表現であるためコンパクトである.
(3)ディスプレイ (a)CRTディスプレイ ブラウン管を使ったディスプレイ. ブラウン管では,電子ビームを磁界や電極で偏向させ, 表面の受光面(画面)に当てて発光させる. 電子ビームを画面の左から右(水平走査)に, 更に上から下に高速に走査させる ことで画像を表示する. 単位時間当たり何回水平走査が行われるかを水平走査周波数と呼び, 解像度を高くすればするほど水平走査周波数を高くしないと, 画面がちらつく. 一般のテレビでは525本の走査線を1本おきに2回に分けて走査する インターレス方式(跳越し走査)を採用しているが, コンピュータでは静止画が多いためちらつき(フリッカ)を少なくするため ノンインターレス方式を採用している.
ディスプレイの解像度 ディスプレイでは,ドットの集まりで絵や記号を画面に表示する. 点の数が多ければ多いほど,細かい部分を表示できる. この細かさの度合いを解像度と呼び, 1画面に表示できるドット数(横×縦)で表現する. カラーディスプレイでは,色を光の3原色(赤:R,緑:G,青:B)で表現する. これをRGBと呼ぶ. RGBを単純に組合わせると23=8色だが, 各RGB毎に濃淡(階調)を付けると,中間的な色を表現できる. 例えば,RGBそれぞれを4ビットで表現すると, 各色で24=16階調の濃淡を表現できる. 3色を組み合わせると1ドットあたり163=4,096色 を表現することができる.
(b)液晶ディスプレイ 液晶は,液体のように流動性を持つが,電圧をかけると分子が規則正しく 一方向に並び,不透明から透明に変化するという性質を持つ. 従って,液晶の裏から光を照らす(バックライト)と, 電圧をかけた場合とかけない場合で明るさが異なる. 1ドット毎の明るさの度合いの変化で,画面に画像を表示することになる。 ブラウン管のように奥行きを必要としないので, 携帯用の機器やノート型パソコンの画面として使われる。
液晶ディスプレイの種類 液晶ディスプレイには,以下の種類がある。 ① 単純マトリックス型(STN)方式 ② アクティブマトリックス型(TFT)方式 単純マトリックス型(STN:Super Twisted Nematic)方式 アクティブマトリックス型(TFT:Thin Film Transistor)方式
STN 2枚のガラス基板にX軸,Y軸方向に帯状の電極を乗せ, その交点に電圧をかける. 安価だが,画素の応答速度が遅く,見る方向によって明るさが異なるなどの 欠点がある. 液晶パネルを上下に分割し,走査線を2倍にしたDSTN方式が 現在では主流である. 表示画面 液晶 偏向基板 光 (電圧がかかっている) (電圧がかかっていない)
TFT TFTでは,各画素毎に薄膜トランジスタを組み込み, 各画素を独立に駆動させる. 更に,カラーフィルタを組合せ,1ドットを3色の合成で表示する. 高速で鮮明な画像が得られるため,カラー液晶の主流である. 偏向板 ガラス基板 カラー 画像 RGB フィルタ コモン 電極 TFT 画素電極 液晶
(c)液晶ディスプレイの改良 従来のTFT液晶では電子の移動度を改善するために, 単純な多結晶シリコンではなくアモリファスシリコンを使用している. [問題点] ① 液晶の等価回路はコンデンサとして表される電気容量であり, スイッチング負荷が大きい. ② ディスプレイの高精細化とともに,1ドット当たりの液晶の面積が 小さくなり,配線量も増えるので液晶の開口部は 相対的に小さくならざるをえない. ③ トランジスタを小さくすると電子の移動度が問題となり, 応答速度が低下する問題が生じる. これらの問題を解決するのが低温ポリシリコントランジスタである.
低温ポリシリコントランジスタ 低温ポリシリコンを用いたTFT液晶 ドレイン電極 ソース電極 液晶駆動線 ゲート絶縁膜 アモルファスシリコン/低温ポリシリコン 酸化タンタル ゲート電極
有機ELの利用 発光ダイオード(LED)と同じような原理で発光する 有機EL(Organic Electro Luminescence)のディスプレイへの応用研究が なされている. その構造は,ガラス基板上に透明電極による+電極と鏡の役割を持つ-電極の 間に,正孔輸送層,有機EL材料,電子輸送層を挟んで発光させる仕組みである. +電極からの正孔と-電極からの電子が発光層で出会うことによって, 電子がエネルギー準位を移動し,エネルギーが光に変換されて発光する. LEDと似ているが,有機材料を使用する点が異なる. 液晶ディスプレイは,自ら発光しないのでバックライトが必要であるが, 有機ELの場合,自ら発光するので今後の材料として有力視されている.
有機ELを利用した場合の構造 自ら発光するのでバックライトが必要ない。 有機発光体の構造(3~4層) 電極と鏡の役割を兼ねる 電子輸送層 1,000~2,000Å 発光層 1~2μm 電極(-) 正孔輸送層 有機発光体 透明電極(+) ガラス基板
その他の改良 この他, ① 蛍光による発光ではなく燐光による発光現象を利用する方法 ① 蛍光による発光ではなく燐光による発光現象を利用する方法 ② 連続粒界結晶シリコン(CGシリコン:Continuous Grain Silicon)を使う方法 ③ プラズマによる発光を利用したPALC (Plasma Address Liquid Crystal) 等が実用化段階に入ろうとしている. 一方,従来型のTFT液晶ディスプレイを改善してコントラスト等を 高める等の改良努力も進められている. 従来型液晶の改良版が,VA(Vertical Alignment)液晶, MVA(Multi domain VA)液晶等である.
(4)プリンタ 印刷方式による分類 ① インパクトプリンタ インクリボンの上から機械的に叩き,衝撃力で印字する。 カーボン紙を挟んだ伝票等の印刷に向いている。 ② ノンインパクトプリンタ 熱やインク,レーザなどにより印字を行う方式で,衝撃を与えない。
印字単位による分類 ① シリアルプリンタ(1文字単位で印刷) ② ラインプリンタ(1行単位で印刷) ③ ページプリンタ(ページ単位で印刷)
長所/短所と印字単位,印字形式 プリンタ 長所 短所 印字単位 印字方式 ドット カーボン紙による複写 印刷中の雑音が大きい. プリンタ 長所 短所 印字単位 印字方式 ドット カーボン紙による複写 印刷中の雑音が大きい. インパクト が可能.ラーニング 印刷文字があまり インパクト プリンタ コストが安い. きれいでない. プリンタ 比較的音が静か. 感熱紙を使うため, 感熱式 本体価格が安い. ラーニングコストが高い. プリンタ 印刷物が長期保存に シリアル 向いていない. プリンタ 比較的音が静か. インクリボンが高価であり, 熱転写 本体価格が安い. あり,ラーニングコストが プリンタ 高い. ノン 印刷物の長期保存に不向き. インパクト インク 比較的音が静か. レーザプリンタに比べ低速. プリンタ ジェット 安価でカラーが きれいに印刷するには プリンタ きれいに仕上がる. 高価な紙を使用する必要 がある. レーザ コピー機と同様, 高価である。 ページ プリンタ 高速である. 個人使用には プリンタ 印字品質が高い. 向いていない. 1行分をまとめて 主に大型コンピュータで ライン 印字するので, 使用され,高価である. ライン インパクト プリンタ 高速である. 連続用紙という プリンタ プリンタ 特殊な用紙を使う.
解像度と色の表現 ① インクジェットプリンタやカラーレーザプリンタでは, 色の3原色(シアン:C,マゼンタ:M,イエロー:Y)の減法原色で ① インクジェットプリンタやカラーレーザプリンタでは, 色の3原色(シアン:C,マゼンタ:M,イエロー:Y)の減法原色で 色を表現するが,3原色を同一の割合で混ぜても 正確な黒(K)にはならないので,3原色の他に 黒を用意する(CMYK)プリンタが多い. ② インクジェットプリンタやレーザプリンタの解像度は, 1インチ当たりのドット数dpi (dots per inch)で表現される.
第8章 ハードウェア技術 8.4 周辺装置 8.4.1 周辺装置の種類 8.4.2 補助記憶装置 8.4.3 入出力装置 第8章 ハードウェア技術 8.4 周辺装置 8.4.1 周辺装置の種類 8.4.2 補助記憶装置 8.4.3 入出力装置 8.4.4 入出力インターフェース 8.4.5 入出力制御
8.4.4 入出力インターフェース (1) 入出力インターフェースとは 8.4.4 入出力インターフェース (1) 入出力インターフェースとは コンピュータと入出力装置など周辺機器との間で,データのやり取りを行う 際のルールや手順。 過去はメーカ毎に異なるインターフェースを使っていたが, コンピュータの一般への普及,コンピュータメーカと周辺機器メーカの 分離等と共に,国際的な規格が統一され,複数メーカの製品にも 接続可能な入出力装置が大半になっている. 入出力インターフェースは,データのやり取りを並列に行うかどうかで, ① パラレルインターフェース ② シリアルインターフェース に分類することができる. シリアルインターフェースは,比較的低速でも構わない入出力の インターフェースとして使われることが多い.
(2) 入出力インターフェースの種類 分類 名称 用途 転送速度 シリアル RS232C モデム インターフェース プロッタ 遅い 分類 名称 用途 転送速度 シリアル RS232C モデム インターフェース プロッタ 遅い ディジタイザ マウスなど USB キーボード モデム 低速モードと プリンタ 高速モードがある スピーカなど IEEE1394 DVD 磁気ディスク 速い ディジタルカメラ ビデオカメラなど パラレル プリンタ インターフェース セントロニクス プロッタ 遅い ディジタイザなど GP-IB 計測機器など 比較的早い SCSI 磁気ディスク イメージスキャナ 速い CD-ROM 磁気テープなど
色々な入出力インターフェース(1) ① RS232C(Recommendation Standard 232C) EIA(米国電気工業会)で規格化.本来はモデムを接続する規格であるが,パソコン同士や,様々な入出力機器の接続に使われている.規格上の上限速度は115.2kbps(Bits Per Second)であるが,28.8 Kbpsや33.6 Kbpsが一般に使われている. ② USB(Universal Serial Bus) 米国インテル社,マイクロソフト社が共同開発した周辺機器共通の新しいインターフェース.キーボード,マウス,モデム,プリンタ等を対象にしている.データ転送速度は,低速(Low Speed)モードで1.5 Mbps,高速モード(Full Speed)モードで12 Mbpsである.ひとつのコネクタで最大127台接続可能で,拡張性が高い. ③ IEEE1394 IEEE(米国電気電子技術者協会)が採択したシリアル伝送のSCSIインターフェース規格.非同期転送やブロードキャスト転送も可能である.マルチメディアデータの転送に適した等時性(isochronous)転送方式を採用しているため,音声や映像などをリアルタイムに転送する用途に適している.100Mbps,200Mbps,400Mbpsの3種類のデータ転送速度が規定され,最大63個までの機器が接続可能.電源を入れたまま接続/切断するホットプラグイン,プラグアンドプレイにも対応している.
色々な入出力インターフェース(2) ④ セントロニクスインターフェース 米国セントロニクス社が開発したプリンタ用インターフェース.国際的な標準化機関で正式に規格化されたものではないが,多くのパソコンでプリンタ用インターフェースとして採用されているので実質的な標準(デファクトスタンダード)になっている. ⑤ GP-IB(General Purpose Interface Bus) 米国ヒューレットパッカード社が提案し,IEEE(米国電気電子技術者協会)で規格化.マイクロコンピュータと計測器を接続するための標準インターフェースである.計測器だけでなく,ワンボードマイクロコンピュータの周辺機器インターフェースとしても使われている. ⑥ SCSI(Small Computer System Interface) ANSI(米国規格協会)で規格化された磁気ディスク装置やCD-ROMなど高速転送を必要とする機器を接続するための標準インターフェース.8ビットのパラレル転送を双方向に行うことができる.データ転送速度は1.5Mbps~4Mbpsで,機器を最大7台まで接続可能.最大ケーブル長は6m.SCSIの上位規格としてSCSI-2,SCSI-3がある(表3-7).これらは,データ転送サイクルを短縮して高速化が図られており,最大ケーブル長が短くなっている.但し,Ultra Wide SCSIでは,HVD (High Voltage Differential)という接続を使えば,最大ケーブル長25mまで使えるようになっている.
色々な入出力インターフェース(3) ⑦ IDE(Integrated Device Electronics) ハードディスクインターフェースの規格.ANSI(米国規格協会)で規格化されてATA(AT Attachment)と呼ばれる.最大データ転送速度は16.7Mbpsであったが,66 Mbps,100 Mbpsに高速化したUltra ATA/66,Ultra ATA/100が主流であり,パソコンの内蔵用ハードディスクの仕様として普及している.
PCI(Peripheral Component Interconnect)バス (3) PCIバスの動向 PCI(Peripheral Component Interconnect)バス パソコン用のバス仕様のひとつ. CPUに依存しないアーキテクチャであるため, 各種パソコンのCPUとメモリ, 周辺機器接続のためのインターフェースとして使われている. システム環境の高速化に対応して,このPCIバスの速度を見直すようになってきている. 以下,その例を示す。
PCI(Peripheral Component Interconnect) (a) PCI-X PCI(Peripheral Component Interconnect) 既存のPCIバスと同様,64ビットデータ信号を持つパラレルバス. 基本的には,きめ細やかなタイミング調整や, バスマスター間のバス利用権の競合調整(アービトレーションと呼ぶ)によって, 既存のPCIバスの2倍の速度, すなわちバスクロックを最大133MHzまで高くしている. ① 最大データ転送速度は 8バイト×133MHz = 1.064 Gbps である. ② 既存のPCIとの互換性も維持している. 実際にはアドレス確定からデータ転送まで 1クロックサイクルを挿入することでクリティカル度を緩和し, データ転送の安定度を確保している. この結果,従来のPCIバスでも処理内容によっては 数%から30%ほど性能が改善されている.
(b) InfiniBand 拡張バスというよりスイッチングを利用した超高速ネットワークの イメージが強く,基本は単方向の差動型 2.5 Gbps のシリアル伝送である. マトリックス状のスイッチがあり, それぞれの接続点をON/OFFすることで出力先を選択する. 単方向2.5Gbpsシリアル伝送路 Output スイッチによる 独立した経路で ルーチング + I n p u t Network Device Target - + - HCA Host Cannel Adapter Routing Network Storage Device Target CPUやメモリ などの計算機要素
(c) PCI Express InfiniBandと同様,差動型 2.5 Gbps のシリアル伝送として 技術の共通化を図るとともに,将来的にはさらに高速化を目指している. 帯域が不足するような使用形態の場合,接続本数を ① 2xモード(2本) ② 4xモード(4本) と増やすことができる. ① データはバイト単位で,それぞれの伝送路を通って伝送される. ② 電気的な制約を考慮して, 各スロットは,1対1での接続が原則であり, ブリッジチップとピアツーピアで接続される. ③ データストリーム上にクロック信号を重畳し, 8-10変換して伝送されるためクロック信号用の配線は不要である.
8.4.4 入出力制御 (1) 入出力制御方式 コンピュータと入出力装置間のデータ転送の制御. 入出力機器のほとんどは機械的動作が多いため, 8.4.4 入出力制御 (1) 入出力制御方式 コンピュータと入出力装置間のデータ転送の制御. 入出力機器のほとんどは機械的動作が多いため, 電子的な動作だけのCPUやメインメモリに比べ低速である. CPUが入出力にタイミングを合わせて動作すると非常に効率が悪くなるので, 入出力制御をCPUから切り離すことが必要である. 入出力制御の方法としては,次のような方式がある. ① 直接制御方式 ② DMA(Direct Memory Access)方式 ③ 入出力チャネル方式
(a) 直接制御方式 CPUで直接入出力動作を制御する方式. 当然,効率は良くないが,パソコン等でも使われている場合がある. ただし,ワンボードマイコンでは,この方式がよく使われている. IOレジスタ 入出力 装置 CPU 入出力命令
(b) DMA方式 DMA(Direct Memory Access) DMAC(DMA Controller) 入出力機器からの要求信号により, 主記憶装置と入出力装置の間で直接データ転送を行う方式. 入出力制御は DMAC(DMA Controller) が行う. CPUは入出力の完了を割込みによって検出し, 入出力処理には一切関与せず,他の処理を行う. データをまとめて転送する磁気ディスク等の 入出力装置の制御に向いている. CPU 入出力命令 アドレスなど 入出力完了 割込み メモリ DMAC 入出力装置
(c) 入出力チャネル方式 入出力装置の制御をCPUから切り離し, 入出力チャネルプログラムというプログラムで制御する方式. (DMACとほぼ同じモデル) コンカレント(並列)なプロセスとして実装される場合もあるが, 通常は,ワンボードマイコン(制御ボード)として実装されることが多く, パラレル(並行)処理で実行される. 入出力を開始する際, CPUは入出力チャネルに開始命令等を指示し,後は別の処理を行う. 入出力チャネルプログラムは, 省略して,単にチャネルプログラム, あるいはチャネルとも呼ばれる。
チェイニング CCW(Channel Command Word) チェイニング(Chaining:連鎖させるという意味) 通常のチャネルプログラムでは,チェイニングにより, 複数の周辺装置に入出力動作を行わせたり, 連続した複数の入出力命令を行わせることができる. チェイニングには,次の2種類のチェイニングがある. ① コマンドチェイニング 複数のCCWを連続させて指定する方法. たとえば,磁気ディスクに対しては,最初シークコマンド, 次にサーチコマンドがくるが,これを複数連鎖させて指定する. ② データチェイニング 複数の入出力用領域にリンクを張り, ある領域から別の領域を参照できるようにする. 具体的には,一方の領域に次の領域のアドレスを入れることで リンクをはる.
入出力チャネルの制御方式 ある時間に1台だけを制御するのか,同時に複数台を制御するのかで, 以下の2種類がある。 ① セレクタチャネル(SLC : Selector Channel)方式 複数の接続機器のうち1回に1台の装置だけを制御する. 磁気ディスク,磁気テープなどの補助記憶装置などに用いられる。 ② マルチプレクサチャネル(MXC : Multiplexer Channel)方式 1つのチャネルが同時に複数の装置を並行的に制御する.
MXCでのデータの転送単位 MXC ( Multiplexer Channel ) ① バイトマルチプレクサチャネル方式 1バイト単位で転送. 比較的低速の入出力機器のデータ転送に使われる. ② ブロックマルチプレクサチャネル方式 任意のビット数のブロック単位で転送. 高速のデータ転送が必要な入出力機器に用いられる.
動作モードの種類 ① バーストモード ある装置がSLC動作で入出力している間,他の装置が待っている状態。 ② マルチプレクスモード ある装置がSLC動作で入出力しているとき,他の装置はMXC動作を行う状態。 ③ バイトインタリーブモード バイトマルチプレクサチャネルのとき, データを小刻みに一斉にCPU側に送っている状態。
(3) 割込み信号方式 割込み信号は,通常チップセット内のルーチングレジスタに割当て先を 書き込むことで,システムのコントローラ(IRQ)に割り当てられる. しかしPCI等では,IRQが共有されることがあるので, どのボードから割込みが発生したかを判定する必要がある. 従来のエッジトリガー方式では電圧の変わり目で割込みを検知していたが, 割込みが続いているのか空いているのかが判定できない. PCIの場合,割り込みが発生していることを 信号線に電圧がかかっているかどうかで判断する レベルトリガー方式を採用するようになってきている。
レベルトリガー方式 レベルトリガー方式では, 電圧がかかっていれば割込み中, 電圧がかかっていなければ割込み中でないと判断し, 他の割込みを受け付けることができる. (a) エッジトリガー割込み (b) レベルトリガー割込み 電圧 電圧 A# A# A# 割込み A# 割込み B# B# B# 割込み B# 割込み
(4) 入出力装置の見かけ上の高速化 入出力装置は機械的な動作が必要なため高速化が困難である. しかし,これをCPUからみたら見かけ上高速であるかのように 処理することで,システム全体のスループットを上げることができる. [最も単純な方法] 出力装置中に多量のバッファを用意して, バッファに全てのデータが届いたら, CPUに対して出力完了の情報を送り,片方で出力処理を行う。 プリンタやプロッタ等でよく使われる方法である. バッファだけが独立した装置(例えばプリンタバッファ等)もある.
ハードディスクの見かけ上の高速化 メモリ階層におけるCPUとメインメモリの関係は, メモリとハードディスクの関係に類比することができる. ハードディスク内に半導体メモリを用意しておき, アクセスの高速化を図る方法もある. この半導体メモリをディスクキャッシュと呼ぶ. ハードディスクでは, 回転系と転送系を並列処理する方式が現在では一般的であり, 通常転送速度は回転速度に比べて非常に速いので, このことで,一般に見かけ上高速化が図れる.
RAID(Redundant Array of Inexpensive Disks) RAID RAID(Redundant Array of Inexpensive Disks) 複数のハードディスクを論理的に1台のディスクとして利用する方式. ディスクアレイとも呼ばれる. 当初は,高速化が目的であったが, 障害に対する信頼性向上の目的にも使われるようになった. RAIDにはRAID0~RAID5の6種類の規格がある. これらのうちRAID0,RAID1,RAID5が利用されることが多い.
RAID(Redundant Array of Inexpensive Disks) RAIDの規格 RAID(Redundant Array of Inexpensive Disks) ① RAID0 : データを複数のハードディスクに分割(ストライピングと呼ぶ)して,速度向上だけを目的とした規格. ② RAID1 : ディスクアレイを2グループに分け,同じデータを記録(ミラーリングと呼ぶ)することで信頼性を高めることを目的とした規格. ③ RAID2 : エラー検出・訂正のためのコードを生成・記録するもので,ディスクアレイのいずれかが故障した場合のデータ再生を行うための規格.但し,一般に多くのハードディスクがエラー検出・訂正機能を持っているので,この規格に沿った製品は少ない. ④ RAID3 : 特定の1台にパリティを記録することで,エラー検出・訂正を行うための規格.小容量の場合,逆にアクセス速度が遅いので,特殊目的でのみ利用されている. ⑤ RAID4 : RAID3と同じく特定の1台にパリティを記録するが,データストライピングをブロック単位で行う.特定のディスクにアクセスが集中し,ディスクアクセスの効果が損なわれるので,この規格を実装した製品は少ない. ⑥ RAID5 : パリティを全てのハードディスクに分散してブロック単位で記録.RAID4のように特定のディスクにアクセスが集中することはない.
8.4 周辺装置 完