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国際癌サポーティブケア学会(MASCC)
第7回国際癌会議・ペルージャ 制吐療法に関する合意会議 2004年3月29-31日・ペルージャ 組織・全体会議議長団: Richard J. Gralla, MD Fausto Roila, MD Maurizio Tonato, MD 2004年3月イタリア、ペルージャで合意された制吐療法ガイドラインの概要について説明いたします。 この制吐療法ガイドラインの合意会議は、ペルージャで開催された第7回国際癌会議の折に実施されたものです。 会議主催者は国際癌サポーティブケア学会、Multinational Association for Supportive Care in Cancerで、以下MASCCと略しております。 本会議の議長団はスライドにある3名の医師です。 (参考) MASCC:2004年には14の研究グループがあり、制吐療法小委員会は最も古いものの一つで、1995年9月に小委員会は制吐剤使用に関する合意会議の設立を決議しました。 1997年4月イタリア、ペルージャで「合意会議」が開催されました。発表された論文の詳細はMASCCのジャーナル(Support Care Cancer 1998;6: )に、抄録はESMO(European Society for Medical Oncology:欧州癌治療学会議)のジャーナル(Annals of Oncology 1998;9: )に掲載されています。 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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Cynthia Rittenberg – cindyrit@bellsouth.net
本スライドは国際癌サポーティブ学会(MASCC)によりすべての人々に供与されるものであり、変更を施さない限り、またMASCCのロゴと情報の日付が留保される限り、自由に使用可能である。 問い合せ先: Cynthia Rittenberg – この一連のスライドは世界中に公開されています。変更しない限り、 MASCCのロゴと日付をつけることを条件に、自由に使ってよいと宣言 されています。 (参考) 問い合せ先の詳細。 Cynthia N. Rittenberg, RN, MN, AOCN Executive Director, MASCC 500 Rue St. Ann, Suite 223 Metairle, LA USA tel.: fax: June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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- ガイドライン設定にあたってのコメント -
制吐療法ガイドライン合意事項 - ガイドライン設定にあたってのコメント - 本ガイドラインの一連のスライドはペルージャ会議後のガイドライン作成における初版である。 MASCC制吐療法ガイドライン委員会はこの一連のスライドパネルに2004年6月1日のものと明記する。 ペルージャでの他のガイドライン作業グループは各々の組織の方法に従ってそのガイドラインを発行する。 本調査結果はASCO2004あるいはMASCC2004の報告を反映したものではない。 上記会議(共に2004年6月)で提示された所見は本ガイドライン作業グループにより論議される予定であり(継続中の作業情報参照)、2004年後半の次版に反映される予定である。 上記会議はaprepitant(アプレピタント)、 palonosetron (パロノセトロン)の使用に関するガイドラインに大きく影響する可能性がある。 制吐療法ガイドライン設定にあたって確認しておくべき前提のコメントです。 まず、このガイドラインは今回のペルージャ会議後の初版で、2004年6月1日付のも のとなるということです。さらにASCO2004やMASCC2004の報告を反映したものでは ありません。ASCO2004は第40回米国臨床腫瘍学会で、MASCC2004は国際癌サポーティ ブケアです。これら2学会の報告からaprepitant(アプレピタント)や palonosetron (パロノセトロン)の使用に関連してガイドラインに影響がでることが予想されます。 (参考) ASCO:American Society of Clinical Oncology、米国臨床腫瘍学会 ASCO2004:第40回米国臨床腫瘍学会、2004年6月5日-8日、ニューオリンズ、米国 MASCC2004:国際癌サポーティブケア、2004年3月29日-31日、ペルージャ、 イタリア aprepitant(アプレピタント) 選択的ニューロキニン(NK1)受容体拮抗薬 ヨーロッパ:Emend® (Merck) アメリカ :Emend® (Merck) 本邦未発売 palonosetron hydrochloride(パロノセトロン) 5-HT3受容体拮抗薬(セロトニン拮抗薬) ヨーロッパ:Oncit® (Italfarmaco) アメリカ :Aloxi® (MGI) June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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- 国際腫瘍研究グループ9団体により同意されたプロセス -
制吐療法ガイドライン合意事項 - 国際腫瘍研究グループ9団体により同意されたプロセス - 国際的: MASCC 北米: ・アメリカ合衆国 ASCO, ONS, NCCN ・カナダ CCO ヨーロッパ : ESMO, EONS アフリカ: SASMO オーストラリア: COSA 制吐療法ガイドライン合意事項は、国際腫瘍研究グループ9団体により同意 されたプロセスに従って作成されています。 北米では、アメリカ合衆国がまずASCO(American Society of Clinical Oncology、米国臨床腫瘍学会)をはじめ、ONS、 NCCNの3団体です。カナ ダはCCO1団体です。ヨーロッパはESMOとEONSの2団体です。アフリカは SASMO1団体で、オーストラリアはCOSA1団体です。以上の9団体です。 (参考) MASCC:Multinational Association for Supportive Care in Cancer、 国際癌サポーティブケア学会 ASCO:American Society of Clinical Oncology、米国臨床腫瘍学会 ONS:Oncology Nursing Society、米国腫瘍看護学会 NCCN:National Comprehensive Cancer Network、全米癌総合ネットワーク CCO:Cancer Care Ontario、オンタリオ癌委員会 ESMO:European Society for Medical Oncology、欧州癌治療会議 EONS:European Oncology Nursing Society、欧州腫瘍看護学会議 SASMO:South African Society of Medical Oncology、南アフリカ癌治療会議 COSA:Clinical Oncology Society of Australia、オーストリア癌学会 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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ペルージャでの制吐療法ガイドライン作成参加者:2004
Matti Aapro, MD Enzo Ballatori, PhD Sussanne Borjeson, RN, PhD Rebecca Clark-Snow, RN, OCN Albano Del Favero, MD Lawrence Einhorn, MD Petra Feyer, MD Richard Gralla, MD Steven Grunberg, MD Jørn Herrstedt, MD Paul Hesketh, MD Rolf Kaiser, MD, PhD Jim Koeller, RPh, MS Mark Kris, MD Ernesto Maranzano, MD Alexander Molassiatis, RN, PhD Ian Olver, MD, PhD David Osoba, MD Bernardo Rapoport, MD Cynthia Rittenberg, RN, MN, AOCN Fausto Roila, MD Maurizio Tonato, MD David Warr, MD ペルージャでの制吐療法ガイドライン作成に参加したメンバーです。合計23名がメンバーとなっています。MD(医学博士)、RN(正看護 師)、OCN(認定オンコロジーナース)、RPh(認定薬剤師)、AOCN (上級認定オンコロジーナース)といった資格を有する人々が参加し ています。 (参考) MD:medical doctor、医学博士 RN:resistered nurse、正看護師(登録看護師) OCN:oncology certified nurse、認定オンコロジーナース RPh:registered pharmacist、認定薬剤師 AOCN:advanced oncology certified nurse、上級認定オンコロジーナース June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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ペルージャ2004制吐療法ガイドライン - プロセス -
ペルージャ会議に先立ち各委員会は担当分野につき調査研究を実施。 ペルージャ会議では各委員長が調査結果を全グループに提示しガイド ラインのエビデンス/信頼性のレベルを提案(ASCO及びMASCCの基準)。 2) 各プレゼンテーション後にグループディスカッションを行い、合意に関する投票。 合意のための基準とは? ・前回の合意会議*に従う: ガイドライン変更にはパネリストの75%以上の同意が必要。 ・既存ガイドラインの変更: 適切に実施された試験に基づく説得力のあるエビデンスが必要。 試験はおおむね種々のガイドラインに一致し、かつベストプラクティスを代表すると考えられる(比較)対照を用いたものであること。 ペルージャ2004制吐療法ガイドラインの作成までのプロセスです。 このペルージャ会議には10の委員会があります。各委員会はこの会議の前に担当分野について調査研究を実施しております。各委員会の委員長はその結果を全グループに提示するとともにガイドラインのエビデンスと信頼性のレベルを提案します。 このエビデンスと信頼性のレベルはASCOとMASCCの基準に従って提案されています。このプレゼンテーション後に討議、投票ということになります。合意するための基準は2つあります。第1に前回の合意会議に従います。前回の会議は2001年コロンビアコンセンサス制吐療法会議を指します。ここで決められたガイドラインの変更にはパネリストの75%以上の同意が必要です。第2には既存のガイドラインの変更に関する基準です。適切に実施された試験に基づく説得力のあるエビデンスが必要ということになっています。 (参考) ASCOのエビデンスレベルとグレード エビデンスレベル I: 複数のランダム化比較試験のシステマティックレビュー/メタアナライシスによる (検出力が高い)。 II: 1つ以上のランダム化比較試験による(検出力が低い)。 III: 非ランダム化比較試験による。 IV: 分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究による)。 V: 記述研究(症例報告やケースシリーズ)。 グレード A: Iのエビデンス、またはII、III、IVに属する複数の研究から一貫した調査結果が入手できる (行うよう強く勧められる)。 B: II、III、IVのエビデンスがあり、調査結果は概して一貫している(行うよう勧められる)。 C: II、III、IVのエビデンスがあるが、調査結果が一貫していない(行うことを考慮してもよい が十分な科学的根拠がない)。 D: 体系的な実験エビデンスがほとんど、または全くない(行わないよう勧められる)。 MASCCの合意レベルと信頼性レベル 合意レベル: 高、中、低、専門医合意 信頼性レベル: 高、中、低、レベル設定不可 * 2001年コロンビアコンセンサス制吐療法会議 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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ペルージャ2004制吐療法ガイドライン - 各委員会とその担当分野(1/2)-
第1委員会 抗癌剤の嘔吐リスクによる分類 第2委員会 急性嘔吐:高度嘔吐リスク化学療法 第3委員会 遅延性嘔吐:高度嘔吐リスク化学療法 第4委員会 急性嘔吐:中等度嘔吐リスク化学療法 第5委員会 遅延性嘔吐:中等度嘔吐リスク化学療法 制吐療法委員会でガイドライン作成にあたった10の委員会とその担当分野です。 まず第1委員会から第5委員会までです。 第1委員会は抗癌剤をその嘔吐リスクにより分類することを担当します。 第2委員会は高度に嘔吐リスクを有する化学療法によっておこる急性嘔吐について担当します。 第3委員会は同じく高度に嘔吐リスクを有する化学療法によっておこる遅延性嘔吐について担当します。 第4委員会は中等度に嘔吐リスクを有する化学療法によっておこる急性嘔吐について担当します。 第5委員会は同じく中等度に嘔吐リスクを有する化学療法によっておこる遅延性嘔吐について担当しています。 (参考) 抗癌剤の使用に伴う悪心・嘔吐 急性嘔吐:投与開始〜24時間以内に起こる。 遅延性嘔吐:投与後24時間以降に起こり数日〜1週間程度続くことが多い。 急性嘔吐は、抗癌剤により中枢神経の嘔吐中枢が刺激されることが関係していると考えられており、この働きを阻害する5-HT3受容体拮抗薬を抗癌剤投与前に予防投与すると軽減されます。 遅延性嘔吐はまだ原因が明らかではありません。悪心・嘔吐ともに急性嘔吐よりは軽いが、ステロイドや従来からある制吐剤、場合によっては精神安定剤など様々な薬剤を併用することが多く、急性嘔吐が強かった人にみられる傾向があり、急性嘔吐を予防することも有効です。 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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ペルージャ2004制吐療法ガイドライン - 各委員会とその担当分野(2/2)-
第6委員会 最小あるいは低い嘔吐リスクの化学療法 第7委員会 特別課題:難治性嘔吐、レスキュー制吐治療、 複数日にわたる化学療法、高用量化学療法 第8委員会 予測性嘔吐 第9委員会 放射線療法誘発嘔吐、化学療法中の小児の 制吐薬 第10委員会 将来展望:調査研究の方向、試験デザイン、 経済学的考察 制吐療法委員会でガイドライン作成にあたった10の委員会とその担当分野です。 ここでは第6委員会から第10委員会の担当を示します。 第6委員会は嘔吐リスクが最小または低い化学療法を担当します。 第7委員会は特別課題を担当します。難治性嘔吐やレスキュー投与についてです。また 投与が複数日にわたる化学療法や高用量の場合もここに入ります。 第8委員会は予測性嘔吐を担当します。 第9委員会は放射線療法に伴う嘔吐と化学療法中の小児に対する制吐薬について担当し ます。 第10委員会は将来展望を担当します。調査研究の方向性、試験デザイン、経済学的考 察といった今後取り組むべき問題を提起しています。 (参考) 抗癌剤の使用に伴う悪心・嘔吐 急性嘔吐:投与開始〜24時間以内に起こる。 遅延性嘔吐:投与後24時間以降に起こり数日〜1週間程度続くことが多い。 急性嘔吐は、抗癌剤により中枢神経の嘔吐中枢が刺激されることが関係していると考え られており、この働きを阻害する5-HT3受容体拮抗薬を抗癌剤投与前に予防投与すると軽 減されます。 遅延性嘔吐はまだ原因が明らかではありません。悪心・嘔吐ともに急性嘔吐よりは軽い が、ステロイドや従来からある制吐剤、場合によっては精神安定剤など様々な薬剤を併用 することが多く、急性嘔吐が強かった人にみられる傾向があり、急性嘔吐を予防すること も有効です。 レスキュー制吐:予防投与とは異なり、症状出現後に緩和・軽減のために投与する。 予測性嘔吐:過去に受けた抗癌剤治療により嘔吐を経験したことから、今回の治療による 悪心・嘔吐を強く予測して起こる。抗癌剤投与より以前から生ずる嘔吐。 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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ガイドラインの精度を保ち、常に最新で、妥当性を維持すること -
ペルージャ2004制吐療法ガイドライン - 将来へのプロセス: ガイドラインの精度を保ち、常に最新で、妥当性を維持すること - 新しく発生するエビデンスに対応する継続的プロセス: ・委員会は常設とする。 ・委員長は、ガイドラインに影響する新しい情報の有無に関し 6ヶ月毎に委員会に諮問する。 ・運営委員会は上で提案された情報に関して各委員長に諮問 する。 ・エビデンスが有力であると考えられたら、全グループのメンバ ーに通知され意見が求められる。 ・同意に達したら、Web-Guidelineの文書(MASCC)を更新する。 本件は全参加団体に通知される。 ・その後に出版される印刷物は送付される。これは全参加団体に統一された方法で行われる。 制吐療法ガイドラインの精度を保ち、常に最新で、妥当性を維持していくためのプロセスです。 まず委員会を常設とすることが定められています。各委員会の委員長はガイドラインに影響する新しい情報について6ヶ月毎に委員会に諮問します。 上部組織である運営委員会は、各委員会からの提案について委員長に諮問し、エビデンスが有力と判断されると、全グループメンバーに情報が伝えられ、意見を求めます。 同意に達しますと、MASCCのWeb-Guidelineが更新されて、全参加団体に通知されます。将来的に印刷物として出版される場合は各団体に送られますが、これは統一した方法で送られることになっています。 (参考) MASCCのホームページ: Guidelinesにアクセス可能。 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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制吐療法ガイドライン - 第1委員会(1/5):嘔吐リスク4群 -
ペルージャ2004制吐療法ガイドライン 制吐療法ガイドライン - 第1委員会(1/5):嘔吐リスク4群 - 高度 ほぼ全患者(>90%)に リスク 中等度 患者30%~90% にリスク 低度 患者10%~30% にリスク 最小 患者10% 未満のリスク 制吐療法ガイドライン第1委員会が担当した嘔吐リスク4群の分類です。 抗癌剤の嘔吐リスクを高度から最小まで4群に分類して定義しています。 上から順に、高度嘔吐リスクとは 90%を超える患者で催吐性が認められる場 合を指します。 次に中等度嘔吐リスクです。患者の30%から90%で催吐性が認められる場合 です。 低度嘔吐リスクは患者の10%から30%で催吐性が認められる場合です。最後 に最小嘔吐リスクは患者の10%未満に催吐性が認められる場合です。 このように抗癌剤を催吐性によって4群に分類しています。 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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制吐療法ガイドライン - 第1委員会 (2/5):嘔吐リスク別分類-単回静脈内投与薬剤 -
ペルージャ2004制吐療法ガイドライン 制吐療法ガイドライン - 第1委員会 (2/5):嘔吐リスク別分類-単回静脈内投与薬剤 - 高度 シスプラチン mechlorethamine(メクロレタミン)* streptozotocin (ストレプトゾトシン)* シクロホスファミド≧1500mg/m2 carmustine (カルムスチン)* dacarbazine (ダカルバジン)* 中等度 oxaliplatin(オキサリプラチン)* シタラビン>1gm/m2 カルボプラチン イホスファミド シクロホスファミド1500mg/m2 ドキソルビシン ダウノルビシン エピルビシン イダルビシン イリノテカン 抗癌剤を嘔吐リスク別に分類したものです。この表は単回静脈内投与で用いられる薬剤の中で、高度嘔吐リスク薬剤と中等度嘔吐リスク薬剤を示しています。なお表中の薬剤名に*(アスタリスク)のついているものは日本では未発売のものです。 まず高度嘔吐リスク薬剤です。ほぼ全患者、すなわち90%を超える患者で嘔吐リスクが認められるものです。 シスプラチン/mechlorethamine (メクロレタミン)*/ streptozotocin (ストレプトゾトシン)* / シクロホスファミド1500mg/m2/carmustine (カルムスチン)* / dacarbazine (ダカルバジン)* です。10種類の薬剤があがっています。 次に中等度嘔吐リスク薬剤です。患者の30%から90%で嘔吐リスクが認められるものです。 oxaliplatin(オキサリプラチン)* /シタラビン>1gm/m2 / カルボプラチン/イホスファミド/ シクロホスファミド<1500mg/m2 /ドキソルビシン/ ダウノルビシン/エピルビシン/イダルビシン/イリノテカンです。10種類の薬剤があがっています。 (参考) 高度嘔吐リスク:ほぼ全患者(90%超)で催吐性が認められる。 中等度嘔吐リスク:患者の30%~90%で催吐性が認められる。 シスプラチン:プラトシン(ファイザー/協和醗酵) エピルビシン:ファルモルビシン (ファイザー/協和醗酵) イダルビシン:イダマイシン (ファイザー) *:本邦未発売 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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制吐療法ガイドライン - 第1委員会 (3/5): 嘔吐リスク別分類―単回静脈内投与薬剤 -
ペルージャ2004制吐療法ガイドライン 制吐療法ガイドライン - 第1委員会 (3/5): 嘔吐リスク別分類―単回静脈内投与薬剤 - 低度 パクリタキセル ドセタキセル ミトキサントロン トポテカン エトポシド pemetrexed(ペメトレキシド)* メトトレキサート ドキソルビシンリポゾーム製剤* (Jan2005) マイトマイシン ゲムシタビン シタラビン≦100mg/m2 5-フルオロウラシル bortezomib (ボルテゾミブ)* cetuximab (セツキシマブ)* トラスツズマブ 抗癌剤を嘔吐リスク別に分類したものです。この表は単回静脈内投与で用いられる薬剤の中で、低度嘔吐リスク薬剤を示しています。なお表中の薬剤名に*(アスタリスク)のついているものは日本では未発売のものです。 低度嘔吐リスク薬剤です。患者の10%から30%で嘔吐リスクが認められるものです。 パクリタキセル/ドセタキセル/ミトキサントロン/ トポテカン/エトポシド/ pemetrexed(ペメトレキシド)* / メトトレキサート/ドキソルビシンリポゾーム製剤/マイトマイシン/ゲムシタビン/ シタラビン100mg/m2 / 5-フルオロウラシル/ bortezomib (ボルテゾミブ)*/cetuximab (セツキシマブ)*/ トラスツズマブです。14種類の薬剤があがっています。 (参考) 低度嘔吐リスク:患者の10%~30%で催吐性が認められる。 *:本邦未発売 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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制吐療法ガイドライン - 第1委員会(4/5):嘔吐リスク別分類―単回静脈内投与薬剤 -
ペルージャ2004制吐療法ガイドライン 制吐療法ガイドライン - 第1委員会(4/5):嘔吐リスク別分類―単回静脈内投与薬剤 - 最小 ブレオマイシン ブスルファン 2-chlorodeoxyadenosine (2-クロロデオキシアデノシン)* フルダラビン ビンブラスチン ビンクリスチン ビノレルビン bevacizumab (ベバシズマブ)* 抗癌剤を嘔吐リスク別に分類したものです。この表は単回静脈内投与 で用いられる薬剤の中で最小嘔吐リスク薬剤を示しています。なお表 中の薬剤名に*(アスタリスク)のついているものは日本では未発売 のものです。 最小嘔吐リスク薬剤です。患者の10%未満に催吐性が認められるもの です。 ブレオマイシン/ブスルファン/ 2-chlorodeoxyadenosine (2-クロロデオキシアデノシン)*/ フルダラビン/ビンブラスチン/ビンクリスチン/ ビノレルビン/bevacizumab (ベバシズマブ)*です。8種類の薬 剤があがっています。 (参考) 最小嘔吐リスク:患者の10%未満に催吐性が認められる。 *:本邦未発売 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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制吐療法ガイドライン - 第1委員会 (5/5): 嘔吐リスク別分類―単回経口投与薬剤 -
ペルージャ2004制吐療法ガイドライン 制吐療法ガイドライン - 第1委員会 (5/5): 嘔吐リスク別分類―単回経口投与薬剤 - 高度 hexamethylmelamine(ヘキサメチルメラミン) *プロカルバジン 中等度 シクロホスファミド エトポシド temozolomide (テモゾロミド)* vinorelbine (ビノレルビン)* * イマチニブ 低度 カペシタビン テガフール* (Jan2005) 最小 chlorambucil (クロラムブシル) *ヒドロキシ尿素 L-phenylalanine mustard(L-フェニルアラニンマスタード)* 6-thioguanine (6-チオグアニン)* メトトレキサート ゲフィチニブ 抗癌剤を嘔吐リスク別に分類したものです。この表は単回で経口投与で用いられる薬剤が嘔吐 リスクに従って分類されています。なお表中の薬剤名に*(アスタリスク)のついているもの は日本では未発売のものです。 まず高度嘔吐リスク薬剤です。ほぼ全患者、すなわち90%を超える患者で催吐性が認められ るものです。 hexamethylmelamine(ヘキサメチルメラミン)*/プロカルバジンの2薬剤です。 中等度嘔吐リスク薬剤です。患者の30%から90%で催吐性が認められるものです。 シクロホスファミド/エトポシド/temozolomide(テモゾロミド)* / vinorelbine (ビノレルビン)**/イマチニブの5薬剤です。ビノレルビンはアスタリス クが2つついていますが、これは経口剤が日本では未発売であることを示しています。 低度嘔吐リスク薬剤です。患者の10%から30%で催吐性が認められるものです。 カペシタビン、テガフールです。 最小嘔吐リスク薬剤です。患者の10%未満に催吐性が認められるものです。 chlorambucil (クロラムブシル)* /ヒドロキシ尿素(ヒドロキシカルバミド) / L-phenylalanine mustard( L-フェニルアラニンマスタード)* / 6-thioguanine(6-チオグアニン)* /メトトレキサート/ゲフィチニブの6薬剤です。 (参考) 高度嘔吐リスク薬剤:ほぼ全患者(90%超)で催吐性が認められる。 中等度嘔吐リスク薬剤:患者の30%~90%で催吐性が認められる。 低度嘔吐リスク薬剤:患者の10%~30%で催吐性が認められる。 最小嘔吐リスク薬剤:患者の10%未満に催吐性が認められる。 *:本邦未発売 **:経口剤本邦未発売 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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第2委員会: 高度嘔吐リスク化学療法後の急性悪心・嘔吐予防のためのガイドライン: 高度嘔吐リスクの化学療法後の急性悪心・嘔吐予防のためには、化学療法前に5-HT3拮抗薬、デキサメタゾン、aprepitant(アプレピタント)をそれぞれ単回投与する3剤レジメンが推奨される。 MASCC合意レベル:高 MASCC信頼性レベル:高 ASCOエビデンスレベル: I ASCO推奨グレード:A 第2委員会による高度嘔吐リスク化学療法後の急性悪心・嘔吐予防のためのガイド ラインです。 高度嘔吐リスクはほぼ全患者、すなわち90%を超える患者で催吐性が認められる ものです。 急性嘔吐は抗癌剤投与開始から24時間以内におこる悪心・嘔吐を指します。それ らの予防には化学療法前に5-HT3拮抗薬、デキサメタゾン、 aprepitant(アプレピ タント)をそれぞれ単回投与する3剤レジメンが推奨されています。 MASCCの合意レベルは高、信頼性レベルは高、ASCOのエビデンスレベルはI、 推奨グレードはAです。 (参考) 高度嘔吐リスク:ほぼ全患者(90%超)で催吐性が認められる。 急性悪心・嘔吐:投与開始~24時間以内に起こる。 5-HT3受容体拮抗薬:セロトニン拮抗薬 デキサメタゾン:副腎皮質ホルモン aprepitant(アプレピタント) 選択的ニューロキニン(NK1)受容体拮抗薬 ヨーロッパ: Emend® (Merck) アメリカ: Emend® (Merck) 本邦未発売 ASCOエビデンスレベル:I 複数のランダム化比較試験のシステマティクレビュー/メタアナライシ スによる(検出力が高い) ASCO推奨グレード:A Iのエビデンス、またはII、III、IVに属する複数の研究から一貫した調 査結果が入手できる(行うよう強く勧められる) June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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第2委員会および第4委員会 - 高度、中等度嘔吐リスク化学療法による急性悪心・嘔吐の サポ-ティブケアの原則 -
全会一致の合意事項:カテゴリー I エビデンス - 充分にして最低有効用量を用いること。 - 化学療法前の単回投与が最良のスケジュールである。 - 比較対照試験ではセロトニン拮抗剤の有効性と有害作用は 同等である。 - 静脈内投与でも経口投与でも効果と安全性は同等である。* - 化学療法前にはセロトニン拮抗薬と共に常にデキサメタゾンを投与する。 第2委員会と第4委員会による高度嘔吐リスクと中等度嘔吐リスクの化学療法後の急性悪心・嘔吐に対するサポーティブケアの原則に関するものです。全会一致で合意された事項で、カテゴリーIのエビデンスと呼ばれています。 高度嘔吐リスクはほぼ全患者、すなわち90%を超える患者で嘔吐リスクが認められるものです。 中等度嘔吐リスクは患者の30%から90%で嘔吐リスクが認められるものです。急性嘔吐は抗癌剤投与開始から24時間以内におこる悪心・嘔吐を指します。 5項目あがっています。第1に、制吐剤は充分かつ最低有効量を投与することとしてい ます。第2に、投与スケジュールは化学療法直前に1回の投与です。第3に、セロトニン 拮抗剤の比較対照試験の結果では、有効性と有害作用は制吐剤による差は同等であります。 第4に静脈内投与でも経口投与でも制吐剤の効果や安全性は同等です。ただしpalonosetron (パロノセトロン)は静注用製剤のみが検討されています。最後に5番目は、化学 療法前にセロトニン拮抗薬を投与する時は常にデキサメタゾンを併用投与します。 以上の5項目が全回一致で合意されています。 (参考) 高度嘔吐リスク:ほぼ全患者(90%超)で催吐性が認められる。 中等度嘔吐リスク:患者の30%~90%で催吐性が認められる。 急性悪心・嘔吐:投与開始~24時間以内に起こる。 palonosetron hydrochloride (パロノセトロン) 5-HT3受容体拮抗薬(セロトニン拮抗薬) ヨーロッパ:Oncit® (Italfarmaco) アメリカ :Aloxi® (MGI) 本邦未発売 デキサメタゾン:副腎皮質ホルモン 5-HT3(例:オンダンセトロン)単独群とオンダンセトロン+デキサメタゾ ン併用群の比較試験で、併用群がより高い有効率を示す報告がある。 *palonosetron(パロノセトロン)は静注用製剤のみが用いられている。 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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第3委員会: 高度嘔吐リスク化学療法後の遅延性悪心・嘔吐予防のための ガイドライン:
シスプラチン投与を受け急性嘔吐予防のためにaprepitant(アプレピタント)、 セロトニン受容体拮抗薬、デキサメタゾン投与を受けている患者は、遅延性嘔吐の予防にはデキサメタゾンとaprepitant(アプレピタント)の併用が提案された。なぜならばデキサメタゾンとaprepitant(アプレピタント)の併用はデキサメタゾン単独よりも優れているからである。 MASCC合意レベル:中 MASCC信頼性レベル:高 ASCOエビデンスレベル: II ASCO推奨グレード:A 第3委員会による高度嘔吐リスク化学療法後の遅延性悪心・嘔吐予防のガイドラインです。 高度嘔吐リスクはほぼ全患者、すなわち90%を超える患者で催吐性が認められるものです。 遅延性悪心嘔吐は抗癌剤の投与後24時間以降に起こり数日から1週間程度続くことが多いです。 高度嘔吐リスクのシスプラチン投与されている患者が急性嘔吐予防にaprepitant(アプレピ タント)、5-HT3受容体拮抗薬、デキサメタゾンが投与されている場合は、遅 延性嘔吐の予防にはデキサメタゾン単独投与より、デキサメタゾンとaprepitant(アプ レピタント)の併用の方が提案されています。それはデキサメタゾン単独投与より、 デキサメタゾンとaprepitant(アプレピタント)の併用の方が優れた効果があるからです。 急性嘔吐は抗癌剤の投与開始から24時間以内に起こります。 MASCCの合意レベルは中、信頼性レベルは高、ASCOのエビデンスレベルはII、推奨グレー ドはAです。 (参考) aprepitant(アプレピタント) 選択的ニューロキニン(NK1)受容体拮抗薬 ヨーロッパ: Emend® (Merck) アメリカ: Emend® (Merck) 本邦未発売 5-HT3受容体拮抗薬:セロトニン拮抗薬 デキサメタゾン:副腎皮質ホルモン ASCOエビデンスレベル:II 1つ以上のランダム化比較試験による(検出力が低い) ASCO推奨グレード:A Iのエビデンス、またはII、III、IVに属する複数の研究から一貫した調査 結果が 入手できる(行うよう強く勧められる) June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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第4委員会(1/3): 中等度嘔吐リスク化学療法(MEC)における急性嘔吐 予防のためのガイドライン:
MECの初回コースでは、5-HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾンが急性悪心・嘔吐の予防に推奨される。 MASCC信頼性レベル:高 MASCC合意レベル:高 ASCOエビデンスレベル: I ASCO推奨グレード:A 第4委員会の中等度嘔吐リスク化学療法(MEC)による急性嘔吐予防のためのガ イドラインです。 MECはmoderately emetic chemotherapyの略です。中等度嘔吐リ スクは患者の30%から90%で嘔吐リスクが認められる場合に用いられています。 急性嘔吐は投与開始から24時間以内に起こるものを指します。 MECの初回コースでは5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンの併用が急性嘔吐の 予防に推奨されています。MASCCの合意レベルは高、信頼性レベルは 高、ASCOのエビデンスレベルはI、推奨グレードはAです。 (参考) MEC:moderately emetic chemotherapy、中等度嘔吐リスク化学療法 急性悪心・嘔吐:投与開始~24時間以内に起こる。 中等度嘔吐リスク:患者の30%~90%で催吐性が認められる。 5-HT3受容体拮抗薬:セロトニン拮抗薬 デキサメタゾン:副腎皮質ホルモン ASCOエビデンスレベル:I 複数のランダム化比較試験のシステマティクレビュー/メタアナライシ スによる(検出力が高い) ASCO推奨グレード:A Iのエビデンス、またはII、III、IVに属する複数の研究から一貫した調 査結果が入手できる(行うよう強く勧められる) June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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中等度嘔吐リスク化学療法における急性嘔吐予防のための ガイドライン:
第4委員会(2/3): 中等度嘔吐リスク化学療法における急性嘔吐予防のための ガイドライン: 中等度嘔吐リスクの治療の第1サイクルで、ガイドラインに則って急性嘔吐予防薬が投与されている場合、セロトニン受容体拮抗薬は薬剤間で臨床的に直接関連する差異はない*。 MASCC信頼性レベル:高 MASCC合意レベル:高 ASCOエビデンスレベル: I ASCO推奨グレード:A 第4委員会スライドによる中等度嘔吐リスク化学療法における急性嘔吐予防のためのガイドラ インです。中等度嘔吐リスク化学療法はMEC、moderately emetic chemotherapyともよばれます。 患者の30%から90%で催吐性が認められる場合です。急性悪心・嘔吐は投与開始から24時間以内に起こる ものを指します。 中等度嘔吐リスクの治療の第1サイクルで、ガイドラインに則って急性嘔吐の予防薬が投与 されている場合、薬剤間で臨床的に直接関連する差異はありません。 MASCC合意レベルは高、信頼性レベルは高、ASCOエビデンスレベルはI、推奨グレードはAです。 5-HT3受容体拮抗薬palonosetron(パロノセトロン) の比較データに興味を示した参加者もい ましたが、ガイドラインの変更には、ガイドラインに沿ったデキサメタゾンと共に投与する試 験が必要であると指摘しています。 (参考) MEC:moderately emetic chemotherapy:中等度嘔吐リスク化学療法 急性悪心・嘔吐:投与開始~24時間以内に起こる。 中等度嘔吐リスク:患者の30%~90%で催吐性が認められる。 palonosetron hydrochloride(パロノセトロン) 5-HT3受容体拮抗薬(セロトニン拮抗薬) ヨーロッパ:Oncit® (Italfarmaco) アメリカ :Aloxi® (MGI) 本邦未発売 デキサメタゾン:副腎皮質ホルモン ASCOエビデンスレベル:I 複数のランダム化比較試験のシステマティクレビュー/メタアナライシ スによる(検出力が高い) ASCO推奨グレード:A Iのエビデンス、またはII、III、IVに属する複数の研究から一貫した調 査結果が入手できる(行うよう強く勧められる) *参加者はpalonosetron(パロノセトロン)との比較データに興味を持ったが、このガイドラインを変更するには、ガイドラインに沿っ た(デキサメタゾンと共に投与)試験が必要であるとも指摘している。 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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MECによる急性悪心・嘔吐の予防に用いられるデキサメタゾンの推奨用量は8mgを静脈内投与×1回である。
第4委員会(3/3): 中等度嘔吐リスク化学療法における急性嘔吐予防のためのガイドライン: MECによる急性悪心・嘔吐の予防に用いられるデキサメタゾンの推奨用量は8mgを静脈内投与×1回である。 MASCC信頼性レベル:中 MASCC合意レベル:高 ASCOエビデンスレベル:II ASCO推奨グレード:B 第4委員会による中等度嘔吐リスク化学療法における急性嘔吐予防の ためのガイドラインです。 MECはmoderately emetic chemotherapyの略 で患者の30%から90%で催吐性が認められる場合です。急性悪心・嘔吐 は投与開始から24時間以内に起こるものを指します。 MEC時の急性悪心・嘔吐の予防にはデキサメタゾン8mgを静脈内投 与で1回が推奨されています。 MASCCの合意レベルは高、信頼性レベルは中、ASCOのエビデンス レベルはII、推奨グレードはBです。 (参考) MEC:moderately emetic chemotherapy:中等度嘔吐リスク化学療法 急性悪心・嘔吐:投与開始~24時間以内に起こる。 中等度嘔吐リスク:患者の30%~90%で催吐性が認められる。 デキサメタゾン:副腎皮質ホルモン ASCOエビデンスレベル:II 1つ以上のランダム化比較試験による(検出力が低い) ASCO推奨グレード:B II、III、IVのエビデンスがあり、調査結果は概して一貫している(行うよ う勧められる) June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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急性嘔吐に対するセロトニン(5-HT3)受容体拮抗薬の 推奨用量
薬剤 投与経路 用量 オンダンセトロン 静注 8 mg または 0.15 mg / Kg 経口 16 mg* グラニセトロン 1 mg または 0.01 mg / Kg 2 mg (または 1 mg**) dolasetron(ドラセトロン) 本邦未発売 100 mg または 1.8 mg / Kg 100 mg トロピセトロン 5 mg palonosetron(パロノセトロン) 本邦未発売 0.25 mg 化学療法時の急性嘔吐に対する5-HT3受容体拮抗薬の薬剤別、投与経路別の推奨用量です。急性 悪心・嘔吐は投与開始から24時間以内に起こるものです。 まずオンダンセトロンです。これは静注で8mgまたは0.15mg/kg、経口で16mgです。この16mg はランダム化試験では8mgの1日2回で実施しています。 次にグラニセトロンです。これは静注で1mgまたは0.01mg/kg、経口では2mgです。しかし、こ の2mgはMEC、 moderately emetic chemotherapy:中等度嘔吐リスク化学療法の小規模ランダム化 試験およびHEC、 high emetic chemotherapy:高度嘔吐リスク化学療法の臨床第2相試験の成績に 基づき、1mgを推奨しているパネリストもいます。 dolasetron(ドラセトロン)は静注で100mgまたは1.8mg/kg、経口で100mgです。本剤は本邦 未発売です。トロピセトロンは静注で5mg、経口で5mgです。最後にpalonosetron(パロノセトロ ン)です。静注のみで0.25mgです。本剤も本邦未発売です。 (参考) 急性悪心・嘔吐:投与開始~24時間以内に起こる。 MEC:moderately emetic chemotherapy:中等度嘔吐リスク化学療法 HEC:high emetic chemotherapy:高度嘔吐リスク化学療法 中等度嘔吐リスク:患者の30%~90%で催吐性が認められる。 高度悪心・嘔吐リスク:ほぼ全患者(90%超)で催吐性が認められる。 5-HT3受容体拮抗薬:セロトニン拮抗薬 dolasetron(ドラセトロン):本邦未発売 palonosetron(パロノセトロン) :本邦未発売 * ランダム化試験は8mg 1日2回で実施。 **パネリストによっては用量1mgを推奨している:MEC小規模ランダム化試験、HEC第2相試験。 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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デキサメタゾンおよびaprepitant (アプレピタント) の推奨用法
用量および投与スケジュール 高度リスク 急性嘔吐 20 mg 、1回 遅延性嘔吐 8 mgを1日2回、3-4日間 中等度リスク 8 mg、1回 1日8 mg 、2-3日間 (パネリストの多くは4mgを1日2回) 低度リスク 4 - 8 mg 、1回 aprepitant(アプレピタント) 用量および投与スケジュール 125 mg経口、1回 80 mg経口、2日に1回 デキサメタゾンとaprepitant(アプレピタント)の推奨用量です。 最初にデキサメタゾンについて説明します。 高度リスク、HEC:high emetic chemotherapyの場合には急性嘔吐の予防には20mgを1回、 遅延性嘔吐の予防には8mgを1日2回、3から4日間投与します。 中等度リスク、MEC:moderately emetic chemotherapyの場合には急性嘔吐の予防には 8mgを1回、遅延性嘔吐の予防には1日8mgを2から3日間投与します。この8mgは4mgの1日 2回が多数意見です。 低度リスクは患者の10%から30%で催吐性が認められるリスクですが、この場合には急 性嘔吐の予防に4から8mgを1回投与します。 次にaprepitant(アプレピタント)について説明します。まず急性嘔吐の予防には125mg を経口で1回投与します。遅延性嘔吐の予防には80mgを経口で2日に1回投与します。 (参考) デキサメタゾン:副腎皮質ホルモン aprepitant(アプレピタント) 選択的ニューロキニン(NK1)受容体拮抗薬 ヨーロッパ: Emend® (Merck) アメリカ: Emend® (Merck) 本邦未発売 HEC:high emetic chemotherapy:高度嘔吐リスク化学療法 MEC:moderately emetic chemotherapy:中等度嘔吐リスク化学療法 低度嘔吐リスク:患者の10%~30%で催吐性が認められるもの 急性嘔吐:投与開始〜24時間以内に起こる 遅延性嘔吐:投与後24時間以降に起こり数日〜1週間程度続くことが多い June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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さらに、嘔吐リスクはサイクル数を重ねると上昇するようである。
“AC” *の説明 第2-5委員会 中等度嘔吐リスクの化学療法における急性嘔吐に対して、公式の推奨ではないが、アントラサイクリンとシクロホスファミドが併用投与されている女性は悪心・嘔吐のリスクが特に高い状況下にあることを認識すべきである。 さらに、嘔吐リスクはサイクル数を重ねると上昇するようである。 “AC”についての特別の説明です。第2委員会から第5委員会の 共通の問題ですが、中等度嘔吐リスク化学療法、MECにおける急性嘔吐に対する正 式推奨とは別のコメントです。ここにあります“AC”(カッコ付きAC)は日本ではA- C療法と称されているものです。アントラサイクリン系薬剤とシクロホスファミドが 投与される療法です。 コメントの内容は、アントラサイクリン系薬剤とシクロホスファミドが併用されて いる女性では、嘔吐リスクが非常に高く、サイクル数を重ねるとリスクは上 昇するといっています。 カッコ付きAC すなわちA-C療法はアントラサイクリン系薬剤とシクロホスファミ ドの併用です。このA-C療法にはいわゆるACレジメン、ECレジメン、FACレジメン、 FECレジメンがあります。ACレジメンはドキソルビシンとシクロホスファミドの併 用です。ECレジメンはエピルビシンとシクロホスファミドの併用です。FACレジメ ンは先のACレジメン、すなわちドキソルビシンとシクロホスファミドです。これに 5-FUを併用します。FECレジメンは先のECレジメンすなわちエピルビシンとシクロ ホスファミドです。これに5-FUを併用します。 (参考) “AC”:A-C療法、アントラサイクリン系薬剤とシクロホスファミド ACレジメン:ドキソルビシンとシクロホスファミド ECレジメン:エピルビシンとシクロホスファミド FACレジメン: ACレジメンに5-FUを併用 FECレジメン:ECレジメンに5-FUを併用 エピルビシン:ファルモルビジン(ファイザー/協和醗酵) MEC:moderately emetic chemotherapy:中等度嘔吐リスク化学療法 急性嘔吐:投与開始〜24時間以内に起こる *“AC ” =アントラサイクリンとシクロホスファミドの併用。 以下のレジメンがある:AC、EC、FAC、FEC。A=ドキソルビシン、E=エピルビシン、 C=シクロホスファミド、F=5-FU。 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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第5委員会(1/2): 中等度嘔吐リスク化学療法中の患者における遅延性 悪心・嘔吐予防のためのガイドライン:
遅延性悪心・嘔吐が有意に発生するとされているMECを受けている患者は遅延性嘔吐を予防する制吐療法を受けるべきである。 MASCC信頼性レベル:高 MASCC合意レベル:高 ASCOエビデンスレベル: I ASCO推奨グレード:A 第5委員会による中等度嘔吐リスク化学療法中の患者における遅延性悪心・嘔 吐を予防するためのガイドラインです。中等度嘔吐リスクは、患者の30%か ら90%で催吐性が認められ、 MEC:moderately emetic chemotherapyともいわれ ます。遅延性嘔吐は投与後24時間以降に起こり数日から1週間程度続くことが 多いものです。 遅延性悪心・嘔吐の発生が有意に高いMECを受ける患者は、制吐療法を受 けるべきとしています。 MASCCの合意レベルは高、信頼性レベルは高、ASCOのエビデンスレベル はI、推奨グレードはAです。 (参考) 遅延性嘔吐:投与後24時間以降に起こり数日〜1週間程度続くことが多い。 MEC:moderately emetic chemotherapy:中等度嘔吐リスク化学療法 中等度嘔吐リスク:患者の30%~90%で催吐性が認められる。 ASCOエビデンスレベル:I 複数のランダム化比較試験のシステマティックレビュー/メタアナライ シスによる(検出力が高い) ASCO推奨グレード:A Iのエビデンス、またはII、III、IVに属する複数の研究から一貫した調 査結果が入手できる(行うよう強く勧められる) June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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第5委員会(2/2): 中等度嘔吐リスク化学療法中の患者における遅延性 悪心・嘔吐予防のためのガイドライン:
経口デキサメタゾンが優先治療である。 MASCC信頼性レベル:高 MASCC合意レベル:高 ASCOエビデンスレベル:II ASCO推奨グレード:A 5-HT3受容体拮抗薬は代替選択肢として使用可能である。 MASCC信頼性レベル:中 MASCC合意レベル:中 ASCO推奨グレード:B 第5委員会による中等度嘔吐リスク化学療法中の患者における遅延性悪心・嘔吐を予防するためのガイドラインです。 この場合はデキサメタゾンの経口投与が優先的治療としています。中等度嘔吐リスクは、患 者の30%から90%で催吐性が認められ、 MEC:moderately emetic chemotherapyともいわれます。 遅延性嘔吐は投与後24時間以降に起こり数日から1週間程度続くことが多いものです。MASCC 合意レベルは高、信頼性レベルは高、ASCOのエビデンスレベルはII、推奨グレードはAです。 また5-HT3受容体拮抗薬は代替治療の選択肢としては使用可能であるとしています。MASCC 合意レベルは中、信頼性レベルは中、ASCOエビデンスレベルはII、推奨グレードはBです。 (参考) 遅延性悪心・嘔吐:投与後24時間以降に起こり数日〜1週間程度続くことが多い。 MEC:moderately emetic chemotherapy:中等度嘔吐リスク化学療法 中等度嘔吐リスク:患者の30%~90%で催吐性が認められる。 デキサメタゾン:副腎皮質ホルモン 5-HT3受容体拮抗薬:セロトニン拮抗薬 代替選択肢:遅延性悪心・嘔吐には5-HT3受容体拮抗薬が有効でないことがあり、優先治療とはな っていない ASCOエビデンスレベル:Ⅱ 1つ以上のランダム化比較試験による(検出力が低い) ASCO推奨グレード:A Iのエビデンス、またはII、III、IVに属する複数の研究から一貫した調査結果が入 手できる (Merck) (行うよう強く勧められる) ASCO推奨グレード:B II、III、IVのエビデンスがあり、調査結果は概して一貫している(行うよう勧められる) June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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第6委員会(1/2) 低度嘔吐リスク薬剤*が投与される患者における急性悪心・嘔吐予防のためのガイドライン:
低度嘔吐リスク薬剤が投与される患者には単剤(例えば低用量のコルチコステロイド)が提案される。 MASCC信頼性レベル:レベル設定不可 MASCC合意レベル:中 ASCOエビデンスレベル: III、IV ASCO推奨グレード:D 第6委員会による低度嘔吐リスク薬剤が投与される患者における急性悪 心・嘔吐を予防するためのガイドラインです。急性悪心・嘔吐は投与 開始から24時間以内に起こるものです。 患者の10%から30%で催吐性が認められる低度嘔吐リスクの薬剤が投与 される患者には単剤での投与、例えば低用量コルチコステロイドが提案 される、としています。 *(アステリスク)は、異例なことではあるが、ガイドラインが推奨して いる治療法で嘔吐を示した場合、その後の化学療法では、リスクが一段上す なわち中等度嘔吐リスクの場合のレジメンを適用するべきであるとしていま す。MASCC合意レベルは中、信頼性レベルはレベル設定不可、ASCOのエビ デンスレベルはIII、IV、推奨グレードはDです。 (参考) 低度嘔吐リスク:患者の10%~30%で催吐性が認められる。 急性悪心・嘔吐:投与開始〜24時間以内に起こる コルチコステロイド:副腎皮質ホルモン ASCOエビデンスレベル:III 非ランダム化比較試験による。 ASCOエビデンスレベル:IV 分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究による) ASCO推奨グレード:D 体系的な実験エビデンスがほとんど、または全くない(行わないよう 勧められる) June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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第6委員会(2/2): 最小嘔吐リスクの抗癌剤*が投与される患者における 急性悪心・嘔吐予防のためのガイドライン:
悪心・嘔吐の病歴のない患者では化学療法前に制吐剤をルーチン投与するべきではない。 MASCC信頼性レベル:レベル設定不可 MASCC合意レベル:高 ASCOエビデンスレベル:V、および専門医合意 ASCO推奨グレード:D 第6委員会による最小嘔吐リスクの抗癌剤が投与される患者における急性悪心・ 嘔吐を予防するためのガイドラインです。最小悪心・嘔吐リスクは患者の10% 未満に催吐性が認められる場合を指し、急性悪心・嘔吐は投与開始から24時間 以内に起こるものです。 これまでに抗癌剤による悪心・嘔吐を経験していない患者では化学療法前に 制吐剤をルーチン投与するべきではありません。MASCC合意レベルは高、 信頼性レベルは設定不可です。ASCOエビデンスレベルはVで専門医合意あり です。推奨グレードはDです。 *(アステリスク)は、最小嘔吐リスクレベルでは異例ではあるが、ガイドラインが推奨している治療法で嘔吐を示した場合、その後の化学療法では、リスクが一段上すなわち低度嘔吐リスクの場合のレジメンを適用するべきであるとしています。 (参考) 最小悪心・嘔吐リスク:患者の10%未満に催吐性が認められる。 急性悪心・嘔吐:投与開始〜24時間以内に起こる ASCOエビデンスレベル:V 記述研究(症例報告やケースシリーズ) ASCO推奨グレード:D 体系的な実験エビデンスがほとんど、または全くない(行わないよう勧め られる) *最小嘔吐リスクレベルでは異例ではあるが、もし患者がガイドラインが推奨している治療で嘔吐を示した 場合は、その後の治療では嘔吐リスクレベルが一段上のレジメンを適用するべきである。 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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第7委員会: シスプラチンが複数日投与される患者のためのガイドライン:
シスプラチンが複数日投与される患者には急性悪心・嘔吐予防に5-HT3拮抗薬とデキサメタゾンを併用で、遅延性悪心・嘔吐予防にデキサメタゾンを投与すべきである。 MASCC信頼性レベル:高 MASCC合意レベル:高 ASCOエビデンスレベル:II ASCO推奨グレード:A 第7委員会によるシスプラチンが複数日投与される患者のためのガイドラインです。 シスプラチンが複数日投与される患者に対しては、急性悪心・嘔吐の予防には 5-HT3拮抗薬とデキサメタゾンを投与し、遅延性悪心・嘔吐の予防にはデキサメタゾ ンを投与すべきです。MASCC合意レベルは高、信頼性レベルは高、ASCOのエビデ ンスレベルはII、推奨グレードはAです。 注意すべきこととして、レスキュー投与による制吐や造血幹細胞移植時に用いら れる高用量化学療法には適切なガイドラインがないことをあげています。 (参考) シスプラチン:プラトシン®(ファイザー/協和醗酵) 急性悪心・嘔吐:投与開始〜24時間以内に起こる 遅延制悪心・嘔吐:投与後24時間以降に起こり数日〜1週間程度続くことが多い 5-HT3受容体拮抗薬: セロトニン拮抗薬 デキサメタゾン:副腎皮質ホルモン レスキュー投与:予防投与とは異なり、症状出現後に緩和・軽減のために投与する。 移植:白血病等で行われる造血幹細胞移植(骨髄・未梢血)時には高用量化学療法が 施行されることが多い。 ASCOエビデンスレベル:II 1つ以上のランダム化比較試験による(検出力が低い) ASCO推奨グレード:A Iのエビデンス、またはII、III、IVに属する複数の研究から一貫した調査結果が手できる(行うよう強く勧められる) 注記: レスキューによる制吐や高用量(移植等)化学療法には適切なガイドラインはないと考えられる。 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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予測性嘔吐に対する最良のアプローチは、急性嘔吐と遅延性嘔吐を可能な限り最善を尽くしてコントロールすることである。
第8委員会: 注記: 予測性嘔吐に対する最良のアプローチは、急性嘔吐と遅延性嘔吐を可能な限り最善を尽くしてコントロールすることである。 第8委員会による予測性嘔吐についてのコメントです。 予測性嘔吐に対する最良のアプローチとは、急性嘔吐、遅延性嘔吐ともに、 可能な限りの最善を尽くしてコントロールする、すなわち完全防止することです。 (参考) 予測(心因)性嘔吐:抗癌剤投与より前から生ずる嘔吐のこと。 前回の化学療法で悪心・嘔吐が強かった人、乗り物酔いの既往症のある人、 若年者、精神的に不安の強い人で発生する傾向がある。したがって、急性嘔 吐を予防し最小限に抑えることが重要で、緊張を緩和することが有効である。 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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第8委員会: 化学療法あるいはRT(放射線療法)を受ける患者の 予測性悪心・嘔吐の管理のためのガイドライン
予測性悪心・嘔吐は心理学的方法で管理されるべきである。 MASCC信頼性レベル:高 MASCC合意レベル:高 心理学的方法の代替あるいは追加選択肢としてはベンゾジアゼ ピン系薬剤を使用する。 MASCC信頼性レベル:中 第8委員会による化学療法あるいは放射線療法を受ける患者における予測 悪心・嘔吐を管理するためのガイドラインです。予測性嘔吐は抗癌剤投与 より前から生ずる嘔吐です。 まず第一に、予測性悪心・嘔吐は心理学的方法で管理されるべ きとしています。MASCC合意レベルは高、信頼性レベルは高です。 次に、心理学的方法の代替あるいは心理学的方法に追加してベンゾジア ゼピン系薬剤の使用が指示されています。MASCC合意レベルは高、信頼 性レベルは中です。 (参考) 予測(心因)性嘔吐:抗癌剤投与より前から生ずる嘔吐。 ベンゾジアゼピン系薬剤:クロルジアゼポキシド/ジアゼパム/オキサゾラム/ クロキサゾラム/クロナゼパム/ニトラゼパム/ ニメタゼパム/フルラゼパム/ブロマゼパム/ ロラゼパムなど。 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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第9委員会(1/5) - 放射線療法(RT)の嘔吐リスクレベル -
治療部位 高度 全身 中等度 上腹部 低度 胸部下部、骨盤、 頭蓋(放射線手術)、頭蓋脊椎 最小 頭頚部、四肢、頭蓋、乳房 第9委員会による放射線療法により誘発される嘔吐リスクレベルの分類 です。放射線照射部位、すなわち治療部位による嘔吐リスクレベルが 分類されています。 嘔吐リスクレベルが高度、中等度、低度、最小の4群に分けられています。 高度リスクはTBI、全身照射です。中等度リスクは上腹部照射です。低 度リスクは胸部下部、骨盤、頭蓋、頭蓋脊椎部への照射です。頭蓋は 特に放射線手術に限定されています。最小リスクは頭頚部、四肢、頭 蓋、乳房への照射です。頭蓋は低度リスクにある放射線手術以外のい わゆる頭蓋照射といわれるものです。 (参考) 放射線療法による嘔吐:放射線によって体内の細胞が変化をおこし、壊され た細胞の成分が血液または神経を介し、嘔吐中枢を刺激すること よって起る。 放射線手術:ガンマナイフ等を用いた手術 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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第9委員会(2/5): 高度嘔吐リスクのRT(放射線療法)を受ける患者における悪心・嘔吐予防のためのガイドライン:全身照射
高度嘔吐リスクのRTを受ける患者には5-HT3拮抗薬とデキサメタゾンを投与するべきである。 MASCC信頼性レベル:中 MASCC合意レベル:高 ASCOエビデンスレベル:III ASCO推奨グレード:C 第9委員会による高度嘔吐リスクの放射線療法を受ける患者における悪 心・嘔吐を予防するためのガイドラインです。まず全身照射の場合で す。 90%を超えるほぼ全患者で催吐性が認められる高度嘔吐リスクの放 射線療法を受ける患者には、5-HT3拮抗薬とデキサメタゾンを併用す るべきです。MASCC合意レベルは高、信頼性レベルは中、ASCOエビ デンスレベルはIII、推奨グレードはCです。 (参考) 高度嘔吐リスク:ほぼ全患者(90%超)で催吐性が認められるもの。 全身照射:放射線治療の一方法で、全身あるいはそれに近い身体の広い部分 に照射する方式。骨髄移植に先立つ照射や腫瘍が全身に広がってい る症例がその対象となる。 5-HT3受容体拮抗薬:セロトニン拮抗薬 デキサメタゾン:副腎皮質ホルモン ASCOエビデンスレベル:III 非ランダム化比較試験による ASCO推奨グレード:C II、III、IVのエビデンスがあるが、調査結果が一貫していない(行う ことを考慮してもよいが十分な科学的根拠がない) June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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第9委員会(3/5): 中等度嘔吐リスクのRT (放射線療法)を受ける患者における悪心・嘔吐予防のためのガイドライン : 上腹部照射
中等度嘔吐リスクのRTを受ける患者には5-HT3拮抗薬を投与するべきである。 MASCC信頼性レベル:高 MASCC合意レベル:高 ASCOエビデンスレベル:II ASCO推奨グレード:A 第9委員会による中等度嘔吐リスクの放射線療法を受ける患者における悪心・嘔吐を予防するためのガイドラインです。上腹部照射の場合です。 患者の30%から90%で催吐性が認められる中等度嘔吐リスクの放射線療法を受ける患者には、5-HT3拮抗薬を投与するべきです。 MASCC合意レベルは高、信頼性レベルは高、ASCOエビデンスレベルはII、推奨グレードはAです。 (参考) 中等度嘔吐リスク:患者の30%~90%で催吐性が認められるもの 5-HT3受容体拮抗薬:セロトニン拮抗薬 ASCOエビデンスレベル:II 1つ以上のランダム化比較試験による(検出力が低い) ASCO推奨グレード:A Iのエビデンス、またはII、III、IVに属する複数の研究から一貫した調査 結果が入手できる(行うよう強く勧められる) June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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第9委員会(4/5): 低度嘔吐リスクのRT(放射線療法)を受ける患者における悪心・嘔吐予防のためのガイドライン: 胸部下部、骨盤、頭蓋(放射線手術)、頭蓋脊椎の照射 低度嘔吐リスクのRT(放射線療法)を受ける患者には5-HT3拮抗薬をレスキュー投与するべきである。 MASCC信頼性レベル:低 MASCC合意レベル:高 ASCOエビデンスレベル:IV ASCO推奨グレード:D 低度嘔吐リスクのRT(放射線療法)を受ける患者で嘔吐歴がある時、予防的に5-HT3拮抗薬を投与するべきである。 MASCC信頼性レベル:中 ASCOエビデンスレベル:III ASCO推奨グレード:B 第9委員会による低度嘔吐リスクの放射線療法を受ける患者における悪心・嘔吐 の予防のためのガイドラインです。胸部下部、骨盤、頭蓋放射線手術、頭蓋脊椎 の照射の場合です。 患者の10%から30%で催吐性が認められる低度嘔吐リスクの放射線療法を受ける 患者には、5-HT3拮抗薬をレスキュー投与するべきです。MASCC合意レベルは高、 信頼性レベルは低、ASCOエビデンスレベルはIV、ASCO推奨グレードはDです。 同様に低度嘔吐リスクの放射線療法を受ける患者で、すでに嘔吐歴がある場合 には予防的に5-HT3拮抗薬を投与するべきです。MASCC合意レベルは高、信頼性 レベルは中、ASCOエビデンスレベルはIII、推奨グレードはBです。 (参考) 低度嘔吐リスク:患者の10%~30%で催吐性が認められるもの 放射線手術:ガンマナイフ等を用いた手術 5-HT3受容体拮抗薬:セロトニン拮抗薬 レスキュー投与:予防投与とは異なり、症状出現後に緩和・軽減のために投与する。 ASCOエビデンスレベル:IV 分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究による) ASCO推奨グレード:D 体系的な実験エビデンスがほとんど、または全くない(行わないよう勧められる) ASCOエビデンスレベル:III 非ランダム化比較試験による ASCO推奨グレード:B II、III、IVのエビデンスがあり、調査結果は概して一貫している(行うよう勧められる) June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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第9委員会(5/5): 最小嘔吐リスクのRT(放射線療法)を受ける患者における悪心・嘔吐予防のためのガイドライン: 頭頚部、四肢、頭蓋、乳房の照射 最小嘔吐リスクのRT(放射線療法)を受ける患者にはドーパミン拮抗薬または5-HT3拮抗薬をレスキュー投与するべきである。 MASCC信頼性レベル:低 MASCC合意レベル:高 ASCOエビデンスレベル:IV ASCO推奨グレード:D 第9委員会による最小嘔吐リスクの放射線療法を受ける患者における 悪心・嘔吐を予防するためのガイドラインです。頭頚部、四肢、頭蓋、 乳房の照射の場合です。 患者の10%未満に催吐性が認められる最小嘔吐リスクの放射線療法 を受ける患者には、ドーパミン拮抗薬あるいは5-HT3拮抗薬をレス キューで投与するべきです。 MASCC合意レベルは高、信頼性レベルは低、ASCOエビデンスレベ ルはIV、推奨グレードはDです。 (参考) 最小嘔吐リスク:患者の10%未満に催吐性が認められるもの ドーパミン拮抗薬:ドーパミン受容体に高い結合親和性を示し拮抗的に作用する薬剤 5-HT3受容体拮抗薬:セロトニン拮抗薬 レスキュー投与:予防投与とは異なり、症状出現後に緩和・軽減のために投与する。 ASCOエビデンスレベル:IV 分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究による) ASCO推奨グレード:D 体系的な実験エビデンスがほとんど、または全くない(行わないよう勧め られる) June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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嘔吐リスク調査研究(第10委員会)(1/9) - 一般的方法論:高度リスクと中等度リスク -
比較試験では: ・嘔吐リスクはできる限り同じものを用いる。 高度リスク ・シスプラチン vs シスプラチン(同じ用量とスケジュールで) ・ダカルバジン vs ダカルバジン(同じ用量とスケジュールで) 中等度リスク ・アントラサイクリン系薬剤を含む療法(FEC、FAC) vs AC(例) ・既知のリスク群による層別化(および解析)を行う。 (特に:性別、年齢、アルコール摂取歴) 調査研究と臨床で使用可能な患者リスクファクターのアルゴリズムをバリデートすることを考慮する。 放射線療法においても上記と同様のバリデートが有用である。 第10委員会による制吐性調査研究のうちの一般的方法論です。高度嘔吐リスク と中等度嘔吐リスクについてのコメントです。 比較試験を実施する際には、まず嘔吐リスクが同等のものを用います。すなわち、 高度リスク薬剤の試験では、例えばシスプラチン対シスプラチンを同量で同じ 投与スケジュールで比較するとか、ダカルバジン対ダカルバジンでも同様に実 施するということです。中等度嘔吐リスク薬剤の場合は例えばECレジメンや FACレジメンのアントラサイクリン系薬剤を含む療法対ACレジメンのような 同じレジメンで比較します。 第2に比較試験では層別化および層別解析を行います。 例えば性別、年齢、アルコール摂取歴等により患者を層別化します。 これらのうち調査研究と臨床で使用できる患者リスクファクターのアルゴ リズムをバリデートすなわち検証します。この層別と層別解析は放射線療法に おいても同様の手法が有用です。 (参考) “AC”:A-C療法、アントラサイクリン系薬剤とシクロホスファミド ACレジメン:ドキソルビシンとシクロホスファミド ECレジメン:エピルビシンとシクロホスファミド FACレジメン:ACレジメンに5-FUを併用 シスプラチン:プラトシン(ファイザー/協和醗酵) エピルジン:ファモルビシン (ファイザー/協和醗酵) アルゴリズム:問題解決のための段階的手法 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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嘔吐リスク調査研究(第10委員会)(2/9) - 一般的方法論: 遅延性嘔吐 (第3委員会および第5委員会)-
・催吐刺激のコントロールに加え、急性嘔吐に対する制吐レジメンは全患者で同じであるべきである。 ・ガイドラインの推奨レジメンを比較研究の基準とするべきである。 ・試験は急性嘔吐レジメンに対する患者の反応が明らかになるようにデザインされるべきである。 完全防止 vs <完全防止(完全防止に達しない) 第10委員会による制吐性調査研究のうちの一般的方法論に関するもの です。第3委員会と第5委員会が担当する遅延性嘔吐についてのコメン トです。 催吐刺激のコントロールと共に、投与開始から24時間以内に起こる 急性嘔吐に対する制吐レジメンは全患者同じものとし、ガイドライン 推奨のレジメンを比較試験の基準とします。 試験は急性嘔吐レジメンに対する患者の反応が明らかとなるように デザインして、完全防止に達したか否かを判定します。 (参考) 遅延性嘔吐:投与後24時間以降に起こり数日~1週間程度続くことが多い。 急性嘔吐:投与開始~24時間以内に起こる。 完全防止:嘔吐がなく、悪心がないあるいは軽度。 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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嘔吐リスク調査研究(第10委員会)(3/9) - なお取り組むべき領域 -
・低度嘔吐リスク群―プロスペクティブ試験が欠如(第6委員会) - 実施困難ではない。 - 最適で経済的に適切なレジメン。 - ファーストラインの治療が不十分な時の実証ずみのアプローチ。 ・小児科(第9委員会) - 依然として研究の数が少なく、質が低い。 - 研究対象となっている患者の割合が高いことは驚くべきことである。 ・放射線療法(第9委員会) - 特定の試験が引き続き必要である。 - 潜在的に長期的作用のある新規薬剤が特に有望な研究の候補である。 - リスクモデルをバリデートすること。 ・制吐剤による副作用 - NK1受容体に作用する薬剤は血算に影響するか? 第10委員会による今後取り組むべき領域についてのコメントです。 まず低度嘔吐リスク薬剤に関してはプロスペクティブ試験の欠如があげられます。これは第6委員会が担当の事項です。試験の実施は難しくないため最適で経済的なレジメンを用いて実施します。もしファーストラインの治療が不十分な時には、す でに実証ずみのアプローチを用いて試験を遂行します。 第2に第9委員会が担当する小児科の領域です。この領域では研究数が少なく、かつその質も低いものです。しかし、小児科領域では研究対象となっている患者の割合が高いことが特徴です。 第3に第9委員会担当の放射線療法についてです。この領域独自の試験の必要性は切れずに連続しております。 ただ、強力な長期作用型の新規薬剤が特に有望な研究対象としてあるようです。さらに、この領域に特有なリスクモデルをバ リデート、すなわち検証することも必要です。 最後に制吐剤による副作用の問題です。NK1受容体すなわちニューロキニン1受容体に作用する薬剤は血算に影響するかどうかといった問題も今後の課題です。 (参考) 低度嘔吐リスク:患者の10%~30%で催吐性が認められるもの プロスペクティブ試験:前向き試験。臨床試験に登録した被験者のデータを収集 し、時間をかけて追跡する NK1受容体拮抗薬:ニューロキニン1受容体拮抗薬 血算:1mm3の血液中に含まれる赤血球数(RBC)または白血球数(WBC) June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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嘔吐リスク調査研究(第10委員会)(4/9) - 焦点の明らかになった領域:悪心のコントロール -
・方法論的課題: - 制吐性試験で採用された“悪心”に対して、患者は同じように定義 しているだろうか? 悪心を次のものと混同していないか: - 食欲不振? - 疲労感? - 胸やけ? - このことが試験で悪心スコアが悪い理由であるか? - 悪心は多数の臨床試験でプライマリーエンドポイトとすべきである。 ・有効性の課題: - 嘔吐は悪心より良好にコントロールされている。 - 他の治療的介入は必要ないか?デキサメタゾンの投与は? - 嘔吐のコントロールと悪心には高い相関がある...しかし他の メカニズムの関与は? - 明らかに大きな苦痛の原因でもあり、メジャーな必要性がある。 第10委員会による制吐性調査研究で焦点の持ち上がった領域:悪心コントロールに関するものです。 方法論的課題があります。制吐性試験で定義された“悪心”と患者がとらえている“悪心”は同じであるかどうかです。 食欲不振、疲労感や胸やけなどと混同していないかどうかです。混同していると悪心が多くなり、悪心スコアが悪く、 すなわちpoor(プア)になってしまいます。また、臨床試験では悪心をプライマリーエンドポイトとするべき です。 次に有効性についての課題です。4点がなげかけられています。1点目は悪心より嘔吐コントロールの研究の方が 先行しているということです。2点目は他の治療的介入は必要ないか、デキサメタゾンの投与はどうするか?ということです。3点目は嘔吐のコントロールと悪心には高い相関がありますが、他のメカニズムの関与はあるかどうか?といっています。 最後4点目は、嘔吐は明らかに大きな苦痛の原因でありますが、またメジャーな必要事象でもあるといっております。 (参考) 悪心スコア:術後の悪心出現頻度 プライマリーエンドポイト:エンドポイントは治療行為の意義を評価するた めの評価項目で、プライマリーエンドポイト(主要評価項目)とセ カンダリーエンドポイト(副次的評価項目)がある。プライマリー エンドポイトは、試験の主要な目的に基づいて選択する。 デキサメタゾン:副腎皮質ホルモン June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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嘔吐リスク調査研究(第10委員会)(5/9) - 基礎科学的研究とその関係 -
・新規受容体ファミリーの研究 - オピオイド受容体 - カンナビノイド受容体 - 他の受容体候補 ・作用時間に関する研究―PETの使用 ・遺伝子/分子研究 - 遺伝子配列 - 薬理遺伝学的研究 第10委員会による制吐性調査研究で基礎科学的研究に関するコメントです。 まず、制吐に関する新規受容体ファミリーをあげています。オピオイド受 容体、カンナビノイド受容体、他の受容体についてです。次に制吐剤の作用 時間に関する研究についてです。PETすなわちpositron emission tomography、 陽電子断層撮影の使用時における制吐剤の作用時間をあげています。最後に 遺伝子研究や分子研究についてふれています。遺伝子配列、薬理遺伝学的研 究といった項目をあげています。 (参考) 受容体:細胞に存在し、各種の生理活性物質を特異的に認識し、その作用を伝達 し発現するタンパク質。 オピオイド受容体:モルヒネ系薬物と立体特異的に結合し、モルヒネ作用を発現 する特定の受容体。脳では嗅三角、扁桃核、尾状核頭部 カンナビノイド:インド大麻またはアメリカ大麻に含まれている幻覚発現物質の 総称 PET:postron emission tomography、陽電子断層撮影 遺伝子配列:ヒトゲノムプロジェクトと呼ばれる世界的な研究により、30億個の 遺伝暗号からなるヒトのゲノム配列の全貌が明らかになりつつある。日本 でも国家的プロジェクトとして行われた。 薬理遺伝学:遺伝子情報・技術を基に患者ごとに個別至適化したテーラーメード医 療を現実化するための、ゲノム創薬科学の学問領域 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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嘔吐リスク調査研究(第10委員会)(6/9) - 他の方法論的考察 -
・嘔吐リスクのプロスペクティブ評価:(第1委員会) - 最新の化学療法薬剤: oxaliplatin(オキサリプラチン)* 、 pemetrexed(ペメトレキセド) * - “新規薬剤”:ゲフィチニブ、 erlotinib(エルロチニブ) * 、 erbitux(エルビタックス) * ・長期投与の研究(第1委員会) - 経口化学療法 - RT(放射線療法) ・特異的方法論: - 多回数投与サイクルの研究 - レスキュー試験 ・予後因子の研究: - NK1受容体拮抗薬を使用する時も予後因子は同じか? - 性別/ホルモンによる影響ー大規模データベースの調査を含む。 - 心理学的要因/期待とアウトカムの関係 第10委員会の制吐性調査研究でその他の方法論考察に関するものです。4項目が提示 されています。まず第1委員会の担当の催吐性のプロスペクティブ評価にちては最新 の化学療法薬剤と新規薬剤です。最新化学療法薬剤はoxaliplatin(オキサリプラチ ン)*、pemetrexed(ペメトレキセド)* 。があがっています。新規薬剤はゲフィ チニブ、erlotinib(エルロチニブ)* 、 erbitux(エルビタックス)*があがって います。*アスタリスクは本邦未発売です。第2にこれも第1委員会担当の長期投与 の研究です。経口化学療法と放射線療法があがっています。第3に特異的方法論につ いてです。投与サイクル数が多い場合の研究とレスキュー試験があがっています。 第4に予後因子の研究です。ここではNK1受容体拮抗薬を使用する時も予後因子は他 の制吐剤の時と同じかどうか、大規模データベースの調査では性別やホルモンによ る影響はあるのか、心理学的要因ともいえる期待とアウトカムの関係についてといっ た事項があがっています。 (参考) プロスペクティブ評価:前向き評価 oxaliplatin(オキザリプラチン):本邦未発売 pemetrexed(ペメトレキセド):本邦未発売 ゲフェニチブ:イレッサ(アストラゼネカ) erlotinib(エルロチニブ):本邦未発売 erbitux(エルビタックス):本邦未発売 レスキュー投与:予防投与とは異なり、症状出現後に緩和・軽減のために投与する。 NK1受容体拮抗薬:ニューロキニン1受容体拮抗薬 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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嘔吐リスク調査研究(第10委員会)(7/9) - 経済学的考察 -
・経済学的因子は適切な研究で説明されなければならない: 結果が同等なら、低コストレジメンが優先されるべきである。 - ジェネリック薬の役割は増大するであろう。 - レジメン選択によっては賠償が現実となる。 ・経済学的研究: - 独立したグループでなされるべきである。 - 観点(“見方”)を明らかにするべきである。 - ランダム化試験でプロスペクティブに実施するのに有益。 - より全面的な研究により全コストが評価される。 第10委員会による制吐性調査研究で経済的考察に関するものです。大きく2つあがっています。 第1は経済学的因子は適切な研究で説明されなければならないという ものです。以下の3点が指摘されています。結果が同等ならば低コスト のレジメンが優先されるべきであること、ジェネリック薬の役割が増 大するであろうこと、レジメン選択によっては賠償が現実のものにな るであろうという3点です。 第2は経済学的研究についてです。4点が指摘されています。経済学 的研究は独立したグループでなされるべきこと、経済学的研究は観点 (見通し)を明らかにするべきこと、経済学的研究はランダム化試験 でプロスペクティブに実施するのに有益であること、経済学的研究は より全面的な研究によリ全コストが評価されることとしています。 (参考) ジェネリック薬:特許によって保護されていない医薬品で、原則として化学 的に特許薬と同一のもの。 ランダム化試験:特定集団を研究群と対照群に無作為に振り分け、予防介入 や治療を実施して、その効果を比較する試験。科学的には最も好ま しいとされる。 プロスペクティブ試験:前向き試験 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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嘔吐リスク調査研究(第10委員会)(8/9) - ガイドラインの使用と考察 -
・ガイドラインの使用:研究は次の事項を評価… - ガインドライン使用による患者個人への影響。 - いつ、何故ガイドラインに従わなかったか。 - ガイドラインの使用が増加することと戦略の成功に関連した研究。 ・制吐剤(および嘔吐コントロール)の認められている価値 - 腫瘍専門医 - 患者 - 一般の人々 ・クオリティ・オブ・ライフについての研究 - バリデートされた評価手段を用いた研究がさらに必要か? - 他の治療因子と嘔吐コントロールがQOLに及ぼす影響に関する質的なサポーティブケアの研究を行うこと。 第10委員会による制吐性調査研究でガイドラインの使用とその考察です。 まず、ガイドラインの使用についてです。研究では次の事項を評価するとしています。 ガインドラインの使用による患者個人への影響はどうか、ガイドラ インに従わなかった場合、その時期と理由は何であるか、ガイドライ ンの使用が増加することと戦略の成功に関連した研究についての3点があがって います。 次に制吐剤および嘔吐コントロールによる価値の認識についてです。 腫瘍専門医、患者、一般の人々のそれぞれがどのように認めているか です。 最後にクオリティ・オブ・ライフについての研究です。バリデー ト、すなわち検証された評価手段を用いた研究がさらに必要かどうか。 他の治療因子と嘔吐コントロールがQOLに及ぼす影響はどんなものか といった2点があがっています。 (参考) クオリティ・オブ・ライフ:quality of life、 QOL、生活の質 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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嘔吐リスク調査研究 - 第10委員会の結論(9/9)-
・推奨される近い将来の研究領域: - 新規参入薬剤 - ガイドラインのエビデンスレベルが低い領域 - コントロール不良領域と悪心の問題への注意 ・方法論的考察は何より重要となろう。 - 現行のレジメンで良好な成績 - 研究困難な長年の問題点 ・分子的方法はこの分野で大きな可能性がある。 ・共同研究グループと大規模“治療”試験(治験)がサポーティブケアを取りあげ、研究することが必須である: - 確立されたサポーティブケアの介入を義務付ける。 - 生活の質に対するサポーティブケアを実施する。 第10委員会による制吐性調査研究の結論です。 第1に推奨される近い将来の研究領域についてです。ここでは新規参 入薬剤、ガイドラインのエビデンスレベルが低い領域、コントロール 不良領域と悪心の問題への注意の3点があがっています。 第2に方法論的考察が何より重要であるとしています。現行のレジメ ンで良好な成績を得ること、あるいは研究困難で長年の問題となって いることの2点があがっています。 第3に分子的方法がこの分野で大きな可能性があるとしています。 第4に共同研究グループと大規模“治療”試験すなわち治験がサポー ティブケアを取り上げ研究することが必須であるとしています。ここ では確立されたサポーティブケアの介入を義務付けること、生活の質 に対するサポーティブケア試験を実施することの2点があがっています。 (参考) 方法論的考察:試験で採用される基準(例:悪心)は患者も同じ認識をもっ ているのか等。 分子的方法:新規受容体ファミリーの研究、遺伝子配列、薬理遺伝学的研究、 等。 June 2004 Multinational Association of Supportive Care in Cancer
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