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医事法2009 東京大学法学部 21番教室 樋口範雄・児玉安司

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1 医事法2009 東京大学法学部 21番教室 nhiguchi@j.u-tokyo.ac.jp 樋口範雄・児玉安司
第10回2009年6月24日(水)16:50ー18:30 医療過誤訴訟―日本とアメリカ(樋口範雄『続・医療と法を考える―終末期医療ガイドライン』第8章~第10章(有斐閣・2008年)) 1 医療過誤訴訟とはどのような訴訟か 2 医療過誤訴訟がはるかに多いアメリカとの比較 3 東大病院輸血梅毒事件を再検討してみよう 4 インフォームド・コンセント訴訟の意義 参照→

2 医療と法への視点 医療の問題 Access Quality Cost 医療過誤訴訟はどれを問題としているか?
そもそも医療過誤訴訟の目的は何か?

3 医療過誤訴訟―日米 medical malpractice suit
1 訴訟件数  社会的重大性     日・医療集中部 不法行為法の中心課題     米・Tort Reform   2 日・債務不履行と不法行為   米・不法行為 (契約に対する考え方) 3 勝訴率の低さ     米・専門家証人の必要性 陪審 4 米・懲罰賠償の可能性 陪審 賠償責任保険 3

4 Hall v. Hilbun, 466 So.2d 856 (Miss. 1985)
事実:1978年5月、患者(女性)腹部に痛み。 ミシシッピ州の病院に入院。入院の翌々日、腹腔鏡検査術(exploratory laparotomy)。問題なく終了した(ように見えた)。その後わずか14時間で死亡。患者の夫が医療過誤訴訟を提起したのは1980年5月。 争点:術後の管理における過失の有無。専門家証人(expert witness)としてクリーブランドの外科医。証人の証言能力と、判断基準のルール。 4

5 1審は指示評決により被告勝訴 州最高裁は、新たに全国基準を採用。原審破棄。 ①医師のような専門家の不法行為責任。ルールの合理性と公正さ(reason and fairness)。地域基準ルール(locality rule)に合理性と公正さ。 ②医学教育・研修の全国標準化。医師の他州への移動も普通。情報へのアクセス。 ③一定地域で行われている医療慣行の遵守は注意義務の決定的な証拠とはならない。 ④ただし全国基準ルールには、個別の医師の環境や条件という限界づけが必要。 5

6 いくつかの疑問 ①なぜ病院を被告としないのか。 ②なぜ不法行為だけが問題とされているのか。 ③専門家証人の選任方法と位置づけ。 ④医療慣行の位置づけ。地域格差と医療水準の判断。 ⑤陪審の役割。 6

7 東大病院輸血梅毒事件 東京地判昭和30年4月22日判決、下民集6巻4号784頁。東京高判昭和31年9月17日判決、判例時報88号3頁。 最判昭和36年2月16日、民集15巻2号244頁。 事実:1948年、子宮筋腫治療のため東大病院に入院した女性。輸血。当時は売血制度。患者も梅毒に罹患。患者に大きな損害。医師に過失ありとして国の使用者責任を問うため国を訴えた。医師の過失=給血者から採血する際の過失。 7

8 国の上告理由 ①問診の義務なし。当時は厚生省令に基づく輸血斡旋所。そこでの検査による証明書があれば再度の検査を省略する慣行あり。
②仮に本件で問診の義務があったとしても、一応の質問はしていた。それ以上の質問をしても、防止し得ない事故。 8

9 最高裁判決 ①問診義務あり。「注意義務の存否は、もともと法的判断によつて決定さるべき事項であつて、仮に所論のような慣行が行なわれていたとしても、それは唯だ過失の軽重及びその度合を判定するについて参酌さるべき事項であるにとどまり、そのことの故に直ちに注意義務が否定さるべきいわれはない」。 ②詳しい問診をしていれば違っていた可能性あり。過度の注意義務といっても「いやしくも人の生命及び健康を管理すべき業務(医業)に従事する者は、その業務の性質に照し、危険防止のために実験上必要とされる最善の注意義務を要求されるのは、已むを得ない」。 9

10 3人の法学者 ①四宮和夫教授の説「過失と呼びうるほどのものは何もない」とか「きわめて軽微な注意義務の怠り」 ②唄孝一教授の説―医師の過失責任を問題にせず、病院の契約責任を問う。契約法理の利用。 ③星野英一教授の説―医師に過失ありとした判断はまったく正当。医療界における実情は部分社会の考え方や慣行に過ぎない。 10

11 いくつかの疑問 ①医療水準論―法的基準と医療実務の関係 ②最近の最高裁判決の傾向 「このように,最高裁判決は,医師の過失の判断基準を厳格化し,因果関係の証明度を緩和し,特定の場合には医療水準に至らない治療方法についても説明義務を認め,医療水準として確立した療法(術式)が複数存在する場合には患者が熟慮の上選択できるように配慮してそれぞれの療法の違いや利害得失を分かりやすく説明することを求めて医師に対し広い範囲で説明義務を認めることなどによって,医療事故に関する医師の損害賠償責任を広く認め,医療事故に遭遇した患者に対する配慮をきめ細かく行う方向を打ち出しているといえる」。 ③医療過誤訴訟の目的 被害者の救済とそれ以外 11

12 Canterbury v. Spence, 464 F.2d at 772 (D.C. 1972)
事実:19歳の青年で、背中の痛みを訴えてワシントンの病院に入院。1959年2月。骨髄穿刺で骨髄像を作った結果、椎弓(ついきゅう)切除術(laminectomy)。手術後、下半身麻痺状態。 第1審裁判所、指示評決で原告敗訴。控訴裁判所で破棄差し戻し。「医師は患者に対し適切に診療する義務を負うが、診断と治療がうまいことだけですべての責任を果たしたことにはならない。先例によれば、合理的な注意義務の要求がある場合、患者に対し一定の情報を提供する義務がある」。 12

13 「合理的な注意義務とは、今行われようとしている治療法が伴う可能性のあるリスクで患者の福祉に影響を与えるものはすべて警告する義務があるということである。
自分の利益が関係する行為の方向性を決定するのは患者の特権(prerpogative)であって、医師の権限ではない。そして、納得して療法を定めることが可能になるには、治療の選択肢とそれらの危険についてある程度知っておくことが不可欠である。 伝統的に、医師に対し患者が依存する関係は、独立対等当事者間の関係で生ずる義務以上の義務を伴う信頼の関係である。患者が、当該治療についての自らの福祉に影響を与える情報について、全面的に医師に頼らざるをえない状況はほとんどあわれといってよいほどである。当裁判所自体が、『医師患者関係の信認的性格(fiducial qualities)に鑑みると、患者の最善の利益に照らして知るべき事柄を明らかに示す義務がある』と判示している。今回の事件に際し、当裁判所は、医師の患者に対する全体的な義務の一部として、提案する治療法に関する他の選択肢と、そこに潜在し生ずる可能性のある危険を、合理的な範囲で開示する同様の義務があると宣言する」。 13

14 カンタベリー判決の意義 ①説明義務の根拠は患者の自己決定権。
②どのような情報を提供するかについて、適切な範囲を確定させるのも患者本位。患者の決定にとって重要なもの(the information material to the decision)と定式化したこと。 ③何が重要かは、医師の間の医療実務の慣行によって決められるのではなく、立証に医師の専門家証人は不要。 ④ただし、基準となる患者=合理的な患者 14

15 インフォームド・コンセント訴訟の限界 ・実際の裁判でも最終的に敗訴 ・ごく小さなリスクまで開示・説明する義務があるかは往々にして疑わしい。
・医師が患者に情報提供しなかったことの立証 ・適切な情報を得ていれば異なる決定をしたと立証し、しかも異なる決定の下でもっとよい結果が出ていたはずだという点を立証する困難 ・説明の増加は法のおかげか。 15

16 Paper tiger としてのインフォームド・コンセント訴訟
①医師基準の維持。 ②「決定レベルの因果関係」と「損害レベルの因果関係」という壁。 ③自己決定の機会の喪失という「損害」 ④患者の「自己」決定と 「合理的患者」基準の矛盾 16

17 理想主義と現実主義 理想主義:患者の自己決定権を守る。すべて患者の視点から。納得の手段。法は医療のあるべき姿を示し現実を変えるもの。
現実主義:患者は決定を望まない。専門家に委ねたい。説明はわからない。自己責任といわれても困るだけ。法の介入は訴訟の脅威で脅すもの。サインが増えるだけの形式化。法によってよき医療は実現しない。 17

18 法と医療との関係 日本における説明義務違反訴訟の隆盛 アメリカにおけるインフォームド・コンセント訴訟
医療に対する法の影響はどのような形で現れているか 18


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