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人類学を中学校・高等学校の 授業にどういかすか
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 米田 穣
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問題意識 自然人類学的視点とは? 食生活からみた人類の適応 まとめと展望 生物学リテラシーの必要性 生物学の魅力は減少している?
日本の生物学教育にはヒト生物学が欠けている 自然人類学的視点とは? 形態・遺伝・適応からみたヒトの特徴 生物種としてのヒト 食生活からみた人類の適応 ヒトの食性(悪食なサル?) 食生態の多様性 生態学のなかのヒト まとめと展望 情報・問題意識の提供・交換・共有
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生物学リテラシーの必要性 新型インフルエンザの騒動 遺伝子改変作物・着床前診断・テイラーメイド医療 市民・マスメディア・政策立案者
不幸中の幸いというべきか、毒性は強くありません。しかし、持病のある場合や妊婦では重症化するおそれもあります。また、秋以降に強毒化する可能性も懸念されています。 このインフルエンザに効くワクチンは当分ありません。発症してしまった人はちょっと辛いのですが、これで免疫を獲得して今後同じタイプのインフルエンザにはかかりにくくなることが期待できますし、公衆衛生的観点からは集団免疫の成立にも貢献することになります。賢く行動してやり過ごしましょう。
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生物学の魅力は減少している? T大学2007年度入試 前期第2次 生物受験者の減少 生物学の魅力が減少?
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日本の生物学教育はヒト生物学が欠けている
ヒト生物学=自然人類学の中高等学校教育での活用 最も身近な生物種 進化の研究が最も進んでいる 生物としての普遍性と、「人間」として特異性
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“Science for All Americans”
American Association for the Advancement of Science (米国科学振興協会) 1989 第1版 Chapter 1: THE NATURE OF SCIENCE Chapter 2: THE NATURE OF MATHEMATICS Chapter 3: THE NATURE OF TECHNOLOGY Chapter 4: THE PHYSICAL SETTING Chapter 5: THE LIVING ENVIRONMENT Chapter 6: THE HUMAN ORGANISM Chapter 7: HUMAN SOCIETY Chapter 8: THE DESIGNED WORLD Chapter 9: THE MATHEMATICAL WORLD Chapter 10: HISTORICAL PERSPECTIVES Chapter 11: COMMON THEMES Chapter 12: HABITS OF MIND Chapter 13: EFFECTIVE LEARNING AND TEACHING Chapter 14: REFORMING EDUCATION Chapter 15: NEXT STEPS
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中学校・高等学校教育に自然人類学的視点を!
生物学=自分自身に関係する科学 生物としての「ヒト(ホモ・サピエンス)」 社会的・文化的存在としての「人間」 生物学=現代社会に直結した科学 医学・創薬・環境問題・食糧問題・生命倫理 生物学=未来を創造する科学 テイラーメイド医療・バイオテクノロジー
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先史学・第四紀学 自然人類学 考古学 環境のなかヒト 生物としてのヒト 文化・社会的存在としての人間 動物相 森林と人間 古環境の復元
生活の仕方 (民族考古学) 炭化種子や木材 環境適応 道具の材料 動物の骨や貝殻 虫歯や病気 食生態 道具の使用 (実験考古学) 集団の関係 自然人類学 生物としてのヒト 人類の起源 考古学 文化・社会的存在としての人間 人類進化 集落・建築 埋葬・お墓 人骨の大きさや形 道具の形・伝統 移動や遺伝子交流 古代DNA
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自然人類学的視点とは ヒトの生物として歴史 ヒトの普遍性と特殊性 進化:形態学的特徴と遺伝的背景 生物学的適応と文化的適応 現代人+ ゴリラ
ネアンデルタール ゴリラ オランウータン チンパンジー
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ヒトの普遍性と特異性 ひと【人】 (大辞林 第二版)
ひと【人】 (大辞林 第二版) 霊長目ヒト科の哺乳類。直立して二足歩行し、動物中最も脳が発達する。言語をもち、手を巧みに使うことによってすぐれた文化を生み出した。現生種は一種で、学名はホモ-サピエンス。人間。人類。 1972年パイオニア10号に設置されたプレート。 宇宙人になったつもりで、ヒトを観察し、その特徴 を考えるきっかけになる。
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ヒト(人類)の特異性:Hominization
特異性を考えることで、生物・脊椎動物・哺乳類・霊長類としての普遍性に気づく ヒトの進化的背景への興味が喚起 文化 言語 社会 大脳化 地上性 (サバンナに適応) 直立二足歩行 11
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Quiz Time!
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A B 7 4 問1:「カードの表がAならば、裏は奇数でなければならない」というルールを破っている可能性があるのはどれ? (1) (3)
(2) (3) (4)
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問2:あなたは高校の先生です。卒業式の夜、街で羽目を外している学生がいないか巡回しています。誰に声をかけますか?
(1) (2) (3) (4)
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抽象的命題 ? 具体的(社会的)命題 ! ウェーソンの4枚カード問題: 社会的契約を直観的に理解する能力が進化
「カードの表がAならば、裏は奇数でなければならない。」 「飲酒するには、20才以上でなければならない。」 ⇒ 表がAのカードと裏が奇数ではない(偶数)カード 具体的(社会的)命題 ! 社会的契約を直観的に理解する能力が進化 ←複雑なルールをもつ社会が進化の背景に 抽象的命題 ? ⇒ 飲酒している人と20才以上ではない人を調べる この現象は我々の心が複雑なルールをもつ社会で進化してきたことを示していると解釈されている。 見知らぬ他者との緊張感のある社会は我々の本質といえるのかもしれない。 進化心理学では我々の心理は、ホモ・エレクトスの狩猟採集から進化を始めていると漠然と仮定している。 しかし、我々の心が形成された時代は意外と最近のことなのかもしれない。 どうやら最後のフロンティアは我々の「心」のなかに隠されているのかもしれません。 以上、ご清聴ありがとうございました。
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我々、ヒトは進化の産物である 近年の進化心理学の発展 人類学的知見を学習することで、ヒトは進化の産物であることを実感できる
子供のヒヒが、嘘の鳴き声で母ヒヒを呼んで、自分では掘り出せない植物の球根を横取りしようと画策している。 ヒトの骨格も進化の産物で、いろいろな時代の祖先の特徴を引き継いで、モザイク状になっている。数字は、特徴が現れた年代(X百万年)
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「人類進化モデル」の進化 人類の進化については不明点も多い 多様な人類種が存在したらしい ヒトはたまたま生き残った幸運な種
ごく少数の化石から推定せねばならない 多様な人類種が存在したらしい ヒトはたまたま生き残った幸運な種 1990年代のブッシュ状になった系統樹。これもすでに大幅に書き換えれている。
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人類進化は英雄物語ではない! 進化に目的はない ヒトは特別な存在ではない 6 6 5 4 5 4 3 3 2 2 1 1
全てを合理的に説明する必要はない ホイッグ史観に注意 進化の結果からみると、全てが現在の生物になるように案配されているように見える。 e.g. 水棲霊長類説、インテリジェントデザイン説 TV番組をみて、人類進化の「英雄物語」を見つけてみよう。(例えば、NHK特集「ヒトとサルが別れた日」 1995年) 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 人は人類進化を英雄物語として語ってしまうが、実際には滅びた人類種がたくさんいる。 複雑な進化系統樹も、ひとつの種(例えばヒト)に注目すると、一直線に見えてしまう。
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何故、初期人類は二足歩行をした? 有利な点・不利な点 直立二足歩行にまつわる形態的特徴 犬歯の小型化と二足歩行 海部さんの実習をお楽しみに!
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最初期人類の生息環境 サバンナ仮説から森林説へ 果実・植物中心の霊長類的食性(3色型色覚)
アファール猿人(400万年前)とサヘラントロプス(700万年前)
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2つの猿人の形態と食性 猿人(アウストラロピテクス類):華奢型・頑丈型 生息環境、食性
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ホモ属の脳拡大 脳が消費するエネルギーの割合が増大 複雑な社会と対応? エネルギー効率のよい食物が必要
肉食・石器・テリトリー拡大・出アフリカ
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ホモ・フロレシエンシスの衝撃! 脳容量が400ccしかない!(チンパンジーと同じ) しかし、高度な技術による石器製作や火の使用
海峡を越えた拡散 23
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脳は燃費が悪い 基礎代謝量は筋肉の16倍 現代人の脳の基礎代謝量は、総エネルギー消費の20-25% 霊長類では、8-10%
一般の哺乳類では、3-5% 猿人(体重35-40kg、脳450cc)11% 原人(体重55-60kg、900cc)17% ⇒高カロリー食品の利用が必要
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肉はエネルギー効率が良い 100gのエネルギー 肉 200 kcal 果実 50-100 kcal 草 10-20 kcal
現代の狩猟採集民 肉から得ているエネルギー 40-60% チンパンジーでは5-7% 狩猟/屍肉あさり 単位面積当たりでは効率が悪い 原人は猿人の8-10倍のテリトリーが必要
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同位体で調べたネアンデルタールの食性 70万~4万年前、欧州・西アジアに生息 非常に強い肉食性 大型草食獣のハンター
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人類の食性はダイナミックに変化した Forager:(遊動的)採集民 Hunter:狩猟民 Collector:(集約的)採集民
ESS(進化的安定期)はどこ?
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縄文時代人は周囲の生態系に強く依存 海産物中心 魚類+C3植物 珊瑚礁中心 28
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同位体生態学による先史人類学 生態系内での物質循環トレーサー:13Cや15Nなどの安定同位体 人類の生態学的位置
生態系の一部だった狩猟採集民(中石器) 生態系からはみ出した農耕牧畜民(新石器) 雑食菜食主義にかわった女性と、菜食主義の男性の頭髪で、13C存在比を比較。頭髪は食生活の変化を記録している。 ブリテン島の沿岸遺跡から出土した狩猟採集民(中石器時代)と農耕民(新石器時代)。 農耕によって海産物の利用が激減した。
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生態系と文化は密接に関連している 植物種の多様性と言語多様性の相関 生物多様性が我々に与えるものを考えよう 生態系サービス
Worldwide, biological diversity (represented by plant diversity) and cultural diversity (represented by language diversity) strongly overlap.
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弥生(続縄文・貝塚後期)の多様な食生態 水田稲作農耕の影響が顕著ではない 家畜の脱落 農耕の遅い伝搬と関係?
北海道 本州 琉球 日本列島では、農耕が伝搬した弥生時代に、魚とC3植物を組み合わせを利用する、縄文時代とよく似た食生態。北海道と沖縄の特殊な食生態も維持されている。 31
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日本にはどうして多様な生物がいるのか? 温帯域では数少ない多様性ホットスポット 日本の田圃で約6100種 生態系と人間、生態系と歴史の関係
生物多様性農業支援センター(NPO)
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生物としての現代人の生活 生態系と我々の関係 食物の生産と流通 遺伝子改変作物をどう考える?
現代人における食生活の多様性は、とても小さくなっている。同位体では北海道(◆)や沖縄(▲)でも違いがみられない。それでも、伝統食には地域生態系を利用する知恵が見られる。あたなの地方はどうですか?
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遺伝子と文化の共進化 食生活は遺伝子にも影響する 乳糖分解酵素と乳生産の遺伝子 病気との関連 古代DNAからの知見 鎌形赤血球
アルコール代謝 古代DNAからの知見 初期農耕民は乳糖不耐性 初期農耕民は現代の欧州人とは つながらない Beja-Pereira et al. (2003). Nature Genetics 35, 311. 乳糖分解酵素の突然変異と、乳牛の乳生産に関わる遺伝子が類似する地理的勾配を示している。 34
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これからの展開 人類学が提供できる「種(たね)」 教育現場からのフィードバック 共通の議論の場 議論の成果としての出版物
直立二足歩行・大脳化に伴う形態の特異性 脊椎動物・霊長類としての普遍性・共通性 遺伝学的な特異性と普遍性(人種、病気) 農耕牧畜の革新性(技術革新と人間生活、病気) 生態系とヒトとの関係 教育現場からのフィードバック どんな「種」が生徒の関心を引くか 進化を実感できる授業計画 共通の議論の場 議論の成果としての出版物
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情報交換の場として活用して下さい 授業の種を提供します 参考書 授業用スライド 質問コーナー(予定) 出前授業(予定) 要望をお寄せ下さい
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