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IPCC第5次報告書の示唆と 日本の数値目標 温暖化対策を進めるために

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1 IPCC第5次報告書の示唆と 日本の数値目標 温暖化対策を進めるために
2014/07/24 CIGS地球温暖化シンポジウム2014 IPCC第5次報告書の示唆と 日本の数値目標 温暖化対策を進めるために              2014年7月24日 東北大学 明日香壽川 ASUKA Jusen

2 内容 温暖化問題の本質 IPCC AR5以降の国際交渉 オーバーシュート・シナリオの課題 今後に向けて

3 1.温暖化問題の本質

4 海面上昇により何百万人もが移住を迫られる
2014/07/24 まず前提として GHG排出量(10億トンCO2換算) BAU 適応が非常に困難になる 前例のない熱波 激しい降水の頻度が上昇 地球規模の種の絶滅の危機 世界全体で穀物収量の低下 アマゾン熱帯林の大規模な枯死 海面上昇により何百万人もが移住を迫られる 食糧安全保障のリスクが高まる ほとんどのサンゴ礁が死滅の危機 食糧生産の低下 厳しい社会的影響を伴う激しい熱波 現在の排出削減目標 2℃達成 グリーンランドの氷床が溶け始め戻れなくなる(tipping point) 1.5℃以下 出典:クライメートアクショントラッカー(2012) ASUKA Jusen

5 2014/07/24 2度目標とは? 2度を超えると何十万、何百万単位の被害者(特に途上国居住者)が発生し、不可逆なティッピング・ポイントを超える確率が大きく上昇するのは「科学」 それをどう認識するかは「価値観」 2度目標は、「科学」と「価値観」と「民主主義」から成立 ASUKA Jusen

6 なぜ目標達成が難しいのか? エネルギー・システムの転換が必要であり、既得権益側が莫大なリソースをかけて抵抗する 「黄金律」を無視する人が多い
「不公平」という言説が使われる

7 「不公平!」という言説は絶大な効果を持つ
「不患貧、患不均」 (孟子) →不公平と感じるから不満足

8 そもそも公平性とは? 「立場入れ変え可能性の確保 (社会のどこに生まれても自分 は耐えられるか?)」(ロールズ)        →黄金律

9 黄金律:己所不欲、勿施於人 すべての宗教に存在する古今東西・万国共通の教義 要は「自分がやられて嫌な事を相手にやってはいけない」
すべての公平性に関する議論はこれに行きつく

10 2. IPCC AR5以降の国際交渉

11 IPCC AR5 WG3最大のメッセージ →2度目標のための対策コストは大きくない
対策をとらない場合の年間 GDP 成長率が 1.6% 〜 3% 2100 年までに世界全体の GDP が 300 〜 900%増大 この状況のもと、対策をとった場合の 2100 年までの GDP 成長率へのマイナス影響の大きさは年平均で 0.06% →2度目標のための対策コストは大きくない

12 国際交渉の現状 →2度目標は決してなくならず、レビューが非常に重要となっている 2度→2.5度ではなくて2度→1.5度が争点
プレッジ・アンド・レビュー方式になりつつあるのは、「抵抗勢力」と「UNFCCC下の国際交渉におけるコンセンサス方式」という二つの制約条件が存在するから →2度目標は決してなくならず、レビューが非常に重要となっている

13 各国排出削減目標の決め方(1) (IPCC AR5以降) 公平性が大きくクローズ・アップ(WG3, Chap.4)
先月のボン会議でのADP議長テキストに「公平性基準」などを用いるなどして自らの目標の妥当性を説明すべきという趣旨の文章が入った

14 各国排出削減目標の決め方(2) (IPCC AR5以降) IPCC AR5 WG3では、 一人あたりGDP 一人あたり排出量
歴史的累積排出量 低排出者の削減免除(発展の権利) などを「公平性基準」として記述 出典:IPCC AR5 Chap.6; Horne et al. (2013)

15 各国排出削減目標の決め方(3) →日本へのインパクト大きい (IPCC AR5以降)
一方、IPCC AR5 WG3では限界削減コスト均等も対GDP削減コスト割合均等も「公平性基準」としては位置づけられていない 限界削減コスト曲線は、モデル間での格差が非常に大きい →日本へのインパクト大きい

16 各国排出削減目標の決め方(4) (IPCC AR5以降)
IPCC AR5 WG3およびHohne et al. (2013)では、2度目標達成に必要な各国の2010年比での2030年のGHG排出量に関する複数の試算値を整理 日本、オーストラリア、ニュージーランドに対する試算値の中間値は60%前後

17 各国排出削減目標の決め方(5) (IPCC AR5以降)
Ecofysが2度目標達成に必要なオーストラリアとEUのカーボン・バジェット(排出許容量)と数値目標をモデル計算(Hohne et al. 2013b; Fekete et al. 2013) 同じ方法論で他国も計算中 それによると日本などのバジェットは10数年でゼロ。2030年で1990年比60%以上の削減が必要

18 3. オーバーシュート・シナリオの課題

19 具体的な課題 後世代における急激な削減が必要
技術がロック・イン。例えば、実施中の化石燃料発電入札(11.9GW)で石炭火力が建設されれば、それによる排出量は2050年時点で1990年排出量の5%

20 具体的な課題(つづき) 長期的にはより大きなコストと経済的チャレンジ(例:エネルギー価格急騰) 特定の技術への依存度が増加
社会としての選択肢の幅が縮小 2度目標未達成のリスクが増大 →一言でいうと、後世に負担を先送り

21 4. 今後に向けて

22 論理的かつ深い議論が必要 「国際社会の現実」の正確な認識 他国(特に中国)の「正確」な評価 国際競争力喪失議論への対応
2014/07/24 論理的かつ深い議論が必要 「国際社会の現実」の正確な認識 他国(特に中国)の「正確」な評価 国際競争力喪失議論への対応 原発と温暖化対策との関係の整理 理想は「他国に関係なくロジック(モラル)」の構築 ASUKA Jusen

23 Good News 省エネと再生可能エネへの莫大な投資が進行中 米国における一般市民や企業マインドの変化 先行事例(ドイツ、日本)
2014/07/24 Good News 省エネと再生可能エネへの莫大な投資が進行中 米国における一般市民や企業マインドの変化 先行事例(ドイツ、日本) 中国での大気汚染対策目的の石炭規制 ASUKA Jusen

24 参考文献 Fekete Hanna, Markus Hagemann and Niklas Höhne (2013)“Australia’s carbon budget based on global effort sharing”Technical report, 30 May 2013 a_carbon_budget_based_on_global_effort_sharing_24oc t13.pdf Höhne, Niklas, Michel Den Elzen, Donovan Escalan(2013a)“Regional GHG reduction targets based on effort sharing: a comparison of studies”, Climate Policy, Vol. 14, No. 1, 122 –147. Höhne, Niklas, Alyssa Gilbert, Markus Hagemann, Hanna Fekete, Long Lam, Rolf de Vos(2013b) “The next step in Europe’s climate action: setting targets for 2030: Reviving the EU emissions trading system and bringing EU greenhouse gas emissions on a 2°C track” climate-action.pdf


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