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1 地域社会の共通語化に関する 多変量解析モデル 情報処理学会 第 85 回 人文科学とコンピュータ研究会( CH-85 ) 2010 年 2 月 6 日(琉球大学) 横山詔一 * ・阿部貴人 * ( * 国立国語研究所)

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1 1 地域社会の共通語化に関する 多変量解析モデル 情報処理学会 第 85 回 人文科学とコンピュータ研究会( CH-85 ) 2010 年 2 月 6 日(琉球大学) 横山詔一 * ・阿部貴人 * ( * 国立国語研究所)

2 2 いまさら共通語化なんて,なにがオモロイの? 本研究は,山形県鶴岡市で 1950 年, 1971 年, 1991 年に国立国語研究所が実施した共通語化調 査 ( 以下,鶴岡調査 ) の新たな意義について考え る。 研究者のこれまでの関心は,おもに,地域社会 における言語生活の実態記述(記録)にあった。 約 50 年間にわたって蓄積された言語変化データ に別の角度からアプローチを試みることで,脳 科学や老年学などの分野にも寄与できるインパ クトのある知見を見いだせるかも。

3 3 なぁんてタテマエで,鶴岡は「酒井の殿はん」が いてはるええとこ。そこでお酒が飲めるからオモ ロイ。

4 4 山形県鶴岡市 江戸時代の庄内藩 藤沢周平氏の時代小説 海坂(うなさか)藩のモデル

5 5 縦断(実時間経年)調査と社会脳仮説のコラボ たとえば,鶴岡市で縦断的(経年的)に実施された共通 語化調査のグラフには,鶴岡市民の脳内に蓄積・記憶さ れている言語的記憶の平均像に関する経年変化が投影さ れている,と考えてみてはどうだろうか。 これは,(ある地域社会で生活する)話者集団の記憶装 置としてのレキシコンに関する仮説であるから,これか らは新たに「社会的レキシコン( social lexicon )仮説」 と呼ぶ。 レキシコンの生涯変化に関するデータは,加齢 ( aging )による認知症( dementia )や失語症 ( aphasia )の医学研究にも有用な知見を与える可能性 が期待される。

6 6 社会的レキシコンの生涯変化について レキシコンは言語形成期(以下,臨界期とい う場合もある)を過ぎると変化しない。 → レ キシコン固定説 レキシコンは臨界期を過ぎても,生涯を通し て変化し続ける。 → レキシコン変化説 どっちやろ?

7 7 横断調査:見かけ上の時間変化 グラフの縦軸は英語の動詞 sneak の過去形として sneaked ではなく snuck が 使用される率を,横軸は年 代層(世代)。 ここで「臨界期に獲得され たレキシコンは,臨界期を 過ぎると変化しない」とい う「レキシコン固定説」に 立つと, snuck の使用率が sneaked のそれを逆転した のは約 50 年前であったと推 定できる。 図 1 カナダ英語における語形交替の例 「 sneaked → snuck 」 【 Chambers ( 2006 )より】

8 8 グラフを見やすく拡大すると 図 1 カナダ英語における語形交替の例 「 sneaked → snuck 」 【 Chambers ( 2006 )より】

9 9 見かけ上の時間変化:レキシコン固定説に 立脚 その理由は次の通り。 snuck 使用率が 50 %を超え て sneaked を上回るのは 60 歳をすこし過ぎたあたり。 臨界期が 10 歳前後だとする と, 60 歳代の住民が臨界期 を迎えたのは,年齢から約 10 年をマイナスした約 50 年前。 その時期に,その地域社会 での snuck 使用率が 50 %を 超え,ちょうど臨界期を過 ごしていた住民の脳内にそ の痕跡が記憶された。 図 1 カナダ英語における語形交替の例 「 sneaked → snuck 」 【 Chambers ( 2006 )より】

10 10 レキシコン固定説の検証 さて,「言語習得期に獲得されたレキシコンは,言 語習得期を過ぎると変化しない」のであれば・・・ ある地域社会で生年がほぼ同じ調査対象者集団を経 年的に繰り返してランダム抽出した場合(あるいは 同一人物を追跡した場合)において, かなり長い時間が経過した後でも,同じ調査項目に 対しては,回答傾向がほぼ重なる。 つまり,変化のカーブは1本につながるはず。

11 11 レキシコン固定説を支持するデータ 図 2 は音韻項目 207 「ネコ: 非語頭におけるカ行有声化 の有無」の結果。 「生年」だけを説明変数と する S 字カーブが観測値と うまく一致。カーブは1本 につながる。 すなわち,同一生年の世代 の回答は変化なし。 「臨界期に獲得されたレキ シコンは,その後は変化し ない」というレキシコン固 定説が実時間調査によって 検証された典型例。 図 2 「ネコ」項目 207 の共通語化 【横山詔一・真田治子(印刷中)より】

12 12 定説:アクセントは音韻よりも変化し にくい これ,ホンマですか ? 鶴岡調査データはどうか?確認してみよう。 いちおう,もっともらしい多変量解析として, ロジスティック回帰分析を使ってみた。 以下の式 〔 3 〕で共通語化の S 字カーブが 1 本につな がるのか否かを統計的に検定。 log [ p / (1 - p) ] = a1× 生年+ a2× 調査年+ b 〔 3 〕

13 13 項目 207 「ネコ:非語頭におけるカ行有声化の有無」 Year of the birth □ 3rd 1991 △ 2nd 1971 ○ 1st 1950 ネコの音韻

14 14 項目 207 「ネコ:アクセント」 Year of the birth □ 3rd 1991 △ 2nd 1971 ○ 1st 1950 ネコのアクセント

15 15 項目 207 「ネコ:カ行有声化の有無とアクセント」 Year of the birth □ 3rd 1991 △ 2nd 1971 ○ 1st 1950 Accent Voicing 音韻とアクセント

16 16 「アクセントは音韻よりも変化しにくい」 というのは言語学界の定説ですが,ホンマ ですか?  同じ「ネコ」でも,音韻についての「非語頭に おけるカ行有声化の有無」は臨界期を過ぎると 変化しないのに,アクセントは生涯を通じて共 通語化が進む。  音韻の共通語化はレキシコン固定説を支持。  アクセントはレキシコン変化説を支持。  定説とは「一致しない」ようにも見える が・・・。  次に示す「旗(ハタ)」はアクセントだけでは なく音韻もレキシコン変化説を支持。

17 17 Year of the birth □ 3rd 1991 △ 2nd 1971 ○ 1st 1950 項目 210 「ハタ:非語頭におけるタ行有声化の有無」 旗(ハタ)の音韻

18 18 項目 210 「ハタ:アクセント」 Year of the birth □ 3rd 1991 △ 2nd 1971 ○ 1st 1950 旗(ハタ)のアクセント

19 19 項目 210 「ハタ:タ行有声化の有無とアクセント」 Year of the birth □ 3rd 1991 △ 2nd 1971 ○ 1st 1950 Accent Voicing 音韻とアクセント

20 20 レキシコン変化説を支持するほかのデータ そ の1 図 3 はアクセント 5 項目 「セナカ,ネコ,ハタ, カラス,ウチワ」の結果 から算出した共通語化率。 「生年」のほか「調査 年」も説明変数に加えた S 字カーブによる予測値 が1本のカーブにならな い。 つまり,「跳ね上がり現 象」が起きている。 成人期においても,同一 世代内で「共通語化」が 進行している可能性あり。 図 3 アクセントの共通語化 【横山詔一・真田治子(印刷中)より】

21 21 グラフを見やすく拡大すると 図 3 アクセントの共通語化 【横山詔一・真田治子(印刷中)より】

22 22 レキシコン変化説を支持するほかのデータ そ の2 図 4 は音韻項目 223 「エ ントツ:語頭の母音エに おける狭母音化の有無」 の共通語化率。 「生年」のほか「調査 年」も説明変数に加えた S 字カーブが 1 本のカー ブにならない。 つまり,「引き戻し現 象」が生じている。 成人後も,同一世代内で 「方言化」が進行してい る可能性。 図 4 「エントツ」の共通語化 【横山詔一・真田治子(印刷中)より】

23 23 グラフを見やすく拡大すると 図 4 「エントツ」の共通語化 【横山詔一・真田治子(印刷中)より】

24 24 まとめ:鶴岡調査の方法は横断法と縦断法の組合せ! 鶴岡調査のデザインは 第 1 次調査:住基台帳を用いてサンプルをランダム抽出 ( 577 名) 第 2 次調査:第 1 次のサンプルを追跡調査( 107 名)+新 たなサンプルをランダム抽出( 457 名) → 計 564 名の データ 第 3 次調査:第 1 次のサンプルを追跡調査( 53 名)+第 2 次のサンプルも追跡調査( 261 名)+さらに新たなサン プルをランダム抽出( 405 名) → 計 719 名のデータ 鶴岡調査のような調査手法は,生涯発達心理学や老年学に もあり,「コーホート系列法( cohort sequential method )」と呼ばれている。

25 25 鶴岡調査の方法は世界で最初のコーホート系列法! シアトル・プロジェクトのデザインとは  基本的に鶴岡調査や岡崎調査とまったく同じデザインの 調査が,米国のシアトル市で 1956 年から 7 年ごとに経年 的に行われている。追跡調査のほかに,毎回新たなサン プルを 500 名以上もランダム抽出。その台帳は医療保険 制度の名簿。  目的は「知能」の生涯変化を探る縦断研究。  K.W.Shaie が,この「シアトル研究」のプロジェクト・ リーダ。 コーホート系列法は時代効果,加齢効果,世代効果の 3 者 を分離可能な「もっとも効率的な調査法」として諸学界か ら高い評価を受けているが,まともな実査データは世界中 で鶴岡と岡崎の調査を除けば「シアトル研究」があるのみ 。

26 26 まとめ おまけ :なぜ横断研究は変化を過小評価するのか

27 27 調査本部となった鶴岡ホテル 第4回調査は 2011 年ごろが適切な時期 小説家 藤沢周平氏


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