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獣医療における危機管理 危機とは何か? 危機管理の要点 鹿児島県獣医師会主催 新任獣医師研修会 鹿児島大学 岡本嘉六

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1 獣医療における危機管理 危機とは何か? 危機管理の要点 鹿児島県獣医師会主催 新任獣医師研修会 鹿児島大学 岡本嘉六
鹿児島県獣医師会主催 新任獣医師研修会 獣医療における危機管理 鹿児島大学 岡本嘉六 危機とは何か? 生命や財産に重大な脅威となる事態 戦争、災害、伝染病、有害物質、組織的犯罪(テロ) 危機管理の要点 リスクマネジメント Risk management 予測される危機を未然に防ぐ 初発地域において封じ込める 被害を最小限に食い止める蔓延防止 正常状態の回復 クライシスマネジメント Crisis management

2 危機管理の大綱 危機発生時には基本的人権の一部が制約されることの国民理解が重要。 検疫、隔離、処分等の迅速性が必須。
1.予防: 危機発生を予防する 2.把握: 危機事態や状況を把握・認識する 3.評価   損失評価: 危機によって生じる損失・被害を評価する   対策評価: 危機対策にかかるコストなどを評価する 4.検討: 具体的な危機対策の行動方針と行動計画を案出・検討する 5.発動: 具体的な行動計画を発令・指示する 6.再評価  危機内再評価: 危機発生中において、行動計画に基づいて実施されている点・または実施されていない点について効果の評価を随時行ない、行動計画に必要な修正を加える。  事後再評価: 危機終息後に危機対策の効果の評価を行ない、危機事態の再発防止や危機事態対策の向上を図る 危機発生時には基本的人権の一部が制約されることの国民理解が重要。 検疫、隔離、処分等の迅速性が必須。 リスク・コミュニケーション

3 GATT 第20条 一般的例外: 動植物防疫に係る検疫等の措置 「衛生植物検疫措置の適用に関する(SPS)協定」
平和を維持し、戦争を回避するための方策 1930年代の世界不況 関税引き上げ 貿易数量制限 為替制限 自国の産業保護 第二次世界大戦 国際復興開発銀行( IBRD ;1945) 国際通貨基金( IMF ;1947) 1944年 ブレトン・ウッズ会議(米国) 世界戦争の回避策 ガット体制(GATT; 1948 ) 「関税及び貿易に関する一般協定」 経済紛争の元となる貿易障壁をなくし、自由貿易を確保する基本原則 (i)貿易制限措置の削減 (ii)貿易の無差別待遇(最恵国待遇、内国民待遇) GATT 第20条 一般的例外: 動植物防疫に係る検疫等の措置 「衛生植物検疫措置の適用に関する(SPS)協定」 ウルグアイ・ラウンド(1986 ~1994)妥結: 農産物貿易の原則自由化 1995年 世界貿易機関( WTO ) ← ガット体制

4 ◆ 食料の国際取引における衛生基準 WTO体制とSPS協定 ヒトの入国、動物、植物および食品の輸入時に、「検疫」が実施されるが、その基準は?
◆ 食料の国際取引における衛生基準 WTO体制とSPS協定 ヒトの入国、動物、植物および食品の輸入時に、「検疫」が実施されるが、その基準は? 世界貿易機関(WTO) WTO組織図 閣僚会議 貿易政策検討機関 一般理事会 紛争解決機関 上級委員会 小委員会[パネル] 様々な物資が国際流通しており、それらの国際取引上のトラブルを解消するための組織

5 自由貿易の枠組み(WTO)と衛生基準の関係概念図
危害因子についての国の衛生基準 B国 A国 非関税障壁 (WTO訴訟) E国 C国 D国 自由貿易の枠組み(WTO)と衛生基準の関係概念図 衛生および食物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定) 貿易の技術的障壁に関する協定(TBT協定)

6 ヒトの伝染病制御の国際的枠組み 国際保健規則( 2005 ): IHR(2005) 国際保健規則に基づくWHOへの報告
国際検疫伝染病: 痘瘡(天然痘)、ペスト、黄熱、コレラ 1979年 WHOの痘瘡根絶計画により、地上から痘瘡ウイルスが消滅 国際検疫伝染病: ペスト、黄熱、コレラ 国際保健規則( 2005 ): IHR(2005) ・ 様々な新興感染症が出現した ・ アメリカ同時多発テロ事件(2001年9月11日)により、攻撃手段が無差別化した 痘瘡(天然痘) 野生型ポリオ 新型インフルエンザ 重症呼吸器症候群 コレラ、肺ペスト、黄熱、ウイルス性出血熱(エボラ出血熱、ラッサ熱、マールブルグ病)、ウエストナイル熱、その他(デング熱、リフトバレー熱) 無条件で報告 条件付き報告 ・ 公衆衛生上の影響 ・ 通常と異なるか、予期し得ない事象 ・ 国際的拡大の危険性 ・ 国際的な旅行や取引の規制を招く 国際保健規則に基づくWHOへの報告

7 世界は一つ、健康は一つ One World, One Health
「世界は一つ、健康は一つ」への貢献: 動物・人間・生態系の接点における感染症のリスクを低減するための戦略的枠組み FAO、OIE、WHO、インフルエンザ連携国連機構、UNICEF、世界銀行 (2008年10月18日) 人類は地球規模での解決策を必要とする多くの課題に直面している。これらの 課題の一つは、動物と人間との接点およびそれらが住んでいる生態系において発 生(再発生)する感染症の蔓延である。それは、人口と家畜頭数の幾何級数的増 加、急速な都市化、農業体系の急速な変化、家畜と野生生物の密接な接触、森林 の浸蝕、生態系の変化、ならびに、動物と動物由来製品の取引の国際化を含むい くつかの趨勢によるものである。 ● 序文: 高病原性鳥インフルエンザと今後 ● 高病原性鳥インフルエンザから学んだ成果と教訓および新興感染症との関連性 ● 新興および既存の感染症とそれらの影響 ● 戦略的枠組み ● 特別な目的とその結果 ● 取組むべき分野横断的な課題 ● 制度上の問題 ● この枠組みへの資金調達 世界は一つ、健康は一つ One World, One Health

8 コーデックス委員会の組織図 執行委員会 事務局 一般問題部会(9) 個別食品部会(11) 特別部会(2) 一般原則 食品衛生 食品表示
( FAO/WHO 合同食品規格委員会) ( ):部会数、 〔 〕:休会中 執行委員会 事務局 一般問題部会(9) 個別食品部会(11) 特別部会(2) 一般原則 食品衛生 食品表示 分析・サンプリング 食品輸出入検査証明制度 食品添加物・汚染物質 栄養・特殊用途食品 残留農薬部会 残留動物用医薬品 乳及び乳製品 食肉・食鳥肉衛生 魚類・水産製品 生鮮果実・野菜 加工果実・野菜 油脂 〔ココア製品・チョコレート〕 〔糖類〕 〔穀物・豆類〕 〔植物タンパク質〕 〔ナチュラル・ミネラル・ウォーター〕 果実・野菜ジュース 動物用飼料 地域調整部会(6) アジア アフリカ ヨーロッパ ラテンアメリカ・カリブ海 近東 北アメリカ・南西太平洋 専門家会議 食品添加物(JECFA) 残留農薬(JMPR) コーデックス委員会の組織図

9 危害(Hazard)とリスク(Risk)
 「危害とは、ヒトに障害を起す可能性のある食品の、生物学的、化学的、あるいは物理学的因子、もしくは状態をいう。  他方、リスクとは、食品中の危害の結果として起こる、暴露集団の健康に対する悪影響の発生確率と重篤度の推定値である。」  「危害を減らすこととリスクを減らすことの関係を理解することは、適切な食品の安全性制御を発展させる上でとくに重要である。 不幸なことに、食品について『ゼロ・リスク』のような事態はありえない(その他の何についても言えることだが)。」 「食品の品質と安全性システム」 FAO: Food Quality and Safety Systems - A Training Manual on Food Hygiene and the Hazard Analysis and Critical Control Point (HACCP) System

10 リスク・アナリシスの構図 危害の特定 危害の特性解明 暴露査定 危険性の特性解明 危険性の評価 管理措置の査定 管理措置の実行 監視と再吟味
リスク・アセスメント Risk Assessment 危害の特定 Hazard Identification 危害の特性解明 Hazard Characteristics 暴露査定 Exposure Assessment 危険性の特性解明 Risk Characterization リスク管理 Risk Management 危険性の評価 Risk Evaluation 管理措置の査定 Management Option Assessment 管理措置の実行 Option Implementation 監視と再吟味 Monitoring and Review リスクの情報交換 Risk Communication リスク・アナリシスの構図 Structure of Risk Analysis. Risk Management and Food Safety. FAO, Rome, 1997

11 家畜伝染病制御の国際的枠組み 世界動物衛生機関(旧世界獣疫局;OIE): 1924年に国家間協定によって設立された。1945年の国際連合発足後は、国際連合食糧農業機関(FAO)の技術的専門機関の役割を担ってきている。 評議会(Council) 代表者世界会議議長 President of the World Assembly of Delegates Dr Carlos A. Correa Messuti(Uruguay) 専門委員会 Specialist Commissions 地域委員会 OIE Regional Commissions ●Terrestrial Animal Health Standards Commission ● Scientific Commission for Animal Diseases ● Biological Standards Commission ● Aquatic Animal Health Standards Commission アフリカ アメリカ アジア・極東・オセアニア 欧州 中東 President Dr Toshiro Kawashima(Japan)

12 陸生動物衛生規約 Terrestrial Animal Health Code
第1巻: 総則 第1部 動物疾病の診断、広域調査および通知 第2部 リスク解析 第3部 獣医療組織の品質 第4部 総括的勧告: 疾病の予防と制御    4.1章 生きた動物の特定と遡及調査可能性の一般的原則    4.2章 動物の遡及調査可能性を実現するための特定システムの立案と実施    4.3章 地区割と区画化    4.13章  斃死動物の廃棄    4.14章  消毒と昆虫駆除に関する一般的勧告    4.16章 衛生手順、特定、採血およびワクチン接種 第5部 貿易施策、輸入/輸出手順および獣医療証明書 第6部 獣医公衆衛生 第7部 動物福祉 第2巻 OIEリスト疾病および国際貿易において重要なその他の疾病に適用可能な勧告 各国の国内法(日本では家畜伝染病予防法)は、この国際法に準拠していなければならない。 昨年12月に「獣医療法令に関するOIE世界会議」が開催された。各国の獣医療の水準が異なることは、検疫と初めとする防疫体制の同等性が確保できない。

13 口蹄疫に関するOIE基準 第5.5章 口蹄疫 8.5.1条 国際陸生動物衛生規約において、口蹄疫(FMD)の潜伏期間は14日とする。
第5.5章 口蹄疫 8.5.1条  国際陸生動物衛生規約において、口蹄疫(FMD)の潜伏期間は14日とする。  本章において、反芻動物にはラクダ科の動物(ヒトコブラクダを除く)を含む。  本章において、症例には口蹄疫ウイルス(FMDV)に感染した動物が含まれる。  国際貿易のため、本章はFMDVによる臨床徴候の発現のみならず、臨床徴候が発現していないFMDV感染についても取り上げる。  FMDV感染の発生とは以下のように規定される。 1. 当該動物やその動物に由来する製品からFMDVが分離同定された。または、 2. FMDVの血清型の1種以上について特異的なウイルス抗原やウイルス核酸(RNA)が、口蹄疫と合致する臨床徴候を示していようがいまいが、確定または擬似の口蹄疫発生と疫学的に関連していようがいまいが、あるいは、FMDVとの過去の関連または接触の疑いがあろうがなかろうが、一頭以上の動物からのサンプルにおいて特定された。または、 3. ワクチン接種の結果でないFMDVの構造蛋白または非構造蛋白に対する抗体が、口蹄疫と合致する臨床徴候を示している、確定または擬似の口蹄疫発生と疫学的に関連している、あるいは、FMDVとの過去の関連または接触の疑いがある一頭以上の動物で特定された。 発症してなくても、ウイルスが循環していれば汚染国

14 口蹄疫ウイルスの構造とマーカーワクチン 自然感染による抗体 マーカーワクチン による抗体 非構造蛋白 に対する抗体 5’ 3’
ウイルスの構造蛋白質をコードする遺伝子で、表面のカプシドの免疫原性を決める ウイルスの増殖に必要な蛋白質をコードする遺伝子で、増殖時のみ発現される カプシド蛋白質 非構造蛋白質 5’ 3’ 約7.2~8.4 kbの一本鎖(+)RNA Pirbright Laboratory

15 Active surveillance zone
8.5.46条 血清学的検査の利用と解釈(図1参照) 積極的発生動向調査地帯 Active surveillance zone 臨床検査と血清学的検査により摘発・処分を行い、感染拡大を防ぐ。発生確認の場合は制限地帯の見直しが必要。 感染地帯 Infected zone 殺処分 清浄地域 Disease-free zone 消毒 図1. 血清学的な調査を通した、あるいは、その後のFMDV感染の証拠を判定するための試験所検査の概要図

16 8.5.8条 清浄資格の回復 1. ワクチン接種が行われていない口蹄疫清浄国または清浄地帯で口蹄疫またはFMDV感染が起きた時、ワクチン接種が行われていない口蹄疫清浄国または清浄地帯の資格を得るために以下の待ち期間の一つが求められる。   a. 第8.5.40条から第8.5.46条に従って殺処分政策および血清学的発生動向調査が適用されている場合、最後の症例から3ヶ月。または、   b. 第8.5.40条から第8.5.46条に従って殺処分政策、緊急ワクチン接種、および、血清学的発生動向調査が適用されている場合、全てのワクチン接種動物が食用と殺されてから3ヶ月。 8.5.40条 発生動向調査(surveillance): 緒言 加盟国が、その対応を支える関係する地域における口蹄疫の疫学を説明するのみならず、全てのリスク因子の管理方法を証明する関係書類をOIEに提出することは義務である。これには科学に基づく添付資料の提出を含むべきである。 8.5.42条 発生動向調査の戦略 8.5.45条 発生後に、口蹄疫清浄の認知を申請する加盟国: 追加的発生動向調査手順

17 OIE陸生動物衛生規約( EU理事会指令)に定義された用語
清浄地帯 3km以上 防御地帯 発生動向調査地帯 封じ込め地帯 制限地帯 感染地帯 搬出制限地帯 移動制限地帯 10km以上 清浄地帯(Free zone): 清浄資格の適合について陸生動物衛生規約に指定された要件によって証明された地帯を意味する。当該地帯とその境界内において、適切な公的獣医学的管理が動物および動物由来製品、ならびにそれらの輸送に効果的に適用されている。 感染地帯(Infected zone): 口蹄疫が確定診断された地帯を意味する。 封じ込め地帯(Containment zone): 疫学的要素と調査結果を考慮して、疑いまたは感染のある施設およびその周辺を含め、感染の拡大を防ぐための制御措置が適用された指定地帯を意味する。制限地帯(Restricted zone) 防御地帯(Protection zone): 清浄国または清浄地帯への口蹄疫ウイルスの広がりを防ぐために疫学に基づく措置によって、清浄国または清浄地帯における動物の衛生状態を保護するために設定された地帯を意味する。それらの措置には、ワクチン接種、移動制限、ならびに、強化された発生動向調査(surveillance)を含み、それだけに限定されない。発生動向調査地帯(Surveillance zone)

18 国内における封じ込め地帯から清浄地帯へ口蹄疫感受性動物の食 用と殺のための直接移送(ワクチン接種の有無に関わらず)
第8.5.11条 国内における封じ込め地帯から清浄地帯へ口蹄疫感受性動物の食 用と殺のための直接移送(ワクチン接種の有無に関わらず) 清浄地帯の資格を損なわないために、口蹄疫感受性動物は、以下の条件の下で、 防御地帯に位置する最も近い指定されたと畜場へ直接的に食用と殺のために機械 的輸送によって移送される場合にのみ封じ込め地帯を離れるようにしなければなら ない。 1. 封じ込め地帯は、第8.5.8の要件に従って公的に設定された。 2. その動物は、獣医当局の監督下で、積載前に清掃・消毒された車両によって、 その他の感受性動物と接触することなく原産施設からと畜場へ直接輸送されなけ ればならない。 3. そのようなと畜場は、封じ込め地帯からの動物の肉を扱っている期間、生肉の 輸出を認可されない。 4. 車両およびと畜場は、使用後直ちに完全に清掃・消毒されなければならない。 それらの動物に由来する全ての製品は、第8.5.25条第2点または第8.5.26条に従っ て処理されなければならない。当該動物から得られたその他の製品ならびにそれら と接触したあらゆる製品は、第8.5.34条から第8.5.41条に従って残存するウイルスを 全て殺滅する方法で処理しなければならない。 口蹄疫ウイルスの拡散を防ぐ蔓延防止措置

19 牛の系統的ワクチン接種義務を含めて公的な制御計画が存在する 口蹄疫感染国または地帯からの輸入に関する勧告
第8.5.25条 牛の系統的ワクチン接種義務を含めて公的な制御計画が存在する 口蹄疫感染国または地帯からの輸入に関する勧告 牛および水牛の生肉(足首、頭および内臓を除く)に対して、獣医当局は、食肉の全 ての出荷品が以下を立証する国際獣医療証明の提出を求めなければならない。 2. 骨抜きと体に由来する。 a. 主要なリンパ節が取除かれていた。 b. 除骨に先立って、と殺後少なくとも24時間+2℃以上の温度で熟成され、両方の 最長筋の中間点で測ったpHが6.0以下であった。 第8.5.26条 口蹄疫感染国または地帯からの輸入に関する勧告 反芻家畜および豚の肉製品に対して、獣医当局は、以下を立証する国際獣医療証 明の提出を求めなければならない。 1. 当該食肉の全ての出荷品は認可されたと畜場でと殺された動物に由来し、口蹄 疫についての生体検査と解体後検査を行い、陰性であった。 2. 当該食肉は、第8.5.34条に記載された手順の一つに基づいて口蹄疫ウイルスの 殺滅を確保するための処理が行われた。 3. 処理後に食肉が口蹄疫ウイルスの如何なる感染源とも接触しないために必要 な注意が払われた。 死後硬直に伴う pH 低下は筋肉中のウイルスを不活化する。農場で不顕性感染が見逃されても、ウイルス拡散を防げる。 陸生動物衛生規約 は発展途上国を含めたものであるから、規制が緩い?

20 口蹄疫の制御のための欧州共同体の措置に関する規定
欧州連合: 2003年9月29日の理事会指令2003/85/EC 口蹄疫の制御のための欧州共同体の措置に関する規定 第1節 通知 第2節 口蹄疫発生の疑い事例における措置 第3節 確定事例における措置 第4節 特別の事例に適用すべき措置 第5節 異なった疫学的生産単位から構成される施設および関連施設 第6節 制限地帯と発生動向調査地帯 第7節 地区割り、移動制限、ならびに、識別 第8節 ワクチン接種 第9節 口蹄疫とその感染に係る清浄資格の回復 第12節 緊急時対策計画と即時的警戒訓練 20世紀初頭に戦争のないヨーロッパ統合の構想が持ち上がってから、経済・産業分野での共同体設立を経て1992年にようやく欧州連合条約が署名され、1999年に単一通貨としてユーロが導入された。この過程で人の往来や物資の移動における国境の役割は少しずつ軽くなってきた。中世の暗黒時代にペストで人口の半分を失った欧州は検疫制度を創設し、伝染病の侵入を国境で防いできたのだが、統合によって国境の意義が薄れる中で伝染病の侵入をどのように防いでいるのか。 その解決策として、各国の衛生水準の格差をなくし、同等性を確保することが有力視され、そのために医療や獣医療などの品質の最小限の基準を設けてきた。医師や獣医師を養成する大学、医療体制や獣医療体制の整備が行われてきた結果として、欧州連合圏内の自由な往来や物流が確保されてきたのであり、この努力は通貨統合にも匹敵する難事業だったのではなかろうか。また、欧州連合内の自由化は、同時に、それ以外の地域からの伝染病の侵入を防ぐための統一政策の必要性を高めている。この内容は日本における今後の対策を考える上でも参考になるだろう。東北アジア経済圏を進める上で避けて通れない問題である。

21 口蹄疫発生時の保護を目的とする「種畜の登録制度」が必要!
第4節 特別の事例に適用すべき措置 第15条 感受性動物種を一時的または定期的に飼育する特別の施設の周辺 または内部における口蹄疫発生事例に適用すべき措置 1. 口蹄疫の発生が、研究所、動物園、野生動物公園、ならびに、指令 92/65/EECの第13条2項に従って認可された団体、機関およびセンターの柵で囲ま れた区域の感受性動物に感染する脅威があり、科学的目的または動物種や家畜 の遺伝資源の保護に関連する目的で飼育されている場合、関連する加盟国は、 それらの動物を感染から保護するために全ての適切な生物学的安全措置が採ら れることを保証しなければならない。それらの措置には、公的機関への立入制限 や立入に特別な条件を設けるなどが含まれる。 半径?kmへの立入制限 2. 第1項に記載された施設の一つに口蹄疫の発生が確認された場合、関連す る加盟国は、本共同体の基本的な利益、とくにその他の加盟国の動物衛生状態 が損なわれず、口蹄疫ウイルスが拡散するあらゆるリスクを防ぐために全ての必 要な措置が実施される条件で、第10条1項(a)からの除外を決定することができる。 3. 第2項に記載された決定は、直ちに本委員会に通知しなければならない。家 畜遺伝資源の場合、その通知には、品種の維持に不可欠な感受性動物種の繁殖 の核として所轄官庁が事前にそれらの施設を特定することによって、第77条2項(f) に従って設置された施設のリストの証明書を含まなければならない。 口蹄疫発生時の保護を目的とする「種畜の登録制度」が必要!

22 第54条 緊急ワクチンの接種開始からそのワクチン接種の完了以降少なくとも30 日経過するまでの期間にワクチン接種地帯において適用可能な措置
1. 加盟国は、第2項から6項に規定された措置が緊急ワクチンの接種開始からそ のワクチン接種の完了以降少なくとも30日経過するまでの期間を通してワクチン 接種地帯において適用されることを保証しなければならない。 2. ワクチン接種地帯内外の施設間における生きている感受性動物の移動は、禁 止しなければならない。前文に規定された禁止の適用除外によって、生きている動 物、ならびに、原産施設またはその動物の出荷施設の群の臨床検査後に、所轄 官庁は、ワクチン接種地帯内または例外的にその地帯に隣接したと畜場に向けた 即時と殺のための直接輸送を許可することができる。 3. 第1項に記載された期間にと殺されたワクチン接種動物から生産された生肉は、 以下の事項を満たさなければならない。 (a) 指令2002/99/ECに規定された刻印を押す (b) (a)点に記載された刻印のない肉とは別個に保管・輸送し、付属文書VII のPart A第1点に従った処理のために所轄官庁によって指定された施設に密閉容器に納 めて輸送しなければならない。 4. ワクチン接種動物から生産された乳および乳製品は、人の消費のまたは人の 消費以外のいずれかの最終的用途に応じて、付属文書IXのParts AおよびParts B に記載された処理の少なくとも一つを施されたことを前提に、ワクチン接種地帯内 外の市場に出荷することができる。

23 予防的ワクチン接種は1992年にEU全域で禁止され、加盟国はこの指令に従う義務がある
第8節 ワクチン接種 第49条 口蹄疫ワクチンの使用、製造、販売および管理 加盟国は、以下のことを保証しなければならない。 口蹄疫ワクチンの使用および口蹄疫に対する高度免疫血清の投 与は、本指令で規定された場合を除き、領土内で禁止されている。 予防的ワクチン接種は1992年にEU全域で禁止され、加盟国はこの指令に従う義務がある 第50条 緊急ワクチン接種の決定 1. 以下の条件の少なくとも一つが適用される場合に、緊急ワクチン 接種を決定することができる。 (a) 口蹄疫の発生が確認されており、その発生が確認された加盟国 内に広範に広がる恐れがある。 (b) 加盟国における報告された口蹄疫発生に関連して、別の加盟国 が地理的状況または季節的気象条件のためリスクに曝されている。 英国の2001年大流行を経て、殺処分を前提とする緊急ワクチン接種に疑問が上がり、マーカーワクチン開発もあって、「緊急ワクチン接種動物に由来する乳製品と肉製品は、関連するEUの法律とこの指令に従って市場に出すことができる」ようになった。

24 PART B 発生動向調査地帯に由来する感受性動物からの生産に適用可能な追加的措置 発症していなくても、感染した個体は農場段階で排除
付属文書 VIII  PART A 生肉の処理 1. 骨抜き生肉 指令64/433/EECの第2条(a)に記載された肉は、内臓を除き、骨および主要なリンパ節が除去されたものを言う。 3. 熟成   ● と体は、+ 2 ℃以上の温度で少なくとも24時間熟成   ● 背最長筋の中心におけるpH値は、6.0未満を記録 4. 交差汚染を避けるために効果的な措置を適用しなければならない 陸生動物衛生規約と同じ内容が2003年に定められた。 OIE は1924年にフランスで発足した国家間協定機関である PART B 発生動向調査地帯に由来する感受性動物からの生産に適用可能な追加的措置 1. 制限地帯および発生動向調査地帯の外側の市場への出荷を意図した頭部、腸管および内臓以外の生肉は、以下の追加的条件の少なくとも一つに従って生産されなければならない。 (a) 反芻動物の場合   (i) 動物は、第24条2項に規定された管理の対象とされ、かつ、   (ii) 肉は、Part Aの第1、3 および 4点に規定された処理の対象とされる 発症していなくても、感染した個体は農場段階で排除 第51条 緊急ワクチン接種の必要条件  3. 加盟国は、ワクチン接種された動物の肉、乳および乳製品の人の消費のための安全性について国民に知らせるため、広報計画を実施しなければならない。

25 発展途上国を含むOIEの陸生動物衛生規約だけでなく、欧州連 合においても、口蹄疫流行時に、ワクチン接種で発症を防いだ家畜 を、殺処分ではなく、食用と殺することが定められている。
日本においては、「人が感染することはなく、仮に口蹄疫にか かった家畜の肉を食べたり牛乳を飲んだりしても人体に影響はあり ません」と広報されているが、未発症の動物に由来する畜産物の流 通は行われていない。それは、清浄地帯への蔓延を防ぐ体制ができ ていないからである。多数の家畜を無駄にしないことは、動物福祉に 叶うだけでなく、飼育農家の気持ちを和らげ、廃棄処分の軽減にも 繋がる。 農場: 発生動向調査の強化による感染の特定と排除  マーカー・ワクチンの活用、県段階での検査体制の充実 食肉センター: 食肉検査体制の拡充、カット工程の骨・リンパ節除 去工程における交差汚染の制御、廃棄内臓および腸内容物の処理 腸内容物など液状物の処理は、活性汚泥法によって行われてい るが、口蹄疫ウイルスが存在した場合の不活化条件は?

26 過去における口蹄疫の初発原因 (1870~1993年) 汚染肉・畜産物・厨芥 風による伝播・渡り鳥 家畜の輸入・移動 汚染資材、器具、人
2001年 アメリカ同時多発テロ事件 汚染肉・畜産物・厨芥 風による伝播・渡り鳥 家畜の輸入・移動 汚染資材、器具、人 ワクチン(不活化不充分) 野生動物 66 22 6 4 3 1 「農業テロ」の脅威 初発原因を把握できないことが予測される 米国はテロ対策のための行政改革を行い、国境警備および運輸保安、緊急事態への準備・対応、情報分析および社会基盤の保護、ならびに、その基礎となる科学技術の開発を任務とする国土安全保障省(DHS)を2002年に設置した。農業分野では、口蹄疫ウイルスが撒かれた場合を想定し、いち早く診断できるよう全土に口蹄疫診断施設を増設した(たとえば、2004年にカリフォルニア大学に設置されたThe FMD Laboratory)。その中核が農務省に設けられた「世界口蹄疫研究同盟(Global Foot-and-Mouth Disease Research Alliance)」であり、北米、南米、欧州、極東の各地と結ばれている。米国の呼びかけで極東の口蹄疫対策を展開しているのが韓国だと私は思っている。すなわち、今回の対応の早さは、事前に対策が練られ、日頃から訓練された成果なのだろう。


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