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Journal Club 重症市中肺炎に対するステロイド
2015/07/28 東京ベイ・浦安市川医療センター 集中治療科 佐久総合病院 救急科 小林 絵梨
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今回の論文
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背景 市中肺炎(Community acquired pneumonia; CAP)の死亡率は、抗生剤治療 が進んだにも関わらず依然高く、特に重症CAPにおいて治療不成功の割合 が高い CAP患者では、高い炎症反応がICU入室中の病状の進行や死亡率等の治療 不成功と関与している ステロイドが肺炎患者の炎症反応に関与する多数のサイトカインを阻害す る CAPに対するステロイド使用は、controversialであり、いくつかのstudyで は、臨床結果で有効性が示された(画像の進行、ショック移行を阻害、呼 吸不全、入室期間の延長、死亡率)ものもあれば、有効性がないとする研 究もある ・ Crit Care Med. 2011;39(10): ・ Thorax. 2009;64(7):
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重症肺炎に対してステロイドの使用が 妥当化される理由
①ステロイドの免疫調節作用 炎症性サイトカインの過度の産生を抑制することにより、肺局所での 炎症や多臓器不全への進展を抑制できる可能性 ②相対的副腎不全 重症病態の患者は一定の頻度で、相対的副腎不全、ステロイドの 分泌不全をきたすことが知られている ショックが併存していれば、ステロイドを投与することで、ショックから の離脱を早める可能性がある
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CAPに対するステロイド投与に関する論文
Hydrocortisone infusion for severe community-acquiredpneumonia:apreliminary randomizedstudy.AmJRespirCritCareMed.2005; 171(3): Effects of systemic steroids in patients with severe community-acquired pneumonia.EurRespirJ.2007;30(5): Effect of corticosteroids on the clinical course of community-acquired pneumonia:a randomized controlled trial.Crit Care.2011;15(2):R96. n=48、重症市中肺炎、Hydrocortisone 200mgボーラス、10mg/h持続7日間投与。 PF比、MODSスコア,遅発性敗血症性ショックの改善あり、生存率に有意差なし n=308、重症市中肺炎、prednisolone 30mg/d or mPSL24mg/d、投与期間はバラバラ day30での死亡率はPSIⅤで増悪、多変量分析でステロイド投与による死亡率減少 n=56、重症市中肺炎、methyl-prednisolone200mgボーラス、その後20mgq6hより漸減 P/F、発熱や画像、IL-6・CRPの低下の速度の改善は有意差あり。 死亡率や人工呼吸器期間には有意差なし
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CAPに対するステロイド投与に関する論文
Dexamethasone and length of hospital stay in patients with community- acquired pneumonia: a randomised,double-blind, placebo-controlled trial. Lancet.2011;377(9782): Impact of systemic corticosteroids on the clinical course and outcomes of patients with severe community-acquired pneumonia: a cohort study. JCritCare.2011;26(2): Efficacy of corticosteroids in community-acquired pneumonia: a randomized double-blinded clinical trial. AmJRespir Crit Care Med ;181(9): n=304、市中肺炎、Dexamethasone 5mg/d、4日間 ステロイド群で入院日数1日短縮、死亡率に有意差なし n=111,重症地中肺炎で呼吸器使用している患者 ステロイド使用してもDay1-7での死亡率、CRP、臓器障害の改善等に有意な結果はなし n=213、市中肺炎、prednisolone 40mg/d、7日間 Day7,Day30での臨床的改善に有意差なし、後期機能不全はステロイド投与で有意に増加
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CAPに対するステロイド投与に関する論文
しかし、実際ほとんどのstudyが、最重症を含んでおらず、その 全てで炎症反応のレベルが考慮されていない 2つのmeta-analysisのサブグループ解析で、ステロイド投与を 受けた重症CAP患者の死亡率が改善している
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CAPに対するステロイド投与に関する論文
Corticosteroids in the treatment of community-acquired pneumonia inadults: a meta-analysis. PLoSOne. 2012;7(10):e47926. Prolonged low-dose glucocorticoid treatment beneficial in community-acquired pneumonia? Curr Infect Dis Rep.2013;15(2): n=1001 死亡率の改善なし。サブグループ解析で、重症市中肺炎に限定すると 死亡率に有意差あり。有害事象は、高血糖のみ有意差あり n=1206、ステロイド治療を5日以上受けている 重症市中肺炎において、生存率に有意差あり。
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本研究の仮説 ステロイドはこれらの患者のサイトカイン放出を変化されると考 える炎症を減少させれば、治療不成功を減らせるかもしれない
重症CAPかつ炎症反応高値である患者に制限し、 ステロイドによる有効性をターゲットとした
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論文のPICO P 重症市中肺炎かつ炎症反応上昇 I 経静脈的メチルプレドニゾロン静注 (0.5mg/kgを12時間おきに5日間投与) C
プラセボ投与 O 治療失敗
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研究デザイン 多施設(スペインの3施設)共同 二重盲検化無作為比較試験 対象患者:重症市中肺炎かつ高炎症反応
期間:2004年6月~2012年2月
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Inclusion criteria 18歳以上 CAPを疑う臨床所見(咳、発熱、胸膜炎症状、呼吸困難) 画像上新しく出現した浸潤影
Severe community-acquired pneumonia criteriaを満たす (mATS or PSI classV) CRPが15mg/dL(9.524mmol/L)以上 CRP15mg/dl以上で25%の治療不成功あり Thorax.2008;63 (5):
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mATS Minor criteriaのうち、
RR>30、P/F<250、Multilobar infiltrateのどれか一つ or Major criteriaのうちのどちらか一つを満たす Ewig S, Ruiz M, Mensa J, et al. Severe community-acquired pneumonia: assessment of severity criteria. Am J Respir Crit Care Med. 1998;158(4):
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Pneumonia Severity Index (PSI)
参考文献:Fine MJ, et al. A prediction rule to identify low-risk patients with community-acquired pneumonia. N Engl J Med 1997; 336:
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Exclusion criteria ステロイド治療を受けている 院内肺炎 重症免疫不全(HIV,免疫抑制薬使用)
併存疾患の平均余命が3ヶ月未満の状態 コントロール不良の糖尿病 3ヶ月以内の消化管出血 1mg/kg以上のメチルプレドニゾロンによる急性期治療が必要な状態 H1N1インフルエンザA感染による肺炎
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方法 ランダムにメチルプレドニゾロン0.5mg/kg q12hの静注とプラセボ投与を 割り付け 入院から36時間以内
全ての患者に、International guidelinesに基づいた抗生剤治療を行う 抗生剤治療は、プロカルシトニンのレベルには関係なく行う Clin Infect Dis. 2007;44(suppl 2):S27-S72.
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アウトカム ・臨床所見の安定化までの時間 ◆Primary Outcome;
治療失敗の割合(早期と後期を含めたcomposite outcome) ◆Secondary Outcome ・臨床所見の安定化までの時間 (BT37.2℃以下、HR100以下sBP90mmHg以上、酸素投与なしでPaO2≧ 60mmHg (在宅酸素している患者は、ベースの酸素投与量)) ・ICU入室or全入院日数 ・入院中の死亡率
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治療失敗の内容 Early treatment failure(治療開始後72時間以内)
ショックに移行 人工呼吸器が必要となる 死亡 Late treatment failure(72-120時間の間に) 画像所見の増悪(ベースと比べて50%以上の浸潤影の増加) 重症な呼吸不全の持続(P/F<200mmHg,RR>30,)
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サンプルサイズの算出方法 ・先行研究より、対照群の治療失敗率を35%と予測 ・ステロイド投与により、治療失敗率を20%改善させると予測 ・αエラー 0.05、power 80%として、サンプルサイズを算出 ・両群それぞれ60名の患者が必要 Thorax. 2004;59(11):
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使用抗菌薬は両群で類似 CTRX+LVFX or AZMの組み合わせが最も使用されていた 49人の患者で原因菌の診断がつき、そのうち15ケースが初期治療が変更になった (6人はde-escalation、5人は治療失敗、4人は経口投与への変更) 初期抗菌薬使用量と治療期間は両群で差なし
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原因菌の診断率は ステロイド投与群の方が高い 原因菌は両群とも Streptococcus pneumoniaeが 最も多かった 原因菌の分布は両群で差なし
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割り付け時の プロカルシトニン値、IL-10の値がメチ ルプレドニゾロン投与群の方で低い Septic shockの患者数が 介入群の方で少ない (そもそも介入群で17%、対照群で 31%とSeptic shockであった患者が少 ない) 割り付け時に人工呼吸管理が必要 であった患者は、介入群で8%、対照 群で17% 期待したほど重症度は高くない!
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ステロイド投与群では、治療失敗率が有意にプラセボと比較して少なかった
両群では、18%の差があり、それは、後期治療不成功と画像所見増悪によるものだった
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背景で差があった敗血症性ショック、1日目のプロカルシトニン、IL-10、入院した年、施設を調整して再解析しても、結果は同じで、後期治療不成功と画像所見増悪に関しては両群で有意に差があった
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Post hoc subanalysis 画像所見増悪を含まない後期治療失敗率でも 有意にメチルプレドニゾロン群で少なかった
有意にメチルプレドニゾロン群で少なかった (2 patients(3%) VS 8 patients(14%) , p=0.04)
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Secondary Outcome ・臨床所見の安定化までの時間 ・ICU入室or全入院日数 ・入院中の死亡率 には有意差なし
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有害事象 有害事象には 両群間で有意差なし
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Discussion 本研究でのメリットは、画像所見増悪の減少である。
他の研究と違う最も重要な特徴は、重症のCAPと高炎症反応に限定した事 である。 ステロイド投与群の方が、CRPやIL-10が減少した。この結果は以前の研究 でも似たような結果が出ている。 あるProspective RCTでは、CAPに対してステロイド投与は炎症反応を抑え、 コルチゾールの減少を補い、死亡率を減少させたと報告している 今回は、5日間投与で漸減なく終了としたが、48時間リバウンドはなかった。 しかし、72時間でリバウンドがあったという報告もある 本研究では死亡率に有意差は出なかったが、治療不成功の減少により死 亡率改善につながる可能性はあり、今後の大規模な試験に期待したい JInfect.2012;65(1):25-31. .Intensive CareMed.2011;37(9):
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Limitation 全てのCAPが対象となっていない 副腎機能についてアセスメントされていない 5日間しかステロイド投与していない
5日以上の投与が死亡率低下させるという報告あり PLoSOne. 2012;7(10):e47926.
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Limitation 抗生剤使用回数や量を減らす基準を設定していない
患者がinclusion criteriaを満たし、集まるのに時間がかかった 類似した研究の患者選定基準を用いたが、対照の治療不成功率が 低かった。
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重症市中肺炎かつ高炎症反応の患者において、 急性期のメチルプレドニゾロンの使用は、 プラセボと比較して、 治療失敗例を減少させた
論文の結論 重症市中肺炎かつ高炎症反応の患者において、 急性期のメチルプレドニゾロンの使用は、 プラセボと比較して、 治療失敗例を減少させた
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批判的吟味 composite outcomeである
→有意差が出ている結果は画像所見の改善のみであって、在院日数、ICU在室日 数、死亡率に有意差は認めない 副腎機能についての評価がなされていない 漸減伴わないステロイド中止から3日後に炎症反応のreboundを認める報告もある ステロイド治療が標準的治療となる疾患群(喘息発作、COPD急性増悪、PCP、器質化 肺炎など)が、どれほど含まれていたかのデータがない
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批判的吟味 重症市中肺炎といいながらも、敗血症性ショックである患者、最初から人工呼吸管理 が必要であった患者が少なく、それほど重症ではなかった可能性がある 本研究の患者群は、2群間での有意差検討が表示されておらず不明だが(あえて見せ ていない?)、人工呼吸器や敗血症性ショックの症例がブラセボ群に多い傾向があり、 介入群が軽症となっている可能性がある 4、5日間という短期フォロー期間のみでしかない結果である (1か月~1年の長期予後評価も重要な要素であり、本論文ではその点は不明確である)
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重症市中肺炎に対して ステロイドを使用するか?
今回の研究結果や以前に行われた研究の結果を合わせると、死亡 率に有意差はなく、ルーチンで重症市中肺炎にステロイドを積極的 に使用する根拠はまだ乏しいと考える。 敗血症性ショックを合併していれば、相対的副腎不全を考慮しての ステロイド投与は考慮される。 ステロイド治療が標準的治療となる疾患の合併があれば(喘息発 作、COPD急性増悪、PCP、器質化肺炎など)、その投与は行うべきで ある。
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