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儒家と諸子百家 中国思想形成の過程 総合政策学部非常勤講師・ 愛知文教大学国際文化学部助教授 川田 健
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百花斉放・百家争鳴 春秋・戦国期 ー古代氏族制度の崩壊 ー生産力の飛躍的増大 ー都市国家連合から統一国家へ ・・・諸国が富国強兵を目指して一種の「自由 競争」状態へ 諸子百家:理想とする政治思想を掲げ、集団生活 を行ったり諸国に遊説して思想を売り込む
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十家九流 儒家・道家・法家・墨家・名家・兵家・農 家・陰陽家・縦横家・小説家 儒教経典(経書)を除く儒家と諸子の総称 九流ー小説家:とるにたらないもの
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儒家 孔子(前 551-479 )を祖とする学派 親子の情を天賦のものとし、家庭倫理を国 家統治理論に拡大する → それぞれ立場に応じた役割を果たす。 周代の宗法を基礎とする統治を理想のものと して、その制度や理論を伝える → 礼楽の秩序の重視 祭礼は祖先を祭るためのものー世俗主義
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道家 老子を端とする、「無為自然」を主要テーゼとす る学派 (まとまった「学派」としては存在しない) 「無為」ー一切の人智を否定し、自然の法則に逆 らわない生き方をする。 乱世に対する不安 ー文明・人智・名誉の否定。 政治学としては小国主義。 「生を全うすること」が目標 万物の根源を「道」と規定し、それに合致した生 き方を目指す。
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墨家 墨翟(前 470? - 390? )が開き、それを受け 継ぐ指導者「鉅子」に導かれて生活する集 団 差別/煩瑣な礼/奢侈/攻撃を禁じる (兼愛説/非礼/節用/非攻) 宗教的な天「鬼神」の存在を認め、それを 崇拝する
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法家 商鞅 ( ?- 前 338? ) などの採用した富国強兵、 君主専制の政策がベース 韓非子 ( ? -前 234? ) が大成 法を厳格に遵守させると同時に、それの裏 付けである賞と刑(二柄)の大権を絶対に 臣下に渡さない。 「君主と人民の利益は反する」
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儒家VS道家 教育について [儒家]君主は人民の儀表:「先覚者」として積 極的に民を教導する。 [道家]人智は争乱の根源。 「差異」について [儒家]社会的役割に応じた生き方を遵守するこ とが重要。 → 「礼」の重視 [道家]差異は人智の所産で絶対的なものではな い
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儒家VS法家 君主と民の関係:「民=自立できない存在」 → 両者共通。 [儒家]君主は民の養育のために天から命ぜられた地位 -- 民 本主義 教化によって秩序を保たせる。 [法家]君主は絶対的存在で人民は国家の道具。 情か法か [儒家]-法網と刑罰の必要性を否定するものではないが、 教化によって悪を「恥」と考えるようにさせなければ、法網 だけあっても秩序は保てない。 [法家]-法は秩序と君主権力の源泉。ここにはいかなる情 を介在を許さず、例外もない。 理想の政治状態 [儒家]古聖王によって全て完備されているーー尚古主義 [法家]社会背景の違う時代の法に固執することは無意味
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儒家VS墨家 「愛」について [儒家]人の中で親子の情こそがその根源。全 ての「愛」に優先する。 [墨家]儒家の愛は差別愛。全てのものを平等 に愛することによって争乱はなくなる。 「礼」について [儒家]人倫を秩序づける基本。形にすること によってその大切さを教える。 [墨家]差別を助長し、無用な支出を促すもの。
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未来のグランドデザインをどうする か 儒家ー「情」の復権 → 聖人の治世と家族倫理に基 づくを理想の国家像をいにしえに想像し、それを モデルとして「本来の情」を取り戻させるべく教 化する。 道家ー原始回帰と統治の放棄 → 経済発展、交流を 廃して人智の発展を防ぎ、不平等が生じないよう にする。 墨家ー宗教的を紐帯とした閉じられたコミュニ ティを創設し、その範囲で生活を完結させる。 法家ー進歩を不可避なものと考え、君主専制の強 力な権力を創設して秩序の安定を図る。
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諸子のその後(1) 道家 漢代初期に「黄老思想」として流行。政治思想と しては見られなくなるが、知識階層の「隠遁」へ の憧れから儒家の対を為す思想として存在 ★民間宗教、仏教などの影響を受けつつ、老子を 「太上老君」として神格化する道教に発展 ★本体論(宇宙論)は朱子学に影響を与え る
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諸子のその後(2) 法家:統治理念としては採用されず、秦の 始皇帝は「名教の罪人」とされるが、統一 帝国維持のためには必要な考えー「陽儒陰 法」 墨家:生活集団として現実と妥協せざるを 得なかった。ーやがて分裂・消滅 ★宗教性が強い、民間信仰、道教に一定の 影響 ーー思想としては清末までほとんど埋没
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儒教の国教化 董仲舒 (前 176?-104? ) の献策 漢朝に統一国家としての基本理念を提供 陰陽五行説を中心とした一つの「系統的世 界観」を作り上げ、儒教倫理と融合させる。 → 「諸子の思想」の吸収の上に立つ新しい儒 家思想
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参考文献 赤塚忠篇( 1968 ),『思想概論』,(『中国文化叢書』2), 大修館書店 赤塚忠篇( 1968 ),『思想史』,(『中国文化叢書』3),大 修館書店 老子 小川環樹訳( 1973 )『老子』 (中公文庫),中央公 論社 楠山春樹( 1984 ),『老子 : 柔よく剛を制す』,集英社 東大中哲研究室( 1986 ), 『中国思想史』 ,東京大学出版 日原利国篇( 1987 )『中国思想史』上,ぺりかん社 日原利国(篇 1987 )『中国思想史』下,ぺりかん社 韓非子 金谷治訳( 1994 )『韓非子』 1-4 (岩波文庫), 岩波書店 『新釈漢文大系』シリーズ(明治書院)
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