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近年の電離圏研究と太陽分野 への期待 情報通信研究機構 電磁波研究所 宇宙環境研究室 品川 裕之
太陽研連シンポジウム「太陽系科学の中での太陽研究の将来展望」, JAXA 宇宙科学研究所,2017年2月22日 近年の電離圏研究と太陽分野 への期待 情報通信研究機構 電磁波研究所 宇宙環境研究室 品川 裕之
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内容 電離圏概要 電離圏の観測 数値モデル 電離圏現象と研究 太陽研究への期待 まとめ
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電子密度と中性大気の高度分布 拡散 O O+ NO+, O2+… N2, O2 光化学過程
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太陽・太陽風ー磁気圏ー電離圏ー大気圏
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電離圏の特徴 生成・輸送・消滅 磁気圏と結合 中性大気と結合
太陽X線・EUV、磁気圏降下粒子で生成、拡散・対流を経て、再結合 で消滅、一部は流出 磁気圏と結合 極域対流電場、沿磁力線電流、オーロラ粒子、ジュール加熱 中性大気と結合 電離圏ダイナモ、イオンドラッグ、化学反応 [from Akmaev]
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宇宙天気における重要性 © NICT 太陽活動、磁気圏、大気圏の影響により、電離圏嵐、不規 則構造などが生じ、社会的影響を与える場合がある。
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電離圏の観測
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電離圏観測手法 電離圏は直接見ることができないので、電波を 用いた観測が古くから行われてきた。 ・イオノゾンデ ・GPS受信機網 ・レーダー
また、ロケットや衛星による直接観測も行われ てきた。その他、地磁気データ、中間圏〜熱圏 の中性大気の大気光観測も間接的ながら電離圏 に重要な情報を与える。
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イオノゾンデ イオノゾンデは地上から周波数を変えながら上空に電波を発射し、電離圏か らのエコーの時間を計測することにより、電子密度の高度分布を観測する。 国内に4カ所(サロベツ、国分寺、山川、沖縄)
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GPSによる電離圏全電子数(TEC)観測
電離圏を通過する電波は、伝播経路上の電子の総数と電波の周波数に依存し て、速度に違いが生じる。 この性質を利用し、GPS受信機と衛星を結ぶ経路に沿って積分した単位面積 当たりの全電子数(TEC)を測定する。 TECは単位面積を持つ鉛直の仮想的な柱状領域内の電子の総数で、一般的に TEC Unit(TECU) = 1016/m2で表される。
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数値モデル
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電離圏の数値モデル 基本的には、プラズマの連続、運動量、エネルギー の式を数値的に解く。 中性大気モデル(中性密度、風)が必要
太陽X線・EUVスペクトルモデルを入力 極域では磁気圏からの電場/電流、降り込み粒子フ ラックスなどを与える必要がある。 中性風によって電場・電流が駆動されるので、「電 離圏ダイナモモデル」によって電場・電流を求める。
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全大気圏-電離圏結合モデル(GAIA) NICTで開発された全中性大気圏モデルと電離圏モデルを結合したモデル
Solar wind Earth Horizontal Grid: 5˚x5˚; 2.5˚x2.5˚; 1˚x1˚… Magnetosphere Dynamo Model Whole Atmosphere Model Ionosphere Model JMA Reanalysis Data
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電離圏現象と研究
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電離圏嵐 負相嵐(Negative Storm)
実線:1ヶ月平均の日変化 負相嵐(Negative Storm) 正相嵐(Positive Storm) 電離圏嵐とは、電離圏F領域臨界周波 数(foF2)や電子密度、全電子数等 が、定常的な変動(一般的には日変 化)から大きく外れる現象を言う。 電離圏F領域臨界周波数(foF2)等が、 定常状態よりも大きいとpositive storm、小さいとnegative storm と 呼ぶ。 定常的・規則的な日変化は太陽放射 による。 日本のような中緯度に見られる電離 圏嵐の原因は、基本的には磁気嵐 (太陽風と磁気圏の相互作用によ る)と考えられる。
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スポラディックE層(Es層) 高度100km付近に夏季の日中~夕方に発生する電子密度の高い領域
スポラディックE層が発生すると、遠方(例えば中国など近隣諸国)のVHFテレビ放送波が混信するなどしていた
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イオノグラムで見るスポラディックE層(Es層)
高度100km付近に水平に伸びる反射帯 高度方向に整数倍に位置するものは「マルチエコー」や「サテライトトレース」と呼ばれ、地面と電離圏で複数回反射した結果として現れるもので、実体ではない。
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プラズマバブル 低緯度電離圏で日没後に、 下層のプラズマ低密度領 域が急激に上方へ発達す る不安定現象。基本的に はRayleigh-Taylor不安定。 磁力線に沿った構造を持 ち、一般的に東進する。 磁気嵐に依存せず発生す るが、磁気嵐時に強い東 向き電場が発生すると、 大きく発達する場合があ る。 Rayleigh-Taylor 不安定の模式図 [Kelley et al., 1981]
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数値モデルで再現されたプラズマバブル [Yokoyama et al., 2014]
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GPS/TEC観測を用いた研究 2011年3月11日の東北沖津波の直後に現れた電離圏全電子数(TEC)の変動
[Tsugawa et al., 2011]
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数値モデルによる大気圏-電離圏上下結合研究
Longitude‐latitude distribution of 30 day averaged variables in September nmf2 (Local‐time fixed frame is 1500 LT for Figure(a) and 1100 LT for Figures(b) and (c)) Upward E×B velocity at 300 km Observation Neutral temperature at 110 km Diurnal amplitude of the rainfall rate on the ground Reconstruction of nighttime ionospheric emissions from 30 days (March 20–April 20) of observations with the IMAGE-FUV imager [Immel et al., 2006]. [Jin et al., 2011] 電子密度の経度方向波数4構造 電子密度の経度方向波数4構造 地方時(LT)15時での電離圏最大電子密度の全球分布 [Jin et al., 2011] 地方時(LT)15時での電離圏最大電子密度の全球分布 [Jin et al., 2011]
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突発性電離圏擾乱(SID) 太陽フレアに伴うX線や極端紫 外線の放射増大により、電離圏 が異常電離し、電子密度が急激 に高くなる現象。
太陽フレア発生直後(光の速さ で約8分後に地球に到達)から、 数時間続く。 電子密度の増大量は、概ねフレ アの規模(EUV放射量)と太陽 天頂角に依存する。 しばしばD領域異常電離により、 デリンジャー現象も発生する。 電波雑音増大によりL帯のGPS 信号ロック損失が発生する可能 性も指摘されている。 SOHO/SEM [count/s] EUV X-ray flux GOES [W/m2] 35 [TECU] GPS TEC TIMED/GUVI O, N2 [R] 10 15 UT [hour] [Tsurutani et al., 2005]
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太陽研究への期待
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太陽研究への期待 太陽フレア予測 太陽風予測 太陽X線・EUVスペクトルモデルの精密化 静穏時、フレア時
太陽大気ー超高層大気の比較研究、連携 電離圏現象と太陽フレアとの定量的相関研究
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太陽放射スペクトルと電離圏イオン生成率 下部電離圏(D層)ではX線と波長の長いEUVが重要
[Whitten and Popoff, 1971] 下部電離圏(D層)ではX線と波長の長いEUVが重要 [Hinteregger et al., 1965]
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太陽放射スペクトルと電離圏電子密度 3つの太陽スペクトルモデルで得られた2012年2月8日における光子数(photons/cm2 s)
太陽スペクトルモデルで、0.1 to 5 nmの強度を変えた時の電子密度分布 [Sojka et al., 2013] 3つの太陽スペクトルモデルで得られた2012年2月8日における光子数(photons/cm2 s) [Sojka et al., 2013] フレア時のXUV増加率 [Chamberlin et al., 2008]
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太陽大気と地球超高層大気の比較研究 プラズマ、 中性大気密度 衝突、ジャイロ 周波数 太陽大気と地球超高層大気はパラメータが似ている。
[磯部洋明,大気圏シンポジウム集録,2012] 太陽大気と地球超高層大気はパラメータが似ている。 モデル研究などで協力できる可能性がある。
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フレア時の地磁気変動からフレア強度を推定
フレア時にはX線、EUV強度が増加して電離圏電気伝導度が上昇し、電離圏電流が一時的に増大する結果、地磁気が変化する(SFE)。この地磁気変化からフレアの規模を推定する試みが古くからなされている。 1859年のCarringtonフレア時の磁場変動 [Cliver and Dietrich, 2013] 一般に電離圏電流は太陽天頂角だけでなく季節、UT、LT、地理的場所に依存するため、同じフレアでも観測地点で磁場変動は異なる。 高精度の電離圏モデルを用いることによ り相関を上げることが期待できる。 地上磁場変化とフレアX線強度の相関 [Clarke et al., 2010] => CarringtonフレアはX15~X42程度? 1800年代半ばからのフレアリストができるかもしれない
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まとめ 電離圏は磁気圏と中性大気圏の両方と相互作用する ことにより、さまざまな現象が現れる。
近年、電離圏の研究は、観測技術・数値モデリング 技術の向上で急速に発展しつつある。 下層大気からの波動が電離圏に及ぼす影響は、最近 の重要な研究課題である。 電離圏の研究やじょう乱予測においては、上流側 (太陽、太陽風、磁気圏)の情報が重要である。 太陽分野の研究の発展と、電離圏分野との連携に期 待する。
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