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実験物理と計算機 (Linux計算機を使った物理学実験) 分子運動論/ブラウン運動 第10回 概要 1)ブラウン運動

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1 実験物理と計算機 (Linux計算機を使った物理学実験) 分子運動論/ブラウン運動 第10回 2011-2-17 概要 1)ブラウン運動
2)ペランの実験 3)カプラーの実験 4)レポート 参考文献 : ブラウン運動 米沢冨美子著 共立出版

2 1)ブラウン運動 ①ブラウン運動とは、1827年にイギリスの植物学者ロバート・ブラウンが、花粉が水の
 浸透圧で破裂し水中に流失し浮遊した微粒子を顕微鏡下で観察中に発見した現象。 ②その微粒子(ブラウン粒子)がふるえるように動いているのが観察された。 ③ブラウンは、初め、この運動は生物特有の、生命力に基づく現象と考え、運動する  粒子をモレキュールと呼んだ。 ・・・現在の分子の概念とは違う。分子(Å=10-10m) ブラウン粒子(m = 10-6m) ④しかし、生命の無い岩石、金属等の微粒子でも、同様の運動が観察された。 ⑤ブラウン運動の性質 : 微粒子が小さいほど、温度が高いほど、媒質の粘性が小さいほど激しい。 時間がたっても弱まらない。光をあてても、磁場をかけても影響を受けない。 ⑥長い間、原因が不明のままであったが、1905年にアインシュタインにより、熱運動する媒 質の分子の不規則な衝突によって引き起こされる現象であるとして説明する理論が発表 された。 ⑦アインシュタインの理論は、1908年にフランスの物理化学者ぺラン(Perrin)により実験的 に検証され、原子(分子)の実在性が実証された。

3 ⑧花粉のような微粒子に,水分子が衝突する際、ある瞬間をとらえると,各方向からの
 衝撃は一様でないので,その合力として一つの方向に衝撃をうけ、その向きに弾かれ  るように動くことになる。弾かれる向きがその時々で変化するので,あたかも震えるよう  に、不規則な経路を描いて運動することになる(分子の熱運動による説明)。 ⑨ブラウン運動のシミュレーション   →   ⑩ブラウン運動の範疇として説明される事象  ・青空、夕焼け  空気の分子は乱雑な熱運動をしている。この“ゆらぎ“により,空気の密度の相対的変  化が生じる。1μm程度の広がりで空気密度の濃淡ができると,太陽光は屈折する。  照射光の波長に比べ散乱の原因に成る物体が小さい場合(レイリー散乱)、  散乱光の強度は、波長の4乗に反比例する。  → 短波長ほど強く散乱(赤より青が強く散乱)  → 昼は散乱光を見るので青空、夕方は透過光をみるので赤い夕焼け。  ・電気回路の熱雑音

4 ブラウン運動に対するアインシュタインの理論
 → 多くの粒子の変位の平均をとれば、その値は時間や温度の平方根に比例し、     粘性や粒子の半径の平方根に反比例する。     又、分子の衝突は不規則なため、ある時間に粒子が移動する変位の分布が、     偶然誤差の分布(ガウス分布)と同じになる。  → ぺランの実験

5 アインシュタインの奇跡の年 ①1905 年、アインシュタイン26歳の年、重要な3種の論文を発表した(6編の論文を
 投稿し、5編が出版)。この年を“奇跡の年”と呼ぶ。 ②光電効果の理論  プランクの光量子仮説に基づき、光(電磁波)を金属に当てることによって飛び出す電子  (光電子)のエネルギーの値が、光の振動数に比例すると伴に、ある閾値を持つことを予  言した(光電効果)。光電効果の理論はその後の量子力学の発展の基礎となり、1921年  にノーベル物理学賞を受賞した。 ③ブラウン運動の理論  ブラウン運動をする粒子の運動を測定することによって,原子(分子)の存在が結論づけ  られることを示した。理論の検証として、粒子の平均2乗変位が観測可能な量であるとし  た。この事は、1908年にペランによって実験確認され、原子の概念が確立された。 ④特殊相対性理論  電磁気学のMaxwell方程式から導かれる法則はローレンツ変換不変、ニュートン力学か  ら導かれる法則はガリレイ変換不変である事の両者間の矛盾を説明した。  ・特殊相対性原理:力学法則はどの慣性系においても同じ様に成立する  ・光速度一定の原理:真空中の光の速度は,すべての慣性系で等しい  との2つの仮定をもとに思考実験によって新しい理論を考え出した。この理論は、それま  で変化しないとみなされていた空間と時間が変化する(相対的である、時間の進み方は、  観測者によって異なる)という結論を導いた。  また、質量とエネルギーの等価性(E=mc2)も導き出した。

6 ランジャバン方程式

7 2)ぺランの実験 ①ガンボージ樹脂を水でうすめたのちに遠心分離器にかける方法を考案して、
 実験に必要な、ほぼ同じ大きさの粒子を作ることに成功した(1908年)。  ガンボージ樹脂 : 東南アジアに自生するマンゴスチン科の木の樹液から、               作られてた植物性の染料 ②この乳濁液を1滴スライドグラスに落とすと,やがて水が蒸発するにつれて粒子が  1列にならぶことなどを利用して、粒子の半径を求めた。 ③碁盤状の格子を内蔵した限外顕微鏡でガンボージ粒子のブラウン運動を  観察しながら、 同一粒子の30秒ごとの位置を方眼紙に写しとった。  限外顕微鏡 : 特殊な照明装置による光を当て、その散乱光によって           微粒子の存在や運動状態を知る顕微鏡。           暗視野顕微鏡。4nmの大きさの粒子の存在を認めることが可能。 ④多くのデータを集め、平均の変位と、測定時間の平方根との関係を調べた。 ⑤その結果、アインシュタインの予言どおり、両者の間にきれいな比例関係が認め  られた。さらに、この式の比例定数を使って算出したアボガドロ数は、別の方法で  得られていた値と一致した。 ⑥ブラウン運動より求めたアボガドロ数が、他の方法で得られた値に十分近い事は、  ブラウン運動と分子の存在が結びついている証拠と成る。

8 アボガドロ数の測定 アボガドロ数 : N A = 6.0221415 × 1023 mol−1 気体 1 mol 中に含まれる物質粒子の数
①ロシュミットの測定(1865年) ②コロイド粒子のブラウン運動の観察による方法(ペラン1909年) ③電気素量の測定とファラデー定数の測定の比(ミリカン1910年) ④X線回析と結晶密度から求める方法(1923年) ⑤放射性崩壊α粒子の測定による方法  アボガドロ数が決まる+気体の 1 mol の質量が解かる         ↓  分子(原子)の質量が決定できる。

9 3)カプラーの実験 1931年、カプラーは、空気中に面積1mm2の小さな鏡を細い弾性のある糸でつるし、
その鏡に光を当てて,反射光の方向から鏡の回転角を測る実験を行った。

10 レポート課題(試験は無し) 提出期限 : 3月3日 厳守 提出先 : 自然学系D棟3階エレベータ隣りの物理事務室前のレポート箱
      又は 2月17日(今日)の授業時 下記①、②、③から、2つ以上選択し提出 ①テキスト第6章(1/28授業)の研究課題Ⅲ(重力加速)、又は  研究課題Ⅳ(3体のカオス)のうちいずれか1つを選択し実行。 ②テキスト第7章(2/4授業)の研究課題Ⅰ(ボルツマン分布則)、又は  研究課題Ⅱ(3次元酔歩)のうちいずれか1つを選択し実行。 ③テキスト第7章(2/18授業)の研究課題Ⅲ(気体中のブラウン粒子の運動)、又は  研究課題Ⅳ(ぺランの運動)のうちいずれか1つを選択し実行。 ・物理的考察、プログラムのリスト、及び出力結果を提出。 ・物理的考察は、計算プログラムの前提となる物理/アルゴリズム、課題の設問  に対する考察、結果に関する物理的考察(必要なら初期条件/計算条件を  適宜変更)等、を簡潔に述べる事。 ・プログラムのリストには各部分で何を行っているかの説明をつける事。


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