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2014/09/06 エネシフ年次総会講演 脱原発・脱温暖化の最前線         経済から考える脱原発社会のデザイン 2014年9月6日 東北大学

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1 明日香壽川 asuka@cneas.tohoku.ac.jp
2014/09/06 エネシフ年次総会講演 脱原発・脱温暖化の最前線         経済から考える脱原発社会のデザイン 2014年9月6日 東北大学 明日香壽川 ASUKA Jusen

2 内容 脱原発と脱温暖化のねじれた関係 脱原発の現状 脱温暖化の現状 脱原発と脱温暖化と経済の鼎立 まとめ

3 1. 原発と温暖化のねじれた関係

4 温暖化対策とは、主にCO2排出を減らすこと
2014/09/06 温暖化対策とは、主にCO2排出を減らすこと 省エネ 再生可能エネルギー 原子力 森林整備 →これらは温暖化問題がなくてもやるべきで、実際にやってる ASUKA Jusen

5 なぜ温暖化対策は進まないのか? エネルギー・システムの転換が必要で、既得権益側が莫大なリソースをかけて抵抗するから
2014/09/06 なぜ温暖化対策は進まないのか? エネルギー・システムの転換が必要で、既得権益側が莫大なリソースをかけて抵抗するから 「温暖化は原発推進のための陰謀」と誤解している人が少なくないから(特に日本で) 「不公平」という言説が戦略的に使われ、「黄金律」を無視する人が多いから ASUKA Jusen

6 公平性とは? 「立場入れ変え可能性の確保 (社会のどこに生まれても自分 は耐えられるか?)」(ロールズ) →黄金律

7 原発は温暖化対策のため? 政府、経団連、それらに親和性が高い研究者、一部メディアなどの既得権益側がそう強く言ってきたのは確か
多くの研究者が沈黙していたのも確か しかし多くのNGOは前から反対を表明

8 「原発依存・化石燃料依存」グループの高等(?)戦略
温暖化なんて本当は気にしていないのに「原発は温暖化対策のため」とのたまう →温暖化に懐疑的な人たちを増やして 化石燃料依存に向かわせる

9 日本の原発と化石燃料をめぐる構図 原発依存 化石燃料依存 (省エネ・ 分散型拒否)
脱化石燃料のためにナイーブに原発依存を選択してしまう数少ない人たち 原発依存 化石燃料依存 (省エネ・ 分散型拒否) 「地球温暖化対策は原子力推進のため」に騙されている人たち 脱原発 脱化石燃料 脱原発 化石燃料依存

10 3. 脱原発の現状

11 政府は原発推進 再稼働・核燃料サイクル継続を明言 規制委員会の人事 原発輸出 原発への「差額決済契約」適用?

12 先進国の再生可能エネルギー電力割合(除水力)
再生可能エネルギー導入状況(1) 先進国の再生可能エネルギー電力割合(除水力) デンマーク ポルトガル スペイン ドイツ イタリア アイルランド フィンランド OECD欧州 スウェーデン イギリス OECD アメリカ 日本 出典:IEA統計

13 再生可能エネルギー導入状況(2) 再生可能エネルギー導入実績(日本) 出典:自然エネルギー財団(2014b)

14 再生可能エネルギーによる発電割合(日本)
再生可能エネルギー導入状況(3) 再生可能エネルギーによる発電割合(日本) 出典:自然エネルギー財団(2014b)

15 再生可能エネルギー導入状況(4) 太陽光発電費用の変化(日本) 出典:自然エネルギー財団(2014b)

16 再生可能エネルギー導入状況(5) 再生可能エネルギー導入の効果(日本) 出典:自然エネルギー財団(2014b)

17 日本の省エネ状況(1) 原発を代替したエネルギー 出典:グリーンピースジャパン(2014)

18 日本の省エネ状況(2) 東京電⼒管内の販売電⼒量と夏季最⼤電⼒ 出典:平田(2014)(元資料は東京電力)

19 日本の省エネ状況(3) 各部門のエネルギー効率の推移 1990年よりエネルギー効率悪化
産業、業務、家庭ともに効率は1990年レベル。努力してきたとは言い難い ・生産量・指数、床面積、世帯数、輸送量あたりのエネルギー量 ・産業(工場等)、業務(オフィス等)、家庭は1990年水準のまま ・運輸旅客(乗用車等)大幅悪化(大型化。消費税導入時の物品税廃止の悪影響か) ・運輸貨物(トラック等)は向上 1990年         よりエネルギー効率向上 出典:歌川(2014)(元資料は、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」「エネルギー需給確報」など)

20 日本の省エネ状況(4) 発電量あたりCO2排出量の違い 出典:歌川(2014) 旧型LNG火力→最新型 25-30%削減 最大3倍の違い
60-65%削減 現在のトップ効率 東京電力川崎1号系列(運転中)、関電姫路第二(建設中) 出典:歌川(2014)

21 日本の電力システム改革(1) 目的 電力の安定供給 料金の抑制 需要側の選択肢と事業者の機会の拡大

22 日本の電力システム改革(2) 電気事業法改正スケジュール 第一段階:広域的運営推進機関設立 (2015年〜)
 (2015年〜) 第二段階:小売全面自由化(参入自由化)(2016年〜) 第三段階:送配電の法的分離  (2018〜2020年)

23 日本の電力システム改革(3) 電力システム改革のイメージ 出典:電力システム改革専門委員会(2014)

24 電力システム改革の行方(4) 総合エネルギー企業が誕生 出典:電力システム改革専門委員会(2014)

25 日本の電力システム改革(5) 卸電力取引の活発化 出典:電力システム改革専門委員会(2014)

26 電力システム改革の課題(1) 固定価格買取制度(FIT)の改善 風力発電の導入小さい 電力会社の接続拒否・導入制限 設備認定 価格設定
回避可能費用の適正化 賦課金減免制度の見直し 低い再エネ目標値

27 電力システム改革の課題(2) 電力システム全般(1) 料金規制の撤廃方法 小売事業者と消費者との関係(スイッチングの柔軟性など)
節電が促進される仕組みづくり 既存の料金体制(基本料金と従量料金、三段階料金など)の扱い

28 電力システム改革の課題(3) 電力システム全般(2) 新電力の参入条件 透明性や公平性の確保(託送料、料金内訳、消費者情報)
消費者への情報提供 発送電分離の形態 不良債権問題

29 4. 脱温暖化の現状

30 海面上昇により何百万人もが移住を迫られる
2014/09/06 まず前提として GHG排出量(10億トンCO2換算) BAU 適応が非常に困難になる 前例のない熱波 激しい降水の頻度が上昇 地球規模の種の絶滅の危機 世界全体で穀物収量の低下 アマゾン熱帯林の大規模な枯死 海面上昇により何百万人もが移住を迫られる 食糧安全保障のリスクが高まる ほとんどのサンゴ礁が死滅の危機 食糧生産の低下 厳しい社会的影響を伴う激しい熱波 現在の排出削減目標 2℃達成 グリーンランドの氷床が溶け始め戻れなくなる(tipping point) 1.5℃以下 出典:クライメートアクショントラッカー(2012) ASUKA Jusen

31 IPCC第5次報告書のメッセージ(1) 第1作業部会(温暖化の科学) 出典:IPCC(2014)

32 IPCC第5次報告書のメッセージ(2) 2度目標達成の経済コストは大きくない 原発のリスクは大きい
第3作業部会(温暖化対策の評価) 2度目標達成の経済コストは大きくない 原発のリスクは大きい 原発なくても2度目標達成の経済コストは大きく変わらない

33 国際交渉の現状

34 日本の数値目標 鳩山(-25%)を安倍が修正(+3.1%) 出典:平田(2014)

35 原発増加とCO2排出量増加との関係(日本)
原発と温暖化 原発増加とCO2排出量増加との関係(日本) 出典:平田(2014)

36 石炭と温暖化 石炭消費量の変化(日本) 出典:平田(2014)

37 日本政府による石炭火力発電輸出 出典:平田(2014) →世界の流れとは逆行

38 米国の状況 オバマの温暖化政策(石炭火力発電規制) シェールガス・オイル革命 再生可能エネルギー導入拡大
ただし、温暖化問題が党派性を帯びているのは変わらず

39

40 中国の状況 石炭消費量増加率が初めてのマイナス 出典:Greenpeace East Asia(2014) →PM2.5対策の影響が非常に大

41 5. 脱原発と脱温暖化と経済の鼎立 (脱原発批判への反論)

42 原発なくても2度目標達成コストは上がらない(IPCC, 2015)
個別発電技術の有無/制限がある場合の対策コスト上昇率(%) 出所:IPCC AR5 WG3, TS, Fig.TS13

43 日本でも原発があってもなくても電気代は大差がない
民主党政権時「国民的議論」3つの選択肢における電気代の差 出所:朴(2014)

44 日本でも原発があってもなくてもGDP影響は大差がない
出所:朴(2014)

45 化石燃料輸入が3.6兆円増える? 計算がおかしい。本当は1-1.6兆円(秋本2014, 自然エネルギー財団2014a, 吉岡2014)
2002−2008年に14.8兆円増えても大きな問題にならなかった 原油・LNG輸入額(兆円) 出所:朴(2014)

46 ドイツの電力価格は上昇したけど.. ドイツの産業用電気料金と税 出所:IEA Prices and Taxes
2014/09/06 ドイツの電力価格は上昇したけど.. ドイツの産業用電気料金と税 出所:IEA Prices and Taxes ASUKA Jusen

47 欧州の電力価格は大きく変わらない ドイツと東欧の産業用電力価格 出所:IEA Prices and Taxes
2014/09/06 欧州の電力価格は大きく変わらない ドイツと東欧の産業用電力価格 出所:IEA Prices and Taxes ASUKA Jusen

48 電力多消費産業は減免されている 産業用電力価格の差異(ドイツ) 出典: Weiss (2014)

49 ドイツでの電力卸売り価格は低下 ドイツ電力卸売り価格の変化 出典: Weiss (2014)

50 今後は上昇しない 電力価格の推移予測(ドイツ) 出典: Weiss (2014)

51 日本でも負担は大きいとは言えない(1) 賦課金の相対的な大きさ(日本) 出典:自然エネルギー財団(2014)

52 需要家規模別の負担額の相殺に必要な節電率
日本でも負担は大きいとは言えない(2) 標準家庭月あたり負担額(日本) 標準世帯の2020年、2030年の月あたり負担額 標準世帯の月あたり負担額推移 低位 中位 高位 2020 89(0.3) 191(0.6) 372(1.2) 円/月(円/kWh) 2030 152(0.5) 291(1.0) 526(1.7) 需要家規模別の負担額の相殺に必要な節電率 低位 中位 高位 2020時点 家庭 1.4% 3.0% 5.7% 中規模工場 2.1% 4.4% 8.6% 大規模工場 2.8% 5.9% 11.6% 2030時点 2.4% 4.5% 8.0% 3.6% 6.7% 12.0% 4.8% 9.0% 16.2% 家庭:300kWh/月(2009年電灯単価22円/kWh) 中規模工場:250,000kWh/月(2009年電力総合単価14円/kWh) 大規模工場:2,400,000kWh/月(2009年大口電力単価11円/kWh) として推計。なお、大規模工場では負担額の減免措置が講じられる予定であるが、本試算では考慮していない。 (出典)2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会「エネルギー供給WG現時点でのとりまとめ」平成24年3月2日 52

53 そもそも他のエネルギーも補助されてきた 各エネルギーへの補助金(ドイツ) 出典: Weiss (2014)

54 再生可能エネルギーへの補助は相対的には小さい
各エネルギーへの補助金(ドイツ) 出典: Weiss (2014)

55 日本における再生可能エネルギー産業の雇用(2013年) 日本の対策産業・雇用(予測)
雇用効果は大きい 日本における再生可能エネルギー産業の雇用(2013年) 日本の対策産業・雇用(予測) 大分類 分類 雇用 世界の再エネ産業 エネ種別 再生可能エネルギー産業雇用合計 649万人 バイオマス産業 250万人 太陽光発電産業 227万人 風力発電産業 83万人 太陽熱利用産業 50万人 地熱産業 18万人 小規模水力発電産業 16万人 太陽熱発電産業 4万人 国別 中国 264万人 EU 124万人 ブラジル 89万人 米国 63万人 インド 39万人 ドイツ 37万人 参考 日本の自動車・部品製造業 約70万人 想定 対策 試算 投資 兆円 経済波及効果 [兆円] 雇用 (2020年) 万人 温室効果ガス25%削減 CASA 128 307〜372 165〜215 名大藤川ら 233〜287 165〜190 再エネ電力16~18% 再エネ普及方策検討会 26 59 再エネ電力25% 牛山ら 84 170〜220 88〜117 CASA地球温暖化資料集 REN21:Global Status Report2014

56 導入ポテンシャルもある 日本の自然エネルギー電力導入可能性 今の消費量の3〜7倍の可能性
出典:歌川(2014) 元資料は環境省:再生可能エネルギーポテンシャル調査(2010)、 NEDO:太陽光2030+、自然エネルギー白書、など

57 「原発と温暖化と経済」の整理 原発は、国全体としてのリスクやコストがベネフィットを大幅に上回る。それだけで原発は不要と言いうる
さらに、脱温暖化を可能とする代替発電技術は存在し、コストは大差なくベネフィットが大きい

58 原発推進と温暖化問題無視は同罪 科学の無視 経済の無視 公平性・黄金律の無視 →結局は、負担や被害の他人への転嫁

59 5. まとめ

60 悲観でも楽観でもなく(1) 再生エネ導入が世界でも日本でも拡大方向にはあるのは確か しかし、相手は強くて大きい。
2014/09/06 悲観でも楽観でもなく(1) 再生エネ導入が世界でも日本でも拡大方向にはあるのは確か しかし、相手は強くて大きい。 自由化の動向を注視して関係者を支援し、自らが実践していくしかない ASUKA Jusen

61 悲観でも楽観でもなく(2) 選挙も非常に重要 温暖化問題では、効きにくくなっているものの、外圧の効果はある 賢い消費者になる必要がある
2014/09/06 悲観でも楽観でもなく(2) 選挙も非常に重要 温暖化問題では、効きにくくなっているものの、外圧の効果はある 賢い消費者になる必要がある 社会を論理的にデザインしようとするドイツなどの先行事例に学ぶところ多い ASUKA Jusen

62 参考文献(1) 秋本真利(2014)「秋本まさとしブログ(2014年3月31日)」
明日香壽川・朴勝俊・西村六善・諸富徹(2014)「ハンセン氏らの書簡への反論:  原子力発電は気候変動問題への答えではない」 climate_change_jp.pdf 明日香壽川(2014)「IPCC 第 5 次報告書第 3 作業部会の政策的含意 −各国削減目標の差異化および原子力発電の役割を中心に− 」 %20AR5%20WG3%20review26.pdf 歌川学(2014)日本における中長期温室効果ガス排出削減シナリオ 日本科学者会議総会発表資料 エネルギー・環境会議(2012)「革新的エネルギー・環境戦略」

63 参考文献(2) Greenpeace East Asia (2014)“China’s coal use might just have dropped first time this century - what’s going on? just-have-dropped-first/blog/50204/ グリーンピース・ジャパン(2014)「二酸化炭素削減のために原発は必要なの?」 2014年4月 自然エネルギー財団(2014a)「原発停止による3.6兆円の国富流出」試算の検証 自然エネルギー財団(2014b)「固定価格買取制度2年の成果と自然エネルギー政策の課題」自然エネルギー財団ディスカッションペーパー、2014年8月 電力システム改革専門委員会(2014)「電力システム改革の基本方針-国民に開かれた電力システムを目指して-」平成24年7月.

64 参考文献(3) 2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会(2012)「エネルギー供給WG:現時点でのとりまとめ」中央環境審議会地球環境部会、平成24年3月2日 平⽥仁⼦(2014) 「地球温暖化を防ぐためにこそ、原発はやめるべき」 「地球温暖化のために原発再稼働!? 〜原⼦⼒ムラのウソをあばく」 , 東京 朴勝俊(2014)「原発がなくても日本経済は大丈夫」 吉岡斉(2014)「焚増しコストの評価についてのメモ」総合資源エネルギー調査会原子力小委員会第2回会合, 平成26年7月1日, 参考資料4 pdf/002_s04_00.pdf


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