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CVSの店舗利益に与える 消費期限の影響について
流通情報工学科 福崎泰志
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研究の背景 店舗 本部 ロイヤリティ 人件費、施設費、光熱費など 廃棄ロス 商標、経営ノウハウなど 出典:経済産業省
コンビニエンスストアは、近年の飲食料品小売業において、最も成長している業態のひとつとなっています。店舗数の推移を見てみると、平成10年には全国で約32,000店だったのに対し、平成18年には4万店を超え、今現在も増加傾向にあります。また、売上高も年々増加し、平成18年では7兆3990億円と8年間で1兆円以上の急成長を遂げています。 ほとんどのコンビニエンスストアは大手資本のフランチャイズに加盟し営業を行っています。本部側は商標の使用許可や経営ノウハウの指導などを加盟店にする代わりに、加盟店からロイヤリティとして利益の一部を受け取っています。加盟店はそこから、人件費、施設費などの経費に加え、期限切れ廃棄の商品の処理費用を支払うことになります。コンビニエンスストアの店舗にとって、期限切れ廃棄は、おおきな損失であり、店舗利益におおきな影響を与えます。 店舗 本部 廃棄ロス 商標、経営ノウハウなど 出典:経済産業省
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研究の目的 CVSの店舗における発注・納品・販売を模擬したシミュレーションを実施し、商品の消費期限が店舗利益に与える影響を明らかにする。そして、得られた知見から、CVSの店舗利益を向上させるための方策について検討することを目的とする。 そこで、本研究では、 コンビニエンスストアの店舗における発注・納品・販売を模擬したシミュレーションを実施し、商品の消費期限が店舗利益に与える影響を明らかにし、得られた知見から、CVSの店舗利益を向上させるための方策について検討することを目的とします。
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シミュレータの構成 需要:関東某店舗の売上データを元にした3種類 消費期限:店舗に商品が到着してからの期限
開始 初期設定 需要:関東某店舗の売上データを元にした3種類 (1時間当たりの需要の平均10、標準偏差3) 需要の読み込み 消費期限:店舗に商品が到着してからの期限 販売業務 廃棄処理 顧客行動:常に古い商品から購入する N 発注時間 欠品による機会損失: 商品があれば売れていたのに商品がなかったために本来得られたはずの利益を得られなかったという損失 Y 発注業務 コンビニエンスストアの店舗では、1日1回の発注が行われ、発注された商品が3回に分けて納品されます。そこで、発注方式として定期発注方式を採用し、1時間毎に需要量を求め、在庫量の推移を模擬できるこのようなフローのシミュレータを構築しました。 また、今回コンビニエンスストアにおけるシミュレーションを行うに当たりいくつかの条件を設定します。 需要は関東某店舗の売上データを元に3種類用意し、1時間辺りの需要の平均は10、標準偏差は3とします。本シミュレーション内での消費期限は店舗に到着してからの時間とし、客は常に古い商品から購入するとします。機会損失については、商品があれば売れていたのに商品がなかったために本来得られたはずの利益を得られなかったという損失 のみを考慮します。 以上のことを踏まえ計測期間30営業日でシミュレーションを行います。 N 納品時間 Y 納品業務 計測期間30営業日(720時間)でシミュレーションを行う
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店舗利益の算出方法 店舗利益=店舗収入-廃棄ロス(処理費用込み) 店舗収入=営業総収入-純売上原価-ロイヤリティ
売上高-総売上原価+廃棄ロス(原価)-ロイヤリティ 販売した商品の利益 営業総収入=売上高 純売上原価=総売上原価-廃棄ロス(原価) ロイヤリティ=(販売した商品の利益+廃棄ロス(原価))×0.35 本部利益 ここで店舗利益の算出方法について説明します。 店舗利益は店舗収入から廃棄物処理費用を含んだ廃棄ロスを引いて求まります。 店舗収入は営業総収入から純売上原価を除いた売上総利益から本部にロイヤリティを支払ったものになります。営業総収入と純売上原価を店舗収入のしきに代入するとこのようになり、売上高から総売上原価を引くと、実際に販売した商品の利益となります。 ロイヤリティはこの部分で求まる売上総利益に決められた値を掛けることで求まり、これが本部の利益となります。 また、ロイヤリティ、販売価格、商品原価、廃棄ロス、廃棄物処理費用はこのように設定します。 ここで、廃棄ロスは店舗利益にはマイナスになりますが、本部側にとってはプラスになることになります。 ロイヤリティ:売上総利益の35% 販売価格:500円 商品原価:350円 廃棄ロス(原価):商品原価 廃棄物処理費用:10円 出典:株式会社ローソン
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シミュレーション結果 ~検討項目~ サービス率の変更 店舗側で意思決定が可能 店舗主体 納品回数の変更 本部主体 本部の決定に店舗が従う体制
納品間隔の変更 この作成したシミュレータを使用して得られた結果について説明します。 まず、検討項目ですが、CVSの店舗と本部、そして、商品の生産工場において在庫管理上コントロール可能な項目に関して、感度分析を行い、消費期限が店舗利益に与える影響等について分析を行いました。在庫管理上コントロール可能な項目を主体毎にまとめました。 まず、このサービス率の設定は店舗側に意思決定があり店舗が主体となり改善できることになります。 次に納品回数、納品間隔は、コンビニエンスストアにおいてはこれらの変更は本部が行い、店舗側はその決定に従うといった体制になっているため、ここでの主体は本部となります。 最後に消費期限の変更については、本部主体の消費期限の長い商品の開発、生産工場主体の生産工程見直しによる納品時間に合わせた製品の生産などが上げられるため、本部、工場両者が主体となり変更が可能ということになります。 本研究ではこれらの各項目について分析を行いましたが、ここでは、店側が主体となり変更が可能なサービス率と本部が主体となり変更が可能な納品間隔について説明します。 本部主体 新商品の開発 消費期限の変更 工場主体 納品時間に合わせた製品の生産
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サービス率の変更による店舗利益への影響 サービス率があがると 欠品 廃棄
サービス率の決定は店舗側で意思決定が可能であり、今回検討する項目では、最も簡単に改善が可能な項目です。これはサービス率を変化させた場合の店舗利益の変化です。縦軸に店舗利益、横軸にサービス率をとり、それぞれの系列は商品の消費期限を表しています。 このように店舗側は、むやみにサービス率を高く設定すると、欠品は減るものの廃棄による損失は格段に増加し利益は減少します。特に消費期限が短い商品のサービス率が100%に近づくと急激に利益は低下します。従って、消費期限が短い商品は、廃棄量の急激な増加を避けるため、商品を売り切ることが出来るように低いサービス率の設定が望ましいことが分かります。 しかし、本部の利益は店舗側と異なる傾向を示していて、サービス率の増加とともに利益が増加する傾向にあります。また、サービス率が100%に近づいたときの傾向も店舗側とは逆の傾向を示し、急激に利益は増加します。これが、本部側におけるサービス率を高く設定し、欠品による機械損失を無くすことが望ましいと判断している理由と考えられます。しかし、実際欠品による機会損失を防ぐだけではこのような大きな傾向の違いというのは出ません。先ほど紹介したロイヤリティを求める式から、廃棄ロス原価は店舗の売上総利益に加算され本部にとってはプラスにはたらきます。そのため、廃棄数量の増加により店舗の利益は減少し、本部の利益は増加します。 よって、サービス率の設定に関しては、サービス率をさげ廃棄数量を減らしたい店舗側とサービス率を上げ店舗の発注量を増加させたい本部側とで意見に食い違いがおきる結果となり、店舗側に決定権があるとは言え、本部の利益を無視することはできないと言えます。 サービス率があがると 欠品 廃棄
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納品間隔の影響に関するシミュレーション結果
1便 8時間 2便 8時間 3便 8時間 等間隔 1便 10時間 2便 8時間 3便 6時間 パターン1 1便 6時間 2便 10時間 3便 8時間 パターン2 次に本部側が主体となり変更が可能な納品間隔について説明します。 納品間隔についてこの図のようにパターンを決め納品間隔が8時間で等間隔のものを基準値として検討を行いました。パターン1では1便の納品間隔が最も長く、パターン2では2便、パターン3では3便が最も長くなっています。また、需要に関して、今回は需要にピークの無い場合を紹介しますが、本研究では需要にピークのある場合についても検討を行いました。 1便 8時間 2便 6時間 3便 10時間 パターン3
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逆 店舗 本部 納品間隔の変更は、等間隔のとき店舗は最も利益を増加させることができ、本部は最も利益が少なくなります。そして、パターン2のとき店舗利益が最も低くなり本部利益は最も高くなります。納品間隔の変更についても店舗と本部の利益の変化は、全く逆の傾向を示しています。 また、納品間隔の変更においてもサービス率の変更と同様に、消費期限が短い商品を扱うとき、店舗と本部の利益には大きな差が生じます。
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:在庫量 :廃棄量 :消費期限 納品間隔を変えることで、なぜ店舗利益、本部利益の増減にこのような違いが出るかというと、これにも発注量、廃棄数量が大きく関係していると考えられます。 廃棄数量は、発注量が増加すると、総需要量は一定となっているために増加します。 等間隔の場合には、今回消費期限10時間に対して、納品間隔は8時間であるため、全ての便で2時間分の余裕ができることになります。そのため、余分な在庫はその2時間の間に売ることができ廃棄数量が最も減少することになります。 納品間隔が等間隔で無い場合は発注量が等間隔のときに比べ増加します。納品間隔をかえることによる発注量の増減は、今回のシミュレータで用いた発注量の計算方法に関係します。それをパターンごとに考察します。 i便 i+1便
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:発注 :発注量 :廃棄 パターン1 廃棄 3便 1便 2便 3便 1便 パターン2 3便 1便 2便 3便 1便 パターン3 3便 1便
これは、それぞれのパターンで、納品間隔が最も長く発注量が多くなる便の発注量を表しています。 全体の発注量の増加は、最も納品間隔の長い便での発注量に影響されます。 パターン1では、1便の発注量が発注の時点で持っている在庫、すなわち手持在庫が増加することにより発注量が減少します。 パターン2では前日の2便での在庫が発注のときに廃棄となっているため他の便への影響を与えず、最も発注量が増加します。 パターン3では、前日の3便での在庫量が発注のときに廃棄とならず残っているために、発注時に1便の発注量が調整され大きく減少することになります。 よって、他の便の発注量へ影響を与えない2便の納品間隔を広げたとき最も発注量が増え、パターン2で店舗利益は減少し本部利益は増加するといえます。 パターン3 3便 1便 2便 3便 1便
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結論 今回の検討を通して、特に消費期限が短い商品に関して消費期限による影響を受け、店舗利益、本部利益は大きく変化することが明らかとなった。
サービス率 サービス率の変更による店舗利益の影響に関しては、廃棄数量を減らしたい店舗側と、欠品数量を減らしたい本部側とで意見が食い違うことになる。 納品間隔 納品間隔の変更による店舗利益の影響に関しても、廃棄数量を減らしたい店舗側と、発注量を増やしたい本部側とで意見が食い違うことになる。 今回の検討を通して、特に消費期限が短い商品に関しては消費期限による影響を大きく受けるということがわかりました。消費期限が短い商品を取り扱う場合には、サービス率などの設定を慎重に行わないと得られる利益は顕著に変わることとなります。 また、サービス率、納品間隔の変更、本研究で行った他の項目の納品回数の変更、消費期限の変更について、廃棄数量を減らしたい店舗側と発注量を増やし欠品数量を減らしたい本部側とで意見が食い違うことになります。 よって、コンビニエンスストアにおける期限切れ廃棄を考慮し在庫管理を行うと、店舗利益は増加するが本部の利益は減少すると言えます。 店舗の利益を増加させようとすると、本部の利益は減少する。
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ご清聴ありがとうございました
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:在庫量 :廃棄量 :消費期限 2便(6時間) 3便 2便(10時間) 3便
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t 1便の発注量 2便の発注量 i便の発注量
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この図は、等間隔のときの発注量と、それぞれのパターンを比べたときの差を表しています。
この式を用いて発注量を求めると、パターン1での発注量は、1便の発注量が増えた分、ここのシグマの部分で2便、3便の発注量が大きく減ることになります。 パターン2、パターン3の発注量は、このSTの部分で、発注の時点で持っている在庫が増え、1便の発注量が減ります。パターン2では前日の2便での在庫が発注のときに廃棄となっているため、1便での発注量がそれ程下がりません。パターン3では、前日の3便での在庫量が発注のときに廃棄とならず残っているために、発注時に1便の発注量が調整され大きく減少しています。 よって、発注まで最も遠い納品時間である2便の納品間隔が最も長いパターン2の発注量が1番おおきくなり、廃棄数量も増加します。 このことから、店舗側は納品間隔を等間隔にしたほうが、発注量が減り廃棄がへることによって利益は増加するが、本部側は、店舗により多くの発注をさせるほうが利益が増加するため、今回の例では2便のように、発注時間から最も遠い便の納品間隔を長くしたほうがよいと言えます。
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店舗の利益 コンビニの店舗側が得られる利益は以下の式を用いて求めることができる。 店舗利益=店舗収入-店舗営業費
店舗収入=売上総利益-ロイヤリティ(本部利益) 売上総利益=営業総収入-純売上原価 営業総収入=売上高+その他収入(公共料金手数料等) 純売上原価=総売上原価-廃棄ロス(原価)-棚卸差額(原価) 総売上原価=期首商品原価+商品仕入高(原価)-期末商品原価 コンビニエンスストアの店舗利益は次の式から求めることができます。本研究では消費期限の影響を知るためにシミュレーションを行うため、色のついている項目については考慮しないものとします。 店舗利益は店舗収入から店舗営業費を引いて求めます。店舗収入は総売上利益から、ロイヤリティを引いて求めます。ロイヤリティは売上総利益に対して定められた比率から求められ本部に支払われます。つまり、ここでのロイヤリティが本部の利益になります。売上総利益は営業総利益から純売上原価を引いて求められます。 本研究では商品の売上がそのまま営業総収入になり、実際に販売した商品の原価から廃棄となった商品の原価を除いたものが順売上上原価となります。 本研究では販売商品価格500円、仕入れ価格350円、店舗の廃棄ロスは商品原価に廃棄処理費用の10円を加えたものとしています。 ここで、このロイヤリティの算出に注目して説明します。売上総利益の式に、下の二つの式を代入すると、このようになります。売上高から総売上原価を除くと、実際に販売した商品から得られた利益が求まります。さらにこれに廃棄ロス原価が足されることになります。つまり、本部としては、店舗が商品を販売して得られた利益に期限切れ商品の原価を加えたものからロイヤリティを算出し店舗から徴収しているということになります。この式から本部にとって廃棄はプラスに働くことがわかります。 ロイヤリティ:売上総利益の35% 販売価格:500円 仕入れ価格:350円 廃棄ロス(店舗):商品原価+10円 ※店舗営業費 人件費、法定福利費、廃棄ロス(店舗)、棚卸ロス、消耗品費、包装費、清掃費、現金過不足、電話料、設備修繕費、一般維持費、水道光熱費、損害保険料、非課税経費、雑費
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消費期限とは 消費期限 定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限を示す年月日をいう。 賞味期限 定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいう。ただし、当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるものとする。 厚生労働省HPより
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今後の課題 シミュレータの改良 検討範囲の拡大 発注回数の変更による店舗利益への影響についての検討 より現実に近いシミュレータの構築
サプライチェーン全体への消費期限の影響についての検討
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