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ITERにおける科学研究 「ITER燃焼プラズマ研究の新領域」 平成16年3月30日 原研 菊池 満 東大 吉田善章 九大 図子秀樹

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1 ITERにおける科学研究 「ITER燃焼プラズマ研究の新領域」 平成16年3月30日 原研 菊池 満 東大 吉田善章 九大 図子秀樹
日本物理学会シンポジウム 「ITER燃焼プラズマ研究の新領域」 ITERにおける科学研究 平成16年3月30日 原研 菊池 満 東大 吉田善章 九大 図子秀樹

2 4つの力で2番目に弱い力”電磁気力”によって1億分の1のサイズで高温プラズマを閉じ込め
ITER計画:地上に太陽の実現を目指す21世紀の人類最大の挑戦の1つ 地上の太陽は、太陽の1億分の1 4つの力で2番目に弱い力”電磁気力”によって1億分の1のサイズで高温プラズマを閉じ込め 6.2m 14m 物理量  ITER  太陽    比         プラズマ 外径   m 140万km ~1億分の1 中心温度 2億度 1500万度 10倍 中心密度 1020m m-3 1兆分の1 中心気圧 ~5気圧 ~1012気圧 千億分の1 発熱密度 600kW/m3 0.3W/m3 2百万倍 反応 DT反応 PP反応 質量  g x1030kg 6x1033分の1 燃焼時定数 200秒 100億年  1015分の1 140万km 自然界の4つの力で最も弱い力”重力”によって高温プラズマを閉じ込め Hans Bethe 1億5千万km -1-

3 ITERとアカデミーとの関わり ・プロジェクトは「複合」という方向性(縦糸)で動いている。 ・本来アカデミーが大事にすべき横糸が何か.
・真剣に取り組むべき問題点を「要素還元」する努力が必要。 ・縦糸であるITERが,どの程度学界を刺激できるか. ・ITERの命運を握るものは何なのか? ITERという太い縦糸は「新しい横糸」を必要としているのか、それとも「既成の横糸」で済むのか? 吉田善章 -2-

4 開発 宇宙開発 高エネルギー科学 学術 ITERとアカデミーとの関わり 具体性/個別性/複合 核融合炉 開発プロジェクトとアカデミーとの関係
パラダイムシフトは必要か? これまでの核融合研究 高エネルギー科学 学術 抽象性/普遍性/要素還元 -3-

5 ITER計画(縦糸)の2つの側面 到達し得る技術目標を定めそれを着実に達成する。 [ 段階的開発方式]
  [ 段階的開発方式] 2. 核融合炉に必要な未踏の技術の開発に挑戦する。   [ ブレークスルー] -4-

6 アカデミー(横糸)の2つの側面 分野学と基礎科学 1. 普遍性 ⇔ 共通性を見い出す 2. 独自性 ⇔ 研究対象としての特異性 - 5 -
      分野学と基礎科学 1. 普遍性 ⇔ 共通性を見い出す 2. 独自性 ⇔ 研究対象としての特異性 岸本泰明 H11,戦略分科会 - 5 -

7 「ITERプラズマがもたらす新領域とは何か?」
本シンポジウムの課題設定 「ITERプラズマがもたらす新領域とは何か?」    閉じ込めと輸送:福山*、洲鎌、矢木、岸本    定常運転   :花田*、藤田、前川    高ベータ化  :小関*、高瀬、小野、杉原    計測     :笹尾*、草間、居田  ○ITERとこれまでのプラズマの違いは以下の2点   ・α粒子による自己加熱   ・サイズの差による異なる無次元量 -6-

8 ITER (国際熱核融合実験炉) ● ★ ▲ ● ● ▲ ★ ★ ★ ★ ★ ● ▲ ★ ●:ITER高Q運転 (新たな領域)
★:核融合発電実証プラント  (最終目標) 無次元量で見たITER、発電実証プラント ITERによってもたらされる新たなパラメータ空間 高自己加熱率 fa> 0.67 (Q >10) 高磁気レイノルズ数S ~ 1010 高a/ri ~ 高ベータ > 5% 高自発電流fbs ~ 80% 低衝突度 v* ~ 10-2 発電実証プラント:デイスラプション頻度〜1回/2年以下 -7-

9 複雑系としての燃焼プラズマ 基本構造としての線形科学 21世紀の物理学:複雑系科学 − 生命の機構や社会現象の解明 新しい横糸? -8-
遠平衡統計力学 21世紀の物理学:複雑系科学 − 生命の機構や社会現象の解明 多階層・複合系 としての 核融合プラズマ 新しい横糸? カオス <初期値ヘの鋭敏性> −ディスラプション ・磁場の無秩序化 ・カオスの縁 ・ニューラルネット 基本構造としての線形科学 アトラクター <散逸系の落ち着き先> −プラズマの安定保持 ・平衡点/遷移 ・リミットサイクル(ELM) ・ストレンジアトラクタ <新古典理論>無衝突域(v*<<1)微小散逸 磁場方向:自発電流/回転,NB/EC/LHCD 磁場直交: 熱輸送係数cNC ,粒子流VNC <線形安定性- プラズマと波> 輸送:ITG,ETG,CTE,GAM,CDBM,KBM MHD:K-B,TM,AE, <平衡理論> 磁気面:エルゴード定理、GS方程式 運動学的平衡:Canonical Equi. 突発現象 <拮抗からの開放> −非線形DTM崩壊  磁気Re数 − 乱流−  ETG ストリーマー −太陽フレアー −じんましん? 自己組織的臨界状態 −分布の硬直性/Bohm輸送 ETGストリーマ セミグローバルITG 砂山の雪崩 1/f2 則 冪乗則(地震、都市人口、単語使用頻度) <構造形成> ・波数空間カスケード (乱流揺動) −帯状流、帯状場 -8-

10 閉じ込め状態の多様性とITERの燃焼制御
- 9 -

11 ITER (国際熱核融合実験炉) ITERの目標設定 :Q>10誘導 到達し得る技術目標を定め着実に達成する。 [ 段階的開発方式]
  [ 段階的開発方式] 真空容器 遮蔽ブランケット ITERの目標設定 :Q>10誘導 プラズマ 閉じ込め改善度 HH Ip=15MA, Q=50 閉じ込め改善(~10%) により可能 核融合出力(MW) 閉じ込め裕度20%を持って可能 Ip=15MA, Q=10 ダイバータ ポロイダル 磁場コイル 中心ソレノイドコイル (1) :合計110MWまで増設の可能性がある。 項目 値 全核融合出力         500MW Q(核融合出力/外部加熱パワー)   ≧10  平均 14MeV中性子壁負荷    ≧0.57MW/m2 プラズマ誘導燃焼時間         ≧400秒 プラズマ主半径(R)         6.2m    プラズマ副半径(a)        2.0m プラズマ電流(Ip)     15MA      5.3T 加熱・電流駆動パワー     73MW(1) -10 -

12 ITERの閉じ込め性能(ELMy Hモード)
ITERは、表面輸送障壁(ETB)をもつELMy Hモードで運転 “次元解析”という標準手法という”既存の横糸”を超えるものは必要となるか? -11 -

13 1.ITERはGyro規格半径の新しい領域をもたらす
乱流輸送,MHD(NTM等)の物理が異なる領域に遷移するか?連続か? a/ri Ti(keV) ITER(D) ITER(T) JT-60/JET ASDEX-U ricrit Gyro-Bohm? Bohm? 川は流れているか? ITER/ 発電炉クラス  a/ri = JT-60/JET a/ri = 5.3T/2.0m ASDEX-U a/ri = Z. Lin et al. ‘02IAEA GK シミュレーション ITG乱流,無衝突・ 無外部回転 4.2T/0.8m 3.4T/1.0m Bt/a=2.5T/ 0.5m 2m 4m 6m 8m -12-

14 2. プラズマの熱輸送は自己組織的臨界状態か?(複雑系としての共通性)
L-modeにおける輸送(熱流束と温度勾配の関係)が示す強い非線形性や、バースト状粒子束の観測、電子系シミュレーションにおけるStreamerの発見等は、非拡散性輸送を示唆? 砂山の物理:砂山の崩れと臨界勾配 砂山は臨界状態まで蓄積されある高さと勾配を持つ。 Self Organized Criticality (SOC) 「自己組織的臨界状態」仮説:多数の要素が相互作用しているような系は自ら臨界状態へ遷移する/Per Bak 井戸,HIBP,JFT-2M,2004 バースト状フラックス 1/f2 spectrum 砂山の雪崩:頻度と規模の関係は冪乗則に従う。 熱流束 温度勾配 臨界温度勾配モデル (dT/dr) crit 電子ストリーマ 角度方向 マグニチュード(mb) - LogE 1000 100 10 1 0.1 0.01 発生回数/年 地震の強度と頻度の相関 1/ f1.5 spectrum 地震:頻度と規模の関係は冪乗則に従う。 (Gutenberg-Richter則) 径方向 井戸村,ETG シミュレーション,2004 -13 -

15 3. 散逸系の落ち着き先:アトラクター(複雑系としての共通性)
現実のプラズマ状態は、不安定性が成長しているというより、非線形過程により揺動が存在する状態が自然な状態(落ち着いている)である。その相空間構造を調べることが重要。 平衡点 リミットサイクル トーラス ストレンジアトラクタ 相空間構造 Rossler attractor 波形 平衡、遷移 ELM? TAE? 乱流輸送? 大山 武智 宮戸 -14 -

16 閉じ込め状態の多様性と構造形成 分布形成 -15 - 7.4m ポート 遮蔽ブランケット 真空容器 高周波アンテナ ポートリミター
 真空容器  高周波アンテナ ポートリミター  第1壁   ダイバータ板 セパラトリックス 7.4m 分布形成 -15 -

17 Pa=3.4MeV<sv>ndnt
燃焼プラズマにおける構造形成 流れ・ 回転 構造 静電的・電磁的揺動 外部制御系 加熱・電流駆動 プラズマ表面・壁 開 放 系 磁場構造 圧力構造    温度構造 電流駆動 NC回転 流れの自己生成 Zonal流 NC電流 電流の自己生成 Zonal場 波数カスケード 空間緩和 熱流束、粒子束 非線形ルIプ 回転駆動 熱起動力dP/dr,dT/dr 加熱 ExBシア カスケード増幅 圧力の自己生成 α加熱 Pa=3.4MeV<sv>ndnt Y.Koide, IAEA1994 内部輸送障壁(ITB) 臨界状態の崩れがもたらす? -16 -

18 流れが引き起こす構造 E x B シアー流による乱流の分断と相関長の縮小 -17 - Lc=20cm Lc=0.4cm
L-modeは相関長が長い ITBは相関長が50分の1 E x B シアー流による乱流の分断と相関長の縮小 Nazikian, Shinohara, to be submitted to Science: Correlation reflectometer -17 -

19 Pa=3.4MeV<sv>ndnt
ITERの燃焼制御 誘導運転での先進運転(ITB有)の燃焼制御 外部制御系 加熱・電流駆動 開 放 系 圧力構造  温度構造 圧力の自己生成 α加熱 Pa=3.4MeV<sv>ndnt ELMy Hモードの燃焼制御は概ね可能。 Y. Shimomura et al., 非線形ルIプ 磁場構造 流れ・ 回転 構造 非線形ルIプ NC電流 電流の自己生成 Zonal場 NC回転 流れの自己生成 Zonal流 静電的・電磁的揺動 熱流束、粒子束 開 放 系 プラズマ表面・壁 -18 -

20 ITER燃焼の連続化には自発電流の利用が重要
無衝突領域(n*<<1)で、捕捉粒子の径方向軌道幅が大きいことによる速度分布関数の歪みが衝突緩和する時に発生する磁場方向流れが電流を作る。 LHCD - 19 - *:ITERのNBIは中心電流駆動のみ

21 ITERのQ=5定常運転運転 (A Polevoi , private communication)
プラズマ電流  Ip  9MA トロイダル磁場 Bt 5.175T 主半径 R 6.35m 小半径 a 1.87m 楕円度 ka 1.9 三角度 da 0.5 密度(1019m-3) <ne> 5.3 Greenwald因子 n/nG 0.67 自発電流割合 Ibs/Ip 0.44 規格化ベータ値 bN 2.73 ヘリウム割合 <nHe>/<ne> 1.3% q(0)/qmin 1.5/1.4 閉じ込め改善度 HHy2 1.52 加熱パワー PNBI 33MW PEC 20MW - 20 -

22 Pa=3.4MeV<sv>ndnt
高自発電流燃焼プラズマの構造形成 流れ・ 回転 構造 静電的・電磁的揺動 外部制御系 加熱・電流駆動 プラズマ表面・壁 開 放 系 磁場構造 圧力構造  温度構造 NC回転 流れの自己生成 Zonal流 熱流束、粒子束 非線形ルIプ 圧力の自己生成 α加熱 Pa=3.4MeV<sv>ndnt NC電流 電流の自己生成 Zonal場 圧力勾配と自発電流の強い結合により電流分布の大部分が自律的に決まる。 =>ITERでは自己加熱が加わり、一層自律的な振る舞い   小ジャイロ半径であることも性質を変える要因 JET DIII-D ASDEX-U JT-60U 維持時間(秒) 自発電流割合⌒% - 21 -

23 ITER燃焼と核融合炉の デイスラプション回避 -22-

24 ITERがもたらす新しい磁気再結合領域 無衝突再結合過程 h 無衝突m=1 キンク磁気再結合 T. Matsumoto, IAEA2000
1019 1020 1021 105 104 103 102 101 100 電子温度 eV 電子密度  m-3 圧縮性主要 (rs > de ) 電子慣性主要 de / rs =5 de / rs =1.75 5T ITER 電子慣性項、電子圧縮性 h 無衝突m=1 キンク磁気再結合 T. Matsumoto, IAEA2000 線形崩壊現象 非線形加速現象 注:シミュレーションでは衝突効果は入って無い。 -23-

25 ITERがもたらす新しい磁気再結合領域(突発現象)
磁気レイノルド数の違いが引き起こす非線形ダブルテアリングモードの突発現象Y. Ishii et al., PRL(2002) ITERの磁気Reynolds数(Lundquist数)は、大型トカマクの1桁上 r/a (I) t=300 (III) t=580 (II) t=500 AUG ~107、JT-60/JET ~ 108、ITER ~ 109 磁気Reynolds数 Sp = t / tAp 磁場拡散時間 tR=m0a2/h アルベン時間 tAp=aonemi)0.5/p KE 時間/ポロイダルアルベン時間 磁気エネルギー 運動エネルギー Sp=5x104 Sp=1x105 Sp=2x105 Sp=3.3x105 エネルギI ⌒3/1 F3/1 q r/a ししおどし -24-

26 ロジスティック写像におけるカオスの発生は、コントロールパラメータへの鋭敏性をもつ
核融合炉の命運を握るもの ロジスティック写像におけるカオスの発生は、コントロールパラメータへの鋭敏性をもつ ① デイスラプション頻度:年0.5回以下 ② 運転ベータ〜できるだけ高く デイスラプション直前のポアンカレー写像 q/2p r/a デイスラプションを回避するコントロールパラメータのいくつかは分かってきている。 パラメータ鋭敏性を持つものもある。 負磁気シアーDTM(ダブルテアリングモード)デイスラプションでは、共鳴面間距離 -25-

27 デイスラプションの克服に向けて(ニューラルネットワーク)
燃焼プラズマのデイスラプションを予測する人工知能はどこまで賢くなれるか? dIp dPrad dli d2Prad dWdia-n Li-indi d2Ipref dWdia dIpref 2層パーセプトロンの機能 入力層 Disruption 隠れ層 (R.Yoshino, N.F. 43(2003)1771) デイスラプションの要因(R.Yoshino, N.F. 43(2003)1771)   ・密度限界   ・電流達下げ時の高内部インダクタンス   ・低密度ロックトモード   ・ベータ限界   ・負磁気シアのMHDモード   ・電流立ち上げ時の低内部インダクタンス   ・低安全係数でのMHDモード   ・垂直位置不安定性   ・機器のトラブル デイスラプション予測人工知能はどこへ 2層パーセプトロン =>3層パーセプトロン? =>カオスニューラルネット? M.Yagi, 28aXH-1カオス制御(Rossler系) -26-

28 トカマクシミュレーションのマイルストーン
ITER建設 燃焼基本性能実験 高性能試験 国内重点化建設 高性能定常化 高性能発電実証 10PFlops GF 多階層・複合系 燃焼長時間模擬 非線形 MHD アルファー粒子MHD 高ベータディスラプション 1PFlops GKトーラス イオン・電子系 (短波長) 運動論的MHD・アルファー粒子挙動 散逸・開放系 GFトーラス イオン・電子系 開放系 TFLOPS a/ri~1000 GKトーラス イオン・電子系(長波長) 静電モデル・散逸系 GKトーラス イオン系・静電モデル a/ri~500 a/ri~200 YEAR 岸本泰明 第18回 核融合研究開発基本問題検討会 H16年1月27日  -27-

29 まとめ 核融合研究が始まり:プラズマ安定性を得ることが願望だった煉獄の時代に、MHD理論が花開いた。
ITERの時代を迎え、相変わらず厳密な理解に程遠いプラズマ乱流輸送を第一原理から解き明かし、それを要素還元する中から新しいパラダイムと核融合炉の輸送の制御が生まれる可能性がある。 核融合炉を目指して、デイスラプションを克服するには、「磁力線の振る舞い」の理解と制御人工知能の開発が不可欠ではないか。 -28-


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