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2章:成層圏の成り立ちとしての放射について
北半球、冬 放射伝達について若干ー>成層圏の成り立ちとNewton冷却近似について 放射冷却 観測から見積もられた、大気の全非断熱加熱を場の関数としてのせる: 放射による加熱+凝結熱+対流+乱流(3、4項は力学過程であるが、小さなスケールによるものでこの場合非断熱に入れてある)を含む 潜熱加熱 北半球、夏 左辺は観測見積もり 上図は北半球冬、下図は夏の緯度—高度断面図。影の部分は冷却を示す。この図は上式のような、熱力学の式と運動の観測量(大規模場のみ)から、逆算してある。熱帯対流圏中層は加熱 成層圏における温度構造の決定に放射が重要である。 ー>ここでは1次元的放射による成層圏生成について述べておく。 図:東西平均した大気の非断熱加熱( d’Q/dt / cp 、単位は K / day )。
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2−1:放射の基礎 (1) 放射伝達方程式 大気中の任意の場所で、波数νと方向を指定して放射強度 Iν を定義する。高さzで、小さな水平の面積 dA を通り、鉛直軸とθをなす方向を中心とした立体角 ( φは動径方向 )にむかう光の波数νを中心にdνの範囲の光によって、単位時間に流れるエネルギー( Wの単位 )が IνdωdνdA’ となる量である。だから、Iνdνは W/m2/str の単位 ここで、dA’は面素をθの方向から見た時の断面積で次の関係 z 鉛直方向にz、z+dzの2つの面を考える(大気中のある層)。散乱を考えなければ放射について下の式がなりたつ。(放射エネルギーの伝達で、吸収と放出が考えられる) d Iν=ρdz secθ( —kνIν+eν) ここで、 kν:吸収係数 eν:単位質量あたりの放出量 ρ: ここでは吸収物質の量(大気の密度ではない) である。 また、キルヒホッフの法則なる、 放出と吸収の比は黒体放射スペクトルのエネルギー分布からきまる、から eν=kνBν なる式を使うと、 熱放射の伝達を記述する微分方程式として cosθ dIν/dz=— kνρ( Iν — Bν) 波長の長い遠赤外では、空気分子の散乱は無視できるので上のような式をみたす
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(2)上下フラックスの近似(上向きと下向きのみにする)
鉛直1次元的取り扱いか Iνは—般にθの関数で、θ方向に展開して議論 ー> すべての方向をあつかうと自由度が増えてたいへんなので、 上向きと下向きの2つにわけて、水平なz面を通して—方の側から他の側へむかうすべての方向の光エネルギー流の積分である、放射フラックスにする(鉛直方向だけの議論になる)。 立体角 で、動径φ方向は一様とすると2πをかければよいであろう。 フラックスの定義式として(立体角で積分すると): Fν↑=∫0π/2 (Iνcosθ)2πsinθdθ 上半分の積分 上向きフラックス Fν↓= ー∫π/2π(Iνcosθ)2πsinθdθ 下向きフラックス Iνがθによらず一定(等方的)のときは積分して、 Fν↑=Fν↓=πIνとなる。 Fν↑のみたす式の導出: cosθ dIν/dz= —kνρ( Iν — Bν ) の両辺にcosθをかけて上のような積分をし、 Iνが等方的であること、さらに、ここからπBν=Bνと表記すると、
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2/3 d/dz Fν↑= — kνρ(Fν↑— Bν)
となる。 上下フラックスにたいする吸収係数は、前に定義したものの 1.5 倍になっている形になっている。 下向きは — d/dz Fν↓=—3/2kνρ( Fν↓ —Bν) 光学的厚さの導入: wν=3/2∫z∞ kν ρdz なる量を導入する。 dwν= - 3/2kν ρdz で 、これはνの光に対して有効な吸収物質の量を あらわすもので、 (∞から z までの)光学的厚さと呼ばれる。 wνを用いると、みたす式は d Fν↑/dwν= Fν↑— Bν また下向きは d Fν↓/dwν=—Fν↓+ Bν となる。 ー> 簡単化して成層圏ではどんな特徴になるかをみる
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2−2 成層圏の様子:灰色大気での放射平衡から-
2−2 成層圏の様子:灰色大気での放射平衡から- 波長依存性はかなり複雑で—>具体的にはそれぞれ計算が必要 ここではkνを波長によらず—定として解いてみる —> 等温層としての成層圏の生成論のみ dF↑/dw = F↑ — B dF↓/dw = —F↓+ B ここで、B=∫0∞ Bν dν=σT4( ボルツマンの法則 ) 放射平衡の条件:Netの放射フラックスとしてF↑net =F↑—F↓を定義して、これの鉛直方向のたまりがないことで決まるB(w)(温度)をきめることにする (たまりがあると温度が変化する)。 式であらわすと、 d( F↑net )/dw =d(F↑—F↓)/dw=0 という条件である。 さらに、大気上端で逃げるエネルギー F↑(0)をJ0( これは入射する日射量(—短波反射)であろう)でF↓(0)=0 、それは F↑net にも等しいとして解くと(F↑net =—定= J0) 、 B (大気温度に対応)は B=J0(1/2+ w /2) また F↑=J0(1+w/2) F↓=J0(w/2) のように決まる。 図としては右のようになる(光学的厚さを鉛直座標として) w=2として 大気上端近くでは(成層圏では)、下向きフラックスはゼロに近い
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光学的厚さをふやすと、そのまま下にのびる、Tが増加する ——>温室効果
地面の温度をTgとする。それを黒体としてBgとかくと、これは地面でのF↑と同じになる。 Bg( Tg )=F↑g=J0/2*(wg+2) = B(wg)+J0/2 地面温度(左辺)と地面と接する大気の温度(右辺の1項)に差がでてくる。 最期に、wを高さに変換する: 吸収物質の密度は静力学平衡の大気密度とおなじように指数関数で分布すると仮定 ρ(z)=ρ0exp( ー z/Hs) Hsは吸収物質のスケールハイト(水蒸気の場合2km程度) B(w)=J0/2(w+1) として B(z)=J0/2(wg exp( — z/Hs)+1) 右が鉛直に広げた図:←これまでは、物質の量としての分布であった。 ー> 上層では等温層のようになっている。
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大気の上端に等温の成層圏ができる <— w≒0のところで物質密度が小さいので引きのばされて等温層になる。
外からみた地球大気の相当黒体温度は B(Te)=F↑(0)=J0 一方成層圏の温度は式 B=J0(1/2+w/2)から B(0)=J0/2=B(Te)/2 と低温になる( B と F↑の差 ) 実際には地球のように成層圏でオゾンによる高温化あり。惑星によって異なる。ー>図を参照 ●対流圏 光学的厚さwgが大きいと下層の温度がおおきくなる、温度傾度もおおきくなる——>断熱勾配より大きいと対流不安定がおこって、対流がおこるであろう。 ->地球大気の熱帯対流圏の高さ決定に関しての簡単な話し(つじつまが合っているだけ?)は1章で述べた。 対流による 結果としての成層圏の普遍性 金星 O3のない地球 地球 木星
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2−3 成層圏オゾンによる短波吸収 cosθ dIν/dz=— kνρ( Iν— Bν) の式で、短波の場合はBνは考えなくてよいであろう。そうすると、 dIν/dz=— secθkνρIν 今の場合は太陽の天頂角をχとし、フラックスは下向きなので、 dIν/dz= secχkνρIν のようになるであろう。 解は Iν(z) = Iν(∞) exp( -(∫z ∞ kνρ dz)secχ ) 成層圏オゾンによる短波吸収の大気加熱率は Q= secχkνρIν / ρa Cp ここで、 ρaは大気密度、 Cpは定圧比熱である。 大気加熱率と冷却率 すべての波長寄与 短波長のスペクトルの例: 成層圏は比較的簡単、一方対流圏は雲がありその散乱を考えているので、はるかに複雑な計算になる。
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2—4 赤外放射のNewton冷却近似: エネルギーフラックスのたまりが大気温度の変化をもたらすので、 ρa Cp dT/dt = - d/dz (F↑—F↓) のようになるであろう。ここで、ρa =kg/m3は大気密度である。 Cp=J/K/kg は定圧比熱。 右辺は、 d/dz(F↑—F↓)= —kρ( F↑+F↓—2B ) (kに1.5のfactorを含める) 成層圏ではF↓は無視(大気の上端では0であった)、F↑ は殆ど変化なしと仮定、B も殆ど変化なしとする。 r=ρ/ρaとすれば、上の式は Cp dT/dt=—2k r B +k r F↑ のようになる。 放射平衡にあって、平衡から少ししかずれないとすれば、B=B0+dB/dT dT みたいに書けるであろう。そうすると dT/dt=—2kr/Cp dB/dT dT—2kr/Cp B0+kr/CpF↑ このような線形近似(右辺の1項)をNewtonian coolingの近似とよぶ。 温度擾乱に伴う力学の議論でよく使う(あとの議論のいろいろの所でこの近似をつかっている) 2kr/Cp dB/dT :Newton冷却係数とよぶ。 こんな感じ
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Dickinson (1973) の求めた値をしめしておこう、この程度でもとにもどる——>10日くらいまたはそれより早い!
中間圏ではもうすこし緩和時間は早いようである(数日?)。 左がNewton冷却係数(時間の逆数)で 右は平均的な冷却率を示す(K/dayの単位)
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補足:実際は大気放射は複雑である 赤外のところの様々な物質の吸収率、これもschematicに書かれている。 太陽と地球大気の温度の黒体放射スペクトル(a) 地表面までの吸収率(b) 大気上端から11kmまでの吸収率(c) 紫外線はほとんど吸収 波長に関して平滑化してあるが、波長依存性は複雑 ->それぞれに計算する必要がある。
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大循環モデルにおける放射加熱の例: 図は1年平均された放射による加熱分布(モデル)、単位はK/dayである: 下式の右辺に対応する (結果としての温度の情報も入っている) 上図は太陽放射による加熱(どこも加熱) 中図は赤外放射による加熱(大体冷却、赤道下部成層圏は加熱)、 下図はNet(短波と長波)の放射加熱(大体のところは冷却、熱帯成層圏では加熱) - ー> 力学的には、このような放射加熱があったとき、大気はどのように運動しているか(成層圏は年変動が大きい) が問題となる ー>3章
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2−5 熱帯圏界面層の放射過程の例(下部成層圏の境界近くの話)
2−5 熱帯圏界面層の放射過程の例(下部成層圏の境界近くの話) Thuburn and Craig, 2002, GRL:1次元放射対流モデルを用いて15μm CO2バンドが熱帯圏界面の決定に重要であることを言っている。対流調節は観測でえられている分布 にresetするようになっている。 波長帯 加熱 O3 band4の吸収放出による全赤外加熱(K/d) オゾン分布と標準実験からの平衡温度、四角は対流の上端、ダイアモンド印がcold point 水蒸気band1の吸収放出による全赤外加熱(K/d)
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CO2の役割: CO2の効果は140mbあたりの高度でHeatingになっている。対流は140mbくらいまでしか効いていない。より高い高度では大循環と放射で決まるー>熱帯圏界面層の議論 CO2濃度を、85.9pptv, 455pptv, 2.40ppmv, 12.7ppmv に変化させたときの、左は平衡温度の変化、量の増加にともない対流上端とcold pointが分離される、矢羽根は量の増加に対応、右図は加熱率の変化 CO2 band2の吸収放出による全赤外加熱(K/d) CO2濃度をさらに、67.3ppmv, 356ppmv, 1883ppmv, に変化させたとき
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補足:スペクトルが複雑なので各波長に関して解く必要がでてくる。
以前の各波長ごとの放射の式は光学的厚さを使って、 d Fν↑/dwν= Fν↑— Bν (d Fν↓/dwν=—Fν↓+ Bν) 波長を区別する記号は省く Bを既知関数とすると、 dF↑/dw—F↑=—B は—階の微分方程式 dy/dx+P(x)y=Q(x) とおなじ形で、 一般解は y=exp(—∫Pdx)( ∫exp (∫Pdx) Qdx + C ) なので、 これを使うとP=-1、Q=-Bとして F↑=Cexp( w )+ exp (w)∫exp(—w)(—B)dw の形になる。 吸収係数を比較的簡単にした例:金星大気
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積分定数Cをもとめること: —>地面 wgで B(Tg)とする(境界条件)。また積分の範囲をwgからwとする。 w=wgのときは第2項は消えるので、 B(Tg)=Cexp(wg) から定数Cは C=B(Tg)exp(—wg) となるので、結果として、 F↑(w)=B(Tg)exp(—(wg—w)) +∫wwg B(w’)exp(—(w’—w))dw’ がえられる。(Bの前の符号をかえて、積分範囲をいれかえる) d F↓/dw=—F↓+ B については(下向きフラックス) dy/dx+P(x)y=Q(x) P=1、 Q=Bと対応させて # y=exp(—∫Pdx)( ∫exp (∫Pdx) Qdx + C F↓=Cexp(—w)+ exp(—w)∫0w exp(w) B dw 大気上端w=0で、下向きはゼロとすれば(境界条件)、C=0として F↓(w)=∫0w B(w’)exp(—(w—w’))dw’
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別の形として吸収物質量として u(z)=∫z∞ ρ(z)dz を用い、透過関数を使った式では、 ua 、 ub≧ua として、( b が下層にあるとする ) ua=∫za∞ ρ(z)dz, ub=∫zb∞ ρ(z)dz, として τ(ub, ua)≡exp(—(w(ub)—w(ua))=exp(—∫ua ub k(u)du ) ( 光学的厚さ w=∫z∞ k ρ(z)dz だから dw=kρ(—dz) du=—ρdz dw=kdu ) のようにτ(透過関数)を定義する F↑=B(Tg)exp(—(wg—w))+∫wwg B(w’)exp(—(w’—w))dw’ は ∂τ/∂u’ ・ du’=∂τ/∂w’ ∂w’/∂u’ du’ = —τ k du’ = - τdw’ で符号がかわるので、 F↑(u)=B(Tg)τ(ug 、 u)— ∫uug B(u’)∂τ(u’、u)/∂u’ du’ τは温度や圧力によって変化する、さらに光の波長依存性などを考慮して、適当に平均化。 ー> このような式を解くことになる。 F↑(w)=B(Tg)exp(—(wg—w)) +∫wwg B(w’)exp(—(w’—w))dw’
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4月の気層のひかりの底を …… まばゆい気圏の海のそこに -宮沢賢治-
3章 東西平均した成層圏のありよう 4月の気層のひかりの底を …… まばゆい気圏の海のそこに -宮沢賢治- 3ー1:観測された場 成層圏の東西に平均した全球的な温度構造をみておこう。対流圏とは異なる温度構造(図は地表、対流圏から 120km までで冬と夏の季節)。 夏半球の50kmのところがあつくなっている。これは太陽放射のオゾンによる吸収でこのように高温になっている。さらにその上の90kmの夏では低温(日のあたらない冬で高温)になっていて、これは放射では説明されない。 冬 夏 冷たくなる cold cold 太陽のあたり方 冷たくなる warm colder 極域の冬の下部成層圏では、北半球の方があつい(左図、北半球の方が山岳が多い)<-惑星波の熱輸送として説明(1章) 北半球 1月 7月
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1月 7月 成層圏(より正確には中層大気と呼んだ方がいいであろう、成層圏と中間圏をともに含んだ領域)では対流圏とは独自の循環系を形成している。 夏半球で東風、冬半球で西風になっている。 弱風 地球大気の場合は自転がはやいので、東西平均した東西風の場合、だいたい地衡風が成り立つ 西風 西風 静力学平衡の式: 東風 東風 2つをあわせて、温度風の式で東西風と温度は関係している 対流圏 左図が1月、右図が7月の平均東西風。成層圏の冬の西風は南半球がつよい。 赤道50kmで東風、80kmで西風か(赤道の半年周期振動)をみている 80km以上の高度では異なる風系 冬 北半球 成層圏の東西風の北半球と南半球の違いの図:
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比較のため:対流圏と下部成層圏における東西平均の東西風、対流圏では基本的に熱帯で東風が吹き、中/高緯度で西風がふいている。季節のちがいにより冬と夏において西風の強さや jet の軸が南北に動いたりしてはいるが。右は対応した南北の循環をしめす。 ↑東西方向に平均した東西風の緯度・高度断面図。(a)は12月から2月(いわゆる冬)までの時間平均、 (b)は6月から8月(いわゆる夏)までの時間平均も施してある。Newell et al., 1972 但し図は岸保ら、1982から借用。右の方が南半球である。 ↑上が12月-2月(冬、右の方が南半球で、10Sあたりで上昇流)、下図が6月-8月(夏、左の方が北半球で10Nあたりで上昇流)。熱帯域はHadley循環(冬も夏も30度くらいまでのひろがり)、中緯度は間接循環(Ferrel循環)がみえる。
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成層圏物質分布:地球大気の成層圏はO3がきめる。O3量としては最大10ppmv、オゾンの分布をみておこう
Ozone mixing ratio の南北−高度分布(1月、4月、7月、10月:ここで10月は最近南極域O3ホールで異なる)、ppmv 成層圏物質分布:地球大気の成層圏はO3がきめる。O3量としては最大10ppmv、オゾンの分布をみておこう 成層圏大気は基本的には安定大気である: オゾン層のような層状の構造になりやすいであろう? 10ppmv 極での全オゾンは春が最大になる。運動が大事(主に、惑星波動によって輸送される)。 横軸が対数となっており、まっすぐな線は混合比が一定でよく混ざっている。それに比較してオゾンは下部成層圏で多い。生成が重要であること。
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3—2:中層大気大循環をおこす大気加熱について
太陽放射加熱率の中層大気における緯度—高度断面図を示す。図の左が夏半球に対応。50kmで最大18K/dayの大きさ。 90kmあたりもおおきな加熱率 それにもかかわらず、結果としては90kmあたり(夏半球)の温度は低い O3, O2, NO2, CO2 の吸収が考慮されている。 中層大気の大循環についての考察をおこないたい。内部重力波が重要な役割を果たしていることはあとで議論する。 太陽放射により大気が温められ(式の右辺ー>T)、それによって大気が運動をしていると考えられるであろう。 放射による非断熱加熱:成層圏オゾンによる短波吸収による大気加熱率は2章で示したようである(鉛直1次元的)。 太陽放射による大気加熱率、赤外放射による冷却率の鉛直1次元分布(K/day)。London(1980)より、図はAndrews et al. (1987)から。図からわかる様に中層大気においては、太陽放射による加熱率はオゾンによるものが—番大きく、赤外放射は二酸化炭素による
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放射のみによって決るらしい成層圏・中間圏の温度分布。Wehrbein and Leovy(1982)
短波+赤外放射の大気加熱率の緯度—高度断面図: 日のあたらないところは赤外放射で冷却されている 冷却率 加熱率 違い 右上図は短波放射による加熱と赤外による冷却のバランスによって決る温度分布である。 のような力学の入っていない式を解いてもとめた。日のあたったところが高温になり、日のあたらない極夜では赤外放射で低温になる。この図と観測による温度図とを比較して欲しい。かなり大きな差が存在する。この差は力学の効果ということで、この章ではそのことを簡単なモデルで考えてみよう。 観測されている温度
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3一3:簡単2次元モデルによる理解 適当な近似のもとで、東西に平均した東西方向の運動方程式は(1章、平均場について線形とする)、 (1) 右辺の第2項に鉛直方向のみの(渦、分子ではない)粘性を入れてある。また右辺1項は波の効果の一部 次に熱力学の式の大気加熱を考えよう。 成層圏における放射による大気加熱は、近似的に(2章参照) のようになる。ここで右辺の1項はNewton 冷却を、2,3項は基本的な温度における赤外放射による非断熱加熱、4項はオゾンの紫外線吸収による大気加熱をあらわしている。 ここで Qtot = 0 となるような、仮想的に決まる温度をTe(緯度、高度、時間の関数)とする。そうすると Qtot は以下のようになるであろう( Qtot の右辺のうしろの3つの項を一緒にするような形 )。 さらに、年平均としてきまる高さだけの温度 T0(z) を導入すると、 結果として東西平均した熱力学の式は以下のようになるであろう (ここで擾乱の項は入っていない)<ー heatingだけで決まるもの 数日のdamping time (2) Q は Net の大気加熱の南北・鉛直偏差 、第2項は赤外放射のNewton 冷却近似としたものである。加熱で温度があがり、上昇流の時、断熱膨張で温度が下降する式である。 このように、線形の問題にすると解きやすい
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南北方向の運動方程式としてはこれまで引用した地衡風の方程式を採用する。 (3)
南北方向の運動方程式としてはこれまで引用した地衡風の方程式を採用する。 (3) 連続の式は (4) 最後に静力学平衡の式を東西平均した (5) (1), (2), (3), (4) , (5) が以下の議論に使う基本方程式である。決めるべき物理量は、東西風、南北風、鉛直流、温度、高度場の5つである。 (2)の右辺の熱力学的な強制(放射によってきまる)のみが与えられ、粘性が与えられている条件で問題を解くことを考える。—>結果として、風や温度偏差が決定される問題を考える。 f は—定、N2、α、νは鉛直のみの関数として、上の式を東西方向の風 u のみの1つの方程式に書き直す。 (6) ここで であるがここでは考慮しない。擾乱の様子がわかった後で議論することにする。
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次にHolton (1982) に従って次の様に南北方向に関数形を仮定する。 (7)
ここで、例えば u は北半球のみを選んでいる。 このような近似は赤道域ではおかしい結果をもたらす。 —>球面の方程式を用いるべき -> あとで 対応した放射加熱の形は (8) である。ここで L = π / l は半球のスケールに対応している。この様に仮定すると(6)式は以下の様になる( ここでN2 は—定と仮定する )。 (9) ー>南北の変数を一つのモードで表し、鉛直と時間の関数の東西風の式となる。 Q(z) などを与えて、鉛直と時間の変数として U(運動)を決めることになる。 この式は右辺を与える(今の場合はQ:放射加熱を)と適当な境界条件を与えることにより数値的に簡単に解くことが出来る(鉛直1次元だから非常に簡単に解ける)。 上端の境界条件として適当に高い所で (10)
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また下端の境界条件としてここでは とする。今熱力学の式を思い出すと、 さらに地衡風の式と南北構造の仮定からUについて (11) またニュートン冷却率として図の実線の25 km "boxcar" という記号のついたようなものを選ぼう。 注意:Qのまえはl(Lの小文字) これで境界条件(式10、11)は揃ったので Q , Fx が与えられれば解くことが出来る。時間積分については例えば Holton and Mass(1976) のsemi-implicit 法を使って解こう(前方差分でも2年位の積分だったらO.K.)。 この節では Q のみが与えられたときの解を求めよう。まえに太陽放射の緯度−高度断面図を示した。図は50kmにピークがあり、南北には 第1近似的に cos 的な形をしており、振幅は8K/day ほどである。そこで Matusno(1982)に従ってQを以下の様な形に仮定する。 (12) 図:Newtonian cooling 係数、Wehrbein and Leovy(1982) より。
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渦粘性係数としては図のようなものを選ぼう。
渦粘性係数としては図のようなものを選ぼう。 図:鉛直1次元化学モデルで使われる渦鉛直拡散係数。松野、島崎(1981)より。 図:拡散を起こすであろう実体についても書いてある(1章)
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結果: 南北のスケールとして7000km、下端z=0km、上端z=120kmとして計算した結果を図に示す。秋のequinox を時間t=0として、初期条件はt=0でU=0とした。1年を360日としてあり、2年間はしらせた。西風、東風が交互に繰り返している。このことは観測図の夏半球での東風、冬半球の西風と対応している。しかしこの図と観測図は風の定性的構造が全く異なっている。観測では約80km近くでほとんどゼロの風になっており、—方この図では60km近傍の風が高さとともに減少せず高さによらず—定になっている。もちろん対流圏もおかしい(何も考えていないのだからここは当たり前)。 図:計算された平均東西風の時間変化 上層に分子粘性やイオンdragが入った計算:上層がすこし弱くなっている(Matsuno, 1982) 観測での東西風の変動(40N)
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補足:f—平面では赤道でおかしくなるので、球面ということをきちんと考慮したモデルでみてみる。 線形の近似はなりたつとすれば、東西平均した式は
<- 球面での連続の式 のような形になる。球面上の式は南北方向が緯度の関数となって複雑になる。 Matsuno(1982)に従って、Geopotential の式になおすと のようになる(左辺の空間的な線形演算子はf-平面の場合のそれと似ている)。 とする。これは緯度方向の線形演算子である。線形の偏微分方程式だから、f= 一定の場合と同じように変数分離の方法を用いる。
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のようにすると、 第一項は緯度のみの、第2項は鉛直の演算子のみであって、鉛直と南北の変数分離として、 ( fが一定の時、 のように、) のように南北成分をとりだす事ができる。ここで は南北と鉛直を分離するさいの変数分離定数と呼ばれるもので、hは等価深さ(の単位)と呼ばれる。緯度 について2階の微分方程式の固有値問題となっている。 中層大気の年振動モードは、Sawada and Matsushima(1964) が求めていて、最低次の赤道に対しての反対称モード(赤道にたいして の形が北半球が正のとき、南半球は負になるモード)と考えられる。 そのモードの南北構造の形は図のようである: (u は赤道に関して反対称で、v は対称である) f-平面のときは、u, v が sin ly の構造であった。 v の構造が赤道域でまったく異なる。 またこのモードの変数分離の定数(固有値)はSMにより、 h= km と求められている。この場合、hは負の値である。
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(9)式 をみると、Newton冷却の項と運動量の鉛直拡散の項は同じ形をもっている。ここでは鉛直拡散の項を無視し、平衡の形を仮定した解(年振動はゆっくり変化していて、Newton冷却の時間に比べて無視できるであろうから)について見てみよう。 また、鉛直流を無視すると(Fxを考えず、鉛直拡散を無視すると、東西風の変化は南北風で生成される。東西風の変化を無視する近似は南北風=0であろう、そうする連続の式から鉛直風=0とおいていいであろう)、熱力学の式は だから加熱に対応してGeopotentialが積みあがっていく。その圧力勾配に従って、地衡風が積みあがることになるから、右のような東西風になる。この結果は前に示した数値計算と同じになっている。 これは観測の風と全く異なる。 東西風を減速するのに東西非一様な擾乱が重要な役割を果たしているようである。
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