パッシブエアーサンプラーにおける各ピークのサンプリングレート 算出の試み

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1 パッシブエアーサンプラーにおける各ピークのサンプリングレート 算出の試み
大阪大学　共同研究講座 吉田卓矢

2 PCBとは ポリ塩化ビフェニル （PCB） ・電気絶縁性に優れている ・不燃性 ・化学的に安定
トランス トランス、コンデンサといった電気機器用の絶縁油をはじめ幅広い用途に使用されていた ポリ塩化ビフェニル （PCB） 毒性の発見（1968年カネミ油症事件） コンデンサ 30年間未処理のまま大量のPCBが保管 1972年　製造中止 1974年　製造、輸入、新たな使用が禁止 1998年　廃棄物処理法でPCBを安全に無害化 処理する方法が認められる PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する 特別措置法 (2001年） 2016年までにPCB全廃の義務化 低濃度PCB（100ppm未満）汚染絶縁油は未だに 50万トン以上も未処理のまま保管されている！ PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する 特別措置法改正 (2012年） PCB全廃の義務が2027年まで延長 ・・・・ストックホルム条約のPCB全廃の期限（２０２８年）

3 今回の報告 　同一地点での、アクティブエアーサンプラーおよびパッシブエアーサンプラーを用いた大気中のPCBサンプリングを行い、個々のピークのサンプリングレートを求めたので結果を比較したので報告する。 ●アクティブエアーサンプラー(Active Air Sampler ： AAS) 　フィルターや捕集剤を通して既知量の空気をポンプにより吸引する方法で、大気中のPOPsを最も正確に捕集する方法である。 　問題点として電力や捕集剤の交換などのメンテナンスを必要とし、多くの地点で同時にサンプリングを行うにはコスト的な問題もあり、広域、多地点で同時サンプリングを実施するには不向きである。 ●パッシブエアーサンプラー（Passive Air Sampler ： PAS） 　ポリウレタンフォーム等を捕集剤として用い、分析種が捕集剤に移流と拡散により受動的に捕集されることを利用した捕集方法である。 　電力を必要とせず、安価なため、多地点の同時モニタリングを得意としている。

4 アクティブエアサンプラー（AAS） ・Sep-Pak Plus PS-Air (Waters製)を2段直列につないで ポンプで室内大気を捕集
＜捕集管＞ 固相カートリッジ Sep-Pak Plus PS AIR　(Waters製) 拡大 流量計 真空ポンプ

5 パッシブエアサンプラー(PAS) パッシブエアサンプラー(PAS)は、風雨の影響を除去しボウルを二つ重ねた
UFO型の容器にポリウレタンフォームプラグ（PUF: 直径85mm高さ50mm)を 装着し、1か月～2か月程度の期間、室内で静的な吸着大気捕集を実施 サンプラー内部 ポリウレタンフォームプラグ

6 抽出および分析 ・固相からはヘキサン(5mL)で抽出し、濃縮 ・イソオクタン(200μL)で希釈して、 GC/MS/MSで分析 AAS
elution by hexane (5ml) concentration Transfer to vial by 2,2,4-Trimethylpentane (200μl)

7 分析条件 使用機器： 450-GC/320-MS/MS, Bruker カラム： HT8-PCB
昇温条件：　 120 ℃ (0 min) → 20 ℃/min → 180 ℃ (0 min) → 2 ℃/min → 260 ℃ (0 min) → 5 ℃/min → 300 ℃ (4 min) 検量線： EC5433（ＣＩＬ社製）を標準物質とした一点検量線法で濃度を測定

8 クロマトグラフ（3塩素化体） STD Air ●異性体の保持時間 (短) オルト < メタ < パラ (長) ●異性体数
(短) オルト < メタ　< パラ　(長) ●異性体数 3塩素化体：24種類 3塩素化体STD：8種類使用 Air ●解析方法 面積比より分析サンプル中に含まれるPCB濃度を求める （青枠内ピーク面積）

9 各塩素化体の濃度 グラフ青色：AAS グラフ赤色：PAS 10/31～11/10 11/10～11/17 11/17～11/22
11/24～12/1 12/1～12/2 10/31～12/2 グラフ青色：AAS グラフ赤色：PAS

10 クロマトグラフ ３塩素化体 258.0 > 188.0 PAS AAS-1 AAS-2 AAS-3 AAS-4 AAS-5 STD
#19 #18 #31 #28 #33 STD #38 #35 #37 ３塩素化体 > 188.0

11 クロマトグラフ ４塩素化体 292.0 > 222.0 PAS AAS-1 AAS-2 AAS-3 AAS-4 AAS-5 STD
#54 #52 #49 #44 #57 #70 STD #74 #66 #79 #78 #81 #77 ４塩素化体 > 222.0

12 クロマトグラフ ５塩素化体 326.0 > 256.0 PAS AAS-1 AAS-2 AAS-3 AAS-4 AAS-5 STD
#104 #111 #95 #101 #99 #110 #118 STD #87 #123 #114 #105 #126 ５塩素化体 > 256.0

13 クロマトグラフ ６塩素化体 360.0 > 290.0 PAS AAS-1 AAS-2 AAS-3 AAS-4 AAS-5 STD
#155 #149 #153 #138 #167 #157 STD #162 #156 #169 ６塩素化体 > 290.0

14 クロマトグラフ ７塩素化体 396.0 > 326.0 ８塩素化体 430.0 > 360.0 PAS PAS AAS-1
STD STD ７塩素化体 396.0 > 326.0 ８塩素化体 430.0 > 360.0

15 Sampling rate Sampling rate (m3/day) ３塩素化体：1.9～2.3 ４塩素化体：1.2～2.0
5 3 4 PAS PAS 6 7 8 AAS-1 AAS-1 ３塩素化体 ４塩素化体 9 13 10 11 PAS PAS 12 14 15 AAS-1 AAS-1 ５塩素化体 ６塩素化体 (m3/day) ３塩素化体 ４塩素化体 ５塩素化体 ６塩素化体 Sampling rate (m3/day) ３塩素化体：1.9～2.3 ４塩素化体：1.2～2.0 ５塩素化体：0.9～1.0 ６塩素化体：1.2～1.9