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生物学 第2回 多様な生物を分類する 生物を観察する 和田 勝
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先週、ビデオで見たように、この地球上には実にさまざまな生物が生息しています。
姿かたちや、行動パターンなど、それぞれの生物は、地球の環境に適応しています。 ペンギンとアザラシは明らかに異なる生物ですよね。このような区別はどのように認識されるようになったのでしょうか。
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この絵を知っていますよね。 これは田中一村(1908~1977)が奄美大島へ移住後、そこで暮らしながら描いた一枚 「白花と赤翡翠」(昭和42年頃)にあるアカショウビンです。 このほかにも、アカショウビンを描いた作品が二つあります。
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「赤翡翠」はアカショウビンと読みますが、赤を取った「翡翠」はカワセミとも読みます。
ところで、生物学では生物の名前を「カタカナ」で表記します。 カワセミは、こんな姿かたちをしています。
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もう一つヤマセミという鳥がいます。
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最初に見せたアカショウビンです。
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3種を並べてみましょう。 カワセミ ヤマセミ アカショウビン
3種を並べてみましょう。 カワセミ ヤマセミ アカショウビン Common kingfisher Greater pied kingfisher Ruddy kingfisher
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3種は色は異なるが、姿かたちは良く似ています。
1)嘴が大きい、2)頭部が大きい、3)後肢が小さい、4)木に止まった姿勢が似ている、などをすぐに挙げることができます。 空を飛ぶ動物には昆虫と鳥とコウモリの仲間がいますが、それぞれを簡単に区別できますよね。
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ヒトも含め、生き物は違いを認める能力を生まれつき持っているようです。
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カワセミ科 ブッポウソウ目 鳥類(綱) ツバメ スズメ目 哺乳類 スズメ
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このような作業(研究)をする生物学の分野を分類学といいます。
カワセミ Common kingfisher ヤマセミ Greater pied kingfisher アカショウビン Ruddy kingfisher 和名と英語名(現地語)では異なります。同じ種類の生物に異なる現地語で名前がついていては混乱するので、普遍語(ラテン語)で記述する必要がありました。
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このようなラテン語による名前を学名と言います。
カワセミ Alcedo atthis ヤマセミ Ceryle lugubris アカショウビン Halcyon coromanda 界:動物界 門:脊索動物門 亜門:脊椎動物亜門 綱 : 鳥綱 目 : ブッポウソウ目 科 : カワセミ科 属名( Alcedo)と種小名( atthis )を組み合わせて示します。
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分類学の父リンネ このような学名のつけ方や分類の体系化を行ったのがスェーデンのリンネ(Carl von Linné、 )でした。 当時はまだ、すべての生物は神が創造したと考えられていました。リンネは「神の栄光」を証明する一手段として、分類の体系を考えたのです。
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リンネは初め聖職者になるつもりでしたが、植物学に興味を持ち、ルンド大学、ついでウプサラ大学へ移り、植物の研究をおこないました。
最初は植物、さらに動物と鉱物を加えて「自然の体系」という本を著して、体系化を試みます。
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当時は大航海時代を経たのちで、様々な生物がヨーロッパに持ち込まれ、命名が混乱していました。
「自然の体系」のなかで、従来の混乱した命名を止め、二名法によって簡潔な名前にして体系化しやすいようにしました。 綱、目、科のような上位の分類単位を設けて体系化しました。
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現在でも、新種が発見されると、リンネが考えた二名法によって学名がつけられ、登録されます。発想は間違っていましたが、方法は(修正されていますが)引き継がれているのです。
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実際の分類の作業は、骨や外部生殖器の形態(これらを形質と呼ぶ)の類似度からグループ分けをしていく方法が取られます。
現在では、タンパク質のアミノ酸配列やDNAの塩基配列やなどの分子データを比較して、違いの大きさを推定する方法をとることが多くなってきました。
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それでは、カワセミ科のなかに、どうしてこんなに姿や大きさに違いがあるのでしょうか?
体長 生態 餌 分布 カワセミ 17cm 海岸や川、湖、池などの水辺 魚類や水生昆虫 北海道を除き留鳥 ヤマセミ 38cm 山地の渓流や池の周囲 留鳥(数は少ない) アカショウビン 25cm 森林に生息し、ホバリングしない 魚やカエル、サワガニ、水生昆虫のほか、地上のカタツムリやトカゲ、木の幹のセミ 夏鳥(越冬地は東南アジア)
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どうも生息している環境が異なるようですし、餌も少し違うようです。
キリンの首がなぜ長くなったかと言うお話を聞いたことがあると思います。ラマルクは、高い樹木の葉を餌として取れるように、首が長くなったのだと考えました。
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ここには、生物は「神が創造した不変のもの」ではないという考えが含まれています。
このように、生物は長い時間の間に変わった、という考え方を「進化論」といいます。 進化論は後で述べるダーウィンによってまとめられます。
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データを矛盾なく説明できるような包括的な結論
観察による発見と帰納 測定 観察 データ 観察 測定 (それぞれの データはtestableでrepeatableである必要) データを矛盾なく説明できるような包括的な結論
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観察に基づく仮説と演繹 観察 設問 仮説 予想 試験 もしも仮説が支持されなかったら、仮説を修正するか新たな仮説をたてる
もしも仮説が支持されたら、次なる予想を立てそれを試験する 試験 (実験あるいはさらに観察)
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観察の重要性 いずれにしても、出発点として観察によるデータの集積が重要です。 肉眼 顕微鏡 双眼鏡 小さくて観察できない
近寄って観察できない 顕微鏡 双眼鏡
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顕微鏡改良の歴史 レンズが物を拡大してみせるということは知られていました。
複数のレンズを組み合わせた複式顕微鏡は、17世紀の初頭にオランダのヤンセン親子が発明したと言われています。
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この絵を知っていますよね。 これはJohannes Vermeer ( )が描いた有名な一枚 「真珠の耳飾の少女」(1665年頃)です。 フェルメールはオランダのデルフト生まれで、同じ年(月も)に生まれたのがレーウェンフックでした。
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デルフト眺望 Vermeerの描いたDelft眺望( )
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レーウェンフックの観察 オランダの織物職人だったレーウェンフックは、独特な単式顕微鏡を作製して微生物などを観察しました。
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レーウェンフックの観察 レーウェンフックは原生生物、細菌、淡水性の藻類などを観察し、王立科学アカデミーへレターとして報告し続けます。
ヒトの精子も発見しています。
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フックによる細胞の発見 イギリスのフックは複式顕微鏡を使って動物や植物の微細構造を図版にした本「Micrographia」を出版(1665)しました。
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フックによる細胞の発見 この本の中で、コルクの顕微鏡像があり、その空所を細胞(cell)と名づけました。
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顕微鏡の改良 その後、複式では避けられなかった色収差の問題を、異なる材料で作ったレンズを張り合わせることで克服できることが発見されます。
標本の染色法などの改良がおこなわれました。
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現在の顕微鏡 光学顕微鏡 透過型電子顕微鏡 走査型電子顕微鏡
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顕微鏡の原理 光線を 使う 電子線を 使う
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顕微鏡の原理 電子線を 使う
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光学顕微鏡で見ると 染色してあります。 この部分を拡大してみると
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この部分の断面を拡大してみると
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細胞の構造 こうして次第に細胞の構造が明らかになります。
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細胞の構造 細胞の構造についてはまたあとで学びます。今は、我々の体は無数(60兆個と言われています)の細胞からできていることを覚えておいてください。
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