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較正したホール素子を用いた 低温での超伝導マグネットの 磁場分布測定 宇宙物理実験研究室 安保匠
較正したホール素子を用いた 低温での超伝導マグネットの 磁場分布測定 宇宙物理実験研究室 安保匠 私は、ホール素子を較正し、それを用いて低温での超伝導マグネットの磁場分布を測定しました。宇宙物理実験室の安保匠です。
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外へ漏れる磁場を遮断する磁気シールドの製作のため
目的 断熱消磁冷凍機に使用している 超伝導マグネットの磁場分布を測定する。 ↓ 外へ漏れる磁場を遮断する磁気シールドの製作のため ①ホール素子のキャリブレーション ②超伝導マグネットの中心磁場分布測定 この実験の目的は、磁場の影響を受けやすいTES型X線マイクロカロリメーターを、断熱消磁冷凍機内で適切に動作させるため、冷凍機に一緒に組み込まれている超伝導マグネット(マグネット)が発生する磁場を知ろうというものである。そして将来的にはカロリメーターや冷凍機内の配線等にその磁場が流れ込まないように、超伝導マグネットの磁場を抑えこむ磁気シールドを作成する、という目的があります。 そのために今実験では、まず磁場を測定するためのホール素子の較正、そして次にそのホール素子を使い実際にマグネットが作る中心磁場を測定しました。
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超伝導マグネットの磁場分布測定 TES型X線マイクロカロリメータ の評価試験 ↓断熱消磁冷凍機に組み込む マグネットで磁場を発生させる ↓
磁気冷却(断熱消磁)させる 磁場分布の把握が必要 14cm ここで、マグネットが冷凍機内における役割を説明します。断熱消磁冷凍機とは、先ほど新井君が説明してくれたTES型X線マイクロカロリメーターの評価試験を行うための冷凍機のことです。実際に試験を行うには、マイクロカロリメーターを冷凍機に組み込み機内を断熱消磁させ、カロリメータを冷やすのですが、その断熱消磁するときに、マグネットが発生する磁場が必要になってくるのです。そのためその磁場分布を理解しておくことが要請されるというわけです。
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ホール素子の原理 VとBの関係を知るため、較正が必要。 V=(Rh/d)I・B 厚さ:0.6mm ② I 電位差V B 2.5mm ③ ④
+ ー ④ + ー + ー + ー 1.5mm d ホール素子 I 旭化成製HG106A 感磁部:GaAs(ガリウムヒ素) B ① 次にその磁場を調べるためのホール素子について説明します。 ホール素子とは、ホール効果を利用した磁気センサーのことです。 ホール効果とは、電流が流れているものに対し、その電流に垂直に磁場をかけると、電流と磁場の両方に直交する方向にローレンツ力が発生し起電力が現れる現象のことを言います。 ホール素子はその起電力を読み取り、磁場を計測する。 具体的に、ホール素子の動作について説明します。 まず、①②間に電流Iを流し、ホール素子に垂直に磁場Bをかけます。すると、ローレンツ力により電子が曲げられ、③④間に起電力Vが発生します。このとき発生する起電力Vは、図の式で表され、この起電力から磁場を測定します。 以上のことからわかるように、ホール素子を使っても磁場Bを直接測ることが出来ないので、今回は、ガウスメーターという磁場測定器を使うことで磁場Bを計測し、そのときのホール素子の出力電圧Vを計測するという実験を行い、ホール素子の較正を試みました。 ちなみに今回使用したホール素子は、旭化成のHG106Aで、磁場を感知する部分は、ガリウムヒ素で構成されています。 今回使用したものは、旭化成のHg106aというもので、それは、バンドキャップ1.43eVのN型半導体、GaAs(ガリウムヒ素)で構成されていて、図のように数μm程度の厚さで電極①~④を持つ半導体薄膜を形成しています。 ホール効果の原理とは、まず①―③間に電圧を加えて電流を流し、さらに薄膜に垂直な向きに磁場をかけ、移動している電子がローレンツ力により曲げられて、それにより②~④間に電位差が発生する、というもので、実験者は、ホール素子にある一定電流を流したときの、観測する磁場に対する振る舞いを知る必要があります。今実験では、①―③間に流す電流、ホール素子の入力電流をIc、②―④間に発生する電位差、ホール出力電圧をVoutとして読み取っています。そして、それはVout=(Rh/d)IcBという式で表さます。ここで、Rhとはホール係数と呼ばれる定数で、Rh=1/enで表されます。 公称値では電子移動度8500c㎡/VS、キャリアは電子、 ③④間に発生する電位差V VとBの関係を知るため、較正が必要。 V=(Rh/d)I・B (Rh:ホール係数)
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ホール素子の較正試験 磁場計測器とホール素子で、小型超伝導コイルで発生させた磁場を測定。 小型超伝導コイル
磁場計測器からは磁場Bを、ホール素子からは電位差Vを読み取る。 2cm BとVを照合し、較正を行う。 測定条件 今回の較正実験は、小型の超伝導コイルに電流を流すことで、未知の磁場Bを発生させます。そしてそのときの磁場をガウスメーターとホール素子を使って測定。 そして、ガウスメーターの測定値と、ホール素子の出力電圧Vを照合し、ホール素子の較正を行う。 測定条件として、温度が300Kの常温と、77Kの窒素温度、4.2Kのヘリウム温度、この3温度で測定し、さらにそのそれぞれの温度でホール素子への入力電流を5mAと10mAで測定。 input5mAまたは10mAを、そして観測する磁場を発生させるためにコイルに電流を流し、そのときの磁場をgaussmeterという磁場観測装置で読み取ると同時に、そのときのホール素子の出力電圧を記録します。測定条件としては、温度が、常温、窒素温度、ヘリウム温度の3条件。さらにそれぞれでinput電流を5mAと10mAに変えて測定します。今回は、マグネット内の磁場分布を三次元で調べるため、一つの軸にひとつホール素子を使うため最低三つのホール素子が必要となります。 温度は300K(常温)、77K(窒素温度)、 4.2K(ヘリウム温度)の3点。 それぞれの温度で 電流Iを5mAと10mAの2状態で測定。
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・すべての温度で線形性を保つことを確認。 ・300Kの結果からホール素子は数gaussの感度を持つ
400 40 300 磁場B 200 磁場B 20 100 -100 -20 -200 -40 300K -300 77K -400 (mV) (mV) (gauss) 横軸:ホール素子の電位差V 1000 750 ・すべての温度で線形性を保つことを確認。 ・300Kの結果からホール素子は数gaussの感度を持つ ・旭化成では動作の保証がなかった4.2Kでの動作を確認(1,000gaussまで) 500 磁場B 250 3グラフのレンジの説明。常温→ヘリウムで測定点増やした。 -250 -500 -750 4.2K -1000 (mV)
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3状態の較正関数 (mV) ホール素子入力5mA ホール素子の電位差 V 77K(窒素温度) 80 70 4.2K(ヘリウム温度)
60 50 常温から窒素温度以下 では、ホール素子の感度 が上がっている。 窒素とヘリウム温度は ほぼ同じ。 40 30 20 10 (gauss) 磁場B
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超伝導マグネットの中心磁場分布測定 測定箇所は三箇所 超伝導
マグネッ ト中心 Backing coil:超伝導マグネットの磁場を打ち消すように作られたコイル→その効果を知る backing coil 中心 detector stage 中心 次に、校正したホール素子を使い、超伝導マグネットの磁場を測定しました。測定した箇所はマグネット中心軸の三箇所。ここでBucking coilとは、超伝導マグネットの磁場を打ち消すように設置されたコイルで、それがどれくらい機能しているかを調べるために測定。 Detecterstage は、マイクロカロリメータを設置する場所である。 さらに今回は、実際に磁場分布を測定する前にfemmというソフトを用いて、超伝導マグネットの中心で3万ガウスの磁場を作るときの中心軸上の各点に発生する磁場のシュミレーションを行いました。 超伝導マグネット概略図 Detector stage:TES型マイクロカロリメータ が、配置されるところ→低磁場が必要 シュミレーションも行った
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シュミレーション結果と実験結果 シュミレーション結果 (×1000gauss) (gauss) 100 30 145 (cm) 135 磁場
磁場 20 10 -200 拡大 これが、シュミレーション結果と、実際に測定した点での発生磁場です。曲線がシュミレーション結果、赤緑青の丸がマグネットの上部から50mm70mm100mm のところの測定結果です。 距離(mm) 上端からの距離(cm) :(マグネット中心、backing coil中心、detector stage中心)各位置での測定点
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考察 マグネット中心の実測磁場が、シミュレーションの値より10%ほど弱い。 原因:ホール素子の較正の誤差
測定上の問題(ホール素子の傾き、位置) Detector Stage上での磁場が、カロリメータが正常に動作 できる範囲(~1gauss)を超える。 →磁気シールドで防ぐ。
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まとめ ホール素子を較正し、超伝導マグネットの磁場分布をシュミレーションではなく、実測で確認 今後の課題
・違う方法でのホール素子較正→ 異なったコイルでも測定し、磁場の計算値とも比較する ・磁場の測定点を増やし、効果的な磁気シールドを設計する
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超伝導マグネットの磁場分布 磁気シールドのシュミレーション
LHe tank 配線 配線 超伝導マグネット Bucking coil Femmを用いて超伝導マグネットが発生する磁場分布の磁気シールドがある場合と、ない場合のシュミレーションを行いました。 マグネットアダプタ 磁気シールド 磁気シールドなし 磁気シールドあり
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