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基礎地学II 宇宙論(2/3) ー自然哲学から自然科学へー

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1 基礎地学II 宇宙論(2/3) ー自然哲学から自然科学へー
北海道大学・環境科学院 藤原正智

2 地球中心説(天動説)から太陽中心説(地動説)へ
ギリシャ時代の天文学(~プトレマイオス(AD2C)の「アルマゲスト」で完成) アラビア・イスラム世界(中東~北アフリカ)~インド世界    プトレマイオス体系(天動説)が継承される     (幾つか批判的研究もあったが天動説の域は出ず)    天文観測技術の高度化、暦の精緻化 中世ヨーロッパ:     ルネサンス(14~16C)       ギリシャ・ローマの古典古代への(キリスト教世界観からの)復帰    ローマ教会(バチカン、カトリック、“旧教”)、宗教改革(“新教”、プロテスタント)、    宗教戦争から政治戦争へ(絶対主義的皇帝 対 封建主義的諸侯)    ローマ教会: アリストテレス・プトレマイオス体系である地球中心説を教義に採用    大学の誕生: 聖職者養成が始まり神学、法律学、医学、人文学を持つ大学へ。                  大学教授・研究者の多くは、アリストテレス体系の注釈者。

3 地球中心説(天動説)から太陽中心説(地動説)へ
ニコラス・コペルニクス( 、ポーランド)     フラウェンブルグ寺院大管区長-「神が創った宇宙は美しいはず」     プトレマイオス体系は不完全(誤差の累積)、        美しくない(“円”が多すぎる、一様円運動でない)      試行錯誤の末、アリスタルコスの太陽中心説を“仮説として”復活:         「コペルニクス的転回」「コペルニクス革命」         (教会を刺激せぬよう大変気を遣う)       ただし、依然として不完全。       ケプラー、ガリレオらがのちに支持。 ティコ・ブラーエ( 、デンマーク)   (望遠鏡発明以前では稀代の天文観測家):     超新星爆発の発見(1572年 カシオペア座・                   銀河系内)       恒星世界は永久不変ではない。      21年間に渡る天文台での観測。     年周視差が検出されないので地動説採らず。     (地球の周りを太陽が回り、      太陽の周りを惑星が回ると考えた) [宇宙論のすべて、より]

4 超新星爆発とは: 恒星の最期、supernova (爆発により星本体は四散。中心部に 中性子星やブラックホールが残る場合あり。 )
SN 1054 おうし座・かに星雲(銀河系内) (1054年;日本・中国・朝鮮・北米に記録あり) SN 1987A かじき座(大マゼラン星雲内) ( (16.4万光年・年前);カミオカンデ等で  ニュートリノ検出  2002年小柴昌俊、ノーベル物理学賞)

5 地球中心説(天動説)から太陽中心説(地動説)へ
ヨハネス・ケプラー( 、ドイツ)      神は宇宙を神聖な調和に従って創造したはずという信念。      数や図形の神秘性・美しさを追究      数学の才能あり。コペルニクス説に感銘。ガリレオと多数の手紙を交換。      ティコの弟子として火星の観測データから3つの経験則(地動説に則る)を発見。      (1)円ではなく楕円軌道      (2)面積速度一定      (3)公転周期の2乗            ÷平均軌道半径の3乗         = 一定 [地学図表より]

6 地球中心説(天動説)から太陽中心説(地動説)へ
ガリレオ・ガリレイ( 、イタリア)(1/3)     実験科学、実証科学=近代科学の創始者(アリストテレス体系と注釈者たちを批判)     運動論(“ピサの斜塔”)、機械学(滑車、さお秤、てこの原理、斜面上の物体)、     そして天文学へ。     オランダで望遠鏡発明という噂を聞き、早速自作し人類初の天体観測を行う。     また、望遠鏡の製作・販売により家計の足しにする 中央図: 「ガリレオ」、中央公論社 左・右図:         amazing-space.stsci.edu         /eds/tools/

7 地球中心説(天動説)から太陽中心説(地動説)へ
ガリレオ(2/3)    地動説の証拠、示唆となる現象多数発見。 「星界の報告」「天文対話」。     「天の川は無数の星(太陽)の集まり」太陽系の相対化     「月は光球ではなく表面には凹凸あり地球と同じ」         アリストテレスの“天上世界”も地球と同質     「木星のまわりを4つの衛星がまわる」         運動の中心となりうる天体(重さを持つ)が地球以外にもある     「金星の満ち欠け」コペルニクス説の方で説明可(金星も月と同様)   「太陽の黒点の存在と太陽の自転」完全であるべき太陽にしみ   「運動の相対性」を指摘:    地球の動きは地球上に    いる者には分からない    (船に乗って石を落とす) ガリレオがスケッチした月の表面模様 /eds/tools/

8 地球中心説(天動説)から太陽中心説(地動説)へ
ガリレオ(3/3)  ローマ教会により2回の宗教裁判を受け“異端誓絶”。      (背景に旧教・新教の対立や教皇・諸侯の対立など。)   「それでも地球は動いている」      (晩年は自宅に幽閉され、「新科学対話」を執筆。)      (1992年にローマ教会(ヨハネ・パウロ2世、2005.4逝去)       はようやく間違いを認める。)      (同時代のジョルダーノ・ブルーノ(ドメニコ会士)は、       「神は無数の太陽と無数の地球を作った」と主張、       長い逃亡生活の末、1600、ローマ教会により火あぶりの刑に。)    ガリレオ裁判、当時の科学界や哲学界に悪影響を与える。     以降、イタリアに代わり、ニュートンのイギリス、ライプニッツのドイツ、     パスカルのフランスにて、近代科学は発展していく。 「星界からの報告」、「天文対話」、「新科学対話」、岩波文庫 「ガリレオ・ガリレイ」青木靖三著、岩波新書・評伝選 「ガリレオ」豊田利幸・責任編集、中公バックス・世界の名著第26巻

9 地球中心説(天動説)から太陽中心説(地動説)へ
アイザック・ニュートン( 、イギリス)   「奇跡の18ヶ月」(20代前半。ペスト(黒死病)流行で大学閉鎖): 光学、微積分法、万有引力と運動の法則    1687、ニュートン力学の集大成「プリンキピア」: ケプラーの法則が説明可能、          他にも多くの現象(潮汐、地球が回転楕円体であること、等)が理解可能    以降、太陽中心説は自然に受け入れられていく(直接証拠の観測はさらに50年後) 左: 中央: 右: (中世ヨーロッパの“科学者”は社会(キリスト教社会)からどの程度独立だったのか、現代の科学者はどうか)

10 地球の自転はなかなか実感できない フーコーの振り子 (新札幌駅そばの札幌市青少年科学館でみることができます)
フーコーの振り子   (新札幌駅そばの札幌市青少年科学館でみることができます) 1851、仏の実験物理学者フーコー、パリのパンテオン寺院で地球自転を証明する実験実施 振り子は、宇宙から見ると同じ面内で振動、しかし、回転する地球上で見ると振動面が回転 北極・南極で実験すると1日に1回転する(当たり前)。 (極から離れると1回転するのに1日以上かかる。赤道では回転しない。  パリでは1時間に約10度回転)   振り子があたかも進行方向に直交する方向に力を受ける:転向力/コリオリ力    (この力は小さいので、長時間(例えば数時間以上)、長距離(例えば100km以上)、     動かなければ見えてこない)       (左写真:パリ・メチエ博物館)

11 地球の自転はなかなか実感できない http://kakuda.ed.niigata-u.ac.jp
/semi/ob/thesis/99niwata_thesis2-21/ space/foucault/foucault.html (自転)

12 太陽系の描像の確定 万有引力により統一的に理解できる: 惑星は太陽から距離の2乗に反比例する力を受けて楕円運動
[地学図表より] 万有引力により統一的に理解できる: 惑星は太陽から距離の2乗に反比例する力を受けて楕円運動 公転方向は太陽自転方向に一致(惑星の成因に関係) 軌道面はほぼ同一平面上(冥王星は今や惑星ではない) E. Halley: ニュートンと親しく「プリンキピア」刊行促す、ハレー彗星の軌道計算(約78年周期) 世界初の科学観測船にて、グローバルな磁場分布、測地、地表風系等の観測

13 宇宙は有限か無限か、定常か非定常か 「ニュートンの無限宇宙」 万有引力の帰結  宇宙が永遠であるなら無限でなければならない
   なぜなら、もしも宇宙に中心と端があれば、万有引力により 宇宙は中心に向かって潰れてしまう 「万有引力がある限り、宇宙に永遠は存在しないのではないか」      無限の空間に物質が均等分布        あちこちで塊を形成するだろう        無数の大きな塊が散在(これが太陽や恒星の成因だろう) 「惑星や彗星による摂動太陽系はやがて破壊される」 (ニュートンへの反論) 中心や端はないが有限な宇宙は考えられる。(二次元世界なら球面がその一例) 宇宙は永遠でなくてよく、膨張・収縮していてもいい。 星・元素等の生成に十分な寿命さえあれば将来潰れてもいい。

14 宇宙は有限か無限か、定常か非定常か 「夜空のパラドックス」(オルバース、1826年) 夜空が暗いのは大変不思議である
もしも宇宙が永遠かつ無限で星が一様分布しているなら、   夜空はまぶしく輝いているはずである   なぜなら: 星と星のすき間には必ず別の星が見えるはず 星のみかけの明るさは距離の2乗の反比例   星の数は距離の3乗に比例       夜空の明るさは宇宙の大きさに比例するはず

15 宇宙は有限か無限か、定常か非定常か 「夜空のパラドックス」を解くには、仮定の再考を。例えば: 宇宙は無限であっても永遠でない
    (有限の年齢を持つ ― まだ全ての光が届いていない) 宇宙は永遠であっても無限でない 星は一様分布していない・有限個数しかない 他の要素?    星雲が遠くの星の光をさえぎっているのでは(オルバース)     (雲は無限に光を吸収できるわけではない。再放射してしまう。) 20世紀に入り解決: “宇宙は一様に膨張していた”   従って、寿命は有限となり、光が到達しうる範囲も有限「宇宙の地平線」     ドップラー効果(遠ざかる場合波長のびる)による赤方偏移(低エネルギー側へ) 実は夜空は明るい(一様な背景放射の存在)    可視光(0.4~0.8μm)では暗いが、赤外線(1~100μm)やX線(0.1~1nm)では    ほぼ一様に明るい       X線:遠くの銀河の中心核、赤外線:遠くの星の光(過去の星形成の情報)       (なお、ビッグバンの証拠であるいわゆる「宇宙背景放射」は電波領域(1cm~1m)。        星ではなく宇宙空間そのものが昔熱かった名残り)

16 天体望遠鏡の発達史 (*:「ガリレオ」、中央公論社) (宇:宇宙論のすべて) ガリレオ[左、*]とニュートン[右、宇]の望遠鏡
電波望遠鏡アレイVLA[宇](26m21km) (米・ニューメキシコ) ティコ・ブラーエの天文台[宇] ハッブル宇宙望遠鏡(1990~) [野本、ハッブル望遠鏡の宇宙遺産、岩波新書] ハッブルのウィルソン山天文台[宇] [地学図表]

17 宇宙の大きさ 恒星の距離を測る 年周視差の検出(1838年、ベッセルによるはくちょう座61番の星の観測)
    地動説の確認とともに、この星が11光年(*)離れていること判明    (現在では視差を用いた方法で100~1000光年先の星の距離を決定できるが、     我々の銀河(天の川銀河・銀河系)の半径が50,000光年。その先は?) 脈動変光星(特にセファイド型)という特殊な星の性質を利用       (“遠い星ほど暗い”という性質を利用)    脈動変光星:ある決まった周期(1~1000日)で膨張・収縮を繰り返し明るさ変化    セファイド型(<50日):平均の明るさ(絶対等級)と周期に簡単な関係があり    天球上に脈動変光星を見つける周期から経験則にて絶対等級決定      みかけの明るさより距離決定 1920年、シャプレー・カーティス論争:     「アンドロメダ“星雲”の位置は      天の川の中か外か」        天の川の外と判明。     天の川内-“星雲”     天の川外-“銀河”と区別 (*)光年: 光が1年に進む距離 約9.5兆km [地学図表より]

18 「銀河宇宙」という描像 “天の川”は、我々の太陽系が属する“天の川銀河”(“銀河系”)の円盤面方向に対応
天の川銀河は、アンドロメダ銀河に似たひとつの渦巻銀河 [全て、地学図表より]

19 まとめ ー 宇宙論(2/3) ー 地球中心説(天動説)から太陽中心説(地動説)へ コペルニクス、ティコ・ブラーエ、ケプラー
  - 中世ヨーロッパの人々の“常識”“社会通念”との戦い -       コペルニクス、ティコ・ブラーエ、ケプラー       ガリレオ・ガリレイ、ニュートン 地球の自転はなかなか実感できない   - フーコーの振り子 ー 太陽系の描像の確定 「ニュートンの無限宇宙」と「夜空のパラドックス」 天体望遠鏡の発達と、宇宙の大きさの測定 「銀河宇宙」という描像


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