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◎セフェム系 セフェム系は、その基本骨格として図12 − 3に示すセファ ロスポリン系とセファマイシン系があり、構造と細菌に対す る作用機序はペニシリン系と類似している。抗菌作用は強く て抗菌スペクトルが広く、副作用も比較的少ない使い易い抗 菌薬である。セフェム系の薬剤は非常に多数開発され利用さ れているが、抗菌活性の一般的特徴と開発経緯などから、便 宜的に3種類に分類される(表12 − 4)。第一世代から第 二世代や第三世代となるに従い、抗菌スペクトルが拡大され β- ラクタマ − ゼに対して安定になっている。しかし、第二世 代や第三世代のセフェム剤は、第一世代に比べグラム陽性球 菌に対する抗菌活性が弱まる傾向にある。 ” 感染症治療薬の基 礎 ” の項でも述べたが、広域性の(抗菌スペクトルの広い)抗 菌薬を乱用することは耐性菌の発生を増加させるだけでなく 、種々の有害な現象を引き起こす可能性があるので、できる だけ疾病の起因菌にのみ有効な狭域性抗菌剤の使用が望まし い。
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☆第一世代セフェム系:グラム陽性菌に対して良好 な抗菌活性を示し、グラム陰性菌に対しても中程度 の抗菌性を有する。また、大腸菌、肺炎桿菌にも有 効である。ペニシリダ − ゼには安定であるが、セファ ロスポリナ − ゼにより分解される。セファゾリン:セ ファレキシン: ☆第二世代セフェム系:グラム陰性菌に対する抗菌 力が第一世代よりも強いが、第三世代よりは弱い。 セファクロ − ル: セフメタゾ − ル:セフォキシチン : セフォチアム: ☆第三世代セフェム系:グラム陰性菌に対する抗菌 力が増強され、緑膿菌などにも有効な薬剤もある。 β- ラクタマ − ゼに高度耐性を有する。ただし、グラム 陽性球菌に対する抗菌力は第一世代より劣る。
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◎その他の β- ラクタム系抗生物質: ☆カルバペネム系: イミペネム impenerm は広い抗菌スペクトルと強い抗菌力を有して おり各種重症感染に用いられるが、副作用と して、けいれん発作がある。また、腎排泄と 腎毒性を減らすために、イミペネム impenerm /シラスタチン cilastasin 合剤( チエナム)としても利用される。 ☆モノバクタム系: アズトレオナム aztreonam (アザクタム):緑膿菌を含むグ ラム陰性菌に強い抗菌力を有し、 β- ラクタマ − ゼにも安定である。
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◎セフェム系抗生物質も使用上の注意点: セフェム 系抗生物質の使用にあたっての注意する点は、基本 的にはペニシリン系と同じである。副作用の発生頻 度はペニシリン系よりも低い傾向にあるが、下痢を ともなう偽膜性腸炎や腎機能障害を起こす薬剤があ る。セファマンド − ル、セフメタゾ − ル、セフォテタ ン、モキサラクタム、セフォペラゾンなどでは、ア ルコ − ル耐性の低下がおこり飲酒により気分が悪くな ったり顔面紅潮、頻脈などがおこることがある(ア ンタビュ − ス作用)。耐性菌の蔓延と菌交代症を防ぐ ためにも、特に、第三世代のセフェム系抗生物質の 乱用を防止することが望まれる。
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◎アミノグリコシド系 アミノ基を持つ糖構造を有するので(図12 − 4 )、アミノグリコシド(アミノ配糖体)系と呼ばれ 、構造的に極性が高い。抗菌力は強力であるが消化 管から吸収されにくく、脳脊髄液への移行が少ない 。また、容易に腎臓から排泄されるという特徴を持 っている。主に注射や外用で使用されるが、消化管 内感染症に対して内服で用いられる場合もある。 アミノグリコシド系薬剤は細菌のリボソ − ムに作用 して、蛋白合成を阻害し殺菌的に働く、特に、グラ ム陰性菌に対して強い抗菌力を持っており緑膿菌や 抗酸菌(結核菌、癩菌)などに有効な薬剤がある。 表12 − 6に示すように、抗菌活性の特徴から3群 に分類される。
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◎使用上の注意: アミノグリコシド系抗生物質は、程度の差はあるものの、 いずれも不可逆的な第8脳神経障害(前庭・聴覚機能障害) や腎毒性、神経筋ブロック(呼吸筋麻痺)が起こりやすい。 腎機能の低下している者やその可能性のある者(高齢者、未 熟児、新生児など)への投与は慎重に行なう。薬物の血中濃 度を測定しながら投与量を検討し、腎機能検査や副作用の初 期症状(高音の耳鳴りや頭痛など)に気を配る事が必要であ る。 ☆ストレプトマイシン streptomycin : ☆ゲンタマイシン gentamicin 、トブラマイシン toburamycin : ☆アミカシン amikacin 、ネチルマイシン netilmicin 、イセパマ イシン isepamicin : ☆フラジオマイシン fradiomycin :
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◎使用上の注意: アミノグリコシド系抗生物質は、程度の差は あるものの、いずれも不可逆的な第8脳神経 障害(前庭・聴覚機能障害)や腎毒性、神経 筋ブロック(呼吸筋麻痺)が起こりやすい。 腎機能の低下している者やその可能性のある 者(高齢者、未熟児、新生児など)への投与 は慎重に行なう。薬物の血中濃度を測定しな がら投与量を検討し、腎機能検査や副作用の 初期症状(高音の耳鳴りや頭痛など)に気を 配る事が必要である。
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◎マクロライド系 macrolides 細菌のリボソ − ムに作用し、蛋白合成を阻害することにより 静菌的に作用する。組織移行性に優れ、他群の抗生物質(リ ンコマイシン系を除く)との交差耐性が発生しにくく、アレ ルギ − や重篤な副作用の発生も少ない点が優れている。ブド ウ球菌や化膿レンサ球菌、肺炎球菌などのようなグラム陽性 菌に強い抗菌力を有しており、ペニシリン耐性菌あるいはア レルギ − などでペニシリン類を使用できない患者に有用であ る。また、マイコプラズマやクラミジア、スピロヘ − タなど にも抗菌活性が認められる。経口投与で消化管から吸収され るが、胃液で分解されるので腸溶性を持たせた剤形で服用さ せる。また、吸収が食事の有無により影響を受け易いことが 知られている。 構造的には、大環状ラクトンに糖が結合し た特徴を持っており、代表的な薬剤であるエリスロマイシン の構造を図12 − 4に示す。また、主な薬剤を表12 − 7に載 せる。
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◎使用上の注意: 副作用としては、アレルギ − 反応や胃腸障害、一 過性の聴器障害などがある。 ☆肝臓での薬物代謝 酵素を阻害するので、肝代謝を受ける他剤の作用を 増強することがある。例えば、テオフィリンやカル バマゼピン、ワルファリン、シクロスポリン、ジゴ キシンなどがあるので注意を要する。また、テルフ ェナジンとの併用で、不整脈がおきることがあり併 用禁忌である。 エリスロマイシン erythromycin : クラリスロマイシン clarithromycin : ロキシスロマイシン roxithromycin : ロキタマイシン rokitamycin :
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◎テトラサイクリン系 作用機序は、細菌のリボソ − ムに作用することによる蛋白 合成の阻害である。その作用は基本的には静菌的であるが、 高濃度では殺菌的にも作用する。かつては、各種感染症にお いて汎用されていたが、耐性菌の増加と他の優れた抗菌剤の 開発により、現在では使用頻度は高くない。 基本構造式を 図12 − 5に示す。このような多環の類似構造を有するテト ラサイクリン系薬剤は広い抗菌スペクトルを有し、グラム陽 性菌やグラム陰性菌、マイコプラズマ、スピロヘ − タ、リケ ッチア、クラミジアなどに有効である。消化管からの吸収性 と体組織への移行が優れており、主に経口投与で用いられる 。腎排泄と胆汁排泄の両者の排泄経路があるが、ミノサイク リンでは脂溶性が高いため脂肪組織への蓄積がおきる。局所 投与では刺激作用と感作性の問題があるので、眼の局所投与 以外は好ましくない。また、静脈内投与では血栓性静脈炎が 誘発される場合がある。
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◎使用上の注意 Ca,Mg,Fe,Al などの金属イオンとキレ − ト化合物を形成し、消 化管からの吸収率が低下するので、これらを含有する制酸剤 や鉄剤などとは同時間帯に摂取しないようにする。 ☆副作 用に胃腸障害があるが、これは食物と一緒に服用することで 発生を低下させることができる。また、肝毒性や腎毒性の他 に石灰化組織に対する作用として、不可逆的歯牙の着色やエ ナメル質の形成阻害が認められ、新生児や乳幼小児あるいは 妊婦への投与は注意を要する。さらに、光線過敏症や菌交代 症が現われる場合もある。 テトラサイクリン tetracycline ( アクロマイシン V, TC) 、 オキシテトラサイクリン oxytetracycline ( テラマイシン、 OTC) :ミ ノサイクリン minocycline ( ミノマイシン、 MINO) : ドキシサイクリン doxycycline ( ビブラマイシン、 DOXY) :
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◎リンコマイシン系: リンコマイシン lincomycin ( リンコシン、 LCM) と その誘導体であるクリンダマイシン clindamycin ( ダラシン、 CLDM) ◎クロラムフェニコ − ル系: クロラムフェニコ − ル chloramphenicol ( クロロマ イセチン、 CP) ◎ポリペプチド系 ポリミキシンB polymyxin B ( 硫酸ポリミキシン B 、 PL) : コリスチン colistin ( コリマイシン、 CL) :
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◎その他 ☆ホスホマイシン fosfomycin ( ホスミシン、 FOM) : ☆バンコマイシン vancomycin (VCM) :糖ペ プチド性抗生物質で、主にグラム陽性菌に対 して抗菌活性を持っている。消化管からは吸 収されないので、内服で骨髄移植時の消化管 内殺菌に、また、点滴静注でMRSA感染症 の治療に用いられる。聴器毒性や腎毒性など の副作用が出現しやすいので、薬物血中濃度 を測定しながら投与量を調節して副作用の発 生を防ぐ必要がある。
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