Download presentation
Presentation is loading. Please wait.
Published byなお みやくぼ Modified 約 8 年前
1
相殺 名古屋大学大学院法学研究科教授 加賀山 茂
2
相殺の意義 相殺とは, 2 人の者が互いに相手に対して同 種の債権をもっている場合に,一方から相手 方に対する意思表示によってその債務を対当 額で消滅させることをいう 第 505 条〔相殺〕 二人互ニ同種ノ目的ヲ有スル債務ヲ負担スル場合 ニ於テ双方ノ債務カ弁済期ニ在ルトキハ各債務者 ハ其対当額ニ付キ相殺ニ因リテ其債務ヲ免ルルコ トヲ得但債務ノ性質カ之ヲ許ササルトキハ此限ニ 在ラス ② 前項ノ規定ハ当事者カ反対ノ意思ヲ表示シタル 場合ニハ之ヲ適用セス但其意思表示ハ之ヲ以テ善 意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
3
設例 AがB銀行に 50 万円預金をし,BがA に対して 80 万円貸し付けた場合に,A 又はBが相殺の意思表示をすれば,A のBに対する 50 万円の債権が消滅し, AのBに対する 30 万円の債務が残るこ とになる。 相殺をする側の債権を自働債権,される側 の債権(反対債権)を受働債権という。例 えば, B が, A の 80 万円の預金債権に対し て相殺する場合,貸金債権 50 万円が自働債 権,預金債権 80 万円が受働債権である。
4
相殺の機能 相殺が認められるのは,A・B双方がその債 権を別々に取り立てるという不便を除くため と公平のためであると説かれている。 すなわち,Aが破産した場合を考えると,BはA に対し 50 万円全額支払わなければならないのに, Bの 80 万円の債権は,債権額に応じて配当される にとどまって不公平であり,AB相互間に債権債 務が成立した時から,対当額において債権が決済 されたものとして取り扱うのが公平であるという。 したがって,BはAの財産状態が悪化しても, 50 万円については相殺の意思表示をすれば,それだ けで簡単に,かつ確実に他の債権者に先立って回 収できるから,相殺は債権担保の役割も果たすこ とになる。
5
相殺の要件 相殺適状 同種の債権(実際には金銭債権がほとんどである)が債権者・債 務者間に相対立して存在すること。 双方の債権ともに弁済期にあるとき。ただし,相殺しようとする 者は,相手方に対して負っている債務,すなわち相殺される債権 (受働債権)についての期限の利益を放棄すれば相殺できるから, 相殺する債権(自働債権)さえ弁済期にあれば相殺できることに なる(民法 505 条 1 項)。 相殺が許されない場合 相殺禁止の特約があるとき(民法 505 条 2 項)。 互いに労務を供給する債務のように,相殺をして消滅させたので は意味のない債権の場合。 受働債権を消滅させずに現実に支払を確保する必要があるとき (民法 509 条, 510 条,商法 200 条 2 項,労働基準法 17 条,船員法 35 条など)。 自働債権が差押えを受けているなど処分が禁止されているとき (ただし民法 511 条参照)。
6
相殺の構造とその効力
7
相殺の担保的効力( 1/2 ) 債権者と債務者が相対立する債権を有する場合の最も簡 便な回収方法は,相殺である。この相殺が,担保の実行 という効果をもたらしている。 たとえば, A に対して 50 万円の債務を負っている B が, A に 100 万円 融資した場合には, B は相殺によって 50 万円は回収しうる。 しかも, A の債権者 C が A の B に対する債権を差し押さえても,判例 (最大判昭 45 ・ 6 ・ 24 民集 24 巻 6 号 587 頁)は,民法 511 条の解釈 として, B の A に対する債権が,差押え以前に取得したものであれ ば, B は C に対して相殺をもって対抗しうるとしている。 A の B に対する債権については, B , C とも債権の効力として平等に 掴取力をもっているはずであるが,上記のごとき相殺によって, B は C に優先して回収しうるわけであり,したがって, A の B に対す る債権が, A にとっては担保財産となっており,相殺が担保実行 の方法となっているわけである。 銀行のごとき金融機関は,預金をしている者に融資したり,融資 の一部を預金させたり(歩積み・両建て)するのが通常であるが, かかる場合には,そのような意味で,預金が担保財産となってい るのである。
8
相殺の担保的効力( 2/2 ) なお,預金者の債権者が預金を差し押えた場合に, 銀行が相殺をもって対抗しうるための要件として, 銀行の貸金債権(自働債権)に弁済期が到来してい ることを要するかがかつて論争されたが,銀行は, これに備えて,銀行取引約款( 5 条)により預金の差 押え等,債務者に信用不安が生じた場合に貸金債権 は当然にまたは銀行の請求によって弁済期が到来す るものとし,差引計算(相殺)を行う( 7 条)として いる。 これを相殺予約といっている。これも預金を担保財 産化することを狙いとしているが,上述の判例は, かかる予約が預金の差押債権者に対しても効力を有 することを認めており,相殺予約に一種の質権設定 のごとき効果を与えている。
9
定期預金における相殺 予約 ( 1/3 ) 銀行が貸金を行なう際には,債務者に相応す る金額の預金を求めるのが普通であり,少な くとも,貸金を当初は,その銀行に預金させ ることを貸金の条件とすることが多いとされ ている。 銀行としては,貸金と同額の預金を預かって いれば,それは,まさに,預金を質にとって 入るようなものであり,いざという時は,優 先的に貸金の返済に充当しようと考えたとし ても,それほど不思議ではない。
10
定期預金における相 殺予約 ( 2/3 ) 相殺予約の第三者効の否定 (最大判昭 39 ・ 12 ・ 23 民集 18 巻 10 号 2217 頁)。 甲( C )が乙( A )の丙( B )に対する債権を差し 押えた場合において、丙( B )が差押前に取得し た乙( A )に対する債権の弁済期が差押時より後 であるが、被差押債権の弁済期より前に到来する 関係にあるときは、丙( B )は右両債権の差押後 の相殺をもって甲( C )に対抗することができる が、右両債権の弁済期の前後が逆であるときは、 丙( B )は右相殺をもって甲( C )に対抗すること はできないものと解すべきである。
11
定期預金における相 殺予約 ( 3/3 ) しかし,昭和 45 年,最高裁は,従来の判例を変更した (最大判昭 45 ・ 6 ・ 24 民集 24 巻 6 号 587 頁)。 相殺の予約の効力 銀行の貸付債権について、債務者の信用を悪化させる一定の客観 的事情が発生した場合には、債務者のために存する右貸付金の期 限の利益を喪失せしめ、同人の銀行に対する預金等の債権につき 銀行において期限の利益を放棄し、直ちに相殺適状を生ぜしめる 旨の合意は、右預金等の債権を差し押えた債権者に対しても効力 を有する。 相殺の担保的効力 債権が差し押えられた場合において、第三債務者が債務者に対し て反対債権を有していたときは、その債権が差押後に取得された ものでないかぎり、右債権および被差押債権の弁済期の前後を問 わず、両者が相殺適状に達しさえすれば、第三債務者は、差押後 においても、右反対債権を自働債権として、被差押債権と相殺す ることができる。
Similar presentations
© 2024 slidesplayer.net Inc.
All rights reserved.