無料サンプルと消費者の選択行動 －無料サンプルの消費者購買意思決定プロセスへの影響－

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1 無料サンプルと消費者の選択行動 －無料サンプルの消費者購買意思決定プロセスへの影響－
SPSS研究奨励賞2009 2009/10/22 於：東京ドームホテル 無料サンプルと消費者の選択行動 －無料サンプルの消費者購買意思決定プロセスへの影響－ 中央大学商学部　久保知一研究室　第３期生 石橋暢也　増山絵里　中村智 これより、「無料サンプルと消費者の選択行動ー無料サンプルの消費者購買意思決定プロセスの影響」と題しまして、今回の研究の報告をさせていただきます。発表は増山が担当します。よろしくお願いします。

2 目次 第１節 イントロダクション 第２節 先行研究のレビュー 第３節 仮説の提唱および統合モデル 第４節 調査方法 第５節 分析結果
第１節　イントロダクション 第２節　先行研究のレビュー 第３節　仮説の提唱および統合モデル 第４節　調査方法 第５節　分析結果 第６節　本研究の知見と今後の課題 本日の発表は、このように進めさせていただきます。

3 第１節 イントロダクション まず、イントロダクションです。

4 研究対象 SPの例 セールスプロモーション(sales promotion : SP) POP広告 無料サンプル配布 割引クーポン
販売に対して短期的な効果をもたらす。 SPへの期待は近年高まっている。 SPの例 POP広告 無料サンプル配布 割引クーポン ポイント付与制度

5 研究目的 無料サンプル配布が購買意図へ与える影響と心理プロセスの包括的な解明。 理論モデルの構築
3つの消費者選択行動モデルを統合、知覚リスク概念を組み込み、新たな理論モデルを構築。 理論モデルの経験的妥当性の吟味 新たな理論モデルの経験的妥当性を吟味するため、共分散構造分析を利用。

6 第２節 先行研究のレビュー

7 高橋 (1994) サンプル配布の効果やその影響メカニズムの解明を目指した代表的な研究。
分散分析を実施 被説明変数…態度、確信、購買意図 説明変数…サンプルの配布行為、情報処理行動、　　　　　 　　　　　　広告認知 被説明変数に対して情報処理行動 と広告認知が大きな影響力を持つことが確認された。

8 先行研究の問題点 情報処理行動を規定する情報処理能力については言及していない。 残された研究課題
無料サンプルに対する消費者の情報処理プロセスの包括的な解明

9 モデルの検討(1) Howardの消費者意思決定モデル ブランド認識：物理的属性の認識の度合 態度：ブランドに対して抱く期待の度合
情報 ブランド認識 購買意図 確信 Howard, Shay & Green (1988) ブランド認識：物理的属性の認識の度合 態度：ブランドに対して抱く期待の度合 確信：製品の評価に対する自信の度合 購買意図：製品を購入しようと考える意思の度合

10 仮定された構成概念の背後に、それらを制御する 消費者の情報処理能力が存在すると考えられる。 消費者の購買意思決定プロセスを説明することは
問題点 モデルの有効性は実際のデータで確かめられていない。 モデルの構成概念間に仮定されなかった相関関係が生じ、仮定通りのフローで流れない。（清水 1991） 仮定された構成概念の背後に、それらを制御する 消費者の情報処理能力が存在すると考えられる。 Howardモデルのみで 消費者の購買意思決定プロセスを説明することは 困難！

11 モデルの検討(2) 行動意図モデル 態度：形成・変容は多くの属性に基づき決定される。 主観的規範：自分にとって重要な他者からの期待度
属性の例として価格、品質、デザインなどが挙げられる。 主観的規範：自分にとって重要な他者からの期待度 態度 行動意図 行動 主観的 規範 Fishbein & Ajzen (1975)

12 問題点 主観的規範 社会的影響の概念枠組み (Kelman 1961) 準拠個人や集団の期待に対する信念とその従順度の積和。
準拠個人や集団の社会的影響 「同一化」 「内在化」 「服従」 ⇒自分にとって重要な人がその行動をどれだけ期待し、　 その期待に自分がどれだけ応えようとしているのか。 態度 主観的規範

13 現実社会において「服従」関係は想定しにくい。
問題点 「服従」 影響者から好意的反応を望まれているために　仕方なく受け入れること。 現実社会において「服従」関係は想定しにくい。 主観的規範の作用についての解釈が 極めて不明確なものとなる可能性が高い。

14 モデルの検討(3) Mitchellモデル 消費者の情報処理能力を関与の概念で捉えている！ 関与：製品の広告に対する関与度
情報処理：広告内の情報に対する理解度 目標 活動中のスキーマ 関与 処理済み 情報の蓄積 刺激 注意 情報処理 態度 Mitchell (1980) 消費者の情報処理能力を関与の概念で捉えている！

15 問題点 自ら問題解決のために情報を収集する能動的な消費者を仮定していない。 しかし・・・
本研究で扱う商品は低価格の栄養バランス食品のため、低関与な消費者が多い。 能動的に情報収集する消費者は少ないと考えられ、問題点とはならない。

16 第３節 仮説の提唱と統合モデル

17 統合モデル(1) 行動意図モデル ＋Howardモデル ＋Mitchellモデル おいしさ (＋) (＋) 機能性 態度 (＋) 行動意図
購買意図 行動 (＋) (＋) 主観的 規範 (＋) 関与 情報処理 確信 (＋) (＋)

18 仮説(1) 仮説1：おいしさ属性は態度に正の影響を与える。 仮説2：機能性属性は態度に正の影響を与える。
仮説3：機能性属性は関与度に正の影響を与える。 仮説4：関与度は情報処理度に正の影響を与える。 仮説5：情報処理度は確信に正の影響を与える。 仮説6：態度は購買意図に正の影響を与える。 仮説7：確信は購買意図に正の影響を与える。

19 新概念の追加 知覚リスク 直観モデル (Simon 1983) 「無料サンプルは知覚リスクを低減させることができる」
被るリスクを考慮することなく、感情をベースに商品を選択する。 「消費者の主観に基づいた製品に対して抱く危険性評価」 (中村 2003) ⇒特定の商品に対して抱く不安 Roselius (1971) 「無料サンプルは知覚リスクを低減させることができる」 サンプル属性のうち、直観的に把握可能なおいしさ属性は直接知覚リスクを低減しない。

20 新概念の追加 広告内の情報を処理することで、知覚リスクを低減できる。 知覚するリスクが大きければ、その分態度に悪影響を与える。
知覚リスクを低減させるためには、情報提供が必要である。 (中村　2003) 知覚リスクは態度に影響を与える。 (Bettman 1976) 広告内の情報を処理することで、知覚リスクを低減できる。 知覚するリスクが大きければ、その分態度に悪影響を与える。

21 仮説(2) 仮説8：機能性属性は知覚リスクに負の影響を与える。 仮説9：情報処理度は知覚リスクに負の影響を与える。
仮説10：知覚リスクは態度に負の影響を与える。

22 CAS モデル (Consumer Acceptance of Sample model )
統合モデル(2) CAS モデル (Consumer Acceptance of Sample model ) おいしさ (＋) (＋) 機能性 態度 (＋) (－) (－) 知覚 リスク (＋) 購買意図 (－) (＋) (＋) (＋) 関与 情報処理 確信

23 第４節 調査方法

24 調査方法 調査対象 調査方法 回収率 都内私立大学の大学生
リーフレットを添付した無料サンプルを配布し、同一の相手に対して一週間後アンケートを取る。 無料サンプルに関しては、大塚製薬株式会社の協力を得て栄養バランス食品「SOYJOY」を用いた。 回収率 無料サンプルを500本配布、回収数346 (回収率69.2%) 、有効回答263 (有効回答率52.6％)。

25 添付したリーフレット

26 調査方法 調査設計 測定尺度 プリテスト おいしさ属性、機能性属性：独自開発。 関与度、情報処理度：Mitchellモデル（1980）より。
知覚リスク：中村 (2003)より。 態度：行動意図モデル（1975）より。 確信、購買意図：Howardモデル（1988）より。 プリテスト 本調査を行う前に、少人数制授業受講者を対象としたプリテスト (n=31) を行い、さらなる検討を行った。 リッカート尺度に基づく5点尺度でプリテストを行ったところ分散が小さかったため、6点尺度を採用。

27 第５節 分析結果

28 分析結果 信頼性の分析 潜在変数 観測変数 クロンバックのα信頼性係数 おいしさ ３ .916 機能性 .937 関与度 .818
情報処理度 .545 知覚リスク ２ .591 確信 .793 態度 .837 購買意図 .830

29 棄却！ 棄却！ 分析結果 GFI=.900, AGFI=.860， RMSEA=.065 構造方程式モデルの推定結果 H1 おいしさ属性 →
態度 （＋） .572 (t= ) ** H2 機能性属性 .042 (t= ) H3 関与度 .232 (t= ) ** H4 情報処理度 .597 (t= ) ** H5 確信 .807 (t= ) ** H6 購買意図 .631 (t= ) ** H7 .450 (t= ) ** H8 知覚リスク （－） -.110 (t= ) H9 -.297 (t= ) * H10 -.295 (t= ) ** 棄却！ 棄却！

30 分析結果 おいしさ .572** .042 機能性 態度 .631** -.110 -.295** 知覚 リスク .232** 購買意図
**： 1％水準で有意。*： 5％水準で有意。 実線：有意、破線：非有意 おいしさ .572** .042 機能性 態度 .631** -.110 -.295** 知覚 リスク .232** 購買意図 -.297* .597** .807** .450** 関与 情報処理 確信

31 Casモデル(最終形) おいしさ **： 1％水準で有意。 .583** 機能性 態度 .633** -.325** 知覚 リスク
.229** 購買意図 -.347** .453** 関与 情報処理 確信 .615** .797**

32 第６節 本研究の知見と今後の課題

33 知見 知覚リスクを低減させるのは機能性である。 おいしさは態度に直接影響を与える。
(＋) 機能性 態度 (＋) (－) 知覚 リスク (＋) 購買意図 (－) (＋) (＋) (＋) 関与 情報処理 確信 機能性はリーフレットやCMといった他のプロモーション情報に対する関心を高め、間接的に態度に影響を与える。

34 知見（直観的属性） 直観的に評価できる属性が優れている場合、 無料サンプルは効果的である。

35 他のプロモーションと組合わせれば販売促進の効果は上がる。
知見（プロモーションの組合せ） 機能性を重視した製品であっても、 他のプロモーションと組合わせれば販売促進の効果は上がる。

36 知見（知覚リスク） 消費者の「不安」を取り除きたいときは、 機能性をアピールする必要がある。

37 今後の課題 調査対象の拡大の必要性 消費者の意思決定に作用する他の因子の探究 無料サンプルの属性抽出方法
本研究では、対象者の絞り込みの容易さから大学生のみ。 知覚リスク以外に意思決定に影響を与える因子の存在の可能性。 消費者に重要な属性をリストアップさせる方法。 消費者の意思決定に作用する他の因子の探究 無料サンプルの属性抽出方法

38 ご清聴 ありがとうございました。