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デジタル情報学概論 2009年1月8日 第14回資料 担当 重定 如彦
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期末試験について 期末試験は試験期間中の1月22日の3限目に行います試験範囲は授業で行った範囲(教科書の1~4章と 今日の内容)で、筆記試験の形式で行います なお、残念ながら毎年、大学全体で不正行為を行う 学生が何人か出ますが、不正行為は全ての教科の単位を取り消すなどの重い処分が下されることになりますので決してそのような行為は行わないようにして下さい
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ユビキタスコンピューティング ユビキタス(ubiquitous)とは? (同時に)至る所にある、偏在する(三省堂英和辞典より)
もともとはラテン語で、神はあらゆる場所に偏在するという宗教用語 転じてユビキタスコンピューティングは、コンピュータを意識することなく現実生活のいたるところで利用できるような環境という意味で使われるように なった(三省堂デイリー新語辞典より) 1988年ゼロックス・パロアルト研究所のマークワイザーが提唱 実は日本でそれより前から坂村健が超機能分散システム(どこでもコンピュータ) という形で提唱していた 他にも pervasive(普及する、浸透する) computing と呼ぶ場合もある
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組み込みコンピュータ コンピュータというと、普通の人は最初にパソコンを思い浮かべるかもしれないが、全コンピュータの中でパソコンが占める割合はほんの数パーセント(約2%といわれる)にすぎない ほとんどのコンピュータは以下のような機器内に入っている組み込みコンピュータと呼ばれるものである 家電製品:携帯電話、洗濯機、冷蔵庫、テレビ、エアコン・・・ 大型機器:自動車、電車、飛行機、エレベータ、自動ドア・・・ 一方、我々はこれらの機器にコンピュータが入っていることをほとんど意識せずにそれらの機器を利用している
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インテリジェントオブジェクト 様々な機器の中に(超)小型のコンピュータを入れることによって、それらの機器を賢くすることができるようになる このような機器をインテリジェントオブジェクトと呼ぶ 部屋の中に人がいるときだけ電気がつくトイレ 室内の空気の状態を調べ、それに応じて自動的に温度を調整するエアコン 室内の明るさに応じて画面の明るさを自動的に調整するテレビ 脇道に車が待っている時だけ脇道側の信号が青になる交差点 人が利用しているときだけ動くエスカレーター これらの機器は、周りの情報を様々なセンサーで測定し、測定して得られたデジタル情報をコンピュータで分析することによって様々なサービスを提供する
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ユビキタスネットワーク 単に機器にコンピュータを埋め込んでインテリジェント化するだけであれば、実はかなり以前から実現していた ユビキタスコンピューティングでは、コンピュータが埋め込まれた機器どうしで通信することにより、これまでになかったような複合的なサービスを提供することが可能になる また、従来はコンピュータが埋め込まれるものは家電製品 などの機器に限られていたが、機器どうしの通信を考えた 場合、えんぴつ、消しゴム、アメ玉、床、壁、などといった 身の回りのあらゆるものにコンピュータを埋め込むことに 大きな意味が生じる
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個々のコンピュータ役割 身の回りのありとあらゆるものにコンピュータを付け、それらの間で通信を行うことにより協調動作を行うユビキタスコンピューティングではそれぞれのコンピュータが役割を持つ 機器がどこにあるかを知る 例:家の1階のリビングの机の上 機器が何をできるのかを知る 例:温度センサーであれば、周りの気温を測定する まわりにどんな機器があるかを知る 他の機器に問い合わせを行う。また、他の機器から問い合わせに 応じて自分の知っていることを伝えたり、自分の役割を果たす このようなことができれば、お互いに協調して様々な サービスを提供することが可能になる
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協調動作の例 その1 薬品の飲み合わせの警告 薬品には同時に服用すると、毒になってしまうようなものがあるが、 素人にはそのような組み合わせをすべて知ることは不可能。 そこで、薬の入ったビンに超小型のコンピュータを貼り付けておき、 それらのコンピュータが以下のような協調動作を行うことによって 危険を知らせるインテリジェントな薬瓶を実現できる 薬を服用する際に、薬の入った瓶を近づける 瓶に張り付けられたコンピュータどうしが通信を行い、副作用を起こすような 危険な飲み合わせであるかどうかを判断する 危険であることがわかれば、瓶のコンピュータからたとえば携帯電話に電話がかかってきて、危険であることを知らせる
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協調動作の例 その2 ゴミの自動分別 あらゆるものはいつかゴミになる。そこで、あらゆる製品にコンピュータを付けておき、それがどのような素材でできているか、廃棄する際にはどのような処理をすれば良いかという情報を入れておく これにより、その製品がゴミとなり、ゴミ処理施設に送られた時に、その製品に付けられたコンピュータと、ゴミ処理を行うコンピュータで通信を行うことによって、そのゴミが「焼却して良いのか?」、「焼却すると有毒なガスがでるから焼却してはだめなのか?」、「しかるべき方法でリサイクル可能かどうか?」などの情報を得ることができる ゴミの専門家でなければわからないような分別を容易に行ったり、 分別ミスを減らすことが可能な、インテリジェントなゴミをつくることが可能
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http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/030902a.html より
RFID その1 ユビキタス通信技術の一つに、RFID(Radio Frequency Identification)がある。RFIDはID情報を埋め込んだタグから無線通信によって情報をやりとりするものであり、内部に電源を持つアクティブタグ(能動タグ)と 外部から電源を供給するパッシブタグ(受動タグ)がある Suicaなどの非接触ICカードもRFIDの一種。近年では、RFIDを超小型化する技術がすすみ、1ミリ四方以下のサイズのものも開発されており、値段もどんどん安くなっている(写真のものは一辺0.4mm) より
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RFID その2 ID(識別子)として利用する場合、RFIDはバーコードと非常によく似ているが以下の点で異なる
性質 RFID バーコード 読み取り範囲 広い 狭い 一度に読み取れる量 複数可 一つのみ 書き込み 可能 不可能 場所 見えてなくても良い 見えていないと使えない ほこりなどの影響 なし あり 情報の量 多い 少ない 値段 高い 非常に安い 値段の問題は重要で、1円以下にならなければあらゆるものにつけた 場合に採算がとれないのではないかといわれている
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RFID その3 RFIDは物流などで使われているバーコードにはない様々な利点があるため、様々な用途で使用が期待されている
物流の管理 コンビニなどで、バーコードの代わりに利用。ただしコストなどの問題から 現時点ではまだ普及はしていない 図書の管理 すでに一部で実用化されている。図書館の30万冊にRFIDが取り付けられた例 図書館の蔵書の検索、貸出、返却、プライバシーの保護、蔵書の点検に利点 物流の管理 RFIDタグはバーコードと違って情報を新たに書き込み可能なので、 物品の流通過程の情報を記録することができる。これにより、物品の 履歴情報の記録である、トレーサビリティが実現できる
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ユビキタスID その1 物品などにID(識別子)をつける場合、どのような方法でつけるかを決める必要がある。例えばバーコードの場合はどのようにつけるかの決まりが定められている(JANコードなど様々なものがある) ユビキタスの世界では世の中のありとあらゆるものに、IDをつける 必要があるため、従来のバーコードのやり方では不十分である。 ユビキタスのためのIDの一つとして、ucodeが考案されている。 ucodeの特徴は以下の通り ucodeそのものは単なる番号。ただしありとあらゆるものに個別の 番号を割り振ることができるように工夫されている ucodeに対応する情報はインタネットなどのネットワーク上に蓄積 ucodeの番号の管理、保障は特定の機関が行う 日本で考え出された規格
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ユビキタスID その2 ucodeとバーコードの違い
ucodeそのものは単なる数字であり、ucodeが表す情報はネットワーク上に蓄積するという方法をとっているのでネットワーク上の情報を更新することで、常に最新の情報を得ることができるようになる
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ユビキタスID その3 食品トレーサビリティ実証実験 近年食品の偽装問題などが多発しており、食品の安全を確保することが重要な課題となっている。そこで、ucodeを使った食品のトレーサビリティを実現する実験が行われた( 生産段階 野菜の種まきから収穫までの全過程において、肥料や農薬などの 履歴の管理をucodeを使って行う 流通段階 入荷日時や流通経路などの情報の履歴管理を行う 店舗段階 野菜につけられているucodeが入ったRFIDを小型の端末にかざすとネットワークからucodeを検索して生産履歴や流通履歴が表示される
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ユビキタスID その4 自律移動支援プロジェクト 身体的状況、年齢、言語等を問わず、「いつでも、どこでも、だれでも」移動等に関する情報を入手することを可能にすることを目的としたプロジェクト ( 地面や電信柱に位置情報を表すucodeの入ったタグを埋め込み、携帯用の小型端末でタグと通信することにより、様々なナビゲーションを行う 障害者用の地図やナビゲーションの提供 車いすが通れる道、点字ブロックがある道など、身体的特徴にあわせたナビゲーション 状況にあわせたナビゲーションの提供 雨の日は雨にぬれにくい道の案内など、周囲の状況に合わせたナビゲーション 白杖によるナビゲーション 盲人用の白杖が、地面に埋め込まれたICタグの情報を読み込み、音声で歩行の 補助を行うナビゲーション。他にも電動イス用のナビゲーション装置などを開発 ユニバーサルデザイン 障害者や高齢者だけのためだけではなく,すべてのユーザーに使いやすい設計を採用することで,1人当たりのコストを小さくするという考え方
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ユビキタスとセキュリティ その1 ユビキタス社会はセキュリティ対策をしっかりと考えておかないと、個人情報保護の観点で大きな問題が発生する可能性が高い。例えば、RFIDの場合、中身を読み取る機械を持って近づけば誰でもその中身がわかってしまう タグのついた服などを着て街を歩いた場合、タグリーダーを持って 近づけば、その人の服の情報(ブランド、材質、値段など)がわかる Suicaなどをポケットにいれて歩いた場合、タグリーダーを持って 一定距離まで近づけばその人の個人情報が簡単に入手できてしまう Suicaの場合、個人情報としてはその人の行動経路や、コンビニの 支払いにSuicaを使っていた場合は購入物など 欧米では、RFIDのことを「スパイチップ」などと呼び、反対団体による反対運動が起きるなどという状況も発生している
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ユビキタスとセキュリティ その2 機器どうしで情報を交換する際に、どんな情報を誰にでも送って良いわけではない 例:会社の中のあらゆるものにコンピュータをつけた場合 社内の人間が、社内の備品の場所を調べるために利用するのはOK 社外の人間がその社内の備品の場所を調べるのはNG あるプロジェクトにかかわっている社内の人がそのプロジェクトの極秘資料の場所を調べるために利用するのはOK そのプロジェクトに関係ない人が調べるのはNG 社内の人であっても、清掃員が社内の情報を調べるのはNG 誰が、どの情報を扱ってよいか、きめ細かく設定できるようなセキュリティの基盤が必要 セキュリティと利便性は相反するため、ユビキタス社会の セキュリティについてしっかりと考えていく必要がある
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