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事例研究(ミクロ経済政策・問題分析 I) - 規制産業と料金・価格制度 -
(冬学期第2回 – 手法(5) . 応用データ解析/パネルデータ分析) 2016年 10月 24日 戒能一成
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0. 本講の目的 (手法面) - 応用データ解析の手法のうち、パネルデータ 分析の概要を理解する (内容面) - 計量経済学・統計学を実戦で応用する際の 留意点を理解する (4)
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1. パネルデータ分析とは 1-1. パネルデータ分析 (Longitudinal/Panel Data) - パネルデータ分析とは、複数の対象・複数の時 点に関するデータを用いた回帰分析をいう (注 ; 対象x時点 だけでなく、稀に 対象x対象、 対象x対象x時点 などの場合あり) - パネルデータ分析の利点は多数あるが、実務上 下記 3点が非常に重要 ・ 試料数が限られる場合の有効な計測 ・ 膨大な試料からの特定の効果・影響の計測 ・ 複数主体に横断的な効果・影響の計測 3
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1. パネルデータ分析とは 1-2. パネルデータ分析の概念図 - パネルデータ分析とは、複数の対象・複数の時 点に関するデータを用いた回帰分析をいう 時間 → 0 1 ・・・ t (制度変更) ・・・ n (2010) 対象 ↓ X1 y10 y11 ・・・ y1t (変更)・・・ y1n (変更) X2 y20 y21 ・・・ y2t (変更)・・・ y2n (変更) X3 y30 y31 ・・・ y3t ( -- ) ・・・ y3n( -- ) X4 y40 y41 ・・・ y4t ( -- ) ・・・ y4n( -- ) 外的要因(毎年度変化)の影響が存在 パネルデータ分析 ( 複数対象・複数時点 ) → 外的要因変化と対象 異質性の同時除去 異質性 が存在 4
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1. パネルデータ分析とは 1-3. パネルデータ分析と異質性 - パネルデータ分析において、項目の選択の際に なるべく異質性の少ない対象を選ぶ必要あり ・ 企業 → 業種, 売上高, 従業員数 ・・・ ・ 家計 → 所得, 世帯員数, 居住地域 ・・・ - 異質性を管理せずにパネルデータ分析をしても 単なる項目別の時系列分析と比べて精度・分解 能などが向上せず利点が活かせない場合あり - また一般の公的統計調査からパネルデータを 作成する場合、「対象主体の入れ替わり」に よる暗黙裏の異質性に注意が必要 5
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1. パネルデータ分析とは 1-4. パネルデータと「欠測」 - パネルデータ分析において「対象主体の入替り」 を特段の問題としないのであれば、特定の主体 のデータの一時的な「欠測」は問題とならない ・ 対象主体の出現・消滅 (起業・廃業など) ・ データの取得不可 (不提出・自然災害など) (「アンバランスド・パネルデータ」という) - 特定の年度が「欠測」となっている場合も同様 ・ 調査の年度が連続しない場合 ・ 統計調査が実施されていない場合 6
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2. パネルデータ分析と時系列分析 2-1. 時系列分析(ARMAX)の成立条件 [復習] - 系列相関の消滅 No Serial/Auto Correlation → 系列相関が発生しないか消滅していること - 変数の(弱)定常性 Weakly Stationary Variables → 変数は弱定常性条件を満たすこと (変数が単調増加・減少を続けていないこと) - 因果一方向性 No Reverse Causality → 被説明変数(y)から説明変数(xi)への因果性 が存在しないこと ← パネルデータ分析は系列相関対策に有効 7
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2. パネルデータ分析と時系列分析 2-2. パネルデータ分析と系列相関 - パネルデータ分析では、一般に計測において 系列相関が発生することは少ない → 個々の対象主体のデータに系列相関が存在 しても、複数の対象主体のデータを用いれば 系列相関は問題とならない場合が多い - 念のため系列相関の検定を掛けておくのも一考 - 但しパネルデータ分析は「ラグ項」が存在しない ことを保証している訳ではない → 先ず通常の時系列分析を行いラグ構造を 把握・検討すべき (ダイナミックパネル分析) 8
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2. パネルデータ分析と時系列分析 2-3. パネルデータ分析と定常性 - パネルデータ分析においても、各変数の定常性 について必ず確認が必要 → 定常でない個々の対象主体のデータにつき 複数の対象主体のデータを集めてきても、 定常性の問題がなくなる訳ではない - パネルデータでの定常性検定については、ADF 検定の一種である Fisher Type ADF検定を適用 - 定常性検定が棄却された場合、通常のARMAX モデル同様に階差データをとり対応する 9
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2. パネルデータ分析と時系列分析 2-4. パネルデータ分析と因果一方向性 - パネルデータ分析においても、(個別に)因果の一 方向性について確認が必要 → パネルデータ自体から因果性を判定する手 法は開発されているが未だ一般的でない - 因果の方向性検定は各説明変数毎に被説明変 数と Granger 因果性検定を適用 (Pair wise Granger Causality Test) - 逆方向の因果性が検出された場合、モデル構造 を見直す(変数を交換する)か、パネルVARモデ ルを構築; 「無意味解」「不安定解」を回避 10
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3-1. パネルデータ分析の「安全な」手順 [重要] 1) 通常の項目別時系列分析の試行
3. パネルデータ分析の手法 3-1. パネルデータ分析の「安全な」手順 [重要] 1) 通常の項目別時系列分析の試行 a- 逆方向因果性判定 (ARMAX or VAR) b- 定常性判定 (定常化処理) c- ラグ構造把握 2) ( 1)を与件とした) パネルデータ分析の試行 (a- 逆方向因果性 – 通常の分析と共通 ) b- パネル定常性判定 (定常化処理) c- ラグ項の選択・検討 ( 1)の結果を反映) d- 固定効果・変量効果などモデル選択 (e- 系列相関消滅の確認 (念のため)) 11
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- 固定効果モデル (Fixed Effect Model; “Within”) 個々の対象に対応したダミー変数を説明変数
3. パネルデータ分析の手法 3-2. パネルデータ分析の種類(1) - 固定効果モデル (Fixed Effect Model; “Within”) 個々の対象に対応したダミー変数を説明変数 として設け、対象毎の異質性を管理した上で 「対象に横断的な変化」に着目した分析 Y(i,t) = αi + X(i,t)*βfx + Σi DMi(1/0) + ε(i,t) - 変量効果モデル (Random Effect Model) 対象に対応したダミー変数を設けず、対象毎 の(潜在的)異質性を確率的現象と仮定 Y(i,t) = αi + X(i,t)*βre + ε(i,t) 12
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- ビトィーンモデル (“Between” Model) 個々の対象・時間を識別するが、説明変数に 対象の「平均値」を用いた回帰分析を行い、
3. パネルデータ分析の手法 3-3. パネルデータ分析の種類(2) - ビトィーンモデル (“Between” Model) 個々の対象・時間を識別するが、説明変数に 対象の「平均値」を用いた回帰分析を行い、 対象間の異質性に着目する分析 (← 着目点が固定効果モデル(“Within”)の反対) Y(i,t) = αi + Xaverage(i)*βbe + ε(i,t) - プールモデル (Pooled Model) (通常の回帰分析) 個々の対象・時間を識別せず、全てのデータ が均整に相関し誤差が均一と仮定した分析 Y = α + X *βpo + ε 13
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3. パネルデータ分析の手法 3-4. パネルデータ分析の種類(3) 変量効果モデル プールデータモデル - 全体的変化に着目
y ; 被説明変数 主体 i2 (時間変化) ビトウィーンモデル (“Between”) - 主体間の差異に着目 固定効果モデル (“within”) - 主体毎の変化に着目 固定効果モデル (“within”) - 主体毎の変化に着目 主体 i1 (時間変化) x ; 説明変数 14
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- 定常性検定 (単位根検定 Unit root test) → パネル ADF 検定 (Fisher Type)
3. パネルデータ分析の手法 3-5. パネルデータ分析と検定 - 因果性検定 → Granger 因果性検定 - 定常性検定 (単位根検定 Unit root test) → パネル ADF 検定 (Fisher Type) - 固定効果・変量効果検定 → Hausman 検定 STATAの場合; Ho: 変量効果が正 - 変量効果・プールモデル検定 → Breusch-Pagan 検定 15
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(1) 作図による概況確認 (P-Q図, 焼酎・清酒) (出典: 総務省家計調査報告, 2000-2013暦年)
4. パネルデータ分析の実例 4-1. 都道府県別酒類消費量 (焼酎・清酒) (1) 作図による概況確認 (P-Q図, 焼酎・清酒) (出典: 総務省家計調査報告, 暦年) 16
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(2) 因果性判定 (Granger Causality Test) ( 結果省略, 各県とも有意な逆因果性なし )
4. パネルデータ分析の実例 4-2. 都道府県別酒類消費量 (焼酎・清酒) (2) 因果性判定 (Granger Causality Test) ( 結果省略, 各県とも有意な逆因果性なし ) (3) 単位根検定 (Unit Root Test, Fisher-ADF) ( 結果省略, 全て定常 ) (4) モデル仮構築 ln(Qx(i,t)) = Q0 + β1* ln(Px(i,t)) + β2* ln(I(i,t)) + β3 * ln(Pz(i,t)) + ε(i,t) - 数量を価格・所得・代替財価格で回帰(対数) (本例では結果的に所得は殆どの場合有意でない) 17
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(5a) 固定効果モデル推計 (Fixed Effect -)
4. パネルデータ分析の実例 4-3. 都道府県別酒類消費量 (焼酎) (5a) 固定効果モデル推計 (Fixed Effect -) 焼酎価格(対数) ビール価格(対数) 発泡酒価格(対数) 清酒価格(対数) 定数項 18
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(6a) 変量効果モデル推計 (Random Effect -)
4. パネルデータ分析の実例 4-4. 都道府県別酒類消費量 (焼酎) (6a) 変量効果モデル推計 (Random Effect -) 焼酎価格(対数) ビール価格(対数) 発泡酒価格(対数) 清酒価格(対数) 定数項 19
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(7a) Hausman 検定 ; モデル係数間の有意差検定
4. パネルデータ分析の実例 4-5. 都道府県別酒類消費量 (焼酎) (7a) Hausman 検定 ; モデル係数間の有意差検定 固定効果 変量効果 「係数に差がない」 帰無仮説を棄却 (→ 固定効果) 20
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(8a) プールモデル推計 (Pooled -)
4. パネルデータ分析の実例 4-6. 都道府県別酒類消費量 (焼酎) (8a) プールモデル推計 (Pooled -) 焼酎価格(対数) ビール価格(対数) 発泡酒価格(対数) 清酒価格(対数) 定数項 21
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(9a) 変量・プール検定 (Breusch-Pagan 検定)
4. パネルデータ分析の実例 4-6. 都道府県別酒類消費量 (焼酎) (9a) 変量・プール検定 (Breusch-Pagan 検定) 「県別誤差の分散 0」 帰無仮説を棄却 (→ 変量効果) 但し先のHausman検定の結果から 固定効果モデルが適切と判定される 22
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(5b) 固定効果モデル推計 (Fixed Effect -)
4. パネルデータ分析の実例 4-7. 都道府県別酒類消費量 (清酒) (5b) 固定効果モデル推計 (Fixed Effect -) 清酒価格(対数) ビール価格(対数) 発泡酒価格(対数) 焼酎価格(対数) 定数項 23
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(6b) 変量効果モデル推計 (Random Effect -)
4. パネルデータ分析の実例 4-8. 都道府県別酒類消費量 (清酒) (6b) 変量効果モデル推計 (Random Effect -) 清酒価格(対数) ビール価格(対数) 発泡酒価格(対数) 焼酎価格(対数) 定数項 24
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(7b) Hausman 検定 ; モデル係数間の有意差検定
4. パネルデータ分析の実例 4-9. 都道府県別酒類消費量 (清酒) (7b) Hausman 検定 ; モデル係数間の有意差検定 固定効果 変量効果 「係数に差がない」 帰無仮説を保留 (→ 変量効果) 25
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(8b) プールモデル推計 (Pooled -)
4. パネルデータ分析の実例 4-10. 都道府県別酒類消費量 (清酒) (8b) プールモデル推計 (Pooled -) 清酒価格(対数) ビール価格(対数) 発泡酒価格(対数) 招集価格(対数) 定数項 26
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(9b) 変量・プール検定 (Breusch-Pagan 検定)
4. パネルデータ分析の実例 4-11. 都道府県別酒類消費量 (清酒) (9b) 変量・プール検定 (Breusch-Pagan 検定) 「県別誤差の分散 0」 帰無仮説を棄却 (→ 変量効果) 先のHausman検定の結果と併せて 変量効果モデルが適切と判定される 27
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