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第5章 どのように 国際的に 資金が 流れるのか 加藤 栞
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拡大するグローバル・インバランス ・1990年代後半以降 アメリカ→経常収支赤字が拡大 アジア諸国→経常収支黒字が拡大する傾向 2000年代
アメリカ→経常収支赤字が拡大 アジア諸国→経常収支黒字が拡大する傾向 2000年代 原油価格上昇→石油輸出国においても経常収支黒字が拡大 このように、世界的に経常収支不均衡が拡大してきたことを指して、 グローバル・インバランスと呼ばれている。
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グローバル・インバランスにおいて、 経常収支赤字国は、経常収支赤字の資金調達のために対外借入を行う 経常収支黒字国は、余剰資金を運用するために、対外貸出を行う もし、経常収支不均衡が続くと、 ・経常収支赤字国は対外純債務を累積する ・経常収支黒字国は対外純債権を累積することになる。 ※経常収支赤字国が対外純債務を過度に累積すると、 将来においてその対外純債務を返済できなくなる恐れがある。
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経常収支赤字が持続的に拡大する状況の中で、
対外純債務が返済できなくなる水準にまで経常収支赤字の累積額が達すると、 その経常収支赤字のサスティナビリティ(持続可能性)が疑問視される。 債務不履行の可能性が高まると、実際に債務不履行が起こる前に、 その経常収支赤字国に対外貸出をしている経常収支黒字国の投資家や銀行などの金融機関が 我先に債権回収に走り、そのために経常収支赤字国の流動性が不足して、 債務返済を不履行せざるをえなくなることもある。 グローバル・インバランスが拡大することは、世界経済に波乱要因が高まることを意味する。
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アメリカの経常収支赤字の拡大 グローバル・インバランス →アメリカの経常収支赤字に代表される。 アメリカの経常収支赤字
→アメリカの経常収支赤字に代表される。 アメリカの経常収支赤字 →1990年代以降拡大を続けるものの、原因は移り変わってきた。 1990年代後半から2000年代初頭まで →ITブームに乗った民間設備投資の拡大がアメリカの経常収支赤字拡大。 →ITブームが終わりを告げ、金融緩和政策とともに積極的な財政政策によって 財政赤字が急速に拡大→これによって経常収支赤字拡大 2003年から2005年にかけてのサブプライム・ローンの拡大によって住民投資が急増 →財政赤字とともに、経常収支赤字拡大。
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一方、この間の東アジア諸国は、経常収支黒字を拡大しながら、外貨準備高を拡大してきた。
そのため、特に中国に対して経常収支不均衡の是正策として、 それまで人民元をドルに固定してきた固定為替レート制度を止めるとともに、 人民元の切り上げの要求が高まってきた。 一方、中国を始めとして過剰な貯蓄がアメリカに流入 →アメリカ経常収支赤字の資金調達をサポートする形で、 グローバル・インバランスの拡大に加担してきたと指摘された。 サブプライム・ローンを発端とするアメリカ発の金融危機は、 欧州にまで拡大することとなり、世界金融危機と呼ばれた。
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経常収支不均衡と国際資金移動 経常収支赤字によってドルが減価するように思われるが、必ずしもそうとは限らない。
経常収支赤字を資金調達するに十分なだけの資本が流入するかもしれない。 あるいは、経常収支赤字額を超えるだけの資本がその国に流入すれば、 経常取引と資本取引を合わせた国際経済取引全体によって為替レートが決まるところから、 その国の通貨は増価する。 それが1990年代に起こった。 ITブーム→民間設備投資が急増→資金がアメリカへ大量に流入 そのため、1999年に導入されたユーロはしばらくの間、ドルに対して減価することとなった。
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2000年代に入ると、 これらの国際資金移動に2つの新興市場国地域からの国際資金移動が加わってきた。 ★1つは、豊富な貯蓄を背景にした中国などの東アジアからの国際資金移動。 1990年代後半から積極的に進めてきた、資本管理・外国為替管理の規制緩和、 さらには、主として外国の金融機関が利用する規制のないオフショア市場の開設によって、 アジア通貨危機前には、大量の資金が通貨危機に直面した国々に流入し、 国内ではバブル状態となった。 ・ しかし、その後これらの国々は、バブル崩壊とともに先進諸国の投資家や 金融機関によって資金が引き揚げられて、通貨危機を経験した。
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もう一つは、2000年代に入ってからの原油価格急騰を背景として、
石油輸出国が国際資金移動における資金供給の担い手となった。 アジア湾岸諸国のみならず、ノルウェーやロシア等の石油輸出国からも 大量の国際資金が供給された。これらの国際資金移動の多くは、 ソプリン・ウェルス・ファンドを通じて行われた。これは、その透明性が問題視された。
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2.国際金融取引とは 国際的な所得・支出ギャップと国際金融取引
2.国際金融取引とは 国際的な所得・支出ギャップと国際金融取引 国境を越えた所得の流れと支出の流れが、いつも同額であるとは限らない。 国境を越えた支出の流れの方が所得の流れよりも多ければ、 国境を越えたお金の支払いの方が受け取りよりも多いことを意味し、 その不足分を国境を越えて借りなければならない。 反対に、国境を越えた所得の流れの方が支出の流れよりも多ければ、 国境を越えたお金の受け取りの方が支払いよりも多いことを意味し、 その余剰分を国境を越えて貸すことになる。このような国境を越えた貸借が国際金融取引である。
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国境を越えた異時点間取引としての国際金融取引
国際金融取引は、国内における金融取引と同様に、現在、借りたお金は、将来返さなければならない。 そのためには、将来、国境を越えた所得の流れが、国境を越えた支出の流れを超過して、 対外的に余剰のお金がなければならない。 そして、ほとんどの場合(例外:ユーロ圏)、国々で異なるお金で支払決済されていることから、 国境を越えた取引を行う際には、これらの異なる国のお金を交換する必要がある。 ・ このような異なるお金を交換する取引を為替取引という。 ・ 国際貿易取引や国際金融取引は、先進諸国とともに新興市場国おいて、 貿易の自由化や国際金融取引の自由化、通貨交換の自由化が進みつつある。 そのため、先進諸国間とともに先進諸国と新興市場国との間において国境を越えた資金の移動が急増してきた。
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3、国際金融取引と経常収支・資本収支 経常取引
3、国際金融取引と経常収支・資本収支 経常取引 国境を越えた生産物・生産要素サービスの取引と国際金融取引は、表裏の関係にある。 ある一国すべての国境を越えた経済取引は、国際収支表に集計される。 経済取引の対象を基準に、国際経済取引は、企業が生産した生産物と生産するために 必要となる生産要素サービスに分類される。 生産物のうちのモノ(商品)の取引は、貿易取引として、 ある国から外国へ販売される輸出と輸入の差額が貿易収支と呼ばれる。 一方、生産物のうちのサービスの取引については、 国境を越えたサービス取引の輸出入の差額がサービス収支と呼ばれる。 これらの貿易収支やサービス収支や所得収支のほか、ODAの無償資金協力などの取引を経常取引と呼び、 経常取引の収支差額を経常収支という。
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図5-1 国際収支の項目 経常収支 貿易・サービス収支 貿易収支 輸出 輸入 サービス収支 輸送・旅行等 所得収支 雇用者報酬 投資収益
図5-1 国際収支の項目 経常収支 貿易・サービス収支 貿易収支 輸出 輸入 サービス収支 輸送・旅行等 所得収支 雇用者報酬 投資収益 経常移転収支 資本収支 投資収支 直接投資 証券投資 その他投資 その他の資本収支 外貨準備増減 誤差脱漏
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資本取引 国境を越えた生産物と生産要素サービスの取引全体の収支の差額を埋めるために 国際金融取引が行われる必要がある。
国際金融取引が行われる必要がある。 ある国が経常収支(対外的な所得・支出の差額を利用して)、あるいは、 その差額を埋めるために行われる、金融資産・負債の増減のほか、 国境を越えた実物資産の購入・売却に向ける取引を資本取引と呼ぶ。 国際金融取引は、この資本取引の一部で、資本取引の受取と支払の差額を資本収支と呼ぶ。 資本収支は投資収支とその他の資本収支に分類され、 投資収支は、直接投資、証券投資、その他投資の3つの投資収支に分類される。
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前述のように、経常収支と資本収支は表裏の関係にある。
もし、経常収支が受け取り超過で黒字となれば、 その受取超過分は、外国の資産に運用することとなる。 この場合には、経常取引においてお金が外国から国内へ国境を越えて流入してくる一方、 資本取引においてお金が国内から外国へ国境を越えて流出することになり、資本収支が赤字となる。 もし経常収支が支払超過で赤字となるときには、その支払い超過の分は、 決済のための資金を外国から借金をして、対外負債を増やす。 この場合には、経常取引においてお金が国内から外国へ国境を越えて流出する一方、 資本取引においてお金が外国から国内へ国境を越えて流入することになり、資本収支が黒字となる。
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日本の国際収支の動向
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4、国際金融取引と貯蓄・投資ギャップ 国民所得勘定からみると、 国内で生産された財・サービスの総額を国内総生産と呼ぶ。
国内で生産された財・サービスの総額を国内総生産と呼ぶ。 GDP=消費+投資+政府支出+財・サービスの輸出-財・サービスの輸入 ① GDP=消費+投資+政府支出+貿易・サービス収支 ② ※生産要素サービスに対する報酬の対外的受取と支払の差額である所得収支を考慮に入れる。 GDP+所得収支=消費+投資+政府支出+貿易・サービス収支+所得収支 ③ 左辺→海外との所得の受取と支払の差額を含む国民総生産、国民総所得を意味 右辺→経常収支を意味
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③式から、国民総生産から消費と投資と政府支出を差し引いたものが 経常収支に等しいという次式の関係式が得られる。 GNP(or GNI)-(消費+投資+政府支出)=経常収支 ④
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貯蓄・投資ギャップと経常収支・資本収支 一国の予算制約線からみる。 GNP(or GNI)+対外債権増加額+外貨準備増減額 ⑤
⑤式を変形して、次式のように書き換える。 GNP(or GNI)-(消費+投資+政府支出) =対外債権増加額-対外債務増加額+外貨準備増減額 ⑥ ⑥式の対外純債権増加額は資本収支を意味。
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GNP(or GNI)-(消費+投資+政府支出)=資本収支 ⑦ GNP(or GNI)-租税=消費+貯蓄 ⑧ ④、⑤、⑧より次式が得られる。 (貯蓄-投資)+(租税-政府支出)=経常収支 =資本収支+外貨準備増減額 ⑨ ⑨式は、民間部門の貯蓄・投資ギャップと政府部門の財政収支の合計が経常収支に等しく、 さらに、それらが資本収支と外貨準備増減額との和に等しいことがわかる。
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(貯蓄-投資)+(租税-政府支出) =経常収支=資本収支 ⑩ ⑨式や⑩式から、資本収支は、民間部門と政府部門の 貯蓄・投資ギャップと関係することが示される。 さらに、経常収支と表裏の関係にあることがわかる。
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5、国際資金移動の決定要因 国際資金移動の決定要因についての考え方 →ある一国における異なる時点の間にわたっての所得と支出の動向に注目しなければならない 現在と将来の消費の選考 家計部門→消費によって効用を得られる 重要なのは、現在の消費から得られる効用と将来の消費から得られる効用の比較。 利子率と主観的割引因子との関係で、家計部門にとって現在から将来にわたっての効用を最も大きく する現在と将来の消費の時間的パターンが決まる。
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