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特定保健指導における減酒指導 ~知識編~
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分子の大きさ アルコールと臓器障害 消化管:食道炎、急性胃粘膜病変、胃十二指腸潰瘍、肝硬変に伴う食道静脈瘤、食道カンジダ症、胃粘膜の萎縮性変化、Mallory-Weiss症候群、蛋白漏出・吸収不良状態 悪性腫瘍:食道癌、口腔、咽頭、喉頭癌、大腸癌 、肝細胞癌、膵臓癌、乳癌 肝蔵、膵臓:アルコール性肝障害、アルコール性膵炎 脳神経障害:Wernicke-Korsakoff症候群、アルコール性痴呆、アルコール性大脳萎縮、アルコール性筋症 整形外科疾患:骨粗鬆症、大腿骨骨頭壊死 循環器疾患:高血圧、アルコール性心筋症、不整脈 造血器障害:巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少 代謝障害:高中性脂肪血症、高乳酸血症、高尿酸血症 水 (18) エタノール (46) アルコール(エタノール)の大きさは水に近く(分子量46:水の分子量は18で、ブドウ糖になると180になります)、さらに水にも油にも溶ける性質を持っているため、容易に細胞の膜を通過し、細胞の中に入ります。まさに、お酒が「五臓六腑しみわたる」といった感じです。速やかに血液中のアルコール濃度と臓器細胞内の濃度は同じになり、慢性的な多量の飲酒は肝臓のみならず、膵臓、脳、心臓をはじめとする全身の臓器障害を引き起こします。 ブドウ糖 (180)
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胃 小腸 全身へ 肝臓 アルコール 20-30% 70-80% アルコール アセトアルデヒド
アルコールは小腸(主に空腸)から主に吸収されますが、胃、十二指腸など上部消化管からも一部吸収されます。吸収されると門脈を経て肝臓へ到達し、約90%は肝臓において代謝されます。代謝されずに尿、呼気、汗などから排出される量は数%です。 70-80%
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その多くは精神科やアルコール専門病院でなく、 内科などの一般診療科で治療されている。
1日3合以上の飲酒者: 約860万人 問題飲酒者: 約300万人 アルコール依存症患者: 約 80万人 精神科にて治療中の患者数: 約2~5万人程度 アルコール使用障害が原因で 入院している患者: 約 21万人 外来患者: 約119万人 その多くは精神科やアルコール専門病院でなく、 内科などの一般診療科で治療されている。 わが国には、問題飲酒(アルコール使用障害)者は約300-400万人、アルコール依存症患者は約80万人いると推計されていますが、精神科にてアルコール依存の治療を行っている患者数は2~5万人程度です。アルコール使用障害が原因で入院している患者は21万人で、外来患者は119万人と推計されており、その多くは精神科やアルコール専門病院でなく、内科などの一般診療科で治療されています。アルコール使用障害を認める患者が最初に医療機関を受診する場合、身体症状や健康診断での異常値を主訴に内科外来を受診するか、外傷などで救急外来や整形外科を受診することがほとんどです。
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過量飲酒に感受性のある血液検査 γ-GTP活性の上昇 2. 赤血球容積(MCV)の増加 3. GOT(AST)とGPT(ALT)活性の上昇
4. 尿酸値の上昇 5. 中性脂肪(空腹時)の上昇 6. CPK活性の上昇 過量飲酒の指標にはこの他にも血清トランスフェリンの微少変異(CDT)などがありますが、単一所見でアルコール性肝障害の診断を確定するような有力な検査は存在せず、種々の指標を組み合わせてアルコール性肝障害の診断がつきます。
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アルコール性肝障害診断基準 (アルコール医学生物学研究会 2011年版)
アルコール性肝障害とは, 通常は5年以上の長期にわたる過剰の飲酒が肝障害の主な原因と考えられる病態で,以下の条件を満たすものです。 1.過剰の飲酒: 一日あたり、アルコール度数5%のビール(またはカンチューハイ)でロング缶(5% )3本以上に相当する飲酒をいいます.ただし女性や少量の飲酒でも赤くなりやすい体質の人では,1日ロング缶2缶 程度の飲酒でも肝障害が起こる可能性があります。 2.禁酒により,血清AST,ALTおよびγ-GTP値が明らかに改善する. 3.B型肝炎やC型肝炎や、自己免疫性肝炎などが血液検査上否定される アルコール性肝障害診断基準(2011年版) アルコール医学生物学研究会( JASBRA) 2012
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アルコール性肝疾患の経過 脂肪肝 肝線維症 治癒 アルコール性肝炎 肝硬変 肝癌 死亡 アルコール過剰摂取 節酒、断酒 断酒 重症化
90~100% 脂肪肝 30 ~ 40% 節酒、断酒 肝線維症 治癒 10 ~ 30% 10 ~ 20% アルコール性肝炎 肝硬変 断酒 アルコールの過飲により最初に起こる疾患は脂肪肝です。脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪が大量にたまった状態であり、飲酒以外では肥満でも起こります。脂肪肝は大量飲酒者のほとんどに認められますが、2-4週間の断酒で消失します。アルコール性脂肪肝の状態にある人が、連続大量飲酒を繰り返すと、その約10-20%にアルコール性肝炎が発症します。アルコール性肝炎は、数日間の大量飲酒後に出現し、肝逸脱酵素(特にAST)の上昇、黄疸、発熱、嘔吐、下痢などの症状が見られます。一部のアルコール性肝炎では、禁酒しても肝腫大が持続する例があり、死亡する例もあります。重症化しなくても、長期に大量飲酒をすると、肝の線維化が進み、アルコール性肝線維症から、肝障害の末期であるアルコール性肝硬変に至る場合があります。アルコール性肝硬変では、黄疸や腹水、全身倦怠感などの症状が見られ、日本酒換算で5合程度以上、ビールや缶チューハイ換算でロング缶5本以上を20-30年以上続けているひとに多発します。但し、女性の場合はその3分の2の飲酒量で、かつ飲酒期間も12-20年程度で肝硬変に至る場合が多く、アルコール依存症者のうち10-30%程度のひとに発病します。 重症化 肝癌 死亡
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なぜ飲酒すると脂肪肝になるのか? 肝臓で合成される脂肪の増加 (2) 脂肪酸酸化の低下による中性脂肪の増加
(3) 末梢から肝臓へ移動する脂肪の増加 (4) 肝臓から末梢へ移動する脂肪の運搬障害 アルコール性脂肪肝の成因としては、(1)肝臓における脂肪合成亢進 、(2) 肝臓における脂肪酸酸化の低下 による中性脂肪の増加、(3) 末梢から肝臓へ移動する脂肪の増加 、(4)肝臓から末梢へ移動する脂肪の運搬障害
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AST, ALT, γ-GTP, TGの推移 栄養相談 栄養相談 あり(n=19) なし (n=29) ALT (IU/L)
AST (IU/L) * * このスライドと次のスライドに示すグラフは、アルコール性肝障害患者さんの管理栄養士による栄養相談受診後の肝酵素の推移です。栄養相談なしの群に比べて、栄養相談を受けた群では、AST,ALTなどが。統計上も明らかに大きく低下しています。管理栄養士による栄養指導が、生活習慣を改善し、アルコール性肝障害も改善すると考えられます。 来院時 8週後 来院時 8週後
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γGTP (IU/L) TG (mg/dL) * * 来院時 8週後 来院時 8週後 *p<0.05 vs 栄養相談なし
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(千人) 傷病別年次推移の予測 1996 1999 2002 2005 2008 厚生労働省統計より作図
このグラフは、厚生労働省の患者調査での、アルコールを除いた肝硬変の患者数と、アルコール性肝硬変の患者数の推移です。アルコール性を除く肝硬変患者数は近年急速に減少傾向にありますが、アルコール性肝硬変は徐々にではありますが、増加傾向にあります。 1996 2005 2008 厚生労働省統計より作図
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肝硬変の成因 12% 14% アルコール性: 12% アルコール性: 14% アルコール+ウイルス性: 15%
HBV HBV+AL HB+HC Horie Y, Hepatol Int, 2013 HB+HC+AL HCV HCV+AL AL Other 14% 12% 肝硬変というと、アルコール以外にも、B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルスといったウィルス性肝硬変も有名です。 このグラフは、肝硬変の成因の分類を示していますが、HBVがB型肝炎ウィルス、HCVがC型肝炎ウィルス、ALがアルコール性を表しています。HBV,HCVの検査が検診で受けられるようになってから、純粋なアルコール性は微増し、アルコール+ウイルスは著明に減少しました。 アルコール性: 12% アルコール+ウイルス性: 15% 合計 % アルコール性: 14% アルコール+ウイルス性: 6% 合計 % 平成10年度全国統計 平成19-20年度全国統計 (n=21769) (n=16244) 12
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肝硬変の成因 2012 2007-08 (n=9326) (n=16224) AL 13.7% AL 24.6% ウィルス+AL 6.2%
AL Total 19.9% AL 24.6% ウィルス+AL 6.0% AL Total 30.6% しかし、全国調査にて、9326例(男:5768、女:3558)の肝硬変患者のうち、アルコール単独によるものは2293例,24.6 %(男:1979例,34.3%、女:314例, 8.8%)で、肝炎ウイルスマーカー陽性例をあわせると2857例,30.6 %(男:5768例,42.4%、女:411例, 11.6%)に達しました。肝炎ウイルスの関与については、平成19~20年度の調査ですでにウイルス性合併アルコール性肝硬変症例は平成10年度の15%から6%と激減していますが、今回の検討でも6%で、近年はアルコール性肝硬変への進展に肝炎ウイルスの影響は少ないと考えられています。今後はアルコール健康障害対策基本法に基づく対策によって、問題飲酒者数そのものの低減を目指す必要があります。 HBV HBV+AL HCV HCV+AL HBV+HCV AL Other 堀江 義則 平成25年度厚生労働科学研究費補助金研究総合報告書(樋口班) アルコール性肝障害の実態調査 2014
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アルコール性肝硬変の予後と飲酒の影響 (88%) (35%) 断酒継続 飲酒再開 (%) 100 80 60 40 20 生存率
断酒継続 (88%) 生存率 飲酒再開 (35%) このグラフは、アルコール性肝硬変の生存率を示しています。縦軸が生存率、横軸が年数で、断酒継続群と、飲酒再開群に分けて示しています。 肝臓に回復する能力が残っている代償性のアルコール性肝硬変においては、断酒した群では4.4年後の生存率が88%であるのに対し、飲酒を再開、継続した群では35%にとどまり、アルコール性肝硬変の予後はひとえに断酒できるか否かにかかっていると言えます。 (年) (Yokoyama A, et al., Alcohol Alcohol, 1994)
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移植の有無による非代償性アルコール性肝硬変の予後 (Child-Pugh C)
腹水 肝性脳症 黄疸 プロトロンビン時間延長 アルブミン低下 内科治療 肝移植 生存率(%) 腹水、肝性脳症、黄疸、プロトロンビン時間延長、アルブミン低下などを認める、最も重症の非代償性のアルコール性肝硬変に至ると、断酒しても予後不良で、肝移植も検討されます。 (年) Poynard T; J Hepatol, 1999より作図
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体重過多と過剰飲酒による肝疾患死亡率の相対危険度への影響
9.53 ( ) 相互作用によるリスクの増加 アルコールによるリスクの増加 BMI(身長2/体重)によるリスクの増加 ベースラインのリスク 3.66 ( ) 1.29 ( ) 1 このグラフは、肥満と過剰飲酒が肝疾患での死亡率をいかに上げるか示した調査結果を示しています。肥満(RR 1.29)とアルコール(3.66)は、ともに肝臓病死の危険因子であり、しかも相加的な関係(一足す一の関係)でなく、相乗効果があり、肥満の過剰飲酒者の肝疾患死亡率の危険度は、約10倍になります。 ベースライン ベースライン +BMI ベースライン +アルコール ベースライン +BMI +アルコール (相互作用) Hart CL, BMJ, 2010
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アルコールと癌 - 食道癌 (咽頭癌、喉頭癌) 危険因子:高濃度アルコール飲料、喫煙、 少量の飲酒でも赤くなりやすい人、
- 食道癌 (咽頭癌、喉頭癌) 危険因子:高濃度アルコール飲料、喫煙、 少量の飲酒でも赤くなりやすい人、 赤血球の大きさ(MCV)が大きい 胃癌:飲酒との関連については、はっきりしない。 - 大腸癌:飲酒との関連あり 下咽頭・食道がんのリスクと飲酒・喫煙習慣 喫煙なし 30本/日以上 飲酒習慣なし 1倍 4倍 日本酒換算で 8倍 30倍 1.5合以上の飲酒 アルコールとがんとの関係です。アルコールは、適正量だと胃酸の分泌を増加させ、食欲増進作用などがありますが、高濃度アルコールは、食道炎、急性胃粘膜病変(出血性胃炎)、胃十二指腸潰瘍を引き起こし、さらに大量飲酒は、肝硬変に伴う食道静脈瘤、食道カンジダ症、胃粘膜の萎縮性変化、Mallory-Weiss症候群、蛋白漏出・吸収不良状態を引き起こします。悪性腫瘍として、食道癌はアルコール依存症患者(男性、40歳以上)の約4%(一般人口では、 %)に認めます。その他に口腔、咽頭、喉頭癌も0.9%.に認められます。高濃度アルコール飲料、喫煙、少量の飲酒でも赤くなりやすい遺伝子型(ALDH2ヘテロ欠損型)が危険因子になります。大腸癌も飲酒との関連が認められます。 アルコールと健康に関する保健指導マニュアル 石井裕正 編 太平社 東京 2010
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中年男性の食道がんリスク 調整オッズ比 飲酒量 (合/週) 赤くなりにくい人 赤くなりやすい人
ALDH2のヘテロ失活型が食道癌の危険因子になります。 飲酒量 (合/週) 横山顕 成人病と生活習慣病 39; , 2009
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アルコール摂取量と大腸がんのリスク(男)
大腸がんリスク 飲酒量と大腸がんの関係を示したグラフです。飲酒量に比例して大腸がんのリスクが増加してます。 アルコール摂取量(g/日) 大腸がん 結腸がん 直腸がん Mizoue T, Am J Epidemiol 2008
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急性・慢性膵炎発症における飲酒量別の危険度(オッズ比)
急性膵炎 慢性膵炎 急性・慢性膵炎とも、1日あたり、ビールロング缶2缶に相当する40g以上の飲酒でその発症リスクが容量依存性に増加します。 1日飲酒量 1日飲酒量 アルコールと健康に関する保健指導マニュアル 石井裕正 編 太平社 東京 2010
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急性膵炎後の飲酒と合併症の頻度 飲酒状況 膵炎再発 慢性膵炎への移行 糖尿病合併 断酒 19.8% 13.6% 14.1%
飲酒状況 膵炎再発 慢性膵炎への移行 糖尿病合併 断酒 19.8% 13.6% % 節酒(時々)18.9% 12.3% % 節酒(毎日)36.7% 23.3% % 継続飲酒 57.7% 40.9% % 膵炎もアルコールとの関係が深い疾患ですが、急性膵炎後の飲酒動態による合併症の発生頻度では、急性膵炎の再発、慢性膵炎への移行、糖尿病ともに、容量依存性に増加します。 アルコールと健康に関する保健指導マニュアル 石井裕正 編 太平社 東京 2010
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アルコール摂取量と各疾患のリスク 死亡率 1日あたりのアルコール摂取量 虚血性心疾患による死亡 全死亡 脳血管障害による死亡 がんによる死亡
事故死 死亡率 脳梗塞などの脳血管障害、がんによる死亡率は、ビールロング缶1缶程度に相当するアルコール20g程度までは低下し、それ以上の飲酒では増加します。また心筋梗塞などの虚血性心疾患では20g程度までは低下し、60g程度までは死亡率は増えません。事故死は20g程度までは同等で、それ以上だと増加します。 1日あたりのアルコール摂取量 ◆アルコール摂取量の1単位は、日本酒は0.5合、ビール小瓶1本、ウイスキーシングル1杯に相当 Boffetta P, Garfinkel L: Epidemiology 1990;1:342.
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虚血性心疾患とアルコール アルコールは血小板凝集抑制作用を持つ。 アルコール摂取は、線溶系を亢進させる。
アルコール摂取により、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が増加し、それぞれが、虚血性心疾患の発症頻度と逆相関する。 赤ワイン中には、抗酸化物質、血小板凝集抑制物質が含まれており、このようなアルコール以外の含有物の効果も指摘されている。 飲酒が虚血性心疾患のリスクを下げる理由としては、血小板凝集抑制作用、線溶系の更新など、いわゆる血液をサラサラにする効果や、HDLコレステロールの増加 などによる動脈硬化を防ぐ効果などが関与している可能性があります。アルコール以外の含有物の効果を指摘する報告もあります。
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Criqui MH,Ranger RD,et al: Circulation 1989;80:609
アルコール摂取量と血圧の関係 収縮期 拡張期 血圧は収縮期も拡張期も、10g以上の飲酒で上昇し、飲酒量が増えると血圧もそれに比例して上昇します。 1日あたりのアルコール摂取量 Criqui MH,Ranger RD,et al: Circulation 1989;80:609
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節酒による血圧低下 (非服薬男性高血圧患者)
節酒による血圧低下 (非服薬男性高血圧患者) 3週まで節酒 3週から節酒 収縮期血圧の変化 (mmHg) このグラフは、最低週4日以上にわたり1日平均あたりビールロング缶2缶程度に相当するアルコール40gを飲酒している高血圧患者さんにおいて、節酒による血圧低下をみた研究の結果で、実験開始後3週まで節酒(ビールロング缶1缶減らし、つまり半分に)し、その後元の飲酒(ビールロング缶2缶)に戻した群と、実験開始後3週目から節酒を開始した群に分けています。縦軸が、実験開始前後での収縮期血圧の変化で横軸が実験開始を0週とした時間経過です。3週目まで節酒した群では一旦血圧が下がっていますが、その後の過剰飲酒によりもとに戻っているように、過剰飲酒による収縮期血圧の上昇は、節酒により低下し、再飲酒により再び上昇します。 Ueshima H, et al, Hypertension, 1992
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年齢別の飲酒と冠動脈石灰化の危険度 RR アルコールと健康に関する保健指導マニュアル 石井裕正 編 太平社 東京 2010
40歳代および60歳代の男性において、少量飲酒が冠動脈石灰化に予防的な可能性が示唆されますが、40歳代では日本酒換算で2合以下に対し60歳代では1合以下で最も相対危険度が低く、適量が年齢層によって異なる可能性も示されています。 アルコールと健康に関する保健指導マニュアル 石井裕正 編 太平社 東京 2010
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アルコール摂取量と脳卒中のリスク 脳卒中リスク アルコール摂取量(g/週) 脳出血 脳梗塞
脳血管障害による死亡率は、脳梗塞では1日20g程度までは低下し、それ以上の飲酒では増加します。出血性脳卒中は1日20g程度でも増加します。 アルコール摂取量(g/週) JPHC Studyより 津金 昌一郎 アルコールと健康 アルコール健康医学協会
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アルコール摂取量とがん死亡のリスク 相対リスク アルコール摂取量(g/週)
世界保健機構 (WHO) のがん研究の部門であるInternational Agency for Research on Cancer (IARC) によると、アルコール性飲料は、口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓の癌の原因であり、それに加え、乳癌、結腸直腸癌もその因果関係があると認められています。癌による死亡率も、1日20g程度までは低下し、それ以上の飲酒では増加します。 アルコール摂取量(g/週) JPHC Studyより 津金 昌一郎 アルコールと健康 アルコール健康医学協会
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耐糖能異常ならびに2型糖尿病の発症率 エタノール消費量 (g/day) 10 20 30 (n=2,953) 耐糖能異常 2型糖尿病
10 20 30 (n=2,953) 耐糖能異常 2型糖尿病 人口1000 人 X 年 あたりの発症率 飲酒はダイエットや糖尿病の発症には悪玉のように言われてきましたが、実はアルコールを毎日適量に飲んでいる人の方が全く飲まない人よりも、2型糖尿病になる危険性が少ないとの報告もあります。グラフのようにアルコールを適量(日本酒換算で1-2合)に飲んでいる人の方が全く飲まない人よりも、2型糖尿病になる危険性が少ないのです。ただし、この効果は健康な人からの糖尿病の発症を予防するということで、すでに糖尿病にかかっている患者さんの耐糖能をよくするというものではありません。また、60g以上ではこの効果はありません。 69 エタノール消費量 (g/day) (N Nakanishi, Diabetes Care, 2003;26:48-54)
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飲酒量別に見た高尿酸血症患者の割合 1日の平均飲酒量(日本酒換算) 飲酒(アルコール)による高尿酸血症の機序
0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 飲まない 1合未満 1-2合 2-3合 3合以上 尿酸7mg/dl以上 尿酸9mg/dl以上 1日の平均飲酒量(日本酒換算) 高 尿 酸 血 症 患 者 の 割 合 山中寿他 日本臨床 55:201,1997 痛風はお酒をよく飲む人に多く( 94%が飲酒者)、少量の飲酒量でも上昇します。 飲酒(アルコール)による高尿酸血症の機序の説明としては ・ アルコール飲料自体の尿酸 ・ 酢酸代謝に伴う肝臓でのプリン体合成促進 ・ 尿酸排泄抑制 (高乳酸血症による乳酸との拮抗) ・ アルコール利尿による脱水 ・ 食欲増進 などがあげられます。 飲酒(アルコール)による高尿酸血症の機序 ・ アルコール飲料自体の尿酸 ・ 酢酸代謝に伴う肝臓でのプリン体合成促進 ・ 尿酸排泄抑制 (高乳酸血症による乳酸との拮抗) ・ アルコール利尿による脱水 ・ 食欲増進
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飲酒による生活習慣病 肥満 → 高血圧 ↑ 高血糖 J 高脂血症↑ HDL ↑ がん J 脳出血 ↑ 脳梗塞 J 心疾患 J 糖尿病 J
肥満 → 高血圧 ↑ 高血糖 J 高脂血症↑ HDL ↑ がん J 脳出血 ↑ 脳梗塞 J 心疾患 J 糖尿病 J アルコール 飲酒は、肥満には直接的には関与しませんが、血圧を上昇させます。しかし、HDLは増やし、血糖値は少量飲酒で予防、大量飲酒で増悪させ、結果として脳出血以外、がんや脳梗塞、虚血性心疾患、糖尿病などは、少量飲酒で予防され、大量飲酒で増悪します。 → :飲酒と病気のリスクとの関係が確認できない ↑ :少量の飲酒でもリスクが増加 ↓ :飲酒によりリスクが低下 J :少量飲酒でリスク低下するが大量飲酒でリスク増加 ( J カーブ)
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