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医事法2009 東京大学法学部 21番教室 樋口範雄・児玉安司

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1 医事法2009 東京大学法学部 21番教室 nhiguchi@j.u-tokyo.ac.jp 樋口範雄・児玉安司
第11回2009年7月1日(水)16:50ー18:30 医療過誤訴訟2 参考(樋口範雄『続・医療と法を考える―終末期医療ガイドライン』第8章~第10章(有斐閣・2008年)) 1 医療過誤訴訟とはどのような訴訟か―日米の比較 2 医療過誤訴訟は役に立っているのか? 3 医療過誤訴訟と医療安全、リスクマネジメント 4 実際の判例を使って 参照→

2 医療と法への視点 医療の問題 Access Quality Cost 医療過誤訴訟はどれを問題としているか?
そもそも医療過誤訴訟の目的は何か?

3 前回の説明からの論点 医療過誤訴訟の日米比較から
 ①判例の文言と過失基準の定め方を見ると、アメリカ以上に日本法では医師に厳しいように見える。説明義務違反という点でもアメリカより厳しい。それにもかかわらず、医療過誤訴訟がアメリカより圧倒的に少ないのはなぜか?  ②アメリカでも、すでに訴訟が過剰だという議論と、実際の医療過誤件数に比べてまだまだ少ないという議論がある。そもそも、医療過誤訴訟は(あるいは法は)医療のアクセス、クォリティ、コストにどのような影響を与えているか?

4 訴訟件数の少なさ ①見た目ほど違わないという説明 アメリカでは訴訟から和解、日本では和解がだめで訴訟
②制度的説明 訴えやすさ(弁護士数、報酬制度、手数料、他の制度での損害補填など) ③訴訟に代わる代替制度 保険制度の下での解決 ??? 

5 訴訟と医療安全 A.Q.C.への影響 ①医療過誤訴訟を非難する立場から ・内部調査委員会の機能を阻害 過ちを認められない
  ・内部調査委員会の機能を阻害 過ちを認められない    「過ち」の基準時が後に設定されるおそれ(hindsight) ・防御医療へ 質の維持とは結びつかない   ・医療の最低線の争い 向上とは別   ・防御医療はコストの意味ない増加   ・訴えられやすい領域からの撤退 アクセスの縮小   ・医師患者関係を対立関係にするだけ

6 訴訟と医療安全 A.Q.C.への影響 ②医療過誤訴訟を擁護する立場から ・裁判を通して客観的な真実が ・医療界の独善を防止
  ・裁判を通して客観的な真実が ・医療界の独善を防止   ・安全やリスクマネジメントを後押し   ・被害者救済は当然

7 1つの実例 最高裁判所第一小法廷(上告審) 平成20年4月24日 第一審大阪地方裁判所堺支部平成16年11月19日判決
控訴審大阪高等裁判所平成18年6月8日判決 【事案の概要】 Bが上告人病院に入院して、上告人の執刀により本件手術を受け、上行大動脈の縫合閉鎖から約25時間半後に死亡したことについて、遺族である被上告人らが、上告人病院の医師らに説明義務違反があるなどと主張し、損害賠償を求めた事案の上告審で、チーム医療の総責任者は、主治医の説明が十分なものであれば、自ら説明しなかったことを理由に説明義務違反の不法行為責任を負うことはなく、また、主治医の上記説明が不十分なものであったとしても、当該主治医が説明をするのに十分な知識、経験を有し、チーム医療の総責任者が必要に応じて当該主治医を指導、監督していた場合には、同総責任者は説明義務違反の不法行為責任を負わないとした事例 ○破棄差戻し 甲斐中辰夫 横尾和子 泉徳治 才口千晴 涌井紀夫 判例時報2008号86頁

8 主   文 原判決のうち上告人の敗訴部分を破棄する。 前項の部分につき,本件を大阪高等裁判所に差し戻す。        理   由 上告代理人坂本団の上告受理申立て理由について 1 本件は,大動脈弁閉鎖不全のためA大学医学部附属病院(以下「本件病院」という。)に入院して大動脈弁置換術(以下「本件手術」という。)を受けたBが本件手術の翌日に死亡したことについて,Bの相続人である被上告人らが,本件手術についてのチーム医療の総責任者であり,かつ,本件手術を執刀した医師である上告人に対し,本件手術についての説明義務違反があったこと等を理由として,不法行為に基づく損害賠償を請求する事案である。 2 原審が確定した事実関係の概要は次のとおりである。 (1)被上告人X1はB(昭和7年生まれ)の妻であり,被上告人X2及び被上告人X3はいずれもBの子である。  上告人は,平成11年9月当時,A大学医学部心臓外科教室の教授の地位にあり,本件病院において心臓外科を担当していた医師である。  Cは,その当時,A大学医学部心臓外科助手(病院講師)として,本件病院において心臓外科を担当していた医師である。 (2)Bは,平成11年1月,近隣の病院で受けた心臓カテーテル検査の結果,大動脈弁狭さく及び大動脈弁閉鎖不全により大動脈弁置換術が必要であると診断され,同年9月ころ,手術を受ける決心をし,同月20日,紹介された本件病院の心臓外科に入院した。本件病院では,C医師がBの主治医となり,同月25日まで術前の諸検査が実施された。本件病院の心臓外科は,上記諸検査を踏まえたカンファレンスにおいて,大動脈弁置換術の手術適応を確認するとともに,D医師を執刀者とすることを決定した。

9 (3)C医師は,同月27日,B及び被上告人らに対し,翌28日に予定された本件手術の必要性,内容,危険性等について説明をした。
 上告人は,同月27日午後5時ころ,C医師に対し,本件手術においては上告人自らが執刀者となる旨を伝えた。上告人自身は,B又は被上告人らに対し,本件手術について説明をしたことはなかった。 (4)同月28日午前10時10分ころ,本件手術が開始され,当初はC医師が執刀したが,午前10時45分に体外循環が始められた後,上告人が術者,C医師及びD医師らが助手となって本件手術が進められた。切開後の所見によれば,Bの大動脈壁は,通常の大動脈壁と比較して,薄く,ぜい弱であった。上告人は,人工弁を縫着して大動脈壁の縫合閉鎖をし,午後1時3分に大動脈遮断を解除し,体外循環からの離脱を図ろうとして徐々に血圧を上げたところ,大動脈壁の縫合部から出血があり,縫合を追加しても次から次へと出血があった。追加縫合を反復してようやく出血が止まったので,午後3時ころ,上告人は手術室を退室した。その後,D医師,E医師が術者となって本件手術が続けられた。午後5時ころ,C医師は,待機している被上告人らへの説明のため一時手術室を退室し,被上告人らに対し,「予想以上にBの血管がもろくて,縫合部から出血が続いている。」と説明して再び手術に加わった。午後5時に大動脈遮断がされた後,人工血管パッチが大動脈へ縫着され,午後6時50分に大動脈遮断が解除された。しかし,Bについて体外循環からの離脱が難しかったため,上告人は,午後9時20分ころその旨の連絡を受け,手術室に戻った。Bは補助循環を止めると右室機能の低下が起きる状態にあり,右冠状動脈の閉そくによる心筋こうそくが疑われたため,午後10時36分ころからE医師らにより大動脈冠状動脈バイパス術が開始された。この時点で,上告人は,手術室を退室した。 (5)Bは,上記バイパス術の終了後,体外循環から離脱することができたが,循環不全を克服することができず,同月29日午後2時34分ころ死亡した。

10 3 原審は,次のとおり判示して,上告人の説明義務違反を認め,民法709条に基づき,被上告人らの上告人に対する請求を一部認容した。
(1)本件においては,〔1〕臨床的には,大動脈の拡大があれば大動脈壁がぜい弱であるとの推測が可能であるとされていること,〔2〕大動脈壁ぜい弱化の原因となる大動脈中膜の退行性変性を来す要因として,加齢,大動脈弁閉鎖不全,高血圧,粘液状弁等があること,〔3〕大動脈が薄く,ぜい弱な症例は,高齢者の大動脈弁閉鎖不全,特に上行大動脈が拡大している場合に,かなりの頻度で見られること,〔4〕大動脈弁置換術の縫合部からの中等度又は重度の出血は,大動脈壁が薄く,中膜の退行性変性があると推測される症例で起こりやすいとされていること,〔5〕本件手術当時,Bは,高血圧症,脳こうそく,高脂血症の既往症のある67歳の男性であり,大動脈弁閉鎖不全により大動脈弁置換術が必要であると診断されていたこと,〔6〕Bに対する術前の胸部レントゲン撮影の結果及びCT像は,Bの胸部大動脈が全体に拡張及び延長していることを示していたこと,〔7〕平成11年1月29日にF病院で実施された心臓カテーテル検査の結果からみて,Bの左室は相当弱っており,同時点で既に心不全の状態であったことなどの事実が認められ,これらの事実からすれば,上告人自身,本件手術前のBの大動脈弁閉鎖不全の状態が重症であることを認識していたことが認められる。 (2)上記各事実に照らせば,本件病院におけるチーム医療の総責任者であり,かつ,実際に本件手術を執刀することとなった上告人には,B又はその家族である被上告人らに対し,Bの症状が重症であり,かつ,Bの大動脈壁がぜい弱である可能性も相当程度あるため,場合によっては重度の出血が起こり,バイパス術の選択を含めた深刻な事態が起こる可能性もあり得ることを説明すべき義務があったというべきである。にもかかわらず,上告人は,大動脈壁のぜい弱性について説明したことはなかったことを自認しているものであり,上記説明をしなかった上告人には,信義則上の説明義務違反があったというべきである。

11 4 しかしながら,原審の上記3(2)の判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。
一般に,チーム医療として手術が行われる場合,チーム医療の総責任者は,条理上,患者やその家族に対し,手術の必要性,内容,危険性等についての説明が十分に行われるように配慮すべき義務を有するものというべきである。しかし,チーム医療の総責任者は,上記説明を常に自ら行わなければならないものではなく,手術に至るまで患者の診療に当たってきた主治医が上記説明をするのに十分な知識,経験を有している場合には,主治医に上記説明をゆだね,自らは必要に応じて主治医を指導,監督するにとどめることも許されるものと解される。そうすると,チーム医療の総責任者は,主治医の説明が十分なものであれば,自ら説明しなかったことを理由に説明義務違反の不法行為責任を負うことはないというべきである。また,主治医の上記説明が不十分なものであったとしても,当該主治医が上記説明をするのに十分な知識,経験を有し,チーム医療の総責任者が必要に応じて当該主治医を指導,監督していた場合には,同総責任者は説明義務違反の不法行為責任を負わないというべきである。このことは,チーム医療の総責任者が手術の執刀者であったとしても,変わるところはない。 これを本件についてみると,前記事実関係によれば,上告人は自らB又はその家族に対し,本件手術の必要性,内容,危険性等についての説明をしたことはなかったが,主治医であるC医師が上記説明をしたというのであるから,C医師の説明が十分なものであれば,上告人が説明義務違反の不法行為責任を負うことはないし,C医師の説明が不十分なものであったとしても,C医師が上記説明をするのに十分な知識、経験を有し,上告人が必要に応じてC医師を指導,監督していた場合には,上告人は説明義務違反の不法行為責任を負わないというべきである。ところが,原審は,C医師の具体的な説明内容,知識,経験,C医師に対する上告人の指導,監督の内容等について審理,判断することなく,上告人が自らBの大動脈壁のぜい弱性について説明したことがなかったというだけで上告人の説明義務違反を理由とする不法行為責任を認めたものであるから,原審の判断には法令の解釈を誤った違法があり,この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。 5 以上によれば,論旨は理由があり,原判決のうち上告人の敗訴部分は破棄を免れない。そして,C医師の説明内容,C医師が本件手術の必要性,内容,危険性等について説明をするのに十分な知識,経験を有していたか等について更に審理を尽くさせるため,同部分につき本件を原審に差し戻すこととする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

12 法と医療との関係 今日の課題 ①最近の判決を1つの例として、医療過誤訴訟の意義を考えてみる ②ゲストの中島和江さんと、児玉さんのこれまでの経験に学ぶ 12


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