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2000年1月17日版 アストロ E 衛星 文部省宇宙科学研究所 宇宙科学研究所第19号科学衛星アストロEは、「はくちょう(1979年)」「てんま(1983年)」、「ぎんが(1987年)」、「あすか(1993年)」に続く、我が国5番目のX線天文衛星として、2000年2月の打ち上げを予定しています。衛星は宇宙科学研究所のMーVー4号ロケットにより、近地点高度250 km、遠地点高度550 kmの楕円軌道に投入、その後、搭載二次推進系により、高度約550 kmの略円軌道へ修正されます。アストロE衛星は直径2.1 m、全長6.5m(軌道上で鏡筒伸展後)の大きさを持ち、太陽パドルを広げると5.4 mの幅になります。衛星の重量は1600 kgにもなり、宇宙科学研究所としては、これまでにない大型衛星となります。 宇宙科学研究所提供
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アストロ E 衛星 太陽電池パドル X線望遠鏡
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組み立て中のアストロ E 衛星 アストロ E 衛星 電子機器をとりつけるパネルの組み立て中 宇宙科学研究所提供 宇宙科学研究所提供
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X線望遠鏡(XRT)と 伸展式光学台(EOB)
現在観測中の「あすか」衛星搭載のX線望遠鏡の有効面積と、結像性能をどちらも倍近く改善した、新しいX線望遠鏡(口径40 cm、焦点距離 m) が5台搭載されます。その特徴は極めて軽量ながら、10 キロ電子ボルトに近い高エネルギーX線に対しては世界最大級の感度を持つことです。特にあすか以来の、日本独特の伸展式光学台(伸展長1.4m)を用い、欧米の大型X線天文台に比べて、小型ながら大面積を実現しています。 担当:名古屋大学、宇宙科学研究所、 NASA Goddard研究所 X線望遠鏡 宇宙科学研究所提供
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高分解能X線分光器(XRS) 5台の望遠鏡の内の1台の焦点面には、これまでのX線検出器に比べて、一桁も波長分解能の高い、高分解能X線分光器が搭載されます。この検出器の原理は、絶対温度約0.06度の極低温に素子を冷し、X線入射に伴う素子の微弱な温度の上昇から入射X線のエネルギーを極めて精度良く決めるものです。このような検出器が衛星に搭載されるのは、はじめてです。動作に必要な極低温を軌道上で実現するため、宇宙で動作する、断熱消磁型冷凍機、液体ヘリウム容器(絶対温度1.2 度)、固体ネオン容器(絶対温度17 度)の3段階の冷却システムが新たに開発されました。観測は、0.5 キロ電子ボルトから12キロ電子ボルトの範囲で行われます。 XRSではこれらの冷媒の消費のため、観測期間は打ち上げ後、2年間と予想されます。 担当:宇宙科学研究所、NASA Goddard 研究所、東京都立大学、ウィスコンシン大学、理化学研究所 XRS冷却用デュワー 宇宙科学研究所提供
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X線CCDカメラ(XIS) 5台のX線望遠鏡の内、4台の焦点面上に、X線CCDカメラが搭載されます。
担当:京都大学、大阪大学、 宇宙科学研究所、 マサチューセッツ工科大学(MIT) X線CCDカメラ 宇宙科学研究所提供
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硬X線検出器(HXD) X線望遠鏡でカバーされるX線の何十倍ものエネルギーを持つ硬X線からガンマ線の領域を観測するため、硬X線検出器が搭載されます。このように高いエネルギーまで観測できる装置が衛星に搭載されるのは、日本で初めてです。この検出器はガドリニウム・シリケート結晶を用いた無機シンチレータ(GSO)とシリコン検出器を組み合わせたものです。筒状に伸びた井戸型シンチレーターによって周りからの雑音ガンマ線を低減するなど、様々な工夫により、このエネルギー領域で、これまでにない、高感度の観測が可能になります。 担当:東京大学、宇宙科学研究所 硬X線検出器 宇宙科学研究所提供
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アストロ E 衛星で切り拓く 新しい世界 1. 銀河団の高温ガスと宇宙の構造の進化 2.ブラックホール流入物質の運動と時空構造
宇宙の中でも高温でかつ激しい活動領域からは、X線を中心に多量のエネルギー放射が行われています。例えば銀河が集団となっている銀河団では、1000 万度から1億度の高温ガスの中に銀河が浮かんでいます。X線でしか見えない高温ガスの質量は、可視光で見えている構成銀河の質量の3倍ほどもあり、銀河団の本質を知るためにX線観測が欠かせません1) 。アストロE衛星の高分解能分光器を用いることにより、このガスの元素2)の成分と、物理状態とを、これまでとは桁違いの精度で詳しく調べることができるようになります。そのために、はじめて、銀河団中の激しい高温ガスの流れ を解明する3)事ができるようになります。これにより、銀河、銀河団の形成のしくみが明らかになり、宇宙の構造形成がいかに進んできたかを知る手がかりが得られる事が期待されます。 2.ブラックホール流入物質の運動と時空構造 中性子星やブラックホールへ大量の物質が流れ込み、それらの重力エネルギーが解放されてX線で明るく光っていることも良く知られています。アストロE衛星の高分解能分光器やX線CCDカメラでは、落下物質のブラックホール近くでの運動を検出することができ、ブラックホール近傍の時空構造の解明4)が期待できます。また、多くの銀河の中心には、巨大なブラックホールが存在していることが、日本のあすか衛星の観測でも明らかになってきています。アストロE衛星では更に高い感度で、遠くの銀河まで詳しく調べ、その進化を探ることにしています。
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アストロ E 衛星で切り拓く 新しい世界 3.高エネルギー粒子加速
地上には、非常に高いエネルギーの宇宙線がふりそそいでいます。中には、1個の粒子あたり16ジュール5)という想像を絶するエネルギーに達するものもあります。宇宙には、こうした宇宙線を作り出す「巨大加速器」が存在し、その中で粒子が加速されて高いエネルギーを持つと考えられています。広い波長にわたって観測を行う事のできるアストロ E 衛星では、高いエネルギーのX線・ガンマ線の観測から、宇宙線の加速がどこで、どのように行われているかを探査し、その起源と加速の機構を探ろうとしています。 注1) こうした高温ガスを閉じこめておくために、観測される質量の5倍近くもの質量を、観測には直接かからない「暗黒物質」が担っている事が示唆されています。 注2) X線の輝線は各元素に特有の波長を持ち、その波長と強度の観測から、元素組成と、温度、電離度等が分かる。 注3) 高速運動のドップラー効果により、見かけの波長がずれることを検出する。 注4)強い重力場の中では一般相対論の効果で、見かけの波長が長くなる。 注5)4カロリー。1グラムの水を4度上昇させる事ができる。 アストロ E 衛星は、国内外の様々な機関が密接に協力して開発/準備を進めてきました。観測機器や衛星、そしてロケットの開発ばかりでなく、ソフトウエア、観測計画立案でも、様々な形で共同作業が行われています。これにより、アストロE衛星の能力を最大限に活かすことを目指しています。
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