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Published byなおみ みおか Modified 約 6 年前
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入り口:精神分析は進化する 意味や概念には二つの方向性がある、言語学的には外延と内包であるが、理論においては拡散的方向と収束的方向と言っても良い。Bollasは、フロイト的なペアのなかで、二つの聞くことがあり、それをフロイト的瞬間と述べた。一つは自由連想について自由な連想が創造的な結びつきを生む(拡散的)側面であり、一方の(収束的)側面は転移の発見とその理解の発展に関わっている。 抵抗、転移、逆転移、そして今行動化と関係化が収束的な側面となりつつある。
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狼男 Sergej Konstantionovich Pankejev(1885-1979) フロイトのもっとも重要な
Sergej Konstantionovich Pankejev( ) フロイトのもっとも重要な しかも理論的に多くの問題 を残したクライアントとして 生きた。
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狼男の生育歴 生後三ヶ月 肺炎に罹って死にかける.のちにそれを大人たちから聞き,死への不安から過食になった.(一番最初に現れた神経症的障害)
生後三ヶ月 肺炎に罹って死にかける.のちにそれを大人たちから聞き,死への不安から過食になった.(一番最初に現れた神経症的障害) 幼児期 両親が家を売って都会に引っ越した.(狼男にとって大きな変化) 二歳半の夏 両親が数週間旅行に出かけたが,姉とともに留守番.英国人の女家庭教師が雇われた.狼男は優しく,おとなしい,静かな子供であったが,両親が旅行から帰ってみると,不平がちになり,敏感でいらいらし,暴れたり,泣き叫んだりする子に変わってしまった.母親は変化の原因を英国女のせいだと思い,彼女を解雇するが,短気な性格は少しも治らなかった. (クリスマスの日に誕生日とクリスマスの二重の贈り物をもらえず,激怒)
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四歳誕生日前 狼の夢を見,狼に食べられるのではないかという不安に襲われて泣いた.それ以降,狼恐怖が続く.姉は,いつも彼をいじめ,怖がることをしては面白がった.(狼の絵本を見るように仕向け,狼男が怖がるのを見て喜んでいた)狼男は,狼だけでなく,他の動物や昆虫にも恐れや嫌悪を感じるようになった.同時に,それらに残酷な行為をするという矛盾した態度が起こった. 四歳半 母親は狼男を矯正させようと聖書の物語を読んで聞かせた.これによって狼恐怖は消失したが,代わって,就寝前に長いお祈りをし際限なく十字を切ったり,夕方には部屋中の聖像に接吻して廻らねばならないという強迫観念に悩まされるようになった.
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→ずいぶんと思い精神病的なものを抱え、しかも潜伏期が明確でない病態である。
十歳 ドイツ人男性の家庭教師が雇われ,狼男に大きな影響を与えた.この人物は宗教に価値を認めていなかったため,狼男の信仰心は薄れそれまで続いていた強迫症状は消失した.その代わり,路上に大便が三つ転がっているのを見ると三位一体を連想するという強迫が新たに現れた.しかし思春期が近づくにつれ,ドイツ人男性の影響下で,狼男の症状は減じほぼ正常な状態を維持できるようになった. →ずいぶんと思い精神病的なものを抱え、しかも潜伏期が明確でない病態である。
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狼の夢(幼少時代にみた) 「私はこんな夢を見なした。『夜私はベッドに寝てしました。(私のベッドは足の方が窓を向いており、その窓の向こうには古いくるみの木がずらりと並んでいました。その夢は冬のこと、確かに冬の夜のことだったと思います)。急に窓がひとりでに開きました。窓の向こうの大きなくるみの木に幾匹かの白い狼が座っているのを見て、私はびっくりしました。狼は六匹か七匹いました。彼らは真白で、どちらかといえば狐かシェパードのように見えました。というのは、それが狐みたいにおおきなしっぽをもち、その耳は何かを狙う犬みたいにピンと立っていたからです。この狼たちに食べられるのではないかという非常な不安に襲われて、私は大声をあげ、泣き出し』、目が醒めました。
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狼男に関わった人々 1918年に発表した『幼児神経症の病歴から』 1919年4ヶ月の間、フロイトの提案で、無料の精神分析が行われた。
フロイトが指導していたルース・ブルンスビックの分析を受けることになる( )。 ブルンスビックの待合室で、ムリエル・ガーディナーと出会い、ロシア語の家庭教師になる→ The Wolf-Man by Wolf-Man(1971)の編集が行われる。 1955年Frederick Weilがロールシャッハをとる(強迫神経症と診断する) Kurt Eisslerが15年間一ヶ月ごとに録音インタビュー Karin Obholzerが亡くなるまでの間インタビュー →『W氏との対話』(1982)の出版
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その後の狼男 市民戦争のために財産を失ってしまった。 自分がフロイトの患者であったことが自分が父親から愛されることになった。
保険会社に勤めて、1950年(65歳)に退職するまでカフカのように過ごす。 1938年ヒトラーの入都とともに妻が自殺する→ガーディナーらが亡命させる ブルンスヴィックの毎日分析をパリ、ロンドンでも受けている 1953年まで母親と暮らしていた。 狼男として最後まで生きる
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狼男の問題 精神病的症状 その後の経過:小此木の境界例論 フロイトの原光景論 夢と幻覚、そして認識 終わりある分析と終わりなき分析
その後の経過:小此木の境界例論 フロイトの原光景論 夢と幻覚、そして認識 終わりある分析と終わりなき分析 精神療法技法論文の最後の修正 構成の現実性とは何か:事後性 精神分析にとって現実とは何か
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技法論文の問題点:1920年代 1. 問題点:後期技法論文において精神分析の基本的な必要条件テーゼの変更が行われている。
1. 問題点:後期技法論文において精神分析の基本的な必要条件テーゼの変更が行われている。 Grünbaum,A(1984) The Foundation of Psychoanalysis 2. モデリング:自我とエスのモデルが導入され、精神分析の基本的な枠組みに変更が起きている:発達的なズレ Gray,P (1982) "Developmental Lag" in the Evolution of Technique for Psychoanalysis of Neurotic Conflict. J. Amer. Psychoanal. Assn., 30:
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転移の作業の目的 患者が自己の否定された/分裂した一部を認識して、所有する
転移の作業の目的 患者が自己の否定された/分裂した一部を認識して、所有する 患者が治療者・他者をどのように知覚しているのかとどのように彼らが存在しているかの間にあるズレについて意識する 「悪い」内的対象の力を修正する 全体的目標は内的人物と外的人物の間のつながりを確立する
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転移解釈のステップ 主題を発見・同定する 引き金を発見・同定する 逆転移に気づき、それを続ける 患者の自己表象を発見・同定する
転移解釈のステップ 主題を発見・同定する 引き金を発見・同定する 逆転移に気づき、それを続ける 患者の自己表象を発見・同定する 対象表象を発見・同定する 主たる情動を発見・同定する 解釈を定式化する
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Freud(1910) 「私たちは『逆転移』、つまり分析者における無意識的感情に、患者が影響を及ぼす結果生じる現象に気づくようになってきたが、分析者は自己のこの逆転移を認識し、それを克服しなければならないと主張したい。いかなる分析者も、自己のコンプレックスや抵抗の許容範囲以上に治療を進めることはない….」
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分析者が自己の体験や欠点を患者と話し合うことを戒めた。「医師は患者にとって曖昧でなければならないし、鏡のように、医師の目に映っていること以外は何も患者に示すべきではない…自己のパーソナリティの特異な面のいくつかを外部に投影したい気持ちにかられることの危険性を指摘した」 →逆転移=妨害物 訓練分析の勧め
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治療者の抵抗あるいは神経症 Fliess「逆転移はきまって抵抗である、必ず分析されねばならない」
治療者の抵抗あるいは神経症 Fliess「逆転移はきまって抵抗である、必ず分析されねばならない」 Winnicott「職業的態度を損ない、また患者によって決定されるべき分析過程の流れを妨害する神経症的特質」 → 治療者のほうが神経症!
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A.Reich 逆転移論文(1951) 「もし感情が強さを増すならば、患者に対する分析者自身の転移、つまり逆転移としての分析者の無意識的感情の混在していることがかなり明らかである。…このように逆転移は、分析者自身の無意識的な欲求や葛藤が、理解力や技法に及ぼす諸影響をふくんでいる。その際、分析者にとって、患者は過去の対象を象徴するものとなり、過去の感情や願望が投影される対象となる」
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逆転移の概念の拡張 Balint(1939,1949) 分析家のパーソナリティの全体、およびその場そのものを含む、そして態度や行動を逆転移と呼ぶ。 →枠組としての治療者のあり方が逆転移 枠と枠破りの発想
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Racker(1988)の早熟な見解 1961年にガンで50歳で亡くならなければ。 調和型の同一化に基づく逆転移
患者と同じ視点になって、治療者が感じることで、空想上の自己対象と同じ立場になってしまうことで生じる逆転移 補足型の同一化による逆転移 患者が転移的に空想している対象表象の立場に立ってしまうことで生じる逆転移
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逆転移概念の中での混乱 もともと盲点であったものが、今度は利用可能なものになる(抵抗、転移と同じ運命をたどっている)→そのためKernberg(1965)をはじめ、その混乱を区別する必要があると指摘している。 さらにクライン学派がそれを「もの想い」からコンテイニングに拡張させる議論を提示している→投影同一化の議論
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症例リチャード 4、5歳から興味と能力の抑制、心気症的、抑うつ傾向が強まる。他の子たちを怖がり、外出できなくなった。8歳以降不登校。 1941年4月28日から8月23日までの期間。週六回(時に七回)のペースで行われた、全93セッションの事例である。当初、きわめて前性器的な表現から、クラインの原光景や早期不安の分析を通じて、次第に統合されていく姿が描かれている。
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投影と摂取(取り入れ) 症例リチャードによる良い対象の取り入れ 抑うつの痛みを耐えるためのメカニズム
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Heimann(1950)の記念碑的論文 「自己のうちに湧いてくる感情を患者の鏡反射として働く分析的作業に従わせるために、(患者がするように)それらの感情を発散するのではなく、留めるsustain」、その基本的な仮定は「分析者の無意識が患者の無意識を理解するということである」、この深いレベルでのラポールは、患者に対する分析者の反応、つまり<逆転移>のなかで分析者に自分の感情に気づく形で表面化する」それは患者理解の鍵として利用するべきである。
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転移と逆転移の新しい理解 転移は過去の反復ではなく、今ここでの実演である。 逆転移は患者からの投影を引き受ける
KleinとHeimannとの離別(1950) →技法論 1.過程である。解釈への反応を良く見る 2.転移を解釈することの中心性 3.乳児水準の機能にしっかりと根ざす 4.破壊性という全面的に広がる恐ろしいものは、愛情ある人物とバランスをとって焦点を当てる。
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クライン派の技法的発想 1.解釈は食物=良い授乳で、治療者は良い乳房である。 2.治療者は投影を引き受ける悪い乳房でもある。
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逆転移概念の拡張に対する批判 Hoffer(1956)
逆転移概念の拡張に対する批判 Hoffer(1956) 分析家の患者への転移と分析家の逆転移を区別して、後者は分析家の内的な反応であるとした。 Chediak(1979) 逆転移は、患者に対する分析者の対抗反応のひとつであるとした。それらは 患者からの情報と分析者のもっている知識とに基づく、知的理解 人としての患者への全般的反応、分析家の人格に対する患者の反応の等価物 患者への分析家の転移 患者への共感的同一化
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重症例治療における逆転移 Winnicott(1949) 「客観的逆転移」 重症な人たちとの査定における逆転移 Kernberg(1965)
重症例治療における逆転移 Winnicott(1949) 「客観的逆転移」 重症な人たちとの査定における逆転移 Kernberg(1965) 重症の人格障害において分析家の情緒反応は、診断的な価値がある。 Grinberg(1962) 投影逆同一化Projective couter-identification
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Sandler(1976)の役割応答性 role responsiveness
患者は,主な無意識的な願望的な空想のなかに表象されている自己と対象の相互作用を実現,現実化しようとするだろう。この相互作用は、主体にとっての役割と対象にとっての役割(役割関係)を含む形で、急速な無意識的(非言語的)信号を通して転移の中で分析家を操作する形で実現化しやすい。それは分析者に特定の役割反応を引き起こす。それを意識することが重要で、そこで分析家の「自由に漂う応答性」が求められる。
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Kleinian以外での発見 Loewald(1986)
転移と逆転移は相互関係の対人関係であり、別々に扱うことができない。「(転移と逆転移は)個人の人生が数え切れないくらいの切磋琢磨と派生変形とを繰り返しながら、そこから生まれ、そこに留まるような複雑に織り込まれた他者との関係に起源をもつ、同じ力動の二つの側面である。これらの変形のひとつが精神分析状況の出会いのなかで明らかになるのだ」 Gill,LangsやMcLaughlinの主張
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逆転移を発見する 何が投影されているのか その投影はどんな防衛を目的にしているのか、つまり患者はどんな感情、自己の一部や心の状態から逃れようとしているのか、そしてなぜなのか 私たちが実演に寄与しているのかどうか、つまり治療関係について何が起きているかを考える代わりに、ある種の行為に追い込まれているかどうか
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訓練分析の限界 Silverman(1985)「分析家が完全に動じなくなるほどには自分自身の無意識的傾向を完全に理解しコントロールすることを教育分析家から学ぶことができないせいでもある」。 →フロイトもクラインも、こうした議論には、一生分析だ、訓練は常に終わりがないと答えるだろう。そしてもしそこに逆転移があるなら、それを分析し続けるしかないという議論になる。
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Sharpeの警告 「つねに分析家はコンプレックスや盲点、限界をもつであろう..というのは、それは分析家があくまで人間だということを言っているに過ぎない。分析家が普通の人間でなくなるときには、よき分析家でもなくなる。…逆転移はしばしば、そのなかに愛情に満ちた態度を含んでいるかのように語られる。問題を起こすような逆転移は,治療者にとって無意識的な場合である。たとえそれが幼児的な、陰性のあるいは陽性の転移のいずれかであろうと、あるいは両者の交錯したものであろうと、….もしも私たちが逆転を起こすことがないと考えるなら、それは自己欺瞞である。重要なことは逆転移の質である。」
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逆転移と作業するガイドライン 患者の言語的、非言語的行動に対する自分自身の情緒反応について気づく習慣をもつ。 患者に耳を傾けているときに、心に浮かんだことで無関係な連想に見えるものを見逃さない。 そのときに自分自身の人生で問題になっていることで自分の経験している感情は説明できるだろうか。 その感情が自分に個人的に関連しているときですら、あなたは患者の投影に反応していることがあるかもしれない。
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あなたがどうしてもそうしたいと体験しているときには、介入を避ける。解釈したい気持ちは、自分が侵入されているために患者に送り返したい投影の力を示している。
あなたのなかに生じた感情とともにとどまり続けようとする。何か言いたくなったら、それは投影同一視の作動しているさらなる指標となる。 自分が重要な情緒的距離や視野を得るとともに内的な内省の過程ができ、それで心理的な緊張感を和らげられる。この段階に内的に到達したら、可能な解釈を定式化する準備ができ、患者がそれに受け入れられる判断ができるようになる。
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現代に向かって Jacobs(1983) 逆転移的再演のなかで自己を活用する Renikらの自己開示論
現代に向かって Jacobs(1983) 逆転移的再演のなかで自己を活用する Renikらの自己開示論 engagementやenactmentの再評価 など 逆転移をより積極的に見直していくという実践が行われている。 コンテクストはクライン学派だが、Barrangerらの「Bipersonal Field」もその場での在り方を見直していく作業
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枠との関係 抱える環境、コンテインする環境 WinnicottやBionの発見 枠のある治療と枠破り Langsによる基本原則の再定式化
枠との関係 抱える環境、コンテインする環境 WinnicottやBionの発見 枠のある治療と枠破り Langsによる基本原則の再定式化 治療構造論との大きな接点(小此木の 第二次操作構造論)
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分析家の態度に影響 分析家の態度に結び付けられる。 Jacobの自己開示論
分析家の態度に影響 分析家の態度に結び付けられる。 Jacobの自己開示論 児童分析における家族成員(Brtnstein &Glenn,1988) 分析家の病気が無意識の防衛を生み出す(Abent,1982) 分析家の性別が逆転移として特定の時期の子供に影響を及ぼす(Tyson,P,1980) →「有益な共感」と「不利益な逆転移」
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自己愛転移 自己愛転移が起きる→自己愛人格障害と診断 幼児期には自己愛を充足する人間関係が必要である。そして現在まで。 対象愛 原始的自己愛
自己愛転移 自己愛転移が起きる→自己愛人格障害と診断 幼児期には自己愛を充足する人間関係が必要である。そして現在まで。 対象愛 原始的自己愛 誇大的自己(太古的自己) ---- 鏡転移(称賛されるべき自己が排除 されたために生じた母親に見た姿を見出す) 理想化対象(理想的 両親像)-- 理想化転移―双子転移(見失った自分、欠けた自分を治療者がもっている。それを補い、取り入れたい。父親)
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パラレルな発達 自己愛と対象愛は並行して発達する 抑圧 自己愛の領域 垂直分割 水平分割
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自己対象の発見 → 間主観性 写し返された自己対象 mirroring self-object 理想化された親イマーゴ
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双極性の自己 bipolar self 執行機能 緊張のバランスのなか 誇大的自己(野心) 理想化対象(理想)
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経験に近い臨床感覚と理論 自己(自我という精神装置ではない) -- イニシアティブ 自己と対象との相互作用=変容性内在化
自己と対象との相互作用=変容性内在化 一貫性のある(断片化されたボーダー) →新しい臨床的知見 (怒りは二次的で、防衛は自己の保護) 変容性内在化 :自己対象としての親の機能の共感不全に対して自己対象が機能するように確かな対象となる。
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対話的に考える
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夢の研究の歴史的文脈から 歴史的展望:夢は 1.願望充足、眠りの守護者であり、防衛によって行われる変形の産物である(フロイト) →
イド、性的、攻撃的衝動、超自我の禁止、自我の統制機能 2.心的産物、橋渡し的でメタファーに近い(シャープ) 3.素直なもの、無意識的な想像活動であり、 自分への交流(ライクロフト)
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4.スクリーンである、分析者が眠りから覚醒を生む媒介となる(レヴィン)
5.容器、潜在空間であり、夢見るキャパシティがある(ビオン-メルツアー、ウィニコット-カーン) 6.それを語ることの重要性(ウィニコット、シェーファー) :歴史的には、REM睡眠の発見と、睡眠研究の発展のインパクトがある (守護仮説→活性化仮説への移行)
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夢の研究の文脈から Day Residue, Recall residues, and Dreams(1971) JAPA
夢は抑圧や力動的な意味、発生論的な側面よりもむしろ主たる外傷(外的事象)と次の二つの間の結びつきの周辺に現われる (1)日常残余、顕在夢、潜在夢内容とが 等 しく織りなすネットワーク (2)分析的な関係
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心的現実の文脈から S.フロイト(1937)「分析技法における構成の仕事」における構成の治療的意味
R.シェーファー(1980)『精神分析における物語り行為』における物語モデル D.P.スペンス(1982)『歴史的真実と物語的真実』における分析の談話研究 →クライエントが語る談話は、現実か幻想か?
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クライエントの語る治療 10人のスーパーヴァイズした症例の分析
A Psychoanalytic study of material from patients in Psychotherapy(1972) IJPP 10人のスーパーヴァイズした症例の分析 →指標から一次的な適応的文脈の発見 The Patient‘s view of the Therapist:reality or fantasy?(1973) IJPP スーパーヴァイズした症例の患者が治療者についてimplicitにコメントしている The patient‘s unconsicous perception of the Therapist’ error(1975) IJPP 置き換えと変装とを使って、見えていない主題や患者が自分を責める →患者の連想のなかに指標の発見
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フロイト研究の文脈から 父親の治療をしている/ドラを誘惑した男を知っている/その後も父親と接している
症例Dora 父親の治療をしている/ドラを誘惑した男を知っている/その後も父親と接している →一対一の原則の違反 症例鼠男 手紙を書いたり、食事を与えたり逸脱している→治療者の逸脱とその空想 症例狼男 分析を始めさせるような勧誘をしたり、怠けたことを許したりしたこと→誘惑と幻覚や行動化を引き起こす →偽同盟による治癒 misalliance cure (共謀Conspiracy)
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偽同盟と基本原則 治療者の間違い=基本原則(枠)の逸脱→偽同盟による治癒=共謀
(逆転移)→ 治療者の間違い=基本原則(枠)の逸脱→偽同盟による治癒=共謀 相互的な場のなかで「螺旋状に起きる相互作用spiraling interaciton」 Therapeutic Interaction(1976) Bipersonal field(1976)
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逆転移の歴史的文脈から a. S.Freud(1910) →治療者の無意識の感情のクライエントへの悪影響
b. M.Balint,A.Reichら →転移反応に対する逆転移を指摘 D.W.Winnicott(1958) 「逆転移のなかでの憎しみ」=客観的な逆転移 c. P.Heimann(1950) →分析の道具としての逆転移の感情を指摘。 d. B.Joseph,W.Bion以降 →投影同一化の受け皿としての逆転移
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逆転移と投影性同一視から 相互投影とスーパーヴァイザーとしての患者
1.投影性同一視の問題点 治療者の間違いを患者の病理に還元してしまう=医原病症候群 2.相互作用の場=bipersonal field Little,M(1951)「逆転移」とそれへの反応 Searles,H(1975)「分析家のための治療者としての患者」 →無意識的なコメンテーター=修正する人=スーパーヴァイザーとしての患者
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隠蔽記憶のモデル 隠しているのはどの記憶か?
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二つの派生物の発見 ◇ある面接を傾聴して、その面接の中心的な主題を見いだすこと ◇患者と治療者の相互行為
◇それぞれのコミュニケーションでの二層の派生物 type one derivatives-顕在内容の無意識的意味 から行われる推論 type two derivatives-適応的文脈から行われる 推論
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いろいろな派生物の発見(Langs) ◇ある面接を傾聴して、その面接の中心的な主題を見いだすこと ◇患者と治療者の相互行為
◇それぞれのコミュニケーションでの二層の派生物 type one derivatives-顕在内容の無意識的意味から行われる推論 type two derivatives-適応的文脈から行われる推論 54生き生きとした接触感や生の接点を求める:転移の芽生え 転移の理解:治療関係の言葉であると同時に、クライエントの過去や現在の談話でもあると考える。多くの事例で、語られる言葉の多くを治療に関する文脈適応(Langs)と見なす視点を持ち続ける視点とパースペクティブとして聞く視点、これを弁証法的なものとみなすことが重要になる。 例えば、先の事例で、分析をしていくと、主治医の先生にうるさく言われて、私が母親のように従順に彼を引き受けたことを、私が彼のために迷惑をかけられていると、面接で感じているっていうのですね。自分が迷惑をかけている、そういう存在である。お母さんはぼやであるにしても、やけどした、私は母親のやけど自分のせいだと思ってしまう彼の、私に対する関係を取り扱っていく。彼は私が、自分のせいだと迷惑だと思っているのでは、って彼の自罰性を解釈すると、「やけど」っていつも言い返すのですが、これも何か私としては、彼が自分を責めることで、繰り返しているまぞ的な快感も含めて、抵抗を示していると思いましたね。それと私があるときには母親に苦労させる父親のようであったり、つまり治療が火の車、自転車操業のようであったり、彼の言葉に傷ついてスティグマを負う母親だったりすることが繰り返し、起きるわけです。そうした転移の中で、私と彼は実際に迷惑を書けたり、傷ついた生々しい関係を生きている、それはフォーミュレーションのように、冷静に眺められるようなものではなく、なにかにおいや雰囲気、これは藤山先生が得意な分野ですが、その相互性のようなもののなかで、体験しているものなのです。私はこれを皮膚感覚で接点とか、臭覚や味覚の原始的感覚の領域といいますが、そこで起きていることがやはり言葉で意識される必要があるのです。実際、強迫の患者とあっていると、においのようなもので嫌になることってありますし、この事例などは、父親の前で萎縮している彼から胡散臭いっていう感じを持っていました。 あるときに彼は面接にこれなくなって、病棟といってももちろん病院の中に面接室はありますから、目と鼻の先立ったわけですが、これないで、面接室の中でまっている。で30分ぐらいしたら来るわけです。今日はあまり話すことがなくて、と、毎回、話すことがなくても、面接時間の枠は何分からですからと話すと、そうした押し引きをしていて、強迫症状があるから遅れるのだろうとおもっているのです。で私は儀式的なことだろうなと思いますが、どうも違う。で彼が自己臭の症状をもっていたことにはたと気がつくのです。つまり私の前でくさいと私が思うのではないかと思って来れない、臭いが伝わってしまったら、と。そんな形で治療の外のことのように見えたことを、もう一度考え直して、それで再び、彼との間と転移関係の中に自分を置いてみて、治療室の中でこそ起きることを理解していく。でその臭いが焼け爛れた臭いという具合につながっていくのですね。実は彼がお母さんにやけどを負わせたのは、勝手口で遊んで帰っているところ、夕飯を作っていたお母さんにぶつかってしまって、それで油の火が飛んでしまったというのですね。ここまで来ると、彼が自分に勝手なことをしてはいけないといっていることも含めて、彼がしばしば夕飯のご飯のにおいとか、まあ病院でも飯のにおいというのは重要なことなのですが、連想しているときに、明らかにそこには焼けただれた臭いというネガティブな面があるなって思うのですね。でもそのことがなかなか言葉にはできなかったですね。
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Cl:ここに来るときに、駅から道まではともかく、道の入ったところに建物があるので、あそこで迷ったんです。分かりにくいですよね、この場所。 Th:ああ、道に迷った、入りにくい場所ですかね、ここは。 Cl:ええ、予約は母がしてくれたので、そもそも連絡はしていませんし、なんとなく感覚がつかみにくいというか、その場所までたどり着けるかどうかわかりませんでしたし。 Th:はじまりは不安なものです。どんな場合もそうです、あなたがお話されたように、会社で新しい職場になったときに症状が起きたということもそうでしょうけど、はじめに迷うとなかなか、正しい道にたどり着けないってこともあります。
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Cl:私がどうしてここに来たのか、って思いがありますから。母は主治医が必要だというなら、必要だと思っているようですが、来るのは私ですからね。 Th:そうですよね。お母さんが心配になっている、だからあなたはここに来た。私はあなたがここに来ることに迷った理由がそこら辺にありそうです。 Cl:だいたい母親、ここに来る途中で思ったのですが、母親は自分のことしか考えていないって。だから私もそうなれば、きっと楽になるはずでしょう。そう思いませんか。 →派生物がぶつかった瞬間が、連想が豊かになる可能性であるが、たいていの場合には、ここに抵抗(防衛)がかかっている。
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Th:ここに来る途中にいろいろ考えていた、それも迷ったことと関連しているのでしょうね。自分のために、ここに来ているという感覚がないなら、ここに来るのはちょっと躊躇したでしょうし。
Cl:嫌だったというわけではないです。えっと来たくなかったわけではない。うーん、苦しくなるのは私ですし。 Th:私があなたが来たくなかったといったように聞こえましたか?躊躇した、だから迷ったと言ったのですが。「うーん」という、とても渋い顔をして考えておられたけど、症状は困っているけど、でもここに来ることでどんなことが行われるか、不安だし、自分のためなのか、母親のためなのかっていろいろと考えていていたのですね。 →転移の取り扱い
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Cl:そうですね。私はよく上司から考えてばかりいないで行動しろって言われます。
Th:先ほど出てきた上司ですね。あなたが職場にいず楽なった理由の一つでしたね。 Cl:彼には何も言えません、まあ、言わなかった私にも責任はあるのですが、以前からあまり人に面と向かっていう人間ではないので。 Th:先ほどお母さんがここに来るようにしたときにも、そして上司が仕事に関しても、同じかもしれませんが、あまり「嫌」と言いにくいのでしょうね。さっき私に違うと言う時に躊躇していましたが、それってあなたの繰り返されている傾向とも言えますね。 →現在、過去、今こここでの解釈
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TH Cl TH 母親との関係:生育歴のパースペクティブ
ここに来る途中で思ったのですが、母親は自分のことしか考えていないって。だから私もそうなれば、きっと楽になるはずでしょう。そう思いませんか。 TH 59転移については松木先生が逆転移と一緒にお話しする予定ですから、これ以上は話しませんが、私はLangs同様、転移を単純に二つの派生物の合成であり、治療者との文脈への適応だと考えています。 Cl TH 直前の治療関係
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コミュニケーションのタイプ ◇タイプA Type A field=
◇タイプA Type A field= 象徴や幻想が主な媒介としての役割を果たす場。type two derivativesが中心になる.遊びの場や移行空間を介して有用な洞察が得られる。 ◇タイプB Type B field= 投影同一視と行動による解消が行われる。 (Kahn) ◇タイプC Type C field= 様々な結合を破壊するために行われる。 (Bion)
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ここでの逆転移 治療者が転移を二つの聞き方をしている。もちろんそれによって、半ば聞いているという聞き方になり、多くは沈黙していることが多いが、読解には多くのエネルギーを使う→知らないうちに共謀関係conspiracyに陥る。コミュニケーションのスタイル(転移)、枠破り(行動化)など、エナクトメントのBipersonalな場のなかで、巻き込まれることは不可避である。
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適応的心理療法 意識システムと深層無意識システムが存在する。 深層無意識は感情喚起的な処理をする
単一メッセージユニットと二重メッセージユニットが存在する。 構造モデルと二重システムモデルがある。 強い適応的な文脈が存在する。
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逆転移を伝えようとする回路 単独で読解される→フロイトの自由連想に現れている拡散的な側面を強調する→ユングのactive imaginationつまり創造的な連想の世界 引き金読解→今ここでの関係として、治療関係がもっとも強力な引き金として収束的な側面を強調するつまり投影と同一化などの転移神経症つまり防衛の世界
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枠のある精神療法1 (2)明確な対人関係の境界線 (3)患者の現実との接触、現実検討を行う キャパシティを無意識的に支持する
(1)基本的信頼感 (2)明確な対人関係の境界線 (3)患者の現実との接触、現実検討を行う キャパシティを無意識的に支持する (4)健全な治療的共生を生むような関係の 基礎となる (5)本当の洞察を通じて治癒が生じる様式 の基盤となる
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枠のある精神療法2 (6)治療者のものではない患者の狂気の 周辺にある力動や発生論の況提示 (7)健全なアイデンティティと自己愛を持って
周辺にある力動や発生論の況提示 (7)健全なアイデンティティと自己愛を持って いる人として治療者のイメージを持ち、 それを取り入れる (8)正気な治療者像 (9)充分に抱えられて、庇護されているという 強い感覚 (10)適切な欲求不満と健全な満足の状況
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枠のない精神療法 (2)迫害的で被害妄想的な不安..治療が狂気にとっては驚異であるために (3)分離不安..治療者が答えてくれないさびしさ
(1)閉所恐怖的な不安..適切な庇護がもたらす窮屈さと不安 (2)迫害的で被害妄想的な不安..治療が狂気にとっては驚異であるために (3)分離不安..治療者が答えてくれないさびしさ (4)病的な充足、関係性がないこと、精神療法家において狂気が欠けているという ことが危険なものと感じられる。
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枠からの逸脱=狂気を抱える →治療者は談話からこれに気が付くように、読解の回路をもつ。 ①表示談話から読む ②談話のスタイルから読む
(1)反恐怖症的な防衛によって、行動化する (2)躁的防衛を利用して、抑鬱的にならない (3)病的な防衛や関係性を形成する →治療者は談話からこれに気が付くように、読解の回路をもつ。 ①表示談話から読む ②談話のスタイルから読む
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