日本高専学会 第20回年会 第14回奨励賞受賞講演 湧元古銭の調査とベトナム銭 「開泰元寶」の発見

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1 日本高専学会 第20回年会 第14回奨励賞受賞講演 湧元古銭の調査とベトナム銭 「開泰元寶」の発見
日本高専学会 第20回年会 第14回奨励賞受賞講演 湧元古銭の調査とベトナム銭 「開泰元寶」の発見 函館工業高等専門学校 埋蔵文化財研究会 講演者:5年物質工学科 川上 桐佳 12~15までは要思案 ただ今ご紹介いただきました函館高専埋蔵文化財研究会です。 今回わきもと古銭調査とベトナム銭かいたいげんぽうの発見ということで お話しさせていただきます。 講演者はわたくし5年物質工学科川上桐佳です。 どうぞよろしくお願いします。

2 埋蔵文化財研究会とは… ・2001年:設立 函館市鉄山町出土、鉄スラグの調査 ・2006年:道南出土瓦の調査 ・2008年:湧元古銭の調査
       函館市鉄山町出土、鉄スラグの調査 ・2006年:道南出土瓦の調査 ・2008年:湧元古銭の調査 ・2009年:高専プログラミングコンテスト敢闘賞 ・2012年:国立高等専門学校機構表彰 ・2009~2013年:全道高等学校 郷土研究発表大会出場(最優秀賞、優秀賞受賞)                            他 ・男子4名、女子5名(現在)  (3年5名、4年2名、5年2名) まず、埋蔵文化財研究会とは 2001年に現在顧問を務めてくださっている一般科目歴史の教授であります中村和之先生によって設立されました。 設立当初はこのようなことをしていましたが 2008年度から湧元古銭の調査を始めましてこのように各大会にて賞をいただいております。 現在男子4名、女子5名にて活動していますが、全員3年以上なので、来年度以降に若干の不安があります 2

3 ・函館新聞 (2011年5月23日) ・北海道新聞 (2011年5月24日) ・毎日新聞 (2011年5月25日) ・朝日新聞
(2011年5月26日) ・NHK放映 (2011年3月10日) (2011年5月22日) そのほか私たちの活動はこのような各メディアで報道されました。 3

4 ※アイヌ民族はお金としては使用していなかった。
出土する古銭とは… 1,中国銭である 2,お金についての考え方は曖昧 3,北海道においても同じ  ※アイヌ民族はお金としては使用していなかった。 そして湧元古銭について説明させていただく前に、そもそもこの発見される古銭とはどういったものなのかを軽く説明させていただきます。 日本に限らず東南アジアは中国銭を使用していました。 日本においては奈良時代や秀吉の時代に独自のお金をつったのですがほとんど流通せず、11世紀から17世紀まで江戸時代の寛永通寶までは ほかの東南アジア地域のように中国銭が流通していました。 そもそも当時の日本を含めた東南アジア人のお金の考え方は丸くて真ん中に穴が開いていて文字が書いてあるこのぐらいの大きさのものはお金。 作りが粗悪であったり割れてしまっているものは二枚で一枚の価値…といったような曖昧なものでした。 なので出土する古銭はそのほとんどが中国の一門銭になります。 その他今回のようなベトナム銭や奈良時代の和同開珎なども多少は含まれていますがその総量は圧倒的に少ないです。 これは道南ではアイヌだけではなく和人…日本人も舘と呼ばれる砦を築き、生活していた北海道…蝦夷地においても同じで 本州との交易やその生活の中でお金を使用していました。 アイヌ人もお金を使用していましたが装飾に使用するのみで直接生活では使用していませんでした。 4

5 一括出土銭の場所 コタン浜 賀張 洲崎館 北海道ではこちらの5カ所が一括出土銭出土場所になります。
函館市の志海苔総計38万7515枚、知内町の涌元総計996枚、上ノ国の洲崎館総計490枚、日高町の賀張総計664枚、留萌市のコタン浜460枚 このほかにも、アイヌ人の墓から装飾品として出土するなど細かいものはありますが瓶や籠などから一括して出土した古銭は北海道ではこの5カ所のみになります。 私たち埋蔵文化財研究会ではこの中でも主にこちらの湧元古銭について調査研究をおこなっているわけですが、 志海苔 涌元

6 涌元古銭とは ・2006年、知内町に住む工藤勇治氏が、知内町郷土資料館 に寄贈したもの。 ・佐々木馨監修『函館・渡島・檜山の歴史』
・2006年、知内町に住む工藤勇治氏が、知内町郷土資料館 に寄贈したもの。 ・佐々木馨監修『函館・渡島・檜山の歴史』 (郷土出版社、2008年)に紹介されているが、詳細は未報 告である。 ・銭種:27種類(現時点) ・総計:996枚 ・組成:北宋銭から明銭までからなる。 (ベトナム銭2枚、不明銭1枚、中国銭993枚) ・最新銭:宣徳通宝(1433年初鋳) それでは湧元古銭とはどういったものなのか 涌元古銭は知内町涌元地区で道路工事の際に出土した古銭で、現存する枚数の総計は996枚、 内993枚が中国銭で北宋の時代から明の時代のお金、 2枚がベトナム銭で天福陳寶と開泰元寶、また表面がつるつるの状態で文字の判読が不明な不明銭が一枚あります。 長く個人の所有物であったため詳細が未報告でまた枚数も現在では996枚ですが、発見当時はもっとあったと思われます。

7 ・銭種組成の解明 ・古銭判読ソフトはんどくんの開発 ・開泰元寶の発見 ・化学調査による制銭鐚銭の判別 湧元古銭調査成果…
この湧元古銭について我々が今までどのような調査を行い、どのような成果を上げてきたか 現在このような成果を上げることができています。 まず、一つ目がこの銭種組成の解明ということですが、これは湧元古銭の中にどの種類のお金が何枚含まれているのか解明したということになります。 これは次のこの古銭判読ソフトはんどくんの開発によって、成し遂げることができました といいますのも銭種組成の解明には古銭に書いていります文字を読み、なんの古銭である判別する判読という作業を行わなければならないのですが、 実はこの作業とても難しいものなんです。 といいますのもそもそも古銭とは 7

8 「楽」?「樂」? 古銭とは… 判読は難しい作業! 文字が錆で つぶれている! たくさんある銭種! 一枚一枚自分たちで判読 するのは大変!!
このように文字がはっきりしているものはまれで、 ほとんどがこのように錆などによって文字がつぶれてしまっています。拓本を取り凹凸をはっきりさせてから判読作業を行うのですが 錆がひどく、完全に文字がつぶれてしまっていたり、欠けてしまっていたりして☆拓本を取っても文字の読解が難しいもの。 また、この古銭の「楽」のように同じ漢字であっても事態が異なるものがあり、そもそもの漢字を読むのが難しいもの。 そして何より銭種事態が非常にたくさんあり図鑑を用いて一枚一枚判読していくのはとても大変で、時間がかかります。 この判読という作業は予想以上に大変な作業なんです! 8

9 「福」 は読める!! 読めた字 「福」 そこで、ボタンひとつで簡単に判読作業ができるソフトがあったらいいなという部員の一言から、現在顧問を務めてくださっている 生産システム工学科の准教授であります高橋直樹先生のご指導の下我々の先輩方が開発いたしました。 このソフトはこのようにまず読める文字を選択候補から入力していくと、ほかのカ所の文字の候補がだんだんと限られてきて判読ができる…というものです。 今回の場合下に福の文字がつくのはこのてんぷくちんぽうのみなので福を入力するだけで判読が完了できました。 このソフトの登場により、一枚に何十分もかかっていた判読作業が数分にまで短縮することができるようになりました! 現在このはんどくんは埋蔵文化のホームページよりモバイル版とパソコン版が無料公開されております。 ですが、製作当時、文字がはっきりと読めるにもかかわらずこのはんどくんでもはんどくできない古銭が湧元古銭の中に一枚だけまぎれていました。 それがこのかいたいげんぽうです。 このはんどくんはたくさんある中国の古銭の銭種(私たちが判読で使用していた図鑑に載っている古銭)を記憶しており、古銭の文字の分かる部分を入力することによって銭種を解明また候補を絞り込んでくれるソフトです。 このはんどくんですら判読できない古銭が湧元古銭の中から見つかりました。 それが今回のかいたいげんぽうです。 9

10 ・銭種組成の解明 ・古銭判読ソフトはんどくんの開発 ・開泰元寶の発見 ・化学調査による制銭鐚銭の判別 湧元古銭調査成果…
それが3つ目の活動成果でありますかいたいげんぽうの発見ということになりますが、このかいたいげんぽう発見当時、学生はもちろんのこと顧問である中村先生ですら よくわからないということで、古銭の専門家であります淑徳大学教授三宅俊彦先生に詳しい調査を依頼し、その全貌が明らかになりました。 10

11 日本初出土!! ベトナム銭:開泰元寶 王朝(国) 陳(ベトナム) 初鋳年 (最初に鋳造した年) 1324年
こちらかそのいたいげんぽうになります! 主に中国銭が流通していた日本では珍しいベトナム銭でさらに日本初出土であり、我々の利用していた資料には記載されていないものでした。 ですが発見当初我々はこのお金を鐚銭…私鋳銭ではないかと予想していました。 鐚銭と聞いてピンとこない方も多いと思いますのでここで少し説明させていただきます 11

12 ・制銭 ・鐚銭 政府が管理し鋳造 見た目が良いものが多い 個人が鋳造 見た目が粗悪なものも多い 古銭には大きく2種類あります
1つめ制銭とは、政府が作り方を定め、政府管理の元作られたお金のことを言います。 鐚銭とは、そうではなく、個人など政府管轄でないところで作られたお金になります。これらは特徴として作りが粗悪であったりします。 「鐚一文やらん」という言葉はここからきています 先ほど申し上げましたように当時の日本人のお金の感覚は、非常にあいまいなものであり、 また、日本政府は江戸の寛永通宝までほとんど自らでお金をつくらず、中国銭を使用していたので日本で作られたの中国銭の鐚銭も多くあります。 もう一度先ほどの開泰元寶を見てみますと 12

13 砂型が ずれた痕跡 四角い穴が きれいに開いていない!
このかいたいげんぽうはこのように砂型がずれてしまい、金属が流れ出てしまったような跡、真ん中の四角い穴がきれいな四角形になっておらず、はみ出てしまっている。 黙視の判断ではこれは作りが粗悪な鐚銭である可能性が高いといえたのです。 しかし、三宅俊彦教授によりますと、ほかの開泰元寶も同じような作りになっているとうことで、これらは一概に鐚銭とは言えないのではないかという考えから 黙視判別では明確に判別できないので、金属の割合を化学的に調査してみたらなにかわかるのではないのかという考えから 13

14 ・金属の成分を分析できる装置 エネルギー分散型蛍光X線分析器 古銭の金属成分の比率を分析!!
こちらのエネルギー分散型蛍光X線分析装置によって金属成分の割合を調査し、ほかの古銭と比較してみました。 14

15 開泰元寶 天福鎮寶 (志海苔) 天福鎮寶 (湧元) 詳しい結果などは要項をご覧いただければと思いますが、
天福鎮寶  (湧元) 詳しい結果などは要項をご覧いただければと思いますが、 かんたんにまとめますと、この開泰元寶はほかの中国銭と比べて鉛とスズの比率が高く、銅の比率が低いこと 志のりと湧元のてんぷくちんぽうとかいたいげんぽうの金属組成は似通っていること 開泰元寶はこの一枚しかないので、開泰元寶同士での成分の比較ができないため、制銭鐚銭のしっかりとした判別はできませんでしたが、 この成分分析は開泰元寶が制銭であるという可能性を高めただけでなく、ベトナム銭の特徴、また今後の我々の調査活動に大きな可能性をもたらしました。 15

16 ・制銭は金属成分がおおむね定まる! ・鐚銭は金属成分にばらつきがみられる! …のではないか…? 制銭→厳しい管理の元製造 数少ない直営工場
    数少ない直営工場 ・制銭は金属成分がおおむね定まる! ・鐚銭は金属成分にばらつきがみられる!               …のではないか…? 鐚銭→大多数の工場で工場ごとに      金属材料を用意し製造 その後我々はこの化学調査について制銭鐚銭の判別に今後役立てようと一つの仮説を立ててみることにしました 仮説とは まず、制銭は政府管轄の工場で作られている。 そのような直営の工場はそう多くはないだろう。 そして、政治的に大きな事件、大規模な材料の不足がない限り、当時の天下の中国政府が金属の割合をやすやすとかえお金をつくることはないだろう 鐚銭とは、政府直営ではないその他の大多数の…地域もバラバラの工場で生産されている…これらは各工場ごとに金属成分がばらばらである可能性が高いのではないだろうか つまり、制銭は金属の成分がおおむね定まり鐚銭はばらつきがみられるのではないかという仮説です。 16

17 ・銭種組成の解明 ・古銭判読ソフトはんどくんの開発 ・開泰元寶の発見 ・化学調査による制銭鐚銭の判別 湧元古銭調査成果
それがこの4つ目の活動成果であります化学調査による制銭鐚銭の判別ということになります。 17

18 ・古銭の大きさと組成との関係 ・人為的な錆の生成 (古銭の錆の進行について調査) 現在調査中 今後…
  (古銭の錆の進行について調査) 現在我々はこのような調査を行い、今後このような調査を行っていく予定です。 18

19 私たちの活動は、こちらで公開しています。
埋蔵文化財研究会webサイト 私たちの活動は、こちらで公開しています。 函館工業高等専門学校 埋蔵文化財研究会 まいぶん 私たちの活動や序盤で紹介いたしましたはんどくんはこちらのウェブサイトにて公開しております。 是非ご覧になってください

20 謝辞 涌元古銭をご提供いただきました 知内町郷土資料館様
古銭の調査方法や拓本の取り方などについてご指 導をいただき、参考資料をご提供いただきました 淑徳大学 三宅俊彦教授 エネルギー分散型蛍光X線分析器の使用について ご指導くださいました本校 小林淳哉教授 謝辞を申し上げます。

21 ご静聴ありがとうございました! 以上で発表を終わります。 ご静聴ありがとうございました 21


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