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Franchise fees and Royalties in Japan: Empirical evidence
Masayoshi Maruyama and Yu Yamashita Graduate School of Business Administration, Kobe University 2009年度 東京大学社会科学研究所 産業組織研究会 2009年6月24日(水)
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問題意識(1) (社)日本フランチャイズチェーン協会が2008年7月から9月にかけて行った調査によると、日本国内には、小売業340社、サービス業366社、外食業540社、合計1246社の「ビジネスフォーマット型」のフランチャイズ・チェーンが存在し、総店舗数は約23万5000店、売上高で見れば約20兆3000億円にも上る。 「商標ライセンス型」のフランチャイズ・チェーンを含めると、日本の小売業の総売上高の3割をフランチャイズ・ビジネスが占めている。さらに、フランチャイズ・ビジネスを代表するコンビニエンスストアが日本国内において急速にその数を増加し、2001年には、セブン-イレブン・ジャパンが国内の小売業の中で売上高が最大の企業となっており、社会の多くの関心を集めている。
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問題意識(2) フランチャイズ・ビジネスに関して、組織と契約の理論分析が進展し、導かれた結論を実証的に検証しようとする研究も、米国のフランチャイズ・チェーンを中心に行われている。 日本における実証分析については、自動車産業などにおける下請関係などについては活発な研究が行われているものの、フランチャイズ・チェーンを対象にした実証分析はほとんど行われてきていない。 本論文では、主としてエージェンシー理論から導出される仮説について、個別チェーンのデータを用いて計量経済学的に検証することを目的とする。
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目的 本部と加盟店のフランチャイズ契約において、加盟金およびロイヤリティの導入の有無および大きさを決定する要因を明らかにすること
Lafontaine Slade(1996)が用いた分析モデルを拡張することによって、加盟店側および本部側のモラルハザードやリスクなどと、加盟金・ロイヤリティの導入の有無、大きさの関係を再確認すること。 拡張した点 加盟店の努力のみ → 本部の努力についても導入 Double-side moral hazardに関して分析できる 加盟金に関するComparative Statics ロイヤリティの導入が必要かどうかについての分析 モデルによって得られた仮説を、主に欧米の既存研究で使用されてきた説明変数を用いて、日本のフランチャイズ・チェーンを対象に実証的に確認すること。
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1. モデルによる分析
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モデルの想定 需要は本部と加盟店の努力によって決定 :本部の努力 :加盟店の努力 :誤差項 :本部の努力の重要性 努力に対する費用
:本部の努力 :加盟店の努力 :誤差項 :本部の努力の重要性 努力に対する費用 本部 加盟店 :営業開始前の固定的なコスト 加盟店の努力に対するシグナル :誤差項
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本部が決定 加盟店が決定 加盟店の売上に対するロイヤリティ(比率) 加盟店の努力(のシグナル)に基づくコミッション(比率)
契約締結時に支払う加盟金 本部の努力 加盟店が決定 加盟店の努力
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利潤 加盟店(リスク回避的) 期待利潤 効用関数 本部(リスク中立的)
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最善契約 双方の努力が契約可能 → 共同利潤の期待値を最大化
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Single-side moral hazard
本部の努力は契約可能だが、本部は加盟店の努力を観察できない → 加盟店の努力に対するモラルハザードが発生 本部の意思決定 加盟店の参加制約 加盟店の誘因両立制約
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Single-side moral hazard
(3)式より、 は、(2)式の等号が成立するように決定される。 これらを(1)式に代入し、 に関する最大化問題を解くと、 の値に関係なく、最善契約を満たすように決定される。 さらに、 のとき、 となるため、最善契約を満たす。 これは と設定した場合でも、成立する。 Remark 1 加盟店の努力に対してのみモラルハザードが発生している場合、 ロイヤリティを導入せずに、最善契約が達成できる。
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Double-side moral hazard
双方の努力が契約不可能 → 双方の努力に対するモラルハザードが発生 本部の意思決定 加盟店の参加制約 加盟店の誘因両立制約 本部の誘因両立制約
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Double-side moral hazard
(3)式より、 (4)式より、 これらを(2)式に代入し、 は、等号が成立するように決定される。 以上の3式を(1)式に代入して、 に関する最大化問題を解くと、
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Double-side moral hazard
これらを(5)式に代入して、 Remark 2 より、 双方の努力に対してモラルハザードが発生している場合には、 本部の努力を引き出すためにロイヤリティが必要である。
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Double-side moral hazard
Comparative Statics ※ として同様に計算。 加盟店の固定的費用 ー 需要の不確実性 + 加盟店の努力に対する モニタリングの困難性 本部の努力の重要性 加盟店の努力の重要性 ※
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2. ロイヤリティの導入に関する分析
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モラルハザードが発生しやすいチェーンでは、
仮説1:Double-side moral hazard 本部が加盟店の努力に対してモニタリングすることができず、加盟店も本部の努力に対してモニタリングすることができない場合、双方に怠けるインセンティブ(モラルハザード)が発生する。この問題は、売上高に対する双方の努力の重要性が高いチェーンほど重要となる。 Remark 2より、双方の努力に対するモラルハザードが発生している場合、加盟金だけでなく、ロイヤリティを導入することが必要である。 Rubin (1978), Lal (1990), Romano (1994) 加盟店側・本部側双方で モラルハザードが発生しやすいチェーンでは、 ロイヤリティを導入する。
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加盟店が直面するリスクが大きいチェーンほど、
仮説2:リスク分担要因 加盟店が販売する商品に対する需要の不確実性が高いとき、本部は固定的な加盟金を受け取るだけでなく、需要の変動に合わせて決定されるロイヤリティを受け取る契約を導入し、リスク分担を行う必要がある。 Stiglitz (1974) → Rubin (1978) 加盟店が直面するリスクが大きいチェーンほど、 ロイヤリティを導入する。
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分析 フランチャイズ・チェーンのデータソースとして、株式会社商業界が月刊『商業界』の別冊として毎年発行してきた『日本のフランチャイズ・チェーン2003年版』を用いる。そこには、商業界が2002年8月に各チェーンの本部に対してフランチャイズ契約に関する調査票を送付し、回答のあった572チェーンの結果を掲載している。
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被説明変数 被説明変数:ロイヤリティの導入を示す二値変数 ロイヤリティ =1 営業成果に基づくロイヤリティが導入されている
ロイヤリティ =1 営業成果に基づくロイヤリティが導入されている =0 営業成果に基づくロイヤリティが導入されていない 推定方法:プロビット分析
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説明変数 仮説1:加盟店側のモラルハザード要因 モラルハザードは投入される努力の重要性と、努力に対するモニタリングの困難性によって決まる。
加盟店の努力の重要性 販売部門における付加価値の割合を示す「付加価値率」 (店舗当たり売上高-仕入代金-販売広告費)と、店舗当たり売上高の割合 Lafontaine (1992) 店舗面積の代用変数として用いる「店舗当たり売上高」 店舗面積が広いほど加盟店オーナーが管理することが増大する。 Lafontaine (1992)
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説明変数 仮説1:加盟店側のモラルハザード要因 モニタリングの困難性 Nygaard & Myrtveit (2000) 業務内容の種類
地理的な分散 海外店舗の比率 Lafontaine (1992) 進出している州の数 Lafontaine (1992), Scott (1995) 本部からの距離 Brickley & Dark (1987) 繰り返し購買 人口密度 労働集約度「従業員数」
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説明変数 仮説1:本部側のモラルハザード要因 既存研究において、本部に対するモニタリングの困難性を示す変数を用いている研究はない。
本部の努力の重要性 創業からFC事業開始までの期間の割合「未FC期間比率」 フランチャイズ事業のビジネスフォーマットを開発していた期間であるとする。 Lafontaine (1992) 加盟店と直営店の合計店舗数「店舗数」 本部が創業してから現在までの年数「事業年数」 掲げられる場所が多く、期間が長いほど、ブランドへの投資を行う重要性は高い。 Lafontaine (1992) 経理報告義務を課しているか「経理報告義務」 売上の本部への送金義務を課しているか「送金義務」 加盟店の経営実態を理解することができ、本部が加盟店へ派遣するスーパーバイザーによる営業指導を行う上での重要な情報を得る。
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説明変数 仮説2:リスク要因 従来の研究では、リスクの変数として、店舗あたり売上高の分散の概念や、加盟店の閉店率が用いられてきた。これは、店舗が直面する需要の不確実性によって売上高の予測が難しくなるほど、直面するリスクが増加すると仮定しているからである。 1999~2001年の店舗あたり売上高の変動係数「売上高の変動」 Lafontaine (1992)では、業種分類ごとの店舗当たり売上高から、店舗当たり売上高の分散が算出されているが、今回の分析ではチェーンごとの加盟店1店舗あたり売上高から、店舗あたり売上高の変動係数を算出して用いる。また、3年間の店舗あたり売上高のデータに1つでも欠損値があるチェーンについては算出していない。 ※ 標準偏差(=分散の平方根)を用いても、結果は変わらなかった。
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分析結果 加盟店の努力の重要性、モニタリングの困難性、本部の努力の重要性に関して有意な結果を得ており、Double-side moral hazardの仮説を支持する結果を得た。
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3. 大小に関する分析
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仮説1:加盟店側のモラルハザード要因 本部が加盟店の努力に対してモニタリングすることができない場合、加盟店には怠けるインセンティブ(モラルハザード)が発生する。この問題は、売上高に対する加盟店の努力の重要性が高いチェーンほど重要となる。 加盟店の努力の重要性が高く、 その努力に対するモニタリングが困難であるチェーンほど、 ロイヤリティ・レートを減少させる。 Lafontaine (1992, p.267) Comparative Staticsの結果 加盟店の努力の重要性が高いチェーンほど、 加盟金を増大させ、ロイヤリティを減少させる。 努力に対するモニタリングが困難であるチェーンほど、 加盟金を減少させ、ロイヤリティを減少させる。
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仮説2:本部側のモラルハザード要因 加盟店が本部の努力に対してモニタリングすることができない場合、加盟店には怠けるインセンティブ(モラルハザード)が発生する。この問題は、売上高に対する本部の努力の重要性が高いチェーンほど重要となる。 本部の努力の重要性が高く、 その努力に対するモニタリングが困難であるチェーンほど、 ロイヤリティ・レートを上昇させる。 Lafontaine (1992, p.267) Comparative Staticsの結果 本部の努力の重要性が高いチェーンほど、 加盟金を増大させ、ロイヤリティを上昇させる。
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仮説3:加盟店の初期費用要因 仮説4:リスク分担要因 加盟店が営業開始前に支払う費用が大きいチェーンほど、 加盟金を減少させる。
Comparative Staticsの結果 加盟店が営業開始前に支払う費用が大きいチェーンほど、 加盟金を減少させる。 仮説4:リスク分担要因 Comparative Staticsの結果 線形契約のもとで、加盟店が本部よりもリスク回避的であるならば、需要の不確実性が高いチェーンほど、加盟金を減少させ、 代わりにロイヤリティ・レートを上昇させる。 Martin (1988), Lafontaine (1992)
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被説明変数 被説明変数:加盟金の金額とロイヤリティの比率を示す連続変数 加盟金
加盟金 フランチャイズ契約締結時に加盟店が本部へ支払う固定費用 (保証金は含まず) ロイヤリティ 売上高分配方式(Sales Based Royalty)のロイヤリティ比率 ※ 固定額方式と併用しているチェーンもサンプルに含める 混合型方式のチェーンはサンプルに含めない 推定方法:最小二乗法(OLS)
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説明変数 仮説1:加盟店側のモラルハザード要因 加盟店の努力の重要性 販売部門における付加価値の割合を示す「付加価値率」
店舗面積の代用変数として用いる「店舗当たり売上高」 モニタリングの困難性 労働集約度「従業員数」
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説明変数 仮説2:本部側のモラルハザード要因 本部の努力の重要性 創業からFC事業開始までの期間の割合「未FC期間比率」
加盟店と直営店の合計店舗数「店舗数」 本部が創業してから現在までの年数「事業年数」 経理報告義務を課しているか「経理報告義務」 売上の本部への送金義務を課しているか「送金義務」
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説明変数 仮説3:加盟店の初期費用要因 新規店舗を開設する際にかかる費用「開設費用」 仮説4:リスク要因
設備資金や開店時仕入商品代金、事前研修の費用などが含まれる。 仮説4:リスク要因 1999~2001年の店舗あたり売上高の変動係数「売上高の変動」
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分析結果
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分析結果 加盟金の大小 仮説1、2の一部の変数が有意な結果を得た。
Lafontaine(1992)などの欧米の分析では、モラルハザードに伴う仮説に対して、有意な結果が導出されていない。 ロイヤリティ・レートの大小 仮説1、2について有意な結果を得たLafontaine(1992)とは異なり、全ての変数について有意な結果を得ることはできず、業種ダミー変数のみ有意な結果を得た。
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結論 日本のフランチャイズ・システムにおいて、ロイヤリティの導入を決定する要因として、エージェンシーの理論に基づくDouble-side moral hazardの仮説を支持する結果を得た。 しかし、ロイヤリティの比率を決定する要因については、モラルハザードに関する仮説を支持する結果は得られず、業種間の差異が大きいことが確認された。
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