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Ⅳ 訪問介護における医療の知識 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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Ⅳ 訪問介護における医療の知識 医療に関する知識と介護・看護等との連携 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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高齢者の身体特性(1) 高齢者は生理的老化に伴い、身長低下や体重減少、白髪化や皮膚のしわなどの外的変化があらわれるほか、身体の内部においてもさまざまな変化が起こる。 加齢によって各器官を構成する細胞数が減少するために各器官の機能低下がひきおこされ、また、人間の体の6割を占める水(体液)が減少するため、水分摂取量の不足や水分排出量が増加することで、体内の水分量が不足して脱水状態となり、臓器に大きな影響を与えることになる。 加齢に伴う主な身体機能の低下 運動機能の低下 骨や筋肉、関節等の変化 呼吸機能の低下 気道における繊毛活動の減少に伴い、分泌物の排出機能が低下 肺における肺胞が減少し、肺活量の減少 消化機能の低下 食道における粘膜に萎縮がおこり、蠕動運動が弱くなり、嚥下障害が生じる 胃粘膜に委縮がおこり、胃液分泌が減少 感覚機能の低下 老眼(老視)などの視機能、老人性難聴などの聴機能、嗅覚機能、味覚機能の低下 免疫機能の低下 ウイルス防御の役割をもつNK細胞等の低下 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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高齢者の身体特性(2) 寝たきり等、より悪い状況へ 寝たきり等のより悪い状態へ 加齢 心身機能低下による状態の変化
加齢に伴い心身の機能の低下が進むことで、フレイルやサルコペニアという健康と病気の中間的な段階へと陥り、さらに悪化すると廃用症候群を引きおこす。状態がさらに悪化すると、様々な障害が現れるようになり、寝たきり等の状況へとなっていく。 心身の機能低下 フレイル 加齢 ・・・フレイルは健康と病気の中間的な段階。①体重減少、②歩行速度低下、③握力低下、④疲れやすい、⑤身体活動レベルの低下のうち、3項目以上あればフレイルとみなされる。 サルコペニア 寝たきり等のより悪い状態へ ・・・もともとは加齢に伴う骨格筋量の減少を指していたが、近年は筋力や身体機能の低下までを含めるようになってきた。 廃用症候群 ・・・筋委縮、関節の拘縮、褥瘡、起立性低血圧、認知機能障害、尿失禁、便秘、嚥下障害、抑うつ、肺炎などが生じる Ⅳ 訪問介護における医療の知識 寝たきり等、より悪い状況へ
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高齢者の身体特性(3) 1.体重が1年間に2~3kg減少していないか 2.以前より疲れやすくなっていないか 3.筋力が低下していないか
訪問介護は利用者の日常生活や地域生活の状況を一番身近で把握・観察できるため、介護予防(要支援・要介護の状況の悪化防止・改善)の専門的知識は生活支援での大切な視点である。 1.体重が1年間に2~3kg減少していないか ○食欲や食べる量が減少している ○食事に関心が無くなってきた 2.以前より疲れやすくなっていないか ○「疲れた」と言う言葉がよく聞かれる ○訪問すると休んでいる時が多くなった 3.筋力が低下していないか ○握る力が弱くなってきた 4.歩く速度が遅くなっていないか ○歩幅がせまくなってきた ○立上がりの時間がかかるようになる 5.活動の機会が減っていないか ○外出や人に会う意欲や機会が少なくなる フレイルという言葉は「日本老年医学会」が提唱している言葉で、「筋力や心身の活力が低下した状態」を意味しています。 長寿医療研究センター 病院レター第49号 MAR25,2014 虚弱(フレイル)の評価を診療の中に Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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高齢者の身体特性(4) フレイルティサイクル
機能低下につながる要因のひとつに低栄養状態にがあげられ、低栄養状態はフレイルにおいてサルコペニアにつながり、活動の意欲や身体機能の低下を誘導する。 活動の意欲や身体機能の低下は活動度や消費エネルギー・食欲の低下を招き、さらなる低栄養状態を促進することとなる。このようにして、状態が悪循環してしまう流れを、フレイルティサイクルという。 低栄養 フレイルティサイクル サルコペニア 食欲低下 摂取量 エネルギー消費量 基礎代謝 活動度 身体機能 (歩行速度 ) 筋力 疲労・活力 PEM:エネルギーとたんぱく質の欠乏した状態 フレイル:虚弱。健康障害に陥りやすい状況 サルコペニア:加齢に伴う筋力の減少、または老化に伴う筋肉量の減少 出典:長寿社会開発センター 介護支援専門員基本テキスト第3巻 P266 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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高齢者の疾患特性 高齢者はこれまで何らかの疾患に罹患し、慢性化している場合がある。それに加え、加齢変化に伴う疾患に罹患、そのうえ合併症を引き起こすと、多くの疾患をもつことになる。 高齢者の場合は完全治癒が望めない例もあるとともに、ADLの低下に大きな影響を与える。 高齢者の疾患の主な特性 複数の疾患をもっている:複数の疾患をもっている場合は、薬の種類も多い 定型的な症状を示さない: 例えば、肺炎は発熱やせきが主症状だが、微熱程度や食欲不振などの症状のことがある 慢性的に経過する:治癒に時間がかかり、合併症を起こしたりするなど、経過が長引く 意識障害、せん妄をおこしやすい:脳に障害がなくても、発熱や脱水によって意識障害をおこす QOLや予後が環境要因に大きく影響される: 介護力不足のために自宅への退院が困難であったり、リハビリテーションに消極的であったりするなど、疾患の回復や生活が左右される ※様々な疾患・疾病を持つ利用者に対する個別ケアの実現に向け、サービス提供責任 者は他の職種との連携を図る機会も多いことから、利用者の状態に応じた疾病・疾 患について自ら調べる姿勢も大切である。 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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障害の理解(1) 障害とは、身体障害(視覚障害、聴覚・平衡機能障害、音声・言語・咀しゃく機能障害、肢体不自由、内部障害)知的障害、精神障害、難病等であり、これらの障害種別のなかでも種類や障害等級があるように、障害の状態もさまざまである。 身体障害 視覚障害 聴覚(伝音性難聴、感音性難聴、混合性難聴)・平衡機能障害 音声・言語障害(運動性構音障害、器質性構音障害、機能性構音障害) 咀しゃく機能障害(器質性咀しゃく障害、運動性咀しゃく障害) 肢体不自由(下肢機能障害、上肢機能障害、全身性運動機能障害、体幹機能障害、上肢切断、下肢切断、脳原性全身性運動機能障害) 内部障害(心臓機能障害、腎臓機能障害、呼吸器機能障害、膀胱・直腸機能障害、肝機能障害) 知的障害 知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態 知的な能力と日常生活における活動能力は必ずしも並行したものではなく、個人ごとに必要な支援はことなってくる。また、本人のみならず家族への支援も重要である。 重い運動障害を伴った重度知的障害のある重症心身障害は「重度訪問介護」の対象である。 精神障害 統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患 平成25年改正「国民年金・厚生年金保険障害認定基準(第8節/精神の障害)」 知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものをいう。 精神の障害は、「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」、「気分(感情)障害」、「症状性を含む器質性精神障害」、「てんかん」、「知的障害」、「発達障害」に区分する。 症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む。)とは、先天異常、頭部外傷、変性疾患、新生物、中枢神経等の器質障害を原因として生じる精神障害に、膠原病や 内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障害を含むものである。 なお、アルコール、薬物等の精神作用物質の使用による精神及び行動の障害(以下「精神作用物質使用による精神障害」という。)についてもこの項に含める。 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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障害の理解(2) 高次脳機能障害 記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害により、日常生活または社会生活に制約がある状態 ・脳卒中等による失語症や記銘力の低下、注意力などの低下、逐行機能の障害など ・失語症では、コミュニケーションが困難になることで人とのかかわりや社会生活へ影響する ・半側空間無視や注意力の低下により日常生活に困難さがある 発達障害 発達障害者支援法での分類 広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症) 注意欠陥・多動性障害 学習障害 これらに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発症するもの DSM-5(米国精神医学学会の診断分類:2013年改訂)での分類 知的能力障害群 コミュニケーション障害群 自閉スペクトラム障害群 注意欠如/・多動性障害 限局性学習障害 運動症候群 難病等 治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度であるもの(332疾病:平成27年7月) 平成27年7月からの障害者総合支援法の対象疾病一覧(332疾病) 厚生労働省 高次脳機能障害 こころとからだのしくみ(中央法規)p106 平成25年改正「国民年金・厚生年金保険障害認定基準(第8節/精神の障害)」 高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、日常生活又は社会生活に制約があるものが認定の対象となる。その障害の主な症状としては、失語、失行、失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがある。 なお、障害の状態は、代償機能やリハビリテーションにより好転も見られることから療養及び症状の経過を十分考慮する。 発達障害 生活支援の基礎理論Ⅱp151~152 発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものをいう。 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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利用者の状態把握(1) バイタルサインとは、体温・脈拍・血圧などの基本的な生命反応である。
バイタルサインとは、体温・脈拍・血圧などの基本的な生命反応である。 訪問介護事業所の職員(サービス提供責任者・訪問介護員)がバイタルサインを把握することは、利用者の身体的状況を確認するために必要な情報である。また、個別の平常の状態とは異なるときは、医療職にバイタルサインや観察した情報の提供をはかり連携していく必要がある。 できるとよいこと 1 体温を測る 2 脈拍の回数を数える 3 呼吸の回数を数える 4 血圧を測る 5 (もし可能なら)24時間前までにとった水分量と排泄量を推測する <すぐに病院にかかるべき状態> ①(普段歩ける人が)苦しくて歩けないとき ②数時間のうちに症状がどんどん悪くなるとき ③口や肛門から血が出たとき ④「意識」や「体の一部の動き」に異常があるとき ⑤嘔吐が続くとき(2回以上) ⑥食べられないとき(1日以上) ・把握したバイタルサインの情報の対応(記録・連絡・報告) Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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利用者の状態把握(2) 体内の水分出納の分類と移動 水分の摂取量と排泄量
身体にとって生命を維持するのに重要なものとして水がある。水分は体内に取り入れる水分の摂取量と排出している水分量とのバランスがくずれると脱水症状となる。 水分の摂取量と排泄量 体内の水分は、体外から摂取する水と体外に排出する水がある。水分の出納のバランスが崩れると脱水状態になるため、必要な場合には脱水症の予防のために飲料水等の水分摂取量と排出量を把握しておく。 出典:太田貞司監修『生活支援の基礎理論Ⅱ』「1日あたりの水分の出納」 P12 ・把握したバイタルサインの情報の対応(記録・連絡・報告) 摂取量 1日量(ml) 排出量 1日量(ml) 飲料水 1100~1400 食物中の水 700 代謝水(体内代謝で産生) 200 尿 1200~1500 便 100 不感蒸泄(呼気・皮膚) 700 合計 ~2300 合計 2000~2300 参考資料:境章『目でみるからだのメカニズム改訂版」を参考に作成 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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利用者の状態把握(3) 記録 報告をするときの留意点 連絡をするときの留意点 「5W2H」
記録は対人援助において重要であり、特に、訪問介護は一人訪問が中心となることから、利用者の状況を記録で報告してもらわなければ、せっかくの訪問介護員の観察が埋もれてしまうこととなる。 暮らしには変化がつきものであり、体調、気分によって反応も変化する。小さな変化が積み重なって大きな変化とつながることもあるため、介護予防(要介護状態や要支援状態となることの予防、要介護状態や要支援状態の軽減・悪化の防止をいう)の視点からも、利用者の状態を記録することが重要である。 また、記録した情報は報告・連絡し、チームケアに活かすことが大切となる。 報告をするときの留意点 連絡をするときの留意点 ●適切なタイミング ●報告の仕方と要点 ●苦情・事故発生時の対応 ●記録は「仕事の羅針盤」 ●「5W2H」を念頭に ●連絡内容は記録に ●適切なタイミング ●緊急時など状況に応じた連絡 ●状況を見極める、判断力・洞察力 ●「5W2H」を念頭に ・把握したバイタルサインの情報の対応(記録・連絡・報告) 「5W2H」 When いつ How どのように Where どこで How much どのくらい Who 誰が What 何を Why なぜ Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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医療的ケア 介護職員等による喀痰吸引等 2012(平成24)年の「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正において、介護福祉士および一定の研修を受けた介護職員等が一定の条件下(医療や看護との連携による安全確保が図られているなど)で「たんの吸引等」の行為を実施できることになった。 実施にあたって訪問介護事業所は、医師や訪問看護ステーションとの連携をはかる必要がある。 対象となる 医療行為 ・たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部) ・経管栄養(胃ろうまたは腸ろう、経鼻経管栄養) 実施する者 医師の指示、看護師等との連携のもと、 ・介護福祉士(平成28年1月の国家試験合格者以降が対象) ・介護職員等(訪問介護員等の介護職員、上記以外の介護福祉士、特別支援学校教員等であって、一定の研修を修了した者) 実施場所 特別養護老人ホーム等の施設や在宅(訪問介護事業所等から訪問) 安全確保措置など ・医療関係者を含む委員会設置や研修実施などの安全確保のための体制の確保 ・必要な備品等の確保、衛生管理等の感染症予防の措置 ・たんの吸引等の「計画書」の内容についての対象者本人や家族への説明と同意 ・業務上知り得た秘密の保持 など 医療的ケアを必要として地域で生活をする利用者や介護する家族等の生活の質(QOL)を向上することを目標に、安全・安心な医療的ケアをチームケアで実施する。 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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介護職員等による喀痰吸引等提供体制イメージ
介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度について (「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正) 出典:厚生労働省 喀痰吸引等指導者マニュアル(第三号研修) Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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医行為ではない行為 2005(平成14)年7月に「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」という通知が厚生労働省からだされ、医療関係以外の高齢者介護および障害者介護の現場において判断に迷いを生じる行為であって、原則として医行為ではないと考えられる行為が示された。これらの行為を行うに際には、安全に行われるべきとしたうえで、諸条件や留意点(次スライド参照)等を踏まえて実施しなければならない。 (原則として医行為ではないと考えられる行為) 1.一般的な方法による体温測定 2.自動血圧測定器による血圧測定 3.パルスオキシメータの装着 4.軽微な切り傷・擦り傷・やけど等の処置 5.一部の医薬品の使用の介助 6.つめ切り・やすりがけ 7.日常的な口腔清掃 8.耳垢の除去 9.ストマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てること 10.自己導尿を補助するためのカテーテルの準備、体位の保持 11.市販の使い捨て浣腸器による浣腸 サ責には諸条件や留意点の理解が必要なので、追加記載した方が良いと思います。 資料 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知) 注2 病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、医行為であるとされる場合もあり得る。このため、介護サービス事業者等はサービス担当者会議の開催時等に、必要に応じて、医師、歯科医師又は看護職員に対して、そうした専門的な管理が必要な状態であるかどうか確認することが考えられる。さらに、病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、医師、歯科医師又は看護職員に連絡を行う等の必要な措置を速やかに講じる必要がある。 また、上記1から3までに掲げる行為によって測定された数値を基に投薬の要否など医学的な判断を行うことは医行為であり、事前に示された数値の範囲外の異常値が測定された場合には医師、歯科医師又は看護職員に報告するべきものである。 注3 介護サービスの事業者等は、事業遂行上、安全にこれらの行為が行われるよう監督することが求められる。 注5 上記1から5まで及び注1に掲げる行為(PPTで挙げられている行為すべて)について、看護職員による実施計画が立てられている場合は、具体的な手技や方法をその計画に基づいて行うとともに、その結果について報告、相談することにより密接な連携を図るべきである。 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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医行為ではない行為(資料) 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈についてより抜粋
(平成17年7月28日 厚生労働省老健局振興課長通知 老振発第0728001号) 太字・下線は追記 1 水銀体温計・電子体温計により腋下で体温を計測すること、及び耳式電子体温計により外耳道で体温を測定すること 2 自動血圧測定器により血圧を測定すること 3 新生児以外の者であって入院治療の必要がないものに対して、動脈血酸素飽和度を測定するため、パルスオキシメータを 装着すること 4 軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について、専門的な判断や技術を必要としない処置をすること(汚物で汚れたガーゼの交 換を含む 5 患者の状態が以下の3条件を満たしていることを医師、歯科医師又は看護職員が確認し、これらの免許を有しない者による医薬品の使用の介助ができることを 本人又は家族に伝えている場合に、事前の本人又は家族の具体的な依頼に基づき、医師の処方を受け、あらかじめ薬袋等により患者ごとに区分し授与された医薬品について、医師又は歯科医師の処方及び薬剤師の服薬指導の上、看護職員の保健指導・助言を遵守した医薬品の使用を介助すること。具体的には、皮膚への軟膏の塗布 (祷瘡の処置を除く。)、皮膚への湿布の貼付、点眼薬の点眼、一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)、肛門からの坐薬挿入又は鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助すること。 ①患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること ②副作用の危険性や投 薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合で はないこと ③内用薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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医行為ではない行為(資料) 注1 以下に掲げる行為も、原則として、医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の規制の対象とする必要がないものであると考えられる。 ①爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、かつ、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でな い場合に、その爪を爪切りで切ること及び爪ヤスリでやすりがけすること ②重度の歯周病等がない場合の日常的な口腔内の刷掃・清拭において、歯ブラシや綿棒又は巻き綿糸などを用いて、歯、口 腔粘膜、舌に付着している汚れを取り除き、清潔にすること ③耳垢を除去すること(耳垢塞栓の除去を除く) ④ストマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てること。(肌に接着したパウチの取り換えを除く。) → 肌への接着面に皮膚保護機能を有するストマ装具は、本通知 の注2から注5までをふまえ、医師又は看護職員と密接な連携 をはかった上、原則として医行為には該当しないと考えられて いる(平成23年7月5日 厚生労働省医政局医事課長通知 医政発0705第2号) ⑤自己導尿を補助するため、カテーテルの準備、体位の保持などを行うこと ⑥市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器(※)を用いて浣腸すること ※挿入部の長さが5から6センチメートル程度以内、グリセリン濃度50%、成人用の場合で40グラム程度以下、6歳から12再未満の小児用の場合で20グラム程度以下、1歳から6歳未満の幼児用の場合で10グラム程度以下の容量のもの Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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医行為ではない行為(資料) <留意点> 注2 病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、医行為であるとされる場合もあり得る。このため、介護サービス事業者等はサービス担当者会議の開催時等に、必要に応じて、医師、歯科医師又は看護職員に対して、そうした専門的な管理が必要な状態であるかどうか確認することが考えられる。さらに、病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、医師、歯科医師又は看護職員に連絡を行う等の必要な措置を速やかに講じる必要がある。 また、上記1から3までに掲げる行為(前スライドの1.2.3.に該当)によって測定された数値を基に投薬の要否など医学的な判断を行うことは医行為であり、事前に示された数値の範囲外の異常値が測定された場合には医師、歯科医師又は看護職員に報告するべきものである。 注3 介護サービスの事業者等は、事業遂行上、安全にこれらの行為が行われるよう監督することが求められる。 注5 上記1から5まで及び注1に掲げる行為(前スライドに掲げられている1~11の行為全て)について、看護職員による実施計画が立てられている場合は、具体的な手技や方法をその計画に基づいて行うとともに、その結果について報告、相談することにより密接な連携を図るべきである。 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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訪問介護員が行う服薬介助 利用者の服薬等の介助を行うことは、安心した在宅生活を支援するうえで重要な役割を担うといえる。サービス提供責任者は、服薬の状況等について把握し、服薬がなされていないとき等には介護支援専門員をはじめとして、医療職等の他の職種と共有することが求められる。 厚生労働省の通知(医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について)のなかで、医療関係以外の高齢者介護および障害者介護の現場における医薬品の使用について、以下のように示されている。 患者の状態が以下の3条件を満たしていることを医師、歯科医師又は看護職員が確認し、これらの免許を有していない者による医薬品の使用の介助ができることを本人又は家族に伝えている場合に、事前の本人又は家族の具体的な依頼に基づき、医師の処方を受け、あらかじめ薬袋等により患者ごとに区分し授与された医薬品について、医師又は歯科医師の処方及び薬剤師の服薬指導の上、看護職員の保健指導・助言を遵守した医薬品の使用を介助すること。具体的には、皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く。)、皮膚への湿布の貼付、点眼薬の点眼、一包化された内服薬の内服(舌下錠の使用も含む)、肛門からの坐薬挿入又は鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助すること。 ①患者が入院・入所して治療する必要がなく容体が安定していること ②副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容体の経過観察 が必要である場合ではないこと ③内服薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、当該医薬品 の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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訪問看護、訪問リハ等との連携の重要性 連携の必要性とその背景
利用者ニーズの多様化や在宅での生活を支える「地域包括ケア」の推進など、医療と介護の連携の重要性が高まってきている。 ●利用者ニーズ 慢性疾患による受療が多い75歳以上高齢者の増加や医療的ケアが必要な利用者も増加しているため、医療と介護の連携や強化が求められている。 介護職員等による喀痰吸引等実施においては、医療や看護との連携によって安全の確保が図られていることが条件になっている。 ●在宅医療移行の推進 入院医療から在宅医療への移行を推進する医療保険体制の改革により、地域では医療と介護の両方を必要とする状態の在宅療養が増えている。そのため、早期退院等で在宅療養を余儀なくされる高齢者等が増加しており、今まで以上に在宅医療を担うかかりつけ医や訪問看護、訪問リハ等と介護の連携を密にし、そうした利用者に対応できる体制の整備が重要となる。 ●地域包括ケアの推進 住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを続けることができるよう、在宅医療と介護を一体的な提供が求められている。 ●在宅の看取り 「最期の時間を在宅ですごす」ことが終末期の人の選択肢の一つとなるためには、医療と介護の連携体制が必要である。また、在宅での看取りを支えるためには医療と介護の連携が重要となる。 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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訪問看護、訪問リハ等との連携の重要性(資料)
医療と介護の連携においては、介護保険法と社会福祉士及び介護福祉士法のなかで以下のように示されている。 介護保険法 (介護保険) 第二条 介護保険は、被保険者の要介護状態又は要支援状態(以下「要介護状態等」という。)に関し、必要な保険給付を行うものとする。 2 前項の保険給付は、要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資するよう行われるとともに、医療との連携に十分配慮して行われなければならない。 社会福祉士及び介護福祉士法 (連携) 第四十七条 社会福祉士は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に、福祉サービス及びこれに関連する保健医療サービスその他のサービス(次項において「福祉サービス等」という。)が総合的かつ適切に提供されるよう、地域に即した創意と工夫を行いつつ、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。 2 介護福祉士は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に、認知症(介護保険法 (平成九年法律第百二十三号)第五条の二に規定する認知症をいう。)であること等の心身の状況その他の状況に応じて、福祉サービス等が総合的かつ適切に提供されるよう、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。 「福祉サービス等」とは、「福祉サービス及びこれに関連する保健医療サービスその他のサービス」をいう Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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訪問看護、訪問リハ等との連携における視点(1)
訪問看護や訪問リハとの連携においても、利用者の自立支援や重度化防止等に資するチームアプローチだということを忘れてはならない。 サービス提供責任者は利用者の生活支援の専門職として、看護やリハ等の専門職と連携することが重要である。 ●日常的な生活支援にリハビリテーションの視点をもつ 日常生活での動作や活動、地域社会へ参加自体がリハビリとなるため、生活を支援にこれらの視点が利用者のADLの維持・向上に重要である。 そのために訪問リハビリの専門職との連携をはかる。 ●訪問リハとの連携 訪問リハビリを利用している利用者の中には、機能訓練は行うものの、日常生活ではベッドに寝たままなど、訓練と生活が分離している状態の場合もある。リハビリによって機能回復、残存機能の活用が果たされても、現実の生活場面につながらないかぎり、リハビリの目的を果たしているとはいえない。訓練の中での「できるADL」を生活場面の中での「しているADL」に取り入れられるように連携を図り、この距離を埋めることをめざす、訪問介護の役割は大きいのである。 ●訪問看護との連携 訪問看護は医療面や健康に関しての支援が中心であり、訪問介護は生活支援が中心であるため、医療行為が必要な利用者や終末期にある利用者の在宅生活においては、日常生活全体を支援する訪問介護は医療面や健康に関する支援をおこなう訪問看護との密な連携が欠かせない。利用者の安全で安心な在宅生活を支えられるよう、看護と介護の連携を強化していかなければならない。 ・日常的な生活支援にリハビリテーションの視点をもつ 日常生活での動作や活動、地域社会へ参加自体がリハビリとなるため、生活を支援にこれらの視点が利用者のADLの維持・向上に重要である。 そのために訪問リハビリの専門職との連携をはかる。 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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訪問看護、訪問リハ等との連携における視点(2)
●緊急時等におけるスムーズな情報共有に向けて これまでに述べた「他職種の理解」や「よりよい人間関係の構築」、「情報の共有」などを通じて顔の見える関係、風通しの良い関係を構築したうえで、緊急時等において訪問介護員やサービス提供責任者から医療機関へと直接連絡を取ることができるように承諾を得ることが、緊急時の対応に有効である。 通常であれば訪問介護員からサービス提供責任者へ、そこから担当介護支援専門員へと連絡し、医療職へと繋がっていくプロセスが考えられるが、このようなプロセスでは対応が遅れてしまうような場合を想定した連携のあり方の視点を持つことも大切となる。 ●看取りにおける連携の視点 訪問介護において、予防に対する取組のなかではリハビリテーションと、看取りに対する取組のなかでは医療との連携を図ることが想定される。 看取りにおいては、介護職から医療職への一方的な打診や、指示を仰ぐのみならず、協働してケアを実施するという視点を持つことが重要である。 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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訪問看護、訪問リハ等との連携における訪問介護の役割
●利用者の生活視点の情報発信 ケアチームのなかで利用者の生活を支える介護の専門職として、利用者の状態や状態変化、利用者がどのようなことに困難が生じているのか、それはなぜか、どのようになればよいのかなど、利用者の生活の視点にたった情報発信が役割の1つである。 ●利用者の安全、安心の確保 利用者の生活を支えるためには、利用者の健康や命を守ることが前提となる。利用者は一人ひとり抱える病気や健康状態が異なるため、日頃の状態を把握し、その情報をケアチームのなかで共有することは重要となる。 利用者と接する時間が長く、日常生活の状態を把握できる訪問介護が利用者の状態の変化等を見逃さずに医療につなげることは、重度化・重症化を防ぐことになり、ひいては利用者のQOLを高めることになる。 訪問看護と訪問介護等の連携によって、利用者の状態が維持され、在宅での期間が延びることにつながるため、地域包括ケアの推進のためにも、訪問介護は重要な役割を担っているのである。 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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訪問看護、訪問リハ等との連携を促進するために(1)
●他職種の理解 関連する職種の専門性が発揮される連携のためには、少なくとも相手の仕事を理解したり、連携に必要な最低限の知識をえることが必要となる。 例えば、訪問看護と連携するためには、利用者の健康面を把握し、医療的知識を学習することで、訪問看護の考えやどのように連携できるかの理解が深まる。また、訪問介護がどのような情報を提供すれば訪問看護としての判断がしやすいのか、訪問介護がどのように動けば訪問看護が動きやすくなるのかを察知しやすくなる。 ●よりよい人間関係の構築 連携に必要な相互理解のためには、訪問介護という利用者の日常生活を支援する専門職として、相手にわかるように言語化する、コミュニケーション能力を高めることが必要となる。 サービス提供責任者は、日頃から訪問看護職等の関連職種と連携する機会へ積極的に参加し、よりよい人間関係を構築することが求められている。 サービス担当者会議や退院前カンファレンスなどのほかに、医療介護連携の研修会や地域の医療介護連携における協議会、また、地域ケア会議など、医療職をはじめとする専門職やボランティア等を含めてさまざまな立場の人が集まり意見交換、交流する機会があれば参加することが重要である。そうすることによって、他職種等の理解を深めることもでき、また、顔なじみの関係をつくることで、相談や連携もしやすくなる。 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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訪問看護、訪問リハ等との連携を促進するために(2)
●情報の共有 訪問看護が必要な利用者の場合、介護支援専門員や医療職との連携体制が特に重要となる。サービス提供責任者は、平常な状態や日常生活における留意点などについて、介護支援専門員や医療職、家族等から十分な説明を受け、訪問介護事業所内で共有することが重要である。また、事前に介護支援専門員や医療職等と緊急時の対応や連絡方法等を決定し、担当訪問介護員と共有することが重要である。 (共有すべき情報の例) ・利用者とその家族の今後の療養についての希望 ・介護提供時等に得られた利用者の状況や体調の変化、服薬状況 ・利用者の食事摂取状況、排せつ状況等のADL ・利用者の住居の状況 ・利用者の疾病、使用薬剤に関する情報 ・利用者とその家族への病状の説明内容と受け止め方 ・予測される体調の変化及び対応方法、急変時に対応する医療機関、急変時の医療処置等に関する希望(希望が明確になっている場合) ・在宅療養における注意点 ・在宅生活支援や介護の際の留意点 等 Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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意見交換 訪問介護における医療の知識の講義をふまえて、「医行為ではない行為の実施」等の現状について意見交換を行う。
Ⅳ 訪問介護における医療の知識
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