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終結に向けて
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ワーキング・スルーの基本 「解釈的明確化によって得られたどのような理解も新しい気づきも,他の絡み合う体験との新しいつながりや接触のなかで,何度も繰り返し再征服され,吟味される必要がある。その体験は,それ自体として解釈的に取り組まれるべき場合もあれ場、そうでない場合もある」 Fromn-Reichmann1950
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「幼児期の記憶があまりに速くとりもどされる場合,あるいは転移のなかで行動化されても適切な解釈がなされない場合は,除反応がそのときには評価できるものであっても効果は継続しないことは,早くから認識されていた。このような場合には,ワーキング・スルーはその記憶の回復のためには必要でないように見える。しかしそれは,もはや抵抗を減少させてその記憶にたどりつくための治療効果でなく,人生のさまざまな状況において本能の流れの働きを患者に繰り返し明らかにしていくための治療効果を維持するための本質的要素となった」 Greenacre,1956
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「分析者は,患者によって与えられた索材と生産物を……構造化し,明瞭にする。もしも無意識の意味についての解釈が,時宜を得たものであれば,それによってこの意味が表現された言葉は,患者にとって彼が体験したものの表現と認識される。それらは,以前には彼にとってほとんど組織化されていなかったものを組織化し,こうして彼自身からの「距離」を彼に与える。この距離によって,彼は以前には見ることも,理解することも,語ることも,触れることもできなかったものを理解したり,見たり,言葉にしたり, 「扱う」こともできるようになるのである。……分析者の理解が,組織化を必要とするもの,そしてそれが組織化されるべきやり方と波長を合わせているかぎり,分析者はより高度な段階の組織の代表者としての役割を果たし,これを患者へと媒介する。」 Loewald 1960
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グリーンソンのまとめ 解釈の反復。特に転移抵抗の分析。 感情と衝動が体験および記憶から隔離されていることの打破。
グリーンソンのまとめ 解釈の反復。特に転移抵抗の分析。 感情と衝動が体験および記憶から隔離されていることの打破。 解釈の鉱張,深化,拡大。また,ある行動の断片の種々の先行物と派生物の,複合的な機能や反応決定図を明るみに出すこと。 患者とその環境における重要人物を生きた視点のなかで位置づける過去の再構成。これは過去のさまざまな時期における自己イメージの再構築をも含む。
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以前は制止されていた患者が,それまでは危険であると思っていた衝動や対象に関して,新しい様式の反応や行動を危険覚倍で試みることができるよう,反応や行動bにおける変化を促すこと。通常,患者は新しい行動を,分析状況のなかで試し~こやってみて,それから外の世界で試してみるものである。その新しい行動は,幼児期の過去の派生物よりいくぶんゆがみが少ない。 繰り返しのなかで、徐々に形成される新しい体験が提供され続けることが重要だという発想がある。 Greenson 1956,1966
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新しい洞察を受け止め,理解すること(洞察への抵抗を克服することも含まれる)。
新しい洞察を,新しい能力を獲得するために応用すること(構造的発達を開始すること)。 その新しい能力を獲得したために以前とは異なった自分自身を理解すること(構造的発達を継続すること)。 古い自己と,そしてしばしば古い対象への愛着の喪失を(構造的発達の強化とともに)悲しむこと,および乗り越えること。
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終結論とは何か ①終結の割合、②日常生活的ではない:日常的には終わりは地理的移動、友人との仲たがい、死、③分析の問題(そこにつねに完全な終結はない:Freud,Milner、Bergman)④人生目標の意味 初期のFreud:1.症状の軽減 2.抑圧されていたものが意識化され、抵抗が除去されたこと けれども晩年の「終わりなき分析」の提案によって変化が加わった。
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内的な終結の基準(Klein) Klein(1950)「精神分析の終結のための基準について」異性関係、愛する能力、対象関係と仕事、精神的安定に寄与して適切な防衛と結びつく自我の諸特徴に加えて、新しい基準としての迫害不安と抑うつ不安の軽減→陽性転移と陰性転移の分析が必要である。 「迫害的不安と抑うつ的不安を軽減して、燥的不安を弱めることに成功すれば、結果のひとつとして自我の深みと強さが増すだろう。たとえ期待通りの結果が得られたとしても、分析の終結は必ず苦しい感情をひきおこして初期の不安を再現するはずであり、これは喪の情態に等しいものになる。分析の終結が喪失を意味してしまうとき、まだクライエントは喪の仕事の一部を独力ではたさねばならない。」
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客観的な判断基準 Shane,M&Shane,E.(1984)
Overall Emotional Health Symptomatic Improvement Structural Considerations Intuition Increased Autonomy Resolution of Transference Neurosis Dream themes
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フロイトの事例: カタリーナ Aurelia Kronich 1893年に避暑地ホーエン・タウエルンの山小屋で で出会った田舎の女性で、シングルセッションで、ヒステリー症状、息苦しいなどの症状が改善した事例
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ブルーノ・ワルター 指揮者、ピアニストとして活躍する。:1906年 右腕の局所麻痺の症状を6セッションでフロイトの治療を受けて、治癒した。
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マーラー G.マーラー:夫婦関係の悩み、特にインポテンツのためにフロイトを訪れ、4時間ほど(4セッション)散歩をするセッションをもち、精神分析への理解と動機の高さのため治癒した、という。
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まとめ 初期のフロイトの治療、そしてアメリカからやってくる人を治すための短期滞在用の治療は、ごく短期、毎日分析を行っていても、料金は高いし短期であった。 それは主に抵抗のワークスルーがメインで、抑圧されている感情主題を明らかにして、それをもう一度人生に持ち込む助言をして終わっていたと思われる。 ここでのワークは欲動の解放、除反応が中心で、長期にワークスルーしていない。
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狼男 Sergej Konstantionovich Pankejev(1885-1979) フロイトのもっとも重要な
フロイトのもっとも重要な しかも理論的に多くの問題 を残したクライアントとして 生きた。
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狼男の生育歴 生後三ヶ月 肺炎に罹って死にか ける.のちにそれを大人たちから 聞き,死への不安から過食になっ
生後三ヶ月 肺炎に罹って死にか ける.のちにそれを大人たちから 聞き,死への不安から過食になっ た(一番最初に現れた神経症的障害) 幼児期 両親が家を売って都会に 引っ越した.(狼男にとって大きな 変化) 二歳半の夏 両親が数週間旅行に 出かけたが,姉とともに留守番. 英国人の女家庭教師が雇われた.狼 男は優しく,おとなしい,静かな子供であったが,両親が旅行から帰ってみると,不平がちになり,敏感でいらいらし,暴れたり,泣き叫んだりする子に変わってしまった.母親は変化の原因を英国女のせいだと思い,彼女を解雇するが,短気な性格は少しも治らなかった.クリスマスの日に誕生日とクリスマスの二重の贈り物をもらえず,激怒)
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四歳誕生日前 狼の夢を見,狼に食べられるのではないかという不安に襲われて泣いた.それ以降,狼恐怖が続く.姉は,いつも彼をいじめ,怖がることをしては面白がった.(狼の絵本を見るように仕向け,狼男が怖がるのを見て喜んでいた)狼男は,狼だけでなく,他の動物や昆虫にも恐れや嫌悪を感じるようになった.同時に,それらに残酷な行為をするという矛盾した態度が起こった. 四歳半 母親は狼男を矯正させようと聖書の物語を読んで聞かせた.これによって狼恐怖は消失したが,代わって,就寝前に長いお祈りをし際限なく十字を切ったり,夕方には部屋中の聖像に接吻して廻らねばならないという強迫観念に悩まされるようになった.
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十歳 ドイツ人男性の家庭教師が雇われ,狼男に大きな影響を与えた.この人物は宗教に価値を認めていなかったため,狼男の信仰心は薄れそれまで続いていた強迫症状は消失した.その代わり,路上に大便が三つ転がっているのを見ると三位一体を連想するという強迫が新たに現れた.しかし思春期が近づくにつれ,ドイツ人男性の影響下で,狼男の症状は減じほぼ正常な状態を維持できるようになった.
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狼の夢(幼少時代にみた) 「私はこんな夢を見なした。『夜私 はベッドに寝てしました。(私のベッド は足の方が窓を向いており、その窓
狼の夢(幼少時代にみた) 「私はこんな夢を見なした。『夜私 はベッドに寝てしました。(私のベッド は足の方が窓を向いており、その窓 の向こうには古いくるみの木がずらりと並んでいました。その夢は冬のこと、確かに冬の夜のことだったと思います)。急に窓がひとりでに開きました。窓の向こうの大きなくるみの木に幾匹かの白い狼が座っているのを見て、私はびっくりしました。狼は六匹か七匹いました。彼らは真白で、どちらかといえば狐かシェパードのように見えました。というのは、それが狐みたいにおおきなしっぽをもち、その耳は何かを狙う犬みたいにピンと立っていたからです。この狼たちに食べられるのではないかという非常な不安に襲われて、私は大声をあげ、泣き出し』、目が醒めました。
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狼男に関わった人々 1918年に発表した『幼児神経症の病歴から』 1919年4ヶ月の間、フロイトの提案で、無料の精神分析が行われた。
フロイトが指導していたルース・ブルンスビックの分析を受けることになる( )。 ブルンスビックの待合室で、ムリエル・ガーディナーと出会い、ロシア語の家庭教師になる→ The Wolf-Man by Wolf-Man(1971)の編集が行われる。 1955年Frederick Weilがロールシャッハをとる(強迫神経症と診断する) Kurt Eisslerが15年間一ヶ月ごとに録音インタビュー Karin Obholzerが亡くなるまでの間インタビュー →『W氏との対話』(1982)の出版
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その後の狼男 市民戦争のために財産を失ってしまった。 自分がフロイトの患者であったことが自分が父親から愛されることになった。
保険会社に勤めて、1950年(65歳)に退職するまでカフカのように過ごす。 1938年ヒトラーの入都とともに妻が自殺する→ガーディナーらが亡命させる ブルンスヴィックの毎日分析をパリ、ロンドンでも受けている 1953年まで母親と暮らしていた。 狼男として最後まで生きる
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狼男の問題 精神病的症状 その後の経過:小此木の境界例論 フロイトの原光景論 夢と幻覚、そして認識 構成の現実性とは何か:事後性
狼男の問題 精神病的症状 その後の経過:小此木の境界例論 フロイトの原光景論 夢と幻覚、そして認識 構成の現実性とは何か:事後性 精神分析にとって現実とは何か 終わりある分析と終わりなき分析 精神療法技法論文の最後の修正
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フロイトの「過去」の問題 「歴史的真実」 隠蔽記憶 事後性Nachtraglichkeit → 過去は現実かどうか
フロイトの「過去」の問題 「歴史的真実」 隠蔽記憶 事後性Nachtraglichkeit → 過去は現実かどうか 特に初期フロイトの治療は短かった。
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フロイトの技法論文 1910年代にほぼその全体像が完成する。 「自我とエス」に収束する治療モデルが完成する
「自我とエス」に収束する治療モデルが完成する 1937年になって、二つの技法論文が登場する。これは前者の技法論文についての帰納法的手法から異議のあるものであった。「終わりがない」「構成である」
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終わりなき精神分析 晩年の技法論文の問題 「終わりある分析と終わりなき分析」(1937) 「分析における構成の仕事」(1938)
終わりなき精神分析 晩年の技法論文の問題 「終わりある分析と終わりなき分析」(1937) 「分析における構成の仕事」(1938) 解釈学的、構成主義的、あるいは交流主義的な転回点として精神分析を再構成する可能性 精神分析が独自の領域かどうかという問題 long-term psychotherapy(Gabberd)
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時間の貴重さから見た精神分析
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歴史的な経緯 Ferenczi&Rank『精神分析の発展』(1923) ・治療関係の情緒的な交流 ・治療の短期化の試み 短期療法の流れ →Balint、Malan 焦点化の心理療法 →Mann 時間の操作的心理療法
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ランク ( ) .フロイトの若き秘書 .出生(出産)外傷理論 .時間制限療法、中断療法 .パリ、米国へと亡命 .アナエス・ニンの分析 .意志療法will therapy →ロジャースへ
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フェレンチィ(1873-1933) 実験家であった 当初 積極技法の提唱 禁欲 リラクセーション 技法
技法 弟子としてフロム、バリントらブタペストのハンガリー学派を形成した(晩年、外傷説のためにフロイトとの関係が問題になり、長く隠蔽された)
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ライヒ,W (1897-1957) 1920年ウィーン精神分析協会会員 1930年ベルリン研究所でラドから分析を受ける 衝動性格論
衝動性格と衝動抑制型の神経症、およびマゾヒズム的性格 →性格分析、振る舞い分析
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晩年 社会運動家として 不安学説、→オーガズム体験による解放 「ファシズムの大衆心理」(1934) 1934年除名
晩年 社会運動家として 不安学説、→オーガズム体験による解放 「ファシズムの大衆心理」(1934) 1934年除名 Vegetotherapy→ orgonnbox 1957年に刑務所に入る、精神分裂病と診断 →ローエンらbioenergetics
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1925年に起きたこと 最後の弟子の離脱と創始者のガンから 教育・訓練分析のシステム化 →分析家の養成 分析研究所の基準設定
教育・訓練分析のシステム化 →分析家の養成 分析研究所の基準設定 セミナー・教育・分析体験の標準化 →研究方法の確立 定点観察:観察者問題の標準化
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長期化のなかで生み出された理論 対象関係理論 人の心の布置をたんねんに探索して、それを再構成していく作業 →ウィニコットとビオン
長期化のなかで生み出された理論 対象関係理論 人の心の布置をたんねんに探索して、それを再構成していく作業 →ウィニコットとビオン クライン学派におけるcontainment 中間学派におけるholding 時間と転移と解釈は前提だとしても。
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短期療法をしない理由 (モルノス,1995) Ⅰ.主要因 ①永遠の時間への回帰 Ⅱ.精神分析の方法論に固有の問題 ②自由連想の慣例、③分析家の受動性、 ④徹底操作、⑤転移神経症と退行の促進 Ⅲ.患者側に働く要因 ⑥変化に対する無意識の抵抗、⑦神経症の根本治癒、⑧過度の解決、⑨患者の依存、⑩終結の困難
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Ⅳ.セラピスト側に働く要因 ⑪治療の完全主義、⑫より深い、早期の体験を治癒しなければならない強迫の増大、⑬患者の支援より無意識の科学的関心や好奇心が強くなる、⑭患者の怒りの反応を恐れることや傷ついた患者が来なくなることへの恐れへの抵抗と直面化への恐れ、⑮自信の喪失、⑯短期療法を行うことへのプレッシャー、⑰同僚からのプレッシャー Ⅴ.開業に特有の要因 ⑱終結したブリーフの患者を不完全なまま戻して良いかという不安 ⑲患者の回転が増えると、余計な事務的な仕事が増える。
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実際に行われる短期療法の理由 十分なモチベーションを持った患者がセラピーの終結日時を決めてやってくる場合
実際に行われる短期療法の理由 十分なモチベーションを持った患者がセラピーの終結日時を決めてやってくる場合 公共領域のヘルスケア、その拘束のもとで心理療法をしている場合、 短期療法をしても、自分の名声が低くなることがない高い地位と名声を有する場合 →短期療法は、ひっそりと行われる!
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現代の短期力動療法
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短期療法の歴史 フェレンチィ 積極技法 active therapy ランク 意志療法 will therapy
短期療法の歴史 フェレンチィ 積極技法 active therapy ランク 意志療法 will therapy シュテーケル 焦点化療法focused therapy アレキサンダーとフレンチ 修正感情体験 corrective emotional experience シフニオス 不安喚起療法 anxiety provoking therapy マン 時間制限心理療法 time-limited psychotherapy バリント 焦点療法 focal therapy マラン scientific outcome research ティンバンルー 試行セラピー trial therapy その後、APAでは力動的な心理療法が開発される
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アレキサンダーFranz Alexander 1891-1964
米国の力動黄金時代における精神分析 1950年代におけるシカゴ精神分析研究所のなかでの闘争:Alexander&French(1946)のshort forms of psychoanalytic psyochotherapy =修正感情体験を重視する。 1. 自由連想の放棄 2. 期間短縮、回数操作 3. カウチの廃止など
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バリント(1896-1970)とマラン バリントはフェレンチィの伝統のなかで、タヴィストッククリニックで、焦点化心理療法を発展させた。
バリント( )とマラン バリントはフェレンチィの伝統のなかで、タヴィストッククリニックで、焦点化心理療法を発展させた。 GPらの一般医の心理療法のためのチームを組み、それを流布させる作業をした。
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マランは、そのなかで科学的な研究に従事して、動機、焦点づけ、転移-親リンクといった概念を導入して、「あらゆるセッションの瞬間の目的は、患者が耐えられる限りで、本当の感情の多くに触れられるようにすることである。」 →患者の基準 1.精神医学的生育歴、2.心理力動的生育歴、3.対人関係の歴史、4.現在の外的関係、5.治療者との関係、6.投影法 この六つから適格かどうかを判断する。マランによれば、ひとつの焦点が明確なら、良い候補になるという。 外的関係、転移、発生論的システム
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マンの短期療法の世界 1964年ボストン大学外来で愛着と分離を特化した技術に関心を持ち、12セッションの実験的な治療を開始した。
マンの短期療法の世界 1964年ボストン大学外来で愛着と分離を特化した技術に関心を持ち、12セッションの実験的な治療を開始した。 時間を制限することの意義 Ferentzi,Rank(出生=中断療法)からMann 1.脱依存vs依存 2.能動vs受動 3.適切な自己評価vs自己評価の減少や不在 4.解消されていない遅延した悲哀
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シフニオスの短期力動療法:不安喚起療法 ボストン、マサテューセッツ 総合病院におけるSTAPP →ハーバードにおけるSifneos(1972)の研究 アレクシシミアの概念化 →心身症の基盤 →STAPP short-term anxiety provoking therapy 去勢不安の取扱 エディプスに限定した。 邦訳『短期力動精神療法』
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この治療の候補者は、 患者が主張できる主訴を持つ能力がある 子供時代におけるギブ・アンド・テイクの、あるいは意味のある関係の証拠がある。
面接の間、評価者に柔軟に関係をもつ、そして自由に感情を表現できる能力を持つ 心理的な洗練さをもち、平均以上の治世、心理的な心をもつ 症状軽減ではなく、変化への動機 エディプス期に限定しているので、 人格障害などの重い事例には、リミットを設けたため、ほとんどの事例は、当初からスクリーニングを受けている。 (私見:日本に最初にこの技法が紹介されたことは不幸なこと)
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H.DavanlooのISTDPの開発 ディバンローはIntensive Short-term Dynamic Psychotherapyをモントリオールのマクギル大学で20年にわたる体系的な研究の結果、報告する。 「無意識を解除する」技法:TCPの技法、および防衛を解除するための技法を開発した。複雑な転移感情(CTF)の解除を取り扱う→挑戦と圧力、正面から衝突するなど。試行治療の実践によって反応を見る。
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Malanの研究ー実践モデル Balintのもとで研究者であったマランが精神分析の有効性をモデルの状態から整理した⇒二つの三角形
その結果、心理療法全般の研究者が登場した(MacCalloughら)⇒プロセス研究 質的研究の科学的な手法がそろいつつあったという背景があり、心理療法が研究の主題になっていった。
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1970年代の三つのシンポジウム DavanlooとMalanとの出会いによって活性化された短期的な治療の文化
彼らが分かれる1980年までに三つのシンポジウム、交流が起き、研究者が行き来した。 その参加者たちが短期力動心理療法の理論的な基盤になった。
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Davanloo&Malan以後 TLP(時間制限療法):Vanderbilt大学におけるStrupp以後、Levensonらの発展
Brief Adaptive Psychotherapy(BAP):Beth Israel医学センターにおけるPollackら Short-term Supportive-Expressive Psychoanalytic Psychotherapy ペンシシルバニア大学におけるLuborsky Accelated Empathic Therapy(AET) 60年代にRyle実践の中で開発したCognitive-Analytic therapy(CAT)
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短期のなかでの三つ+一つの流れ 長時間、長期間の精神分析の流れに抗するために市民的な公的セクターの需給関係のなかで生じたもの=経済システムの違う地域ではシステムとしての導入は必ず失敗するが、方法論的には精神分析の散種が行われ続けているために、つねに変化している。 →短期、あるいは時間制限療法: 患者のニード/治療者のニード 時間の取り扱い 焦点化あるいは抵抗の取り扱い 抵抗と防衛の解除の技法 +4.身振り分析での対面法のフルスロットルと描画法
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短期療法についての私見 1.心理マネージメントが必要な場合、 つまり精神病的な要素が強い、あるいは発達障害が干渉しているような問題である場合、心理療法は集中的に投与できない、だからといって、すぐに治療をやめることは、患者を放り出すことになる、そうした葛藤の中で、少しだけ心理療法をしてみるという場合、 2.分離、去勢、別離、対象喪失などが必要な場合、十分な体験として根付いていない場合で、しかも時間的な余裕がない場合、 3.時間的な余裕がない、つまりコンサルテーションしか投与できない場合、
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焦点化の方向性について 1.フォーミュレーションのために Luborskyの「中核葛藤主題」やMannの「中心問題」あるいはBalint&Malanの「焦点」 2.治療のために 修正感情体験のために、治療関係を特定して、新しい体験の提供だけを焦点化する(SFPP) 不安を喚起して、葛藤場面を再現する(APT) 怒りや罪悪感を明確化する(ISTPP) 話題を対人関係的な問題に焦点化する(FP) ex.書き言葉を用いた特殊療法(CAT)
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抵抗を除去して本当の感情に至る方法(Davanlooら)
問題と感情(XC)を徹底的に探究する どんな防衛的な働きに対してもチャレンジする 本当の感情や衝動が開放され、抑圧がとかれて、今ここでの患者の不安が認識される 患者が自分の力で現在の人間関係において同じコンフリクトが存在することを発見し認識できるように援助する 遠い過去において、親や他の重要な人物との間で、同じコンフリクトが存在することを発見し認識できるように援助する 患者がTCPリンクをできる限り十分に、生き生きと何回も理解し、体験できるように援助する。→解決=終結
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ディバンローの技法 抵抗を解除し、無意識の鍵を開ける技術として提示したもの→本当の感情へ ①圧力:患者に症状を詳細に語ってもらって、それを共有して、正確な問題像を描く。 ②挑戦:二つの段階のプロセスである。最初は明確化、治療者は抵抗があって、患者がやめるべき特定の防衛があることを知る。防衛が明確化されると、第二に患者と治療者はそれに抗して、仕事をする。防衛への挑戦は、患者が防衛を捨てることを奨励する。 ③正面衝突:単一の防衛に対するものではなく、全体的な防衛構造に対してのものである。緊急に患者に、抵抗を克服する努力を求める。患者へのまとめの文書という形をとるが。
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防衛と不安と本当の感情 不安 本当の感情 A X(I-F) 防衛(AとXに対する): 不安(Xに対する) 本当の感情は
防衛と不安と本当の感情 不安 本当の感情 A X(I-F) 防衛(AとXに対する): 不安(Xに対する) 本当の感情は ネガティブ(-X)とポジティブ(+X)、そしてアンヴィバレンツ(±X) D 防衛
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今ここでと外とそこ 転移・セラピスト・今ここ 現在の問題・葛藤 T C 起源となる人間関係 2. 現在の人間関係
今ここでと外とそこ 転移・セラピスト・今ここ 現在の問題・葛藤 T C 起源となる人間関係 2. 現在の人間関係 3. 今のセラピストとの治療関係 P 過去・患者
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時間を重視する視点 Ferentzi&Rank(1925)の時間制限療法の基本的な発想、時間を限り、分離-別離-自立-対象喪失-死を体験する。 Mann(1973) 無限時間を意味する子供の時間と有限時間を意味する大人時間 時間を心理的に理解する発想:中断や休止、終結の意義を生かす
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短期療法の技法を長期療法に還元する →時間とは何か
短期療法の技法を長期療法に還元する →時間とは何か
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時間感覚が精神病理に影響するという理解は、多くの人が持っていた
時間感覚が精神病理に影響するという理解は、多くの人が持っていた 九鬼正造などの実存哲学者たちの影響力 Bergsonに影響を受けたMinkowskiの「生きられた時間」 うつ病と時間感覚についてのTellenbachの研究 木村敏の「時間と自己」 →時間論が心理療法論にまで至らない理由:臨床実践に時間(余裕)がない。
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木村による時間と自己の存在形式 気質や性格が時間体験と相関している。 分裂病(統合失調)的
—アンテ・フェストゥム的「先取り的」=時間的に未来を先取りしようとする) うつ病的 ―ポスト・フェストゥム=「後の祭り」(常に時間的に過ぎたことを顧慮し続ける) 癲癇覚醒的 ―イントラ.フェストゥム=「祝祭的」(瞬間的時間を生きる)
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psychoanalysis and time
Arlowの時間意識の解釈 精神分析は基本的に時間に関わっている。なぜならそれは、現在の障害がどのようにして過去の出来事によって決定されているかを理解する努力だからである。技法的には私たちは直接的知覚を報告する患者は、時間経過を意識していない…。 →「それはあなたが子どもの時に母親との間で起きたことが、今ここで私との間で起きているように見えます。」
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Merton Gill(1914-1994) ラパポートの弟子で、精神科医として働く。
転移は基本的に自分の欲望の反復であるが、そこに内在する欲望の再体験こそ重要なものである。その条件は、 1.対象となる治療者の存在 2.治療者に表現する必要性 3.新しい対象である治療者はそれを興味と客観性をもって快く話し合うことができる人である 4.想起と再体験が交互に生じる必要性がある →転移の認識への抵抗について解釈する 今ここでの解釈 現実生活での解釈 発生的解釈
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関係論と時間論 フロイトの無意識論文のなかで示された「無時間性」が今ここでの転移の特徴の背景になっており、時間をどう体験するかは、治療をどう体験するかであるという認識とつながっている。 アレキサンダーに似てTLPは、これまでには体験できなかった関係を、そこで治療者が体験として提供すると考えている。 →今日の関係論との接点がここにあり、精神分析実践をどう体験してもらうかという体験論が含まれている。
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D.Spenceの議論 歴史的真実の重視 →物語の合意的形成のルールが 現実を客観化する。 治療はシャーロックホームズ的伝統から
→物語の合意的形成のルールが 現実を客観化する。 治療はシャーロックホームズ的伝統から いかにして自由か 構成は歴史解釈である
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治療者の構成主義的態度(ホッフマン) 患者の欲望が段々複雑になり、欲求や願望が次々と変化してくる、そして実際には、分析家にはその場で反応することが必要である点において、彼らの相対的重みづけをし、その立場をアセスメントすることは不可能である、と考える。結局、分析家の行動は(それが解釈であろうと他の反応であろうと)その場に埋め込まれているのであり、部分的には欲望のバランスを絶え間なく変動させているのである。そのことを考えることはもちろん、また一つの反応であり、それは様々な方法で患者からもっともらしく解釈され得る。セッションの相互交流は続き、終わりはない。
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抱えることと解釈から Doing と Being (Slochower)として治療時間と解釈を見直す。 治療者が治療行為をすることと黙って抱える:治療者が言うことを控えることと言ってしまうこと:その間の揺れが依存と分離として対象化されること。 対象の使用:生き残ることの失敗→破壊して生き残ることプロセスの時間(長期→終わらせるのは患者):言葉を残すことの永遠/瞬間(長期から短期→区切るのは治療者)
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解釈(再構成)において時間(歴史)を構成的視点から見直す
病は時間構成の失敗である。 構成の失敗は、外延されてしまう。 再構成が創造的であるとき、そこには遊ぶことの要素があり、劇化の空間がある。 再構成の中で、病気は創造的な契機として用いられる。 →解釈を今ここでの過去の再演/今ここから歴史への再投射と見なす
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時間を構成するものと考える 時間は流れない 順序の構成が時間である 想起は構築である 体験は時間軸を超えている
時間を構成するものと考える 時間は流れない 順序の構成が時間である 想起は構築である 体験は時間軸を超えている 出来事と物語りとには始まりと終わりがある
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こうした時間論への変換が起きる(大森荘蔵)
過去 現在 未来 図A 境界現在 過去 未来 図B 現在 こうした時間論への変換が起きる(大森荘蔵)
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驚くほど便利な短時間セッション Lacan除名のもっとも大きな理由が、彼の短時間セッションであること、このことが臨床的には大きな意味を持つ
驚くほど便利な短時間セッション Lacan除名のもっとも大きな理由が、彼の短時間セッションであること、このことが臨床的には大きな意味を持つ 言葉を語るときに、それが満たされた言葉であれば、そこで時間にアポストロフィーを打つという発想は、象徴的に話題(焦点化)と時間の問題を解決する。
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ツァイガルニク効果(ソビエトの心理学者にちなんだ、記憶の中断効果)
短時間(時間可変的)セッション 名づけることと句読点を入れること 時間を区切ること 抵抗の余地を与えないこと そういった出来事が精神分析理論と同時に重視されるようになった。 ツァイガルニク効果(ソビエトの心理学者にちなんだ、記憶の中断効果)
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長期療法で重要なのは休止=分離 休みが分離であるという理解はクライン学派の共通理解になっている。
休止、沈黙が治療の中の重要な要素であるという理解も多くの分析家が共有している。 ×一致と不一致、存在と不在の弁証法をもっとも典型的に表現するのは、治療の休み、中断であるだけでなく、治療者の失敗であるという理解もポストクライン学派や中間学派がもっている。 (×操作や意識可能性がない)
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長期療法に短時間を還元する(1) 時間は構成であるとみなす。
長期療法に短時間を還元する(1) 時間は構成であるとみなす。 治療の開始の時、回数を決めるのはその人の都合とその人の時間感覚であり、時間意識のない人には、時間が重要な要素になる。「いつまで続くか聞いてくる」人は不要 治療時間を45分にした場合、治療を終わらせるには45分から55分までのあいまいな領域を区切りに使える余地を残す Exit lineが重要なやり取りだとみなす。 →終わることと始まることの時間
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短期療法的な長期療法 焦点化の技法と抵抗の技法はセットである
短期療法的な長期療法 焦点化の技法と抵抗の技法はセットである 長期に起きる惰性や治療関係の心理療法化は、転移解釈だけでは脱出できないので、力動フォーミュレーションの継続的な見直しは不可欠である。 相互関係のなかで、抵抗解釈ができる技法をもっていることが長期の惰性化への予防処理となる
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長期が生活臨床や開業にあっている 治療者の人生を考えると、訓練と自分の心の成長、そして自分の心を使うこと(逆転移や自己開示)、そして人の心の変化を待つ姿勢を含めて、短期よりも長期が治療の基盤になるはずである。 にもかかわらず、実際の臨床では週四回や長期的な治療を開業臨床場面で受けられる人は限られている(お金はない人が多い、特に心理で) →体験的に短期力動療法を提供することは公的に意義がある。
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再度終わりについて考える 終結の契約を明瞭にして、詳細にすること、一回で終わらせたり、一回で終わり方を決めたりする終わり方は力動的ではない。
再度終わりについて考える 終結の契約を明瞭にして、詳細にすること、一回で終わらせたり、一回で終わり方を決めたりする終わり方は力動的ではない。 短期療法では、最初から終わりについて話し合って、中間期に入るとそれぞれのセッションでそれについて触れ、これについてのクライエントの反応を体系的に探索する。 長期の治療では、終結には十分な時間をもつこと、治療全体の長さによるが、数ヶ月から一年という時間を持っても良い。 終わることに特に敏感になっているクライエントの背景や経験の特別な特徴があるかどうかを確かめ、それらの体験が終わりをどのように特徴付けているかを考える。それは主に分離や別離の問題があるクライエントの場合、あるいは依存の問題のあるクライエントの場合そうである。
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とはいえ、短期療法を長期療法とどう組み合わせるかは、患者と治療者の相互作用の産物なので、かなり….
終わることにまつわる感情や空想、そして終わることの夢についての反応を言葉にすること クライエントが終わることに関連した情動を表現できるように促す、つまり終わりが誰にとってもつらいものであるという前提で話を進めていくこと。クライエントが困っているなら、怒りや悲しみ、喪失の体験が当然のこととして取り扱っていく。 とはいえ、短期療法を長期療法とどう組み合わせるかは、患者と治療者の相互作用の産物なので、かなり….
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