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H: 化学平衡 2006年11月27日 単位名 学部 :天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一
教官名 中田 好一 授業の最後に出す問題に対し、レポートを提出。 成績は「レポート+出欠」でつけます。 授業の内容は下のHPに掲載されます。 休講:12月4日、1月15日、1月29日 D: 化学平衡
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H.1.化学平衡 a1A1+a2A2+ a3A3+ ….= ΣajAj=0 例 H2-2H=0 水素の解離 HーH+-e=0 水素の電離
例 H2-2H=0 水素の解離 HーH+-e=0 水素の電離 CO-C-O=0 一酸化炭素の形成 最初の例では、a1=1, A1=H2, a2=-2, A2=H である。 nj=n(Aj)=Ajの数密度 を求める問題を考えよう。 孤立系(エネルギーU、体積V、粒子数Nが一定)では、エントロピー極大が平衡に対応するが、温度T,圧力Pが一定の環境では、ギブスの自由エネルギー G=U-TS+PV =ΣμjNj が 極値をとる。(μjは j-種粒子の化学ポテンシャル) 上の反応では、1回の反応でΔNj=ajの変化が起きるから、dR回では、 dNj=ajdR。そこで、T,P一定下での化学反応(Niが変化)を考えると、 dG=-SdT+VdP+ΣμjdNj= ΣμjdNj= (Σμjaj)dR=0 したがって化学平衡の条件は、 Σajμj=0 D: 化学平衡
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nj=Nj/V= Ajの数密度(個/cm3)、 nQ、j=(2πmjkT/h2)3/2=Ajの量子密度(個/cm3)、
一般に、気体の化学ポテンシャルμjは、 nj=Nj/V= Ajの数密度(個/cm3)、 nQ、j=(2πmjkT/h2)3/2=Ajの量子密度(個/cm3)、 Zin,j=Σexp (-Ein,j/kT)=Ajの内部状態分配関数 である。 前節の平衡条件、 に上のμjの式を代入すると、 (質量作用の法則) 粒子の内部自由エネルギー Fin は、内部分配関数 Zin と Fin=-kT ln Zin =-kT ln[Σexp (-Ein/kT)] で結ばれているから、 Πnjaj=Π[nQjνj exp(-aj Finj/kT)] と書く場合もある。 D: 化学平衡
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例1: 励起準位 Ai-Aj=0 下図のような、j 準位と i 準位の間の遷移を反応の一つと見なす。
例1: 励起準位 Ai-Aj=0 下図のような、j 準位と i 準位の間の遷移を反応の一つと見なす。 a i =1, Zi=gi exp(-Ei/kT), aj =-1, Zj=gj exp(-Ej/kT) この場合、 Zi ,、 Zj の表式に∑記号がないことに注意。 さらに、 nQ=(2πmkT/h2)3/2=共通なので、質量作用の法則を書き下すと、 Πnjaj= ni1nj-1 Π[nQjaj Zinjaj ]= [nQi1 Zini1 ] [nQj-1 Zinj-1 ] = Zini1 Zinj-1 統計重み 数密度 gi ni E i gj nj 特にj=0(基底状態)の時、 E j go n0 =励起原子の数密度 D: 化学平衡
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例2: 水素の(第1励起/基底)比 n1 n0 g1=8 g0=2 log(n1/no)
例2: 水素の(第1励起/基底)比 n1 g1=8 E1=10.15eV n0 g0=2 -2 -4 -6 0 1 2 3 4 (51156/T) 5 log(n1/no) T=30000 B0型 T=10000 A0型 T=42000 O5型 T<10000K(A0より晩期型星)では、log(n1/no)<-5で大変小さいことが分かる。 T=85000Kで n1=no となり、 T∞では n1/no=4 に接近する。 D: 化学平衡
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例3:ボルツマンの式 (Boltzmann’s formula)
ある原子の総数密度を n とし、うち基底状態にno、第1励起状態にn1、第2励起状態にn2,...あるとする。 n=no+n1 +n2 +...である。 前節の例1で示したように なので とすると、 したがって、 g2 E2 g1 E1 go E=0 D: 化学平衡
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例4: 水素原子の電離 H++e-H=0 (I=inization energy)
内部エネルギーの相対的な値の決め方には注意がいる。 自由電子と陽子の内部エネルギーをそれぞれ0とする。 すると、中性水素 原子の内部エネルギーは ‐Ⅰ となる(基底状態のみ考えている)。Ⅰは電離 エネルギーで水素では13.6eVである。 電子のスピン上向き、下向きの2状態を考えるので、(原子核の方は無視) 電子とH原子のZinには2が入ってくる。 H + e ー H = 0 E : I g : 1 2 2 Zin : 1 2 2 exp(I/kT) nQ : (2πmHkT/h2)3/2 (2πmekT/h2)3/2 (2πmHkT/h2)3/2 D: 化学平衡
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(質量作用の法則)を前頁の電離に適用する。
(質量作用の法則)を前頁の電離に適用する。 H(中性水素原子)を I 、 H+(水素イオン)を II と表すと、 1・HII+1・Ee-1・HI=0 aII=1, a(e)=1, aI=‐1 だから、質量作用の法則は、 : サハの電離式 (Saha equation) D: 化学平衡
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nQ : (2πmHkT/h2)3/2 (2π2mHkT/h2)3/2
例5: 水素分子の解離 2H-H2=0 電離の時とは違って、今度は水素原子の内部エネルギーを0とする。すると、水素分子基底状態の内部エネルギーは-Dである。Dは解離エネルギー (Disociation Energy)で、水素ではD=4.47eVである。 2 H ー H2 = 0 E : D(-4.476eV) g : 2 4(S=0 ortho,1 para) Zin : 2 exp(D/kT) nQ : (2πmHkT/h2)3/2 (2π2mHkT/h2)3/2 a(H)=2、 a(H2)=-1 であるから、質量作用の法則は、 D: 化学平衡
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H.2.サハの式 (Saha equation)
H.2.サハの式 (Saha equation) 原子の電離度はサハの式によって決まる。 ni,0= i 回電離イオン基底状態の数密度 ni+1,0= (i+1) 回電離イオン基底状態の数密度 ne= 電子の数密度 Ii,0 = i 回電離イオン基底状態からの電離エネルギー とすると、 ni= i 回電離イオンの数密度(基底状態+励起状態) ni+1= (i+1) 回電離イオンの数密度(基底状態+励起状態) に対しては、上式を少し変えた以下の式が成立する。 Zi=Σgi・exp(-E/kT)(=i回電離イオンの分配関数) は前出のZinと同じ D: 化学平衡
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n(e)が全てHから供給されている必要はない。 実際、低温環境では電子はアルカリ金属(Na,K)の電離が主な 供給源である。
水素原子の電離に関しては、 n(e)が全てHから供給されている必要はない。 実際、低温環境では電子はアルカリ金属(Na,K)の電離が主な 供給源である。 しかし、高温になると水素の電離で作られる電子が圧倒的となる。 すべての電子が水素から供給されている場合、n( H+)=n(e)なので、 exp(‐I/2kT)の因子がボルツマン型のexp(‐I/kT)と異なることに注意。 D: 化学平衡
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例1: 水素のみから成る星の大気 早期型星大気でのガス圧として、 log Pg(erg/cm3)=3.5 と仮定する。 サハの式をガス圧
P=nkT で表して、 (励起状態を無視) Pe=PII、Pg=PI+PII+Pe を代入すると、 log10(PII2 / PI) = -13.6(5040/T) logT-0.48 D: 化学平衡
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B B A F G K0 T PII2 / (Pg – 2×PII) 3.0E8 1.07E-4 PII (erg/cm3) PI NII/NI × ×10-4 NII/(NI+NII) 3 ×10-4 log T 4.0 4.5 3.5 -1 -2 -3 -4 B0 A0 K0 D: 化学平衡
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例2 バルマー線 (Balmer lines) 強度と星のスペクトル型
バルマー線は水素原子主量子数 n=2 i (=3, 4, ...)への吸収線である。 Hα線 Hβ線 n0 n1 n2 n3 n=1 n=2 n=3 したがって、星のバルマー線強度はn1が大きくなるほど強くなる。混乱しやすい慣用法なので注意しておくが、n1の1は第1励起状態の1で、主量子数はn=2である。 H.1.例2の計算から n1/n0 を見てみると、 下のように温度が高くなると急に大きくなる。 スペクトル型 B0 A0 F0 G0 K0 表面温度(K) 30, , , , ,350 n1/ n0 E E E E-9 n1/n0はB0型ではA0型の5000倍になる。 では、バルマー線は高温度星ほど強いであろうか? D: 化学平衡
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主系列星大気の総ガス圧を、log10Pg(erg/cm3)=3.5 と仮定し、
NH= NI + NII NII NI1 NI NI0 電離平衡 ボルツマン分布 (励起) 主系列星大気の総ガス圧を、log10Pg(erg/cm3)=3.5 と仮定し、 星の有効温度を log10T(K) =3.5、3.6、...、4.5とする。 この時に、log10(NI1/NI )、 log10(NI/NH)、 log10( NI1/NH) がどう変わるだろうか。 PI=水素原子の分圧、PII=水素イオン(陽子)の分圧とおくと、 Pe=PIIであり、サハの式は以下のようになる。 D: 化学平衡
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まず、 Pg=103.5 に対し、 上の式を解いてPIIを求め、 次に、 PI =PII 2・10-A から PI を決める。 次に、
NI1/NI =g1exp(-E1/kT) / [g0+ g1exp(-E1/kT) +…] ≒ 4・exp(-E1/kT) / [1+ 4・exp(-E1/kT)] NI/NH= PI/PH =PI/(Pg- PII ) NI1/NH =( NI1/NI )・( NI/NH ) を計算して次ページの表を得る。 D: 化学平衡
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logT 3.5 3.6 3.7 3.8 3.9 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 A PII 1.11E E PI E-3 Log(NI1/NI ) – –9.779 – Log(NI/NH) Log(NI1/NH) D: 化学平衡
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水素(原子+イオン)中の第1励起原子の割合
0 Log(NI/NH) Log(NI1/NI ) -5 Log(NI1/NH) -10 スペクトル型 M K G F A B -15 3.5 3.6 3.7 3.8 3.9 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 logT D: 化学平衡
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Hβ Hα Hβ Hα D: 化学平衡
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H.3.電子の供給源 恒星大気の温度が高い時には、大量に存在する水素の電離が自由電子の供給源となる。しかし、低温になると水素の電離度が下がり、電子を供給できなくなる。そうすると、存在比は水素より小さいが電離エネルギーが小さくて電離しやすいアルカリ金属が電子供給の役割を担うようになる。 種族IIの星のように低金属量の星では低温でも依然として水素の役割が大きい。 高温大気 水素 アルカリ金属 水素原子 水素イオン 電子 アルカリ金属イオン 低温大気 D: 化学平衡
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アルカリ金属、Li, Na, K, Sc,..、電離エネルギーが低い。
存在比は小さいが、電離しやすいので、Te < 5000 K (K型より晩期 ) ではKとNa が電子の主な供給源である。 He Ne Ar H B Li Al Na K D: 化学平衡
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そこで、簡単なモデルで大気中の電子がどのくらい存在するかを調べてみよう。下図の実線は主系列星大気の典型的な(τ≒0.6)ガス圧である。
電子供給源として、水素HとナトリウムNaのみを考え、それぞれが独立に電子を出した時どこで役割が入れ替わるかを計算してみる。元素組成は、NH:NHe:NNa=1:0.1:2×10-6 とする。 5 主系列星大気のガス圧 Pg の表面温度 Te による変化 log10Pg (erg/cm3) 4 3 3.6 3.8 4.0 4.2 4.4 log10Te(K) D: 化学平衡
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PH=PHII+PHI とおくと、 PHe=0.1PH Pe=PHII なので、 Pg=Pe+1.1PH
水素が電子供給源の場合 PH=PHII+PHI とおくと、 PHe=0.1PH Pe=PHII なので、 Pg=Pe+1.1PH したがって、 PHI=PH-Pe=(Pg-Pe)/1.1-Pe=(Pg-2.1Pe)/1.1 圧力で書いたサハの式は、Pg=Pe+PHII+PHI+PHe を用いると、 前ページのグラフとPg=Pe+PHII+PHI+PHe から上の式を解くと、 温度 Pg(erg/cm3) A Pe (erg/cm3) NHI 4000 ×10- 5000 ×10-5 6000 3.478×10-3 7500 10000 25000 × D: 化学平衡
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PNa=Pg×2×10-6/1.1 PNaII=Pe PNaI=PNa-Pe に注意して、サハの電離平衡の式をNaに対して書くと、
電子がNaから供給されるとき Naの電離エネルギーは5.14 eV と低い。Na存在比が低いので、PgへのPeの影響は考えなくてよい。したがって、PNa=PNaI+PNaIIとし、 PNa=Pg×2×10-6/1.1 PNaII=Pe PNaI=PNa-Pe に注意して、サハの電離平衡の式をNaに対して書くと、 T Pg(erg/cm3) B PNa (erg/cm3) Pe (erg/cm3) 4000 5000 6000 7500 10000 ×106 25000 ×109 どの場合もNaが完全電離としての解、Pe=PNa=Pg×2×10-6/1.1 D: 化学平衡
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T>4500KではH が電子の供給源となっていることが分かった。
結局、T<4500KではNa T>4500KではH が電子の供給源となっていることが分かった。 2 1 log10Pe (erg/cm3) 0 -1 H起源の電子圧 -2 Na起源の電子圧 -3 3.6 3.8 4.0 4.2 4.4 log10Te(K) D: 化学平衡
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n(A+)n(e)/n(A)=[nQ(A+)nQ(e)/nQ(A)][Z(A+)Z(e)/Z(A)]
H.4.一般の原子の電離 A++e-A=0 (I=inization energy) 質量作用の法則まで戻ると、 a1=1 a2=1 a3=-1 n(A+)n(e)/n(A)=[nQ(A+)nQ(e)/nQ(A)][Z(A+)Z(e)/Z(A)] イオンと原子の質量はほぼ等しいので、nQ(A+)=nQ(A) 電子のスピン上向き、下向きの2状態を考えるので、Z(e)=2。 自由電子とイオンの内部エネルギーをそれぞれ0とする。 すると、中性原子 の内部エネルギーは ‐Ⅰ となる(基底状態のみ考えている)。Ⅰは電離 エネルギー。 Z(A+)=u(A+)、Z(A)=u(A)exp(I/kT) u(A+)=g0+g1 exp(-E1/kT)+g2 exp(-E2/kT)+…. D: 化学平衡
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n( A+)n(e)/n(A) =[u(A+)2/u(A)](2πmekT/h2)3/2 exp(‐I/kT)
結局、 n( A+)n(e)/n(A) =[u(A+)2/u(A)](2πmekT/h2)3/2 exp(‐I/kT) 天文ではPe(電子圧)を与えて計算する例が多い。 Pe=n(e)kTを使い、数値を入れて log[n( A+)/n(A) ] =log[ u(A+)/u(A) ]+log 2 +(5/2) log T -log Pe-Ⅰ(eV)(5040/T)-0.48 (Peの単位は erg/cm3) D: 化学平衡
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Negative Hydrogen H‐(水素負イオン)
H+e - H-=0 Wildt ApJ, 89, 295.”Electron affinity in Astrophysics” 水素負イオンはⅠ=0.754eVという非常に浅い準位を持つ。したがって、 高温の星の大気には存在しない。G型より晩期の星では非常に重要な 光の吸収源である。 水素負イオンの束縛状態は、二つの電子がスピン上向き、下向きの両方を 占めるので、総スピン=0であり、統計重みg=1である。 自由電子と中性水素の内部エネルギーをそれぞれ0とする。 すると、Negative Hydrogen H- (陰性水素とは言わない)イオンの内部エネルギーは ‐Ⅰ となる (基底状態のみ考えている)。 D: 化学平衡
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H.5.解離平衡 分子雲や晩期型星大気では分子の形成を考慮する必要がある。
A + B ⇔ C という分子形成を考えよう。 注意すべきは、この反応式は実際には起きていなくても構わないことである。 水素分子形成を例にとると、H+H=H2 という反応は直接には起こらず、水素分子は実際には星間ダストの上で形成されると考えられている。それでも、平衡を考える際には A, B, C の持つエネルギーの高さだけが問題となる。 化学平衡での A, B, C の数密度 nA, nB, nC は質量作用の法則で決まる。 数密度 n から圧力 P =nkTの表示に変えると、 D: 化学平衡
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宇宙標準組成比では原子数の比は、H:C:O=1:0.36 ×10-3 :0.85×10-3
したがって通常のM型星の大気中には、OがCの約2倍存在する。M型星大気の 温度は4000K以下であり、このように低い温度ではCOが安定な分子種である。 COの乖離エネルギーはDCO=11.1eVと大きいことが原因である。 このため、CはCOとして消費されつくす。後に残るOがOHやH2OのOが入った分 子を作る。 炭素星ではC:O比が逆転している。炭素星ではCOとして消費されつくすのはOで 残ったCがC2やCHを作る。 このように、M型星とC型星では大気中に形成される分子の種類が異なり、それは スペクトルの形に大きく影響している。 D: 化学平衡
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例:G-K-M型星の大気組成 H,C,Oが全て原子であったと仮定した時の仮想圧力をPHO、PCO、POO、
とする。PCO、POO << PHOである。 与えられた、PHO、PCO、POO と T に対し、 PH、PC、PO、PH2、……PH2O を 決める問題を考えてみよう。 PH0=1000,PC0=0.5, PO0=1 erg/cm3 PH2=PH2/KH2 PO2=PO2/KO2 PC2=PC2/KC2 POH=POPH/KOH PCH=PCPH/KCH PCO=PCPO/KCO PH2O=POHPH/KH2O POH=PH +2PH2 +POH+PCH+ 2PH2O POC=PC+2PC2 +PCH+PCO POO=PO+2PO2 +POH+PCO+PH2O 求める未知数はPH、PO、PC、PH2 、PO2 、PC2 、POH、PCO、PCH、PH2Oの10個 である。高温では原子優勢、低温ではH2とCO、H2Oが大量にできる。 D: 化学平衡
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log10Kp(T) を下の表に示す。Kp(T)の単位はdyn/cm2である。 COに対するKp(T)が小さいことに注意せよ。
T C 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 4,000 5,000 6,000 H2 -11.09 -3.56 0.42 2.82 4.40 6.36 7.70 8.48 O2 -13.32 -4.79 -0.13 2.35 4.11 6.27 7.71 8.59 C2 -18.54 -8.48 -2.87 -0.04 2.04 4.61 6.31 7.29 OH -11.05 -3.65 0.21 2.61 3.95 5.94 6.44 8.16 CH -6.53 -0.67 2.26 4.31 5.55 7.06 8.14 8.76 CO -42.98 -24.74 -14.33 -9.43 -5.67 -0.89 2.12 3.92 H2O -13.61 -5.05 -0.53 2.17 6.13 7.62 8.46 D: 化学平衡
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F1=PH2ーPH2/KH2、F2=PO2ーPO2/KO2、…、 F10=POOー(PO+2PO2 +POH+PCO+PH2O)とするとき、
ある温度Tで与えられたKH2、KO2、…、POOに対して、 F1=0, F2=0, … F9=0, F10=0となるPH、PO、PC、...PCH、PCO、PH2O を求める問題である。 10変数の連立式なので、一般には、 (1)適当な初期値からスタートして、 (2)ヤコビ行列の逆行列を作り、 (3)F1=0, F2=0, … F9=0, F10=0が満たされるまで、PH、PO、...PH2Oを 変えていくのだが、逆行列がうまく求まらない場合があるので注意が必要。 例えば、PH、PO、PC のみを独立変数と考え、残りの分圧は平衡式から厳密 に求め、F8=0, F9=0, F10=0 を満たすPH、PO、PC を探す方法などもある。 D: 化学平衡
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H.6.散光星雲の輻射過程 1 電離水素 hν>hνO=13.6eVの フォトンを電離フォトンと呼ぶ。 hν 基底状態の水素 高温度星
H.6.散光星雲の輻射過程 1 電離水素 高温度星 hν>hνO=13.6eVの フォトンを電離フォトンと呼ぶ。 hν 基底状態の水素 D: 化学平衡
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散光星雲の輻射過程 2 光電離 e p hν H 再結合 hν D: 化学平衡
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散光星雲の輻射過程 3 光電離 再結合 特にσ1(n=1から自由状態への光吸収)が重要。
散光星雲の輻射過程 3 光電離 特にσ1(n=1から自由状態への光吸収)が重要。 NH : n=1状態のH数密度 Ne : 電子数密度 Np : プロトン数密度 Iν(r)=IνS(r)+IνD(r) IνS(r):星からの輻射 IνD(r):星雲内の発光輻射 Jν(r)=JνS(r)+JνD(r) JνS(r):星からの平均輻射強度 JνD(r):星雲内の発光平均輻射強度 A : 光電離レート(回/cm3/sec) Photoionization A=NH∫νO∞ (4πJν/hν) σ1νdν σ1ν =6×10-18(νo / ν)3 cm2 再結合 R : 再結合レート(回/cm3/sec) Recombination R=NpNeα(T) α=再結合係数(recombination coefficient) D: 化学平衡
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散光星雲の輻射過程 4 再結合 α= α1 + αB free free Hν<hνo hν>hνo=13.6eV
散光星雲の輻射過程 4 再結合 α= α1 + αB free free n= 3 2 Hν<hνo hν>hνo=13.6eV 1 T(K) α(cm3sec-1) α1 αB 5,000 6.82 ×10-13 2.28 ×10-13 4.54 ×10-13 10,000 4.18 ×10-13 1.58 ×10-13 2.60 ×10-13 20,000 2.51 ×10-13 1.08 ×10-13 1.43 ×10-13 D: 化学平衡
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散光星雲の輻射過程 5 hν=13.6eVのフォトンが星間雲中をどのくらい動けるか考えよう。
散光星雲の輻射過程 5 hν=13.6eVのフォトンが星間雲中をどのくらい動けるか考えよう。 平均自由行程=L、水素原子密度=Nとすると、Lyman連続吸収端で σ=6×10-18cm2だから、τ=NσL=1より、 L=1/Nσ=1.6×1019cm-2 /N=5.4×10-3(103cm-3/N)pc 高温天体(O型星や惑星状星雲)の周りの星雲(半径R)の密度が高いと、 L<<Rとなる。このような星雲での電離、再結合を考える。 平均輻射強度 Jν =(Fν /4π)+Sν Fν /4π=中心星からの電離フォトン Sν = 星雲内再結合で生み出された電離フォトン (1) 光電離率=再結合率 (A=R) NH∫νO∞ (4πJν/hν) σ1νdν=NpNeα(T) (2) 星の電離フォトンの吸収率=再結合線の脱出率 D: 化学平衡
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散光星雲の輻射過程 6 (2)続き 光電離 自由電子 αB 星の電離フォトン 再結合 非電離フォトン 星雲から脱出 α1
散光星雲の輻射過程 6 (2)続き 光電離 自由電子 αB 星の電離フォトン 再結合 非電離フォトン 星雲から脱出 α1 α= α1 + αB 電離フォトンその場で吸収 n=1 ガス密度の高い星雲では、電離フォトンのL<<Rであり、α1(自由電子→n=1への再結合)で放出された電離フォトンは直ちに吸収されて光電離を起こす。 αB(自由電子→n=2,3, ..への再結合)で放出された非電離フォトンは吸収されず星雲から逃げ出す。 上の図から判るように、星からの電離フォトンの吸収=αB再結合の必要がある。 D: 化学平衡
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散光星雲の輻射過程 7 (2)続き(星の光) 中心星からのフラックス=Lν、電離フォトンフラックス= P(個/sec)とする。
散光星雲の輻射過程 7 (2)続き(星の光) 中心星からのフラックス=Lν、電離フォトンフラックス= P(個/sec)とする。 τν (R) =τo(ν/νo)-3 =中心からの光学深さ τo(R)=∫0RNH(r) σ0dr Fν(R)=Lνe-τν /(4πR2) 前ページの、 星からの電離フォトンの吸収=αB再結合、 を式にすると、 NH∫σν(Lν /hν)e-τν /(4πR2)dν=NpNeαB D: 化学平衡
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例:O型星周囲の電離 O型星(電離フォトン放出率 P=1049/sec)の周囲H密度N=Np+NH =104/cm3、ガス温度 T =10,000Kをとる。 NH=ξN, Np=Ne=(1-ξ)Nとする。 星からR=1pc( 3.08×1016cm)離れた点での電離フォトンの個数フラックスは、 ∫νO∞ (4πJν/hν)dν=1049 /sec/4π(3.08×1018cm)2=8.4 ×1010/cm2 /sec 光電離レート A=104ξ 8.4 ×10106×10-18 =5 ×10-3ξ (回/cm3/sec) 再結合レート R=NpNeα= (1-ξ) 2 108 4.18 ×10-13 (回/cm3/sec) A=Rから、 ξ= 8×10-3<<1 その時、hν=13.6eVのフォトンの平均自由行程Lは、 τ=NH σ1νL=1より、L=1/( 104×6×10-18 )= 1.6×1013cm<<R D: 化学平衡
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レポート問題H 出題11月27日 提出12月11日 レポートには、問題番号、学生証番号、学科、学年、氏名を書くこと。 H.1.
レポート問題H 出題11月27日 提出12月11日 レポートには、問題番号、学生証番号、学科、学年、氏名を書くこと。 H.1. 宇宙の物質を水素のみと仮定する。 水素原子の数密度=NI 水素イオン数密度=NII= Ne=電子の数密度 NH= NI + NII 電離度=X= NII / NH 熱平衡を仮定し、サハの式を用いて 縦軸: 0 < log T(K) < 横軸: -10 < log NH (cm-3)< 30 の面内に、X=0.9999, 0.5, 0.0001 のラインを引け。 H.2. 現在の宇宙輻射の温度To=2.7K、水素原子数密度 No=5×10-7cm-3とする。ビッグバン宇宙の進化経路は、スケールパラメター=a として、T=To/a、 NH = No /a3 で表される。 H.1のグラフ上に進化経路を引き、X=0.5 となるときの温度T1をグラフから求めよ。 X<0.5の中性原子領域では電子による光散乱が効かなくなり、ガスは輻射と切り離される(decoupling)。この領域ではガス温度TgはTg∝a-2で変化する。H.1の図にdecoupling後のガス温度の変化を書き込め。 H.3. D: 化学平衡
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