太陽フレアの基礎 磯部洋明 京都大学宇宙ユニット.

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太陽フレアの基礎 磯部洋明 京都大学宇宙ユニット

太陽フレアとは 多波長にわたる急激な増光 時間スケール:数分〜数時間 頻度分布はエネルギーのベキ乗 黒点の近くで発生、エネルギー源は磁場。 フレア:1029-31 erg マイクロフレア、ナノフレア、、 黒点の近くで発生、エネルギー源は磁場。

太陽フレアの磁気リコネクションモデル フィラメント噴出 (コロナ質量放出) 軟X線 紫外線 磁気リコネクション (粒子加速?) Hα(2本のリボン)

太陽フレアの観測:Hα(彩層) 磁気中性線をはさんで2本のリボンが広がる フィラメント(プロミネンス)の噴出を伴う Asai et al. 2003 磁気中性線をはさんで2本のリボンが広がる フィラメント(プロミネンス)の噴出を伴う

太陽フレアの観測:軟X線 ようこう軟X線望遠鏡 2-20MKのコロナ

エミッションメカニズム:熱的制動放射 Ixray ∝ f(T)n2V n2Vはエミッションメジャと呼ぶ

太陽フレアの観測:紫外線 2000/07/14 TRACE 195A 金属イオンのスペクトル線が支配的(FeXII195等) 低温ガス(〜104K)が吸収、高温ガス(〜106K)が輝線で見える。

フィラメントが噴出、その下でフレア

太陽フレアの観測:硬X線、γ線 高エネルギー粒子からの非熱的放射。粒子加速。 硬X線(<1MeV)...主に高エネルギー電子

電波 Nobeyama Radio Heliograph 17GHz 非熱的電子(〜数100keV)のジャイロシンクロトロン放射 Yokoyama et al. 2001 非熱的電子(〜数100keV)のジャイロシンクロトロン放射

可視連続光 ひので可視光望遠鏡 恒星フレアへの応用 歴史上初めて発見(が報告された)フレアも可視連続光(Carrington 1859) 光球が光っているのか?コロナからエネルギーを光球へ輸送するのは困難(密度109倍) 可能性1:彩層中に密度の濃い(連続光で光学的厚さ1)の層ができている 可能性2:まず彩層を加熱(by非熱的粒子or熱伝導)、その後photonのirradianceでエネルギーを下層に輸送 地上分光観測が重要な課題 恒星フレアへの応用

コロナ質量放出 SOHO/LASCO 人口日食+白色光(自由電子のトムソン散乱)

磁気リコネクションの理論

磁気リコネクションとは 磁力線のつなぎかわりによるトポロジーの変化、それに伴う磁場エネルギーの熱・運動エネルギーへの変換 Lorentz力で電流シートからプラズマを押し出し、電流シートを薄くすることで散逸効率をあげる=>非線形過程 リコネクションレート =単位時間につなぎ変わる磁束 =Vin/VA (無次元量) エネルギー解放率に比例

磁気リコネクションの理論モデル 1. Sweet-Parker Sweet-Parker (Parker 1957, Sweet 1958) 定常・一様抵抗 リコネクションレート  ∝電流シートの厚さw/L   ∝Rm-1/2 (Rm:磁気レイノルズ数) フレアのタイムスケールを説明するには遅すぎる

磁気リコネクションの理論モデル 2. Petschek Sweet-Parkerは電流シートが薄く、アウトフローによるガスのはきだしが非効率的なので遅い。 抵抗を局在化させ、アウトフローの出口を広げることでリコネクションを速くする MHD slow shockを介したプラズマの加速、加熱 フレアのタイムスケールは説明できる

Petschekリコネクションの問題点 MHD方程式の近似解。安定に存在するか? 抵抗の局在化=異常抵抗モデル。 粒子と波動の相互作用? microinstability ミクロな不安定のスケールは〜100cm、フレアのスケールは109cm。巨大なスケールギャップ

速いリコネクションの条件は? 速い=磁気レイノルズ数に依存しない Driven or Spontaneous? 大議論 MHDシミュレーションによる研究から分かったこと 一様な抵抗ではPetschek型(slow shockを伴う)は起きない (Biskamp) 抵抗が局在化すればPetschek型が起きる。ただし非定常? (Yokoyama & Shibata, Ugai) 異常抵抗の起源は?

磁気リコネクションの理論モデル: 最近の動向(MHDのみ) MHD方程式の厳密解(2次元、定常、一様的こう)(Craig, Henton)、パラメータによっては不安定(Hirose) 3次元リコネクション 非定常、プラズモイド (Tanuma, Ugai) 乱流、フラクタル(Tajima & Shibata, Lazarian)

リコネクションの速さは? リコネクションの証拠は主としてmorphology リコネクションレートの観測的測定=>リコネクションモデルの定量的な検証、リコネクション理論モデルに対する制限 コロナの磁場、インフローの観測は難しい 光球、彩層の観測(磁場、リボン)=>コロナのリコネクションの進行をマッピングしたものを観測できる。

Hα two ribbonsの(みかけの)運動とコロナの磁気リコネクション 外側の磁力線が次々とリコネクションしているため コロナ磁場、インフロー速度の直接測定は困難 足元の広がる速度と光球面の観測からリコネクションレートを測ることができる

リコネクションレートの導出方法 (Isobe et al. 2002) 磁束の保存 =E (電場) エネルギー解放率=ポインティングフラックス; Ly Lz Bfoot: 光球磁場 Vfoot: 足下の広がる速度 H:エネルギー解放率(erg/s), Ly, Lz:サイズ Vin:リコネクション流入流速度 Bc: コロナ磁場.