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メディア社会文化論(メディア論) 2010/02/19 2009年度最終回
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まず、 本題に入る前に(結構本題と被る)、放送を4つの観点から、他のメディアと比較
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放送と他のメディアを比較する観点 1)広告依存度の高さ(民放のみだが)の問題 2)公平性の問題
3)事件の発生源としての側面の問題(報道に対する制作の比重の強さ) 4)下請け依存度の高さ
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広告収入 全く商業性のないNHK 広告収入だけで成り立っている民放 →非常に対照的
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広告収入依存 本・・・広告・零か、あっても自社出版物のみ(8の倍数による余りが広告スペース)
雑誌・・・ある程度広告収入依存(『文藝春秋』3億円/1号) 新聞・・・かなり依存(「2007年の日本の新聞広告費は9462億円と、総広告費の13.5%。朝日新聞社の広告収入はその約6分の1に相当」)
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ネット情報・・・それ自体が広告的なものと、そうでないもの双方。そうでないものも広告をバナー等で出しているものなど様々である。
しかし純粋に無料でかつ広告が出ていないものでも、ネットでは「売名」「広報」という広い意味での「広告」はなされていると思われる。 大学のウェブページも受験生と研究費集めという広告塔の意味も。
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民放・・・全面的依存 NHK・・・零依存(一応・・・)
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なぜ広告依存は歪むか? スポンサーを批判(刺激)するような、記事や番組を作れない
直接スポンサーを批判せずとも、政府等が放送に不満→スポンサーに圧力→テレビ局はその意見を飲まざるを得ない 視聴率などの売れ行きの数字が一人歩き
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本の売れ行きだって数字では? 視聴率至上主義=本の売れ行き至上主義? 基本は同じ、しかし・・・
本は売れなかったとしても、その本の出版費用が回収できないのみ。会社の評価も下げない。ベストセラー倒産という言葉もあり、ベストセラーも必ずしも歓迎されない 視聴率向上は広告単価を上げるし、低下はスポンサーの撤退に
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言い換えると、本は地道に少しのみ儲けるという商売が許される
放送だと、地道に少しというのは、それ自体で失敗・・・しっかり稼ぐか失敗しかない(少なくともゴールデン等の時間枠に限っては)
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公平性の問題 放送のfairness doctrine公平原則・公正原則 国民の共有財産としての電波・・・これを分け与えるのが免許制
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他のメディアとの比較 放送・・・厳密な公平性。ただし政府の方に多少顔を向けざるを得ない。
新聞・・・自主的な公平性(不偏不当性)。ただし社による色はあり。 出版・・・公平性は標榜しないし、期待もされない。 ネット・・・放送と通信の境界と位置づけられる。しかし公平性無視、基本保守的な意見が強い。
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事件の発生源 新聞のところで、 《新聞社の事業部=事件の発生源、ニュース枯れ対策、ある種のやらせ》と申し上げた
しかし考えてみればテレビは報道<制作 (今は「報道番組制作」という言い方も結構あるが)
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制作の仕事・・・ドラマ、アニメ、バラエティ、ワイドショー、クイズ番組、スポーツ中継を作る・・・時代の空気を伝えるが、外の事件を伝えるのではない
基本的に自分たちが「事件」を制作する。新聞の脇役だった事業部や文芸部(新聞小説等)の業務が、テレビでは主役に。
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→テレビが娯楽メディアになっている一つの理由(というか鶏と卵か)
娯楽メディアである他の理由 1)視聴率至上主義・・・堅い内容、報道中心では視聴率を取れない 2)公平原則による縛り・・・政治的な内容を深く追究すると、一方の党派から注文がつき易い
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3)新聞、書籍など他の既存メディアとの差別化の必要性
4)普及の当初は一家に一台だった・・・色々な世代、性別の家族のメンバーが共通して興味をもてるもの・・・娯楽的内容 →当然セグメント化している現代社会では、この4)の理由は弱まっても当然ではあるが・・・
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・・・マクルーハンのテレビへの肯定的評価も、このような娯楽メディアとしての現状に理解があってのことなのか。
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下請け依存度の高さ テレビ局は制作部門を独立させたり、制作を制作会社に外注する傾向に。 出版①本づくり
「制作」に相当する「原稿書き」・・・作家先生に外注 「印刷」「製本」・・・専門業者に外注 出版②雑誌づくり 「原稿書き」・・・記者と外部のフリーランス半々か。文芸誌なら作家先生
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新聞・・・記事はほとんど記者。印刷も内部。ただし通信社依存等の問題も。
ネット・・・ニュース系ブログであっても記事はほとんど新聞社系のを引用。情報源としては既存メディアに寄生。依拠しつつ、「マスゴミ」と揶揄って批判する
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6.放送 6.1新聞と放送 6.1.1機能面での比較 新聞の機能 事実の報道機能 言論批判機能
それら以外事業部の仕事と・・・これはあえていえば娯楽機能 テレビはこの娯楽機能の比重が大きい
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新聞社事業部の展開するスポーツイベント、、展覧会・・・教養・娯楽機能として捉えうる。
そのような教養・娯楽機能が、「事実の報道」と「言論・批判機能」といった、ジャーナリズム機能と同程度に(あるいはそれ以上に)重視されるのが、テレビをはじめとする放送メディア
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6.1.2制度面での比較・・・公平原則 新聞社は政府の介入を防ぐために「丸抱え」の体制
放送局は制度上は政府の介入を許す(公平原則を楯に)・・・免許制・・・制度上は免許が更新されない可能性を常に持ち続けている しかしCATVにまで、放送法の適用範囲とする・・・異論も(電波の稀少性という根拠が・・・?)
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通信に放送が融合しつつあるのが、現代のメディア状況・・・例 ワンセグ
通信は基本的に通信の秘密が守られ、それは言論の自由よりも一層、制限されてはいけない領域 通信と放送の融合・・・今まで通信を放送の規制の網に(ネットでの誹謗中傷)・・・今後、公平原則をテレビに緩めるのか。
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公平原則との絡みで、民法テレビ局は資本の持ち合いが制限される。
しかし現実には二つの系列化 1)キー局とネット局 2)新聞社とキー局
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在京キー局と地方ネット局との系列化(取材・報道網)
JNN(TBS系列)・・・全国28のネット局(1998年及び2010年のデータ) NNN(NTV(日テレ))・・・30 FNN(CX(フジ))・・・28 ANN(テレ朝)・・・26 TXN(TX(テレビ東京))・・・6
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系列局への排他協定(JNNの例) 「加盟局は「JNNニュース」(JNNのタイトルのつくニュース番組)については、必ず同時ネット放送を行うこと。」 「加盟局はニュース素材を加盟局のみに配信し、他系列局には一切、配信しないこと。」
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キー局と全国紙5紙の提携関係(資本参加・取材協力・人的交流)
毎日新聞 TBS・・・元々はTBSの方が子会社だったが、毎日の経営危機等で逆に 読売新聞 日テレ・・・かつては巨人戦のホームゲームの独占中継。保守の読売の系列企業の割には、政府への批判的な論評もある。 サンケイ フジテレビ・・・フジサンケイグループ。ライブドアのニッポン放送株取得問題で話題に。保守反動のサンケイの系列会社であるが、政治より面白さを追求している。
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朝日とテレ朝 日経とテレビ東京 キー局とネット局は人的交流や資本関係でないが、番組がほとんど同じ・・・影響は強い キー局と新聞社の関係は、資本関係、人事の関係に及ぶ・・・政治色には一貫性がない→資本の無方向性のなさるワザ
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6.1.3収益構造面での比較 比較そのものは、前段の前振りで言っているのでNHKを中心に NHK・・・受信料収入によって成り立っている
NOT国営放送 BUT公共放送 税金が財政基盤ではない 政府寄りではなく、かといって商品としての情報を売るのでもない。「公共性」を重視する
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税金で運営されていないし、広告も流していないことで、NHKは政府に対しても、資本家に対しても、一定の距離を保ち、中立性を保持できる・・・公共性の由来
公であり、私的な利益と反しつつ、国家や政府ではない領域、そういったものが「社会」であり、あるいは「市民社会」というものの目指したものであるといえる。あるいは公共図書館の「公共」という意味にもそういった考え方があるように思われる。
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受信料支払い拒否の連続・・・政府は、NHK受信料を税金の形で納めさせたらという議論をする・・・対して、NHK側はその意見に抵抗
広告収入に依存している民放・・・視聴率が稼げる娯楽的内容の放送が多い
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これが逆にいうと、授業レポートでNHKに反撥する声が大きい理由にも
広告収入に頼る民放→娯楽性高い→楽しい→なのに無料 受信料に頼ればよいNHK→お堅い。ヌードもどきのDJオズマ排除等々。つまらない→なのに有料 (もっとも後藤はNHKの回し者ではありません)
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商品性って悪いのか? 商品の肯定的側面 一定の水準にあるものが商品に アマチュアに対するプロフェッショナル
お金を払って見聞きするに価するもの=商品 我々の論文だって紀要や学会誌は商品ではないが、本は商品で、文系は本を書いて評価される。
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商品の否定的側面 利潤を増やす。資本の増大に役立つ。しかし資本は無方向。(前々回位にやった内容) 売れなくたって優れているもの、優れていなくても価値のあるものがある。・・・多元的な価値 このような多元性を一元的な価値に変えてしまう
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真善美の価値 一致?それぞれの距離も 真実・虚偽、善・不善、美醜それぞれに固有の論理 あとの二つでのマトリックスを想起せよ。 {美しく不善}な人と{醜く善なる}人 前者が社会でもてる→皆が好む→商品価値あるとされる→メディアに多く露出できる
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テレビは悪役以外基本的に美男美女で構成される。少なくとも、ドラマの世界は現実世界より遙かにイケメン美女揃い。
{美しく不善}な人>>>{醜く善なる}人 という価値付けを我々は幼少より刷り込まれる そして価値=価値あることでありかつ価格が高いことでもある
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テレビで美しさを追求するように仕向けられる→美しいものを欲しがる→価値あるものは高い
→お金を至上と考える価値観も埋め込まれる お金を稼いで広告に出た商品を買いましょうと仕向けられる こういった循環が民放には想定しうる。
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ルックスがよく弁が立つ政治家が人気に 内容よりはプレゼンの善し悪しで勝負。 (もちろんマクルーハン流にはプレゼン=メディアでそれがメッセージ=内容であるが) ともあれこれは中身の力で勝負するという民主主義の基本理念への脅威という見方は可能
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時代を先導する偉人・・・一部の支援者・多くの周囲の無理解
偉人の模倣者・追随者・・・多くの人々が理解する 前者は商品社会だと報われず、後者のみが良い思いをする。 ゴッホの絵・・・現代で数億円、当人は二束三文で売っていた絵が。
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分かりやすさ、耳当たりの良さは大事 だけどそれのみを重視する社会は、新たな活力はないし、一元的で不健全
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NHKの娯楽志向 受信料が当たり前のように支払われた時代・・・NHKは視聴率を気にせず
中途半端な柔らかさ。民放で売れたタレントを毒抜きして使う(一番みっともない)
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6.1.4内容面での新聞(及びその他のメディア)との比較
(前振りで述べたが) ワイドショウのような娯楽的な芸能・スポーツ関係の「報道」の比重も強いし、さらにドラマやバラエティ(これはワイドショウ等にも被る概念であろうが)、音楽・歌番組などの自分たちで作り上げる番組も多い。・・・報道ではないが社会を映す鏡 民放ではニュースそのものがバラエティ化
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→自分たち自身が情報の発信源である部分が新聞に較べて遙かに強い
C.W.ライトのマス・メディアの4つの機能 1)環境監視活動 ニュース 2)社会的調整活動 編集・解説・指示 3)文化の伝承 4)娯楽機能
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後藤将之の新聞の二つの機能のうちの 事実の報道機能は1)環境監視活動に 言論・批判機能は2)社会的調整活動に相当 教養記事や番組は3)文化の伝承であるし、標準語化とかいう意味なら全てのコンテンツが該当 そして4)の娯楽機能がテレビに強い
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ライトの機能論と各メディア 新聞は3)や4)は比較的比重が小さい 3)4)の比重も1)と共に高く、2)が弱いのがテレビである。 出版物はいずれの側面のものもあるが、本の場合、学術や芸術方面であれば3)の機能が強いし、エンターテーメント的要素の強い本であれば、4)の機能が強い。
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ユルゲン・ハーバーマス 『公共性の構造転換』
ハバーマスの議論 公共圏参与資格が「教養と財産」 「財産」・・・私的利潤に囚われて発言しないための基盤→これを敷衍すると 経営基盤のしっかりしたメディアであるほど、利潤に囚われた言説をしない 広告収入依存のメディアほど、利潤に囚われた発言をする
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ハーバーマス流の公共性を巡る諸メディアの比較
NHKがもっとも公共性が高い 本・・・大抵は自社広告が少し載るのみで、次に公共性が高い 新聞・・・本に次ぐ 雑誌・・・様々で本に近いほど広告の少ないものもあるが、ファッション雑誌のような雑誌依存のものの方が多い 民放・・・最も公共性がない
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資料作りも授業時間も時間切れ・ 「ご清聴有り難うございます」
途中でありつつ纏め メディアの特性の違いが色々。 よって下手なメディアミックス戦略のように、それぞれをきちんと翻訳し移動できる訳ではない。 結局各々のメディアなりの真実 しかし捉える角度による相違がそれぞれあるということはメディア内だけでなく、メディア相互についてこそいえよう。
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