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Published byこうしろう あわたけ Modified 約 6 年前
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授業の内容 天文学は天体からの光を研究する学問です。 そこでこの授業では、「光」をどう扱うかの基礎を学びます。 授業計画は、
A.水素原子 B.エネルギー準位 C.熱平衡 D.線吸収 E.連続吸収 F.光のインテンシティ G.黒体輻射 H.等級 I.色等級図 J.光の伝達式 I K.光の伝達式 II L.星のスペクトル という順で進めます。 最後まで行くと、星のスペクトルがどんな仕組みで決まっているかが判る、 というのが目標です。 AからEまでは光の吸収に関係する物理の話です。Fでは光の強さをきちん と定義します。GからIは光の強さを天文学でどう使うかを示します。JからLは 光がガス中を伝わる様子を式に表わし、その式を解いて星のスペクトルを導き ます。それでは、始めましょう。 A: 原子のエネルギー準位
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G 黒体輻射 今回の内容 (G.1) 黒体輻射の式の導出 簡単な量子力学を使い、黒体輻射の式を導出します。 (G.2) 黒体輻射の表示法
G 黒体輻射 今回の内容 (G.1) 黒体輻射の式の導出 簡単な量子力学を使い、黒体輻射の式を導出します。 (G.2) 黒体輻射の表示法 黒体輻射の式を波長で表示する場合と振動数を使う場合の違いを調べます。 (G.3) 黒体輻射のその他の性質 黒体輻射の式を使いこなすための性質を調べます。 (G.4) 黒体輻射の数値表現 黒体輻射の式を実際に使うための数値表現をまとめました。 (G.5) 熱輻射 実際の物体と完全黒体との違い、反射率と吸収率の関係などを学びます。 授業の内容は下のHPに掲載されます。 C: 線吸収係数
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解答にはA4の用紙を使用し、氏名、所属、学年、学生番号、を記入して下さい。
レポート:下の問題の解答を6月27日の授業の際に提出して下さい。 解答にはA4の用紙を使用し、氏名、所属、学年、学生番号、を記入して下さい。 しかし、「遠くの灯りは暗くみえます」。 これは 「輻射強度が変わらない」 ことと矛盾するのではないでしょうか? F: 輻射強度
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G.1. 黒体輻射って何? 温度一定の箱の中 箱を考えて下さい。壁の温度は一定とします。箱の中には電磁波(=光)が満ちています。この箱を放っておくとやがて、温度Tの壁と箱の中の光との間には熱平衡の状態が生じます。そのように、落ち着いた状態での壁と光の間のエネルギーのやり取りを考えましょう。 簡単のため、箱の反射率=0 とします。箱の天井は物質A、床は物質Bでできいます。箱の天井も床も温度Tは等しいとします。 天井 A 天井からは物質Aの出す熱輻射IA(T)が、床からは物質Bの出す熱輻射 IB(T) が放射されます。 逆に天井は床からのIB(T) を吸収し、床は天井からIA(T)を吸収します。 熱平衡状態では放射量と吸収量は等しいはずですから、 IA(T)= IB(T) IA(T) IB(T) 床 B G: 黒体輻射
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つまり、 黒体からの熱放射は黒体を作る物質によらないのです。それで黒体は黒体Aとか黒体Bとか言わず、ただ黒体といいます。
つまり、 黒体からの熱放射は黒体を作る物質によらないのです。それで黒体は黒体Aとか黒体Bとか言わず、ただ黒体といいます。 黒体で出来た箱の中は黒体からの放射光で満たされています。それを黒体輻射 (Blackbody Radiation)と呼びます。黒体輻射のインテンシティをB(T)と書きましょう。 では、箱の材料が黒体でなかったらどうでしょう?下の箱の床を反射率がRの物質で置き換えてみます。温度は天井も床も同じ温度Tとします。 この場合も、天井と床の温度が等しいために、 床Bからの反射光+床Bの放射光=天井Aの放射光 という等式は成立します。 したがって、 R・B(T)+IB=B(T) です。つまり、 IB=B(T)ーR・B(T) =(1-R) ・B(T) =E・B(T) 黒体天井 (温度T) B(T) IB R・B(T) 床 B (温度T) G: 黒体輻射
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もう一つ注意すべきは、床から放射される光 E・B(T) は同時に床が吸収する光の量に等しいということです。ですから、床には天井から B(T) の光が来ますから、吸収率をAとすると、床は A・I(T) だけ吸収します。吸収した分だけは放射しますから、前ページを参考にして、A・I(T) =E・B(T)、つまり、 A=E=(1-R) なのです。 あなたは冬の夜道を真っ黒なオーバーにくるまって歩いています。私は真っ白なオーバーを着ています。簡単のため、黒オーバーの反射率はゼロ、白オーバーの反射率は1とします。外の気温は-15°C、 オーバーの表面温度は0度Cとします。あなたと私のどちらがぬくぬくしていられますか?熱のやり取りは輻射を通じてのみとします。 G: 黒体輻射
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温度が室温の黒体輻射は簡単に作れます。押し入れに入って戸を閉めればよいのです。押し入れの内部は室温の黒体熱輻射で満たされます。
身近な黒体輻射 温度が室温の黒体輻射は簡単に作れます。押し入れに入って戸を閉めればよいのです。押し入れの内部は室温の黒体熱輻射で満たされます。 次の節で学びますが、黒体輻射強度 は全波長に及んでいます。低温の黒体輻射は主に長波長、赤外線や電波、の領域にエネルギーが集まり、短波長の可視光やX線の光は僅かしか含みません。温度が上がってくると黒体輻射の主要部は次第に短波長側に移ってきます。 室温だと黒体輻射が強いのは波長10μm付近で、0.5μm付近の可視光は非常に弱いのです。 押し入れの中の一点をとり、そこでの輻射強度を考えて下さい。その点はぐるりを同じ温度Tの壁や、布団やふすまに囲まれているので、どの方向からも温度Tの黒体輻射がやってきます。その結果、押し入れの中はどこでも等方的な温度Tの黒体輻射に満たされています。 G: 黒体輻射
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室温の黒体輻射は可視波長帯での強度が非常に弱いため、視神経を刺激することができません。このため、人間が押し入れの中に入っても真っ暗で何も見えないのです。
では、強力な暗視ゴーグルをはめて、そのように弱い光線でも感知できるようにして、押し入れに入ったらどのように見えるでしょうか?A点から緑色の方向を見た時の絵を下に描いて下さい。 布団 仕切り板 A G: 黒体輻射
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G.2. 黒体輻射の式の導出 dΩ ν dν 振動数空間
壁温度 T、 大きさ L3=V の箱を考えます。さっきの押し入れと思って下さい。すると、箱の中は温度 T の熱平衡輻射で満たされます。 その輻射強度 B(ν、T) を決めてみましょう。νは光子の振動数です。そのために、単位体積中の光子の振動数空間というものを考えます。(振動数を光の進行方向に向いたベクトルと考えています。) 右下が振動子空間での、進行方向 dΩ、振動数 dνの錐台の図です。 この錐台の底面積はS=ν2dΩ 、高さは dν なので体積はν2dΩ dν です。 n(ν, Ω)=振動数ν、進行方向Ωの光子の数密度とおくと、錐台中の光子数は n(ν, Ω)ν2dνdΩ です。 dΩ 前回やりましたが、輻射強度 I (ν, Ω) は、 dΩの方向と直交する面積 dS を通る、 dν の振動数を持つ光が時間 dt の間に運ぶエネルギー dE が、 dE = I (ν, Ω) dΩ dνdS dt となることで定義されます。 ν dν G: 黒体輻射
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hν dΩ dS cdt では、速度c、振動数 dν、方向 dΩ の光子がdt 時間に dS を通過する数 dN はいくつでしょう?
右の図を見ると、それらは厚みが cdt で、底面積が dS の箱の中にあることが判ります。 この箱の中にある光子の内で方向が dΩ、振動数が dν の数は前ページやったように、単位体積当たりで、n(ν, Ω)ν2 dνdΩ でしたから、求める光子数はそれに体積 cdtdS をかければよいことが判ります。結局、 dN = n(ν, Ω)ν2 c dνdΩ dS dt です。光子一つのエネルギーは hνなので運ばれるエネルギーは dE = n(ν, Ω)ν2 c hν dνdΩ dS dt = c h n(ν, Ω)ν3 dνdΩ dS dt となります。この式が前に出した dE と同じになるので、 I (ν, Ω) = c h n(ν, Ω)ν3 となります。 hν dΩ dS cdt 振動数空間 G: 黒体輻射
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黒体輻射の次のステップは量子力学にちょっとだけ入る必要があります。量子力学はこれからという人は軽く聞いて下さい。
光子の量子状態の数 黒体輻射の次のステップは量子力学にちょっとだけ入る必要があります。量子力学はこれからという人は軽く聞いて下さい。 前に述べましたが、今は一辺がLの立方体を考え、その中にある光子を考えています。量子力学では光子が箱の中で安定な波になっていると考えます。その条件は x、y、z の各方向で辺長 L が波長の整数倍になることです。 L/λX = 1,2,3、...、 L/λY = 1,2,3、...、 L/λZ = 1,2,3、... ですが、電磁波には2成分の偏光があるので2倍して、L3の箱内の安定な光子の量子状態の数 ΔNBox は、 ΔNBox = 2Δ(L/λX)・ Δ(L/λY)・ Δ(L/λZ) で与えられます。単位体積当たりの状態数 ΔNUnit は、箱の体積で割って ΔNUnit = ΔNBox/L3 = 2Δ(1/λX)・ Δ(1/λY)・ Δ(1/λZ) です。 光子の密度を振動数ν空間で考えました。ですから上の式をちょっと直して、 ΔNUnit =(2/c3)Δ(c/λX)・ Δ(c/λY)・ Δ(c/λZ) = (2/c3)Δ(νX)・ Δ(νY)・ Δ(νZ) G: 黒体輻射
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Δ(νX)・ Δ(νY)・ Δ(νZ) は振動数空間での体積要素 ΔVνですから、
Δ(νX)・ Δ(νY)・ Δ(νZ) は振動数空間での体積要素 ΔVνですから、 ΔNUnit = (2/c3) ΔVν という式は、単位体積当たりの振動子空間での量子状態の密度 Q(ν) = (2/c3) であることを意味します。 前に使った球座標表示では ΔVν = ν2dΩdν なので、 ΔNUnit = QΔVν = (2/c3) ν2dΩdν と表示しても同じことです。 一つの量子状態にある光子の数 こうして決められた量子状態の一つ一つに光子が平均何個あるかが次の問題です。 その前に光子の振動数νと運動量 p、 エネルギーεの関係をまとめておきましょう。それは、 ε= c・p =hν ν2 = νX2 +νY2 +νZ2 です。 ところで、振動数νの量子状態に光子が幾つあるかは確定していません。ですから、その状態に平均して何個の光子があるかを計算する必要があります。 G: 黒体輻射
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<S> = 0・P0 + 1・P1 + 2・P2 + ... です。 問題はこの確率 PS をどう定めるかです。
振動数νの量子状態に光子が一つある確率を P1 、二つある確率をP2 ...S個ある確率を PS とします。すると、ある量子状態にある光子数の平均は <S> = 0・P0 + 1・P1 + 2・P2 + ... です。 問題はこの確率 PS をどう定めるかです。 ところで、光子が一つあるとその状態のエネルギーはhν、光子が二つあれば2hν、...光子が S 個あるとその状態のエネルギーは Shνです。 一般にエネルギーがεの状態にある確率 P は exp(- ε/kT) に比例するのです。ですから、その比例定数をAとおくと、 PS = A exp (- εS /kT) = A exp (-Shν/kT) = A[exp (-hν/kT) ] S A は 全確率の和は1になるということから決めます。計算のために X= exp (-hν/kT) とおきましょう。 1= P0 +P1 +P2 +... =A [exp (-hν/kT) ] 0+A [exp (-hν/kT) ] 1+A [exp (-hν/kT) ] 2... = A(1+ X1+X2...) = A/[1- X] G: 黒体輻射
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ですから A= 1-X = 1- exp (-hν/kT) です。すると、
<S> = 0・P0 + 1・P1 + 2・P2 + ... = (1- X) (X+2X 2 +3X 3 + ...) X+2X 2 +3X 3 + ... = X/ (1-X)2 ( |X|<1 ) を導いて下さい。 G: 黒体輻射
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<S> = (1- X) ・X/(1-X)2=X/(1-X) =1/(X-1-1) X=exp(ーhν/kT)を思い出して、
結局、 <S> = (1- X) ・X/(1-X)2=X/(1-X) =1/(X-1-1) X=exp(ーhν/kT)を思い出して、 <S> = 1/[exp(hν/kT)-1] これが、温度がTの時、振動数がνの一つの量子状態につき、何個の光子がそこを占めているかの数です。 振動数空間での光子の数密度 はるか昔のような気がするかも知れませんが、ようやく単位体積当たりの光子の振動数空間での光子の数密度 n( ν, Ω)に戻ってきました。 n( ν, Ω) = Q・ <S> です。前に求めた式を代入すると、 n( ν, Ω) = (2/c3) /[exp(hν/kT)-1] となります。 G: 黒体輻射
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n(ν, Ω)が求まりましたから、それを下の式 I (ν, Ω) = c h n(ν, Ω)ν3
黒体輻射の輻射強度 n(ν, Ω)が求まりましたから、それを下の式 I (ν, Ω) = c h n(ν, Ω)ν3 に代入すると、最終的に黒体輻射の輻射強度 B(ν, T)が B(ν, T)=c h ν3 (2/c3) /[exp(hν/kT)-1] が求まりました。 G: 黒体輻射
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G.3.黒体輻射の表示法 周波数表示 Bν(ν、T) と波長表示 Bλ(λ、T) 黒体輻射強度 B(ν、T) は、
温度Tの黒体輻射が、単位面積を単位時間に、法線方向の単位立体角当たり、単位周波数当たりに通過するエネルギー量 です。黒体輻射は等方なので、方向を示すΩは省いて書くのが普通です。 全輻射強度 B(T) は、 B(T)=∫B(ν、T) dν で定義されます。 B(ν、T) 上の式は B(T) のうち、dν の範囲内に入る分が dB(T) = B(ν、T)dν であることを表わしています。 B(ν,T) dν ν G: 黒体輻射
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輻射強度は周波数ν、波長λ、エネルギーεのそれぞれで定義できます。
つまり、 dB= Bν(ν、T)dν = Bλ(λ、T) dλ = Bε(ε、T) dε Bν(ν、T) ν 右の図のそれぞれで、上辺が斜めの部分は同じ dB を表わしていて、したがって面積が等しいことに注意して下さい。 Bλ(λ、T) 電磁波には ν・λ=c、hν=ε という性質があるのでそれぞれの間の変換が可能です。 λ Bε(ε、T) ε G: 黒体輻射
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前々頁の Bν(ν、T) の式と、前ページの dE の表式を参考に、Bλ(λ、T) を導いて下さい。
ここで、 Bν(ν、T)、 Bλ(λ、T) 、Bε(ε、T) と書いて、B(ν、T)、 B(λ、T) 、B(ε、T) としなかったのにはわけがあります。B(ν、T) ,、B(λ、T) と書くと、 B(ν、T) のνの所に (c/λ)を代入してそれで B(λ、T) が得られると誤解する人が多いので、関数の形が違うことを強調しているのです。 前々頁の Bν(ν、T) の式と、前ページの dE の表式を参考に、Bλ(λ、T) を導いて下さい。 G: 黒体輻射
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Bν(ν、T) と Bλ(λ、T) を並べると下のようになります。
両者は単位も異なります。 dE= Bν(ν、T) dS dt dΩ dν = Bλ(λ、T) dS dt dΩ dλ を単位だけで表わすと J = Bν・ m2 ・sec ・steradian ・Hz = Bλ ・ m2 ・sec ・steradian ・m ですから、 Bν = J・ m-2 ・sec-1 ・steradian -1・Hz-1 = W ・ m-2 ・Hz-1 ・ steradian -1 です。 Hz-1は sec で、W ・ Hz-1 = J なので、sec は消える単位ですが、Bν を使用する時にはHz当たり何ワットと考えるので表式にのこしてあります。 G: 黒体輻射
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Bλ = W・ m-2 ・steradian -1・m-1
μmや nm で表わしたりするので分けたままにしてあります。 対数表示 νBν(ν、T) ≡ λBλ(λ、T) Bν 、 Bλは乗り換えが面倒です。二つの量の関係の基本式は dE = Bν dν= Bλ dλです。この式をちょっといじりましょう、 Bν dν= Bν d(c/λ)=- cBν dλ/λ2 から、 Bλ =- cBν /λ2でした。c/λ=νに気を付けると、 ν Bν = λ Bλです。 この式をW(ν)とおくと、νからλへの乗り換えは単にνの所に(c/λ)を入れるだけで大変楽です。その上、c=νλの微分をとると、 0= νdλ+λdν。 νλで割って、 (dλ/λ)=- (dν/ν) です。 G: 黒体輻射
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dB = νBν (dν/ν)= λBλ (dλ/λ) dB= (ln10)W(ν)d logν= (ln10)U(λ) d logλ
は書き変えて、 ちょっとくどいのですが、 dB = Bν dν= Bλ dλ をもう一度書き変えて、 dB = νBν (dν/ν)= λBλ (dλ/λ) dB= (ln10)W(ν)d logν= (ln10)U(λ) d logλ ここに、 U(λ)=W(c/λ) こうすると、νとλが対称に扱えます。 G: 黒体輻射
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I(ν) I(λ) Io ν λ U(λ) = λI(λ) log λ logν
輻射強度の形が表示でどう変わるかを見るために、Iν=Io=一定の輻射をIλで表わすとどうなるかを示したのが下の図です。一見したところ全く違う輻射に見えます。 例: I(ν)=Io=一定 I(λ)=(c/λ2)Io I(ν) I(λ) Io ν λ 今度は輻射強度を対数表示で見てみましょう。この表示では同じ形になっています。 W=I(ν) ν= I(λ) λ 表示では U(λ) = λI(λ) W(ν) = νI(ν) log λ logν G: 黒体輻射
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全輻射強度 B(T)=∫Bν(T,ν)dν= ∫Bλ(T,λ)dλ
G.4.黒体輻射のその他の性質 全輻射強度 B(T)=∫Bν(T,ν)dν= ∫Bλ(T,λ)dλ 今まで黒体輻射強度を振動数当たりの輻射エネルギーで考えてきましたが、全振動数での輻射強度という量も考えられB(T)で表わします。B(T)は右式のように計算されます。 全輻射強度B(T)を黒体表面からの全輻射フラックスF(T)と混同しがちですから注意して下さい。 右の計算に出てくる定数σは、 σ = 2π5k4/15h3c2 = -8 W/m2/K4 = ステファン・ボルツマン定数 です。 G: 黒体輻射
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黒体輻射強度(Blackbody Intensity)が
黒体表面からのフラックス 黒体輻射強度(Blackbody Intensity)が と表わされることを前ページで習いました。黒体の表面からは等方的にB(T)の輻射が放射されています。黒体表面に立てた法線nに対しθの方向の輻射強度B(Ω)が表面から運び去るエネルギーを考えます。 前にも示したように、B(Ω)dΩdSがB(Ω)によるエネルギー流です。 n Ω θ dΩ dS θ dS′ しかし、dSは光線方向に垂直に立てた板ですから、黒体表面では dS′=dS/cosθ に相当します。つまり、黒体表面を通るエネルギー量としては cosθ だけ薄まっているのです。 法線とθの角度をなす光線が表面から運び出すエネルギーには cosθ だけ薄まっているので、全体としては F=∫ I(θ)cosθdΩ G: 黒体輻射
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黒体の表面から放射される輻射強度は強度B(T)で等方的です。 T=300Kの黒体表面1m2から放射される輻射エネルギーは何ワットでしょう?
dΩ は右下の図からわかるように、 dΩ= sinΘ・ dφ ・dΘ です。 dΘ sinΘ Θ dΩ 黒体の表面から放射される輻射強度は強度B(T)で等方的です。 T=300Kの黒体表面1m2から放射される輻射エネルギーは何ワットでしょう? dφ φ sinΘ・ dφ G: 黒体輻射
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太陽からのフラックス 地上から見る太陽は T=6000K, 視半径= ラジアンの黒体の円板です。東京の緯度は約36度ですから、夏至の正午には高度が約60度になります。あなたは巾1.5m、長さ4mの黒塗りの車に乗っています。車のペイントが黒体として、車は何Wのエネルギーを受けるでしょう。有効数字1桁。 dΩ n 30° G: 黒体輻射
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鏡の家はR=1ですからE=0です。つまり、この家は熱を放射しません。ですから冬は暖房熱を全て封じ込めてしまうのです。
家の屋根と壁が全て鏡の家を考えて下さい。この家は夏には外からの輻射を全て跳ね返します。では、冬はどうでしょう。前に壁の放射率Eと反射率Rの関係が E+R=1 であることを学びました。 鏡の家はR=1ですからE=0です。つまり、この家は熱を放射しません。ですから冬は暖房熱を全て封じ込めてしまうのです。 鏡の家の欠点は何でしょうか? G: 黒体輻射
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黒体輻射のエネルギー密度 U(T) 輻射強度はある面を通過して行く輻射エネルギーを表わす量でした。
単位体積当たりの光子の振動数空間での光子の数密度は10ページくらい前に出ていて、 n( ν, Ω) = Q・ <S> = (2/c3) /[exp(hν/kT)-1] となります。ここで、 Q= (2/c3) は振動子空間内での量子状態の数密度。 <S> =1 /[exp(hν/kT)-1] は振動数νの量子状態に入っている光子数 です。振動子空間の体積要素は ν2dΩdνでしたから、振動数当たりのエネルギー密度は、n( ν, Ω)・hν・ ν2dΩを全方向に積分して求まります。 G: 黒体輻射
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u (ν、T) の形を見て、Bν(T)と同じじゃないかと思った人もいるでしょう。 実際、
ですから、二つは n( ν, Ω)に何を掛けるかの違いしかありません。 u (ν、T) と Bν(T) は下の式で結ばれています。 したがって、黒体輻射の全エネルギー密度U(T)は、 u (ν、T) を振動数で積分して右の式のようになります。 は、輻射密度定数(radiation density constant) と呼ばれます。 G: 黒体輻射
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レーリー・ジーンズ近似 (hν/kT<<1)
レーリー・ジーンズ近似 (hν/kT<<1) つまり、λ(μm)>>15,000/T(K) の時は、 B(T,ν)が下のような形で近似されます。 G: 黒体輻射
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下のグラフは黒体輻射のx3/(exp x-1)をレーリージーンズ近似 x2
と比べたものです。両者の差はx=0.4ではまだ20%あり、x=0.3 で15%以下となる。x=0.3に対応する波長を見ると、 λ(μ)>50,000/T(K) T(K) λ(μm) 3,000 20 10, 30, G: 黒体輻射
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黒体輻射のピーク位置は、表現法で変わります。 B(ν)= [B(λ)λ/ν]= [B(λ)λ2/c] なので、 黒体輻射のピーク
図に見えるように、ピーク位置波長はB(ν)が一番長く、B(λ)が短く、B(λ)λが中間です。 B(ν) B(λ) ピーク波長を求めるため、輻射強度を x=hν/kT で表します。 logλ G: 黒体輻射
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前ページの黒体輻射の表式を見ると、ピーク波長(振動数)は、
(n=3,4,5) の極大に対応します。 数値的に極値を探した結果は以下のようになります。 0 1 2 3 4 5 X これがゼロになるのは、 の時です。右に書いたグラフから数値的に解を探します。 G: 黒体輻射
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Bλ (T,λ) ν Bν (T,ν) = λ Bλ (T,λ) Bν (T,ν) n 5 4 3
その結果が下の表です。 Bλ (T,λ) ν Bν (T,ν) = λ Bλ (T,λ) Bν (T,ν) n Fn(x) x5/[exp(x)-1] x4/[exp(x)-1] x3/[exp(x)-1] x(ピーク) 4.965 3.92 2.82 T4λμ 0.290 0.510 註: T4=T/104K、 λμ =λ/1μm 良く使われるのは、波長表示のピーク T4λμ =0.3 という式です。 例えば、「人体が300Kなので、ピーク波長は 10μmである」というのは皆さんも聞いたことがあるでしょう。 太陽の表面温度は約6000Kですから、そのスペクトルをT4=0.6の黒体輻射に近いと考えると、波長表示では0.5μm(青緑)、対数表示では0.6μm(黄色)、振動数表示では0.8μm(見えない)がピークに対応します。 G: 黒体輻射
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G.5.黒体輻射の数値表現 h=6.626×10-34 Js, k=1.381×10-23 J/K, c=2.998×108 m/s
G: 黒体輻射
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レーリージーンズ領域 傾き一定、 強さはTに比例 ウィーン領域 傾きと強さが 大きく変化する G: 黒体輻射
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B(T,ν)ν= B(T,λ)λ もよく使われます。
G: 黒体輻射
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G.6.熱輻射 壁の輻射吸収率A、反射率 R と放射率 K 左図で、輻射が壁と熱平衡となった場合を考えて下さい。 熱平衡なので、壁の表面で、
入射光=反射光+放射光 I(λ)=B(λ,T) です。したがって、 B(λ)=R・B(λ)+E・B(λ) つまり、 R+K=1 です。 E・B(λ,T)=放射光 温度T I(λ)=入射光 R・I(λ)=反射光 A・I(λ) =吸収光 A・I(λ)+R・I(λ)=I(λ) A+R=1 したがって、A=E=(1-R) G: 黒体輻射
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R=0 の表面はA=1であり、入射光を完全に吸収します。K=1なので表面からはB(λ、T)の輻射が放射されます。
黒体 R=0 の表面はA=1であり、入射光を完全に吸収します。K=1なので表面からはB(λ、T)の輻射が放射されます。 K>1の表面は存在しません。すなわち、熱的な放射としては物体の表面から黒体輻射以上の放射は起こらないのです。 (b) 鏡面 R=1 の表面はK=0となるので、表面からの放射=0 です。 表面が完全な鏡面の服や家は輻射熱の放出がゼロです。しかも壁の厚さは関係ありません。ペラペラでいいのです。 (c) 色の付いた物体 常温で赤い物体は0.6μmより長い波長で反射率R(赤)が高く、 それより短い、 典型的には青い、波長で反射率R(青)が低いのです。 したがって、赤い物体は放射率K(赤)は低く、K(青)が高い、つまり 赤い物体自身が出す放射光は青いのです。 G: 黒体輻射
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太陽からのフラックスは F=∫I(Ω)cosΘdΩです。
地上から見る太陽は T=6000K, 視半径= ラジアンの黒体の円板です。東京の緯度は約36度ですから、夏至の正午には高度が約60度になります。あなたは巾1.5m、長さ4mの黒塗りの車に乗っています。車のペイントが黒体として、車は何Wのエネルギーを受けるでしょう。 太陽からのフラックスは F=∫I(Ω)cosΘdΩです。 I(Ω)=(σ/π)(6000)4、 σ= -8 W/m2/K4 、Θ=30°、 dΩ=π・0.00462 を代入すると、 F = (5.67・10-8/π)(64・1012)・cos30°・(π4.62・10-6) = (5.67・4.62・64)(1.73/2)・10-2 W/m2 ≒1.3 kW/m2 車は1.5×4=6m2だから、全体では1.3×6=8kWになる。 地球大気の吸収で太陽光が弱る効果も考えると5kW程度でしょう。これは周りの照り返しなどは入っていません。 G: 黒体輻射
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