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Agent-based Simulation of Consumer’s Market
Novel Computing Project に所属する島広樹と申します。 本日は、“Agent-based Simulation of Consumer’s Market” というタイトルで発表させていただきます。 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士2年 Novel Computing Project ・武藤研究室所属 島 広樹
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発表の流れ 研究の背景 Agent-based Social Simulation (ABSS) オブジェクト指向方法論 一般システム理論
Consumer’s Market 社会科学の方法論としてのABSS おわりに 本論文の目標は、Agent-based Simulation を用いた、社会科学の新しい方法論についての議論を展開し、Consumer’s Market の実験を通じ、この方法の可能性と限界を示すことです。 まずは発表の流れですが、最初に現在行われている Agent-based Social Simulation の概要を紹介し、そのための基盤として不可欠なオブジェクト指向方法論の概要を示します。またABSSを科学的方法論の中で位置付けるために一般システム論の世界観を示します。 さらに、Consumer’s Market の実験について紹介し、社会科学の方法論としてのABSSについて論じ、その将来性を提示し、発表を結びたいと思います。 では、内容に入ります。
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研究の背景 ―研究のゴール 知の統合の必要性 社会システムの複雑性 そして複雑化する社会 深刻化する社会問題 科学的研究の細分化 ●先行事例
World モデル 諸理論を立体的に組み立てることで地球環境問題の深刻性を示した。 最初に、本研究に携わった背景について紹介します。 今世紀、社会は産業的に大きく発展し、人々の生活には計り知れない変化がもたらされました。それとともに、社会は猛烈な勢いで変化し、多様化し、複雑化し、ボーダレス化してきました。 これに対し、社会科学は研究領域を細分化することで、対応してきました。 しかし、一方で、環境問題、食糧問題、地域格差、経済危機といった多くの社会問題が深刻化し、専門化という方向性では、こうした問題を捉えることが困難になってきました。各国の政策や産業形態、企業活動、文化、生活スタイル、自然環境など、あまりにも多くの要素が複雑に関係しているからです。 そうしたことから、知の統合が不可欠となってきます。 そこで、例えば、諸領域の理論を立体的に組み立てることで地球環境問題の深刻性を示した、Worldモデルのようなものが構築されるにいたりました。Worldモデルは、諸領域の理論をマクロなレベルで統合することで複雑な構造を捉えようとした、システムダイナミクスの手法が背景になっています。しかし、マクロなレベルだけでは手におえない問題も沢山あるわけです。 これに対し、ミクロなレベルの相互作用のプロセスからマクロな事象を説明しようとするAgent-based Social Simulationによって、知の統合を目指すための方法論の追及を行うというのが、本研究のドメインです。 システムダイナミクス 諸領域の理論をマクロなレベルで統合することで複雑な事象を説明しようとした. ■本研究のドメイン Agent-based Social Simulation ミクロなレベルの相互作用の複雑なプロセスからマクロな事象を説明しようとする。
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“Agent” という概念 ―Agent-based Social Simulation Agent 具体的には?
自律性: 内部構造に基づいて行動や状態を制御する. 社会性: 他のAgentや人間とコミュニケーションする. 反応性: 外部環境を認識し、外部環境に働きかける. 自発性: 受動的反応だけでなく、能動的動作を起こす. Agent (Computer Science における “Agent” の基本的特性) ― M. J. Wooldridge and N. Jenninsg, “Intelligent Agents”, Lecture Note in Artificial Intelligence 890, Springer-Verlag, 1995 先ず最初に、本論で最も重要な Agent という概念について紹介しておきましょう。 コンピュータサイエンスの分野において、Agentとは、自律的に動作するプログラムのことを指す、やや抽象度の高い概念です。 厳密な定義は人によってズレてたりしますが、自律性、社会性、反応性、自発性といった特性に関しては、大方のコンセンサスが取れているようです。 Agentという概念は、現在、主に二つの文脈で用いられています。一方は Software 自体が単体で機能するもので、Web Page 巡回ソフトや、自動取引ソフトなどがこれに含まれます。 もうひとつは、社会シミュレーションの中で行動する各主体を指すものです。本研究で用いるAgentは、こちらの文脈に従ったものであります。ややこしいと思われる方は、コンピュータに構築する「バーチャル人間」だと思って頂いて結構です。 具体的には? ・Software Agent ・社会シミュレーションにおいて行動する各主体
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Agent-based Social Simulation
社会を構成する各主体の行動原則をプログラムとして表現したエージェントを多数用意し、それらを相互作用させることによって社会的構造を再現し、構造分析などに利用する手法 現実世界 人間の 行動原理 抽出 Agent プログラムとして表現 社会構造の分析 社会理論の研究 教育的利用 近未来のシナリオ導出 政策提言 ニュービジネスの提案 Bottom Up Simulation ここで Agent-based Social Simulation の研究手法について簡単に紹介いたします。 Agent-based Social Simulation とは、現実世界から抽出した人間の行動原理をコンピュータプログラムとして表現することによって、Agent を構築し、その Agent を多数用意し、それらを相互作用させ、シミュレーションを行うことによって、社会構造の分析や、近未来のシナリオ導出に利用していこうという研究手法です。 多数用意
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Agent-based Social Simulation の アドバンテージ
Advantage ・個性を計算要素として尊重することができる点 ・創発的プロセスを取り扱うことができる点 ・動的関係性を構築できる点 ・モデルを手軽に交換することができる点 ? この手法のアドバンテージとしては、 個性を計算要素として尊重することで、人間の多様性を計算できる点 “最初に主体ありき” のボトムアップ型シミュレーションによって、創発的プロセスを取り扱える点 人間関係等、動的な関係性を取り扱える点 オブジェクト指向を用いることで、モデルの交換が容易に行える点 などが挙げられます。 情報モデル Y 情報モデル X 心理モデル A 心理モデル B 心理モデル C
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ABSSの領域にみる先行研究 (Agent-based Social Simulation)
Sugarscape “砂糖”と“香辛料”の山を求めてさまよう人工生命の動態を追い、これを解釈することで人間社会を理解しようとするアプローチ 人工株式市場 過去の値動きのパターンを元に学習しながら取引を行うAgentによる人工株式市場において、現実との類似性を見いだすアプローチ Swarm Project 人工社会シミュレーションを行うために開発されたソフトウェアパッケージ。プログラムの素材集としての役割も果たそうとしている。 ― Joshua M. Epstein, Robert Axtell, “Growing Artificial Societies ―Social Science from the Bottom Up”, The Brookings Institution, 1996 こうしたアドバンテージによってABSSの大きな可能性に注目が集まり、近年になって、この分野でさまざまな研究がなされるようになってきました。 著名なものを例としてあげるなら、 砂糖の山を求める昆虫をモデル化したAgentの動態を追い、これを解釈することで人間社会を理解しようとするSugarscape、 仮想市場において取引を行うAgentから発生する相場の動きを追い、現実との類似性を見いだそうとする人工株式市場、 それからもう一つ、別の角度からの取り組みとして、人工社会シミュレーションを行うために有益なモジュールを多数用意し、これをソフトウェアパッケージとしてまとめた Swarm というプロジェクトが挙げられます。Swarm が充実すれば、社会研究を行う人は、まるでレゴブロックを組み立てるような感覚で、モデルを結合し、シミュレーションを行うことができるようになると言えます。本研究で論じる ABSSの方法論は、この Swarm に非常に近いドメインを持つものです。 ― W. B. Arthur, et al., "An Artificial Stock Market", Working Paper. University of Wisconsin, Department of Economics. など ― Swarm Project official home page:
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Simulation という研究手法 Simulation = Simulation の目的
―Agent-based Social Simulation Simulation という研究手法 実物ではできないことを代わりのもので実行すること Simulation = Simulation の目的 現実世界の特定の現象を論理的・数学的に理解すること 現実世界の動きを予測し、対策を練ること 現実世界の何かについて、計画を立てたり、設計したりすること 人間の行動を把握したり、人間を訓練したりすること ―生命、社会、物理 など ―天気予報、環境、経済 など さて、ここで、簡単にシミュレーションという手法の意義について確認しておきましょう。 実物で実験することができれば、シミュレーションよりも確かなことが分かるでしょう。しかし、コストがかかりすぎる場合、何度も繰り返し行うことができない場合、危険を伴う場合、事前に結果を予想する必要がある場合などにはシミュレーションに頼らなければなりません。 一般にシミュレーションという手法の目的は、現実世界の特定の現象を論理的・数学的に理解すること、現実世界の動きを予測し、対策を練ること 、現実世界の何かについて、計画を立てたり、設計したりすること 、人間の行動を把握したり、人間を訓練したりすること、などであると言われています。 では、Agent-based Social Simulation の場合、どこまで行っているのかというと、まだ最初の論理的・数学的に理解することに取り組んでいる段階です。時折、予測に関する研究も報告されていますが、信頼される精度を得られるものは登場していません。しかし、方法論が洗練され、研究が組織化され、社会的規模でのコラボレーションが実現すれば、第二、第三、第四の目的を達成できると期待されます。 ―電子回路、原発、プラント、政策 など ―フライトシミュレータ、経営ゲーム など
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オブジェクト指向方法論 オブジェクト指向プログラミングの考え方 ― オブジェクト指向方法論
― オブジェクト指向方法論 オブジェクト指向方法論 オブジェクト指向プログラミングの考え方 プログラムの中でひとまとまりのものとして捉えると便利な機能や変数の群をモジュールとして区切り、プログラム全体の挙動をこうしたモジュールの相互作用によって導出しようというもの 次に、Agent-based Social Simulation に欠くことのできない、オブジェクト指向の考え方を簡単にまとめておきます。 プログラムの中でひとまとまりのものとして捉えると便利な機能や変数の群をモジュールとして区切り、プログラム全体の挙動をこうしたモジュールの相互作用によって導出しようというものです。 従来の方法と異なるのは、あるシステムを構築するときに、従来の方法では全てをプロセスの集合として取り扱ったのに対し、“もの”の相互作用によって設計しようという点にあります。
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オブジェクト指向の基本概念 抽象化 カプセル化(ブラックボックス化) インスタンス化 継承 階層 ― オブジェクト指向方法論 階層 全体
― オブジェクト指向方法論 オブジェクト指向の基本概念 抽象化 モデル化したい対象を煮詰め、本質的であると考えられる機能を抽出し、単純なものとして一般化する。 抽象化 継承 一般化 特殊化 ある対象の構造をそのまま受け継ぎ、それとの差を記述することによって、別の存在を定義する。 全体 部品 階層 ある対象が、さらに小さな幾つかの対象から構成されている。 カプセル化 定義した構造をある種のパッケージにまとめ、内部構造が見えないようにし、 用意したインタフェースを通じてのみやり取りすることができるようにする。 カプセル化(ブラックボックス化) ID = … インスタンス化 オブジェクト指向のプログラミングでは、まずクラスと呼ばれる設計図を記述しなければならない。インスタンス化とはこの設計図から実体を生成すること。 インスタンス化 継承 階層 オブジェクト指向のプログラミングに重要な基本概念としてこのようなものが挙げられます。 モデル化したい対象を煮詰め、機能を抽出し、単純なものとして一般化する「抽象化」、 定義した構造をある種のパッケージにまとめ、内部構造が見えないようにする「カプセル化」、 クラスと呼ばれる設計図から実体を生成する「インスタンス化」、 ある対象の構造をそのまま受け継ぎ、それとの差を記述することによって、別の存在を定義する「継承」、 ある対象が、さらに小さな幾つかの対象から構成されている「階層」、 などが挙げられます。
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オブジェクト指向のメリット 複雑性の管理が行いやすいという点 プログラムの再利用が行いやすいという点 開発速度が向上するという点
― オブジェクト指向方法論 オブジェクト指向のメリット 複雑性の管理が行いやすいという点 あるサイズを超えるシステムは、複雑すぎて一人で全部把握することはできなくなると言われている。オブジェクト指向のカプセル化を上手に利用すれば、複雑なシステムをうまく整理できるし、人間の思考回路にもうまく納まる。 プログラムの再利用が行いやすいという点 以前に構築したモデルや、他の人の構築したモデルを再利用することが比較的容易なのである。これは、そのまま利用することも、継承によって細部を修正して利用することも含んでいる。 開発速度が向上するという点 極めて単純なシステムを構築する際にはこれは当てはまらないが、構築するシステムがある程度複雑になってくるとオブジェクト指向を用いた方が早いケースも多い。これは、上記二つの利点を関係している。 こうした特性から、 複雑性の管理が行いやすい、 プログラムの再利用が行いやすい、 開発速度が向上する、 などのメリットが生まれてくるわけです。 こうしたメリットは、ABSSにもそのまま継承されていくことになります。
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システム論の基本的な考え方 システムの認識段階 ― システム論的世界観 「観察者」の役割や目的 まず、ある「全体」を認識
― システム論的世界観 システム論の基本的な考え方 システムの認識段階 「観察者」の役割や目的 まず、ある「全体」を認識 それに「境界」を設定 「制御機構」を同定 「入力」と「出力」の定義 「組織性」を認識 「階層性」を認識 観察 境界 入出力 組織性 サブ- システム 階層性 sys sub subsub 認識プロセス さて、ABSSのアプローチを科学的方法論の中で位置づけるために、ここでシステム論の世界観について触れておきましょう。 システム論は、科学のあり方を考えるメタ科学であると言われており、システムアプローチ、システム工学、システムダイナミクス、サイバネティクス等いろいろありますが、ここでは Bertalanffy の展開した『一般システム理論』を取り上げます。 私達がものを見るとき、一体どのようにしてそれを認識するか. まずは観測者の役割や目的が重要になります。 観測者は目的のために、ある「全体」を認識します。 その全体を区切るために、「境界」を想定するでしょう。 境界を同定すると、それを横切る入力と出力が認識される。 また、全体をよく見ると、ある種の組織性が認識され、 その組織性は、サブシステムによって構成されている。 そしてそのサブシステムがさらに小さなサブシステムから構成されている、階層性を見出すだろう。 これは我々が何かを認識するときのプロセスを提示したもので、このような考え方は古くから存在してきたが、このような世界観を一般化し、諸分野で共有されるべき言語を生み出したのが一般システム論でした。 (補足) これは、我々がこのように物事を見て、理解して、考えているという、認識上の問題であって、世界が実際にそうなっていると言うわけではない。
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創発性と分析的手法の限界 「創発」という概念 ― システム論的世界観 全体の理解 全体の理解 デカルト的分析手法 一般システム論的世界観
― システム論的世界観 創発性と分析的手法の限界 「創発」という概念 システムとは、小さな要素群が組織化された複雑性に発生するある種の秩序である。そして、この秩序、即ちシステムは、小さな要素群のレベルではその存在を想定することができないような、ある特性をもつ。システム論の言葉では、この特性が発現する性質のことを創発と呼んでいる。 全体の理解 全体の理解 ― 創発 システム論の研究が提示した重要な概念の一つは、「創発」という概念です。 システムとは、小さな要素群が組織化された複雑性に発生するある種の秩序でありますが、そこには、小さな要素群のレベルではその存在を想定することができないような、ある特性を見いだされます。創発とは、この特性が発現する性質のことです。 同時にそれは、科学的手法として広く受け入れられているデカルト的分析手法の限界を指摘するものでもありました。 デカルト的分析手法とは、システムを構成するある要素を取り出し、その要素の特徴を足し合わせると全体の動きが捉えられるとする考え方です。この単純化は極めて強力な方法で、様々な領域において科学的成果を導くに到ったわけです。 現実世界において我々が秩序的であると認識しているものの中には、それを構成しているさらに小さい要素が密接に関係し、相互に影響力を持っていると考えなければ捉えることができないものも沢山あり、このプロセスを追う必要があることを唱えたのが一般システム論でした。 system sub-system デカルト的分析手法 一般システム論的世界観
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「一般システム研究会」設立主旨 「一般システム研究会」設立主旨より ― 社会科学の方法論としてのABSS
一般システム研究会は1954年に個々の伝統的な知識分野を越えて応用しうる理論的体系の発展を促す目的で設立された。主な役割は、 ①いろいろな分野の概念、法則およびモデルの同型性を研究し、各分野間の有益な転用をはかること ②理論的なモデルのかけている分野で適切な理論モデルの発展を促すこと ③異なった分野での理論的な努力の重複を最小限にとどめること ④専門家のコミュニケーションの改善を通じて科学の統一化を促進すること。 一般システム論が確立された背景の一つは、科学の領域が多様化したということである。これは、現実世界の多様性と複雑性に注目されていったことと、現実社会そのものが多様性と複雑性を増していったということに対応している。かつては一人の学者が非常に多くの領域を研究対象として扱っていたのであった。だが、科学の領域が多様化・細分化するとともに、多くの切り口で自然や社会を分析できるようにはなったものの、専門化とともに、諸科学の間で理論が分断され、相互のコミュニケーションは次第に薄れていった。また一方で、取り扱うべき問題が複雑で、特定の専門分野では対処できなくなっていった。
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一般システム論の停滞 共有されるべき世界観を提示した時点で停滞 停滞の原因 ― システム論的世界観
― システム論的世界観 一般システム論の停滞 共有されるべき世界観を提示した時点で停滞 「要素が同等の他の要素群と相互作用し、その複雑なプロセスから創発的に上位の秩序が生まれ、それもまた他の秩序と秩序群と相互作用する一つの要素であり、これが階層的に発達している」という世界観 世界の表記方法を示したのはいいが、具体的な内容が伴わなかった。 停滞の原因 各分野のモデルを説明するのに、共有された一般的な言葉を用いると内容が伴わず、専門用語を用いると統合が進まない 、というジレンマがある。 停滞の原因は、さまざまな分野の研究成果を共通の言語で記述し、「集積」するための、そしてそれを活用するための技術に恵まれなかったことに求められる。 「まだ「洞察、定理、恒真命題、あるいは単なる予感といったものの混合物」に過ぎない 。」 一般システム理論の成果はまだ存在しない。一般システム論の世界観に基づいて処理論の統合を実践するための道具がなかったのである。 だが一般システム論は、このような圧倒的な世界観を提示したにも関わらず、ここから先に進むことができませんでした。Checkland によれば、Bertalanffy の議論は、40年代から、彼が没する72年までほとんど進展していないと言われています。 一体これは何故なのか。それは、一般システム論の世界観に基づいて諸理論の統合を実践するための道具がなかったことに求められます。複雑な相互作用のプロセスを辿るのに、自然言語と人間の頭脳があまりにも無力だったからです。
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「一般システム論」と 「オブジェクト指向方法論」の親和性
― システム論的世界観 「一般システム論」と 「オブジェクト指向方法論」の親和性 ①観察者の主観で秩序を同定し、モデルを定義する点 ②記述される対象の境界が明確である点 ③対象に何らかの入出力が存在する点 ④対象はさらに小さな対象によって構成されるという階層性が成立し得る点など システム論のこうした停滞は、高速計算機の利用とオブジェクト指向のプログラミング手法の適用で大きく進展すると考えられます。なぜならば、オブジェクト指向の表現形式は、このような点でシステム論の世界観と強い親和性をもつからです。 第一に、観察者の主観で秩序を同定し、モデルを定義する点、 第二に、記述される対象の境界が明確である点、 第三に、対象に何らかの入出力が存在する点、 第四に、対象はさらに小さな対象によって構成されているという階層性 です。
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― 社会科学の方法論としてのABSS 社会科学の方法論としてのABSS 社会、人間もしくはそれに付随する存在のモデルを、ある共有された人工言語によってオブジェクトとして表現し、これを組織化することによってシステムを定義し、このシステムがコンピュータ上で展開するプロセスを追うことによって、現実世界の現象を理解、説明、予測もしくは制御するための科学を、オブジェクト指向社会科学(Object-Oriented Social Science)として定義する。 そこで、社会、人間もしくはそれに付随する存在のモデルを、ある共有された人工言語によってオブジェクトとして表現し、これを組織化することによってシステムを定義し、このシステムがコンピュータ上で展開するプロセスを追うことによって、現実世界の現象を理解、説明、予測もしくは制御するための科学を、オブジェクト指向社会科学(Object-Oriented Social Science)として定義したいと思います。 一般システム論の世界観は、完成度の高いオブジェクト指向言語とモデルを動かすための高速計算機によって、新たな活路が切り拓かれることになります。未完成な一般システム論が未来に託した可能性が開拓される局面に来たといってもいいでしょう。 ABSSは、特にオブジェクトの自律性を重視したAgentを用いたシミュレーションとして位置づけられる。
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ABSSがもたらすもの ― 社会科学の方法論としてのABSS 従来の社会科学の方法論 ABSS が提供できるもの
社会理論を文章や数式として表現 プログラムとして伝達 伝達・共有が高速かつ正確 コラボレーションの促進 文章や数式として伝達 伝達・共有の限界 モデルの適用 コンピュータで計算 複雑な論理構造 高速な計算が可能 正確に計算 頭脳や紙上で計算 社会理論をプログラムとして表現することによって、理論の伝達・共有が高速かつ正確になり、社会科学者のコラボレーションが促進され、 また、コンピュータ上で計算することで、複雑な論理構造を高速かつ正確に辿ることができるようになるなど、これまでの社会科学の用いてきた手法の限界を補っていけると考えています。 論理構造の限界 計算速度の限界 計算精度の限界 現実社会
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ABSSの限界 観測の限界 モデリングの限界 計算精度の限界 誤差の限界 ― 社会科学の方法論としてのABSS ――細かさ
――バタフライ効果 しかし、そうしたABSSですが、何でもできる完璧なものであるかと言えば、もちろんそんなことはありません。 ここでは詳しく触れませんが、観測の限界、モデリングの限界、計算精度の限界、誤差の限界 等、完全に回避することが不可能な本質的な問題が残るわけです。
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Consumer’s Market Black Box Product Agent の多様性 Agent の情報交換
まず市場の Design として、3つの構造を取り入れました。 第一は、各主体は自分が実際に購入し、使ってみるまでは、その商品から得られる満足度を正確に知ることができない Black Box 性 第二は、ある主体が好きな商品であっても、他の主体もその商品が好きであるとは限らないという、価値観の多様性 第三は、しかしそうであったとしても、各主体は商品を選ぶ前に、他者から得た情報を参考にするという、各主体の情報交換 といったような特徴に注目しました。
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Agent の構造 ― Consumer’s Market 環境 他者 Decision System Communication
Module こうした特徴を捉えるために、 Agent にこのような構造を与えます。 ここでは、他者や環境を通じて情報のやり取りを行う Communication Module と、その情報を用いて意思決定を行う Decision System が中心的なものとして機能します。 Information List 環境 Action (Sell, Buy…)
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Communication Module ― Consumer’s Market
消費者Agent に対し、Communication Module はこのように組み込まれ、他者に情報を伝える<Tell>、他者に情報を求める<Ask>などが機能し、情報のやり取りを行います。 Communication Module は、消費者Agent 以外の Agent にも組み込むことができるよう設計されていますが、(→次のスライド)
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限定合理性 計算能力 情報の量 情報の質 ― Consumer’s Market 行動 ・・・ World 考える 知る 入手情報リスト
fact event 入手情報リスト Information ・・・ 知る Based On 行動 意思決定 考える 情報の量 の限界 Change 情報の質 の限界 これを実装することのメリットは、限定合理性と呼ばれる概念を取り扱うことができる点にあります。 人間はあらゆる社会的行動において、周囲から情報を入手し、その情報を元に意思決定を行います。 しかし、このプロセスは完全であるわけではない。 まず、ヒトは世界中の全てについて知ることはできない、 情報は伝達のプロセスで変容する、 そして、入手した全ての情報を最適な形で考慮することはできない。 これらは限定合理性と呼ばれていますが、新古典派経済学などのモデルでは、この点は計算要素としては加味されておりません。 Communication Module を用いることで、限定合理性を取り扱うことが可能となります。 計算能力 の限界
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EBM Model ― Consumer’s Market (Engel, Blackwell & Miniard, 1995) 欲求
情報探索 購入前 代案評価 購買 消費 処分 購入後 内的情報探索 露出 注意 受容 理解 保持 記 憶 環境の影響 文化 社会階層 対人的影響 家族 状況 消費者の資源 動機づけと関与 知識 態度 パーソナリティー、価値とライフスタイル 刺激 ・マーケティ ング活動 外的情報探索 次に Decision System に移りますが、消費者の Decision System を表現したモデルの有名なものとして、EBM Model 等が挙げられます。 これは、欲求認識から、情報探索、購買、消費、そして処分に至る流れを巡って、こういった要素が影響力を持ってくるとされています。 不満 満足 (Engel, Blackwell & Miniard, 1995)
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Agent の Decision System
― Consumer’s Market Agent の Decision System 欲求 情報探索 満足度予測 購買 消費 処分 評価 他者 広告等 Communication Module topic: Product content: Estimation ・Information Packet 学習機能 情報記憶 判断の アルゴリズム これに対し、現在構築中の Decision System の構造は、このように示すことができます。 今後は、さらにプロセスを追加し、EBM等のモデルに近づき、 それを用いたシミュレーションを通じて現実社会への応用を図っていくことが求められていると思います。
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コミュニケーションネットワークの密度(F)
― Consumer’s Market 実験 実験の要旨 各エージェントがコミュニケーションを行う相手の数を調整し、それによって市場の動きや個々のエージェントの振る舞いがどのように変わるのかを見た。 以上のようなモデルを用いて、今回はこのような実験を行いました。 各Agent のコミュニケーション相手の数を「コミュニケーションネットワークの密度」として定義し、 この密度を調整することで、市場の動きや Agent の振る舞いがどのように変わるかを見ました。 (低) コミュニケーションネットワークの密度(F) (高)
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実験結果(1) ―各商品のシェア推移 ― Consumer’s Market 縦軸 横軸 シェア(異なる色は異なる銘柄を指す)
実験結果(1) ―各商品のシェア推移 F=0 の場合のシェア推移 F=5 の場合のシェア推移 F=10 の場合のシェア推移 実験から得られた結果を簡単に紹介します。 このグラフは、F=0, 5, 10 のそれぞれにおいて、横軸が時間、縦軸がシェアを表しており、時間とともに商品シェアがどのように推移するかを視覚化したものです。 縦軸 シェア(異なる色は異なる銘柄を指す) 横軸 時間( 0 <= t < 500 )
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実験結果(2) ― ― Consumer’s Market 横軸 縦軸 時間( 0 <= t < 500 )
実験結果(2) ― 上位1商品のシェア、上位5商品のシェア、 各主体の適応度、商品の体験率 F=0における各値の推移 F=5 における各値の推移 F=10 における各値の推移 それから、これは別の側面から見たものですが、 F=0, 5, 10 において、縦軸に、最も売れてる商品のシェア、上位5商品のシェアの合計、各主体の適用度、各主体の商品体験率の推移を、時間軸で見たものです。 最も売れてる商品のシェア(青色) 上位5商品のシェアの和(紫色) Agentの適応度の平均値(黄緑色) Agentの商品体験率の平均値(赤色) 横軸 時間( 0 <= t < 500 ) 縦軸
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実験結果の考察 実験より、説明できた現象 ― Consumer’s Market
コミュニケーションがある一部商品のマーケットシェアの拡大を促進する。 エージェントのコミュニケーション相手が多いほど、短期的な噂が発生し、それが社会に大きな影響をもたらすことになる。 良い商品を求めるのに有益な、客観的な情報を入手するためには、多くの他者とのコミュニケーションが重要である。 こうした結果を考察することで、このような3つの現象が確認されました。 コミュニケーションがある一部商品のマーケットシェアの拡大を促進する “Winner take all” のような現象が発生した Agent のコミュニケーション相手が多いほど、短期的な噂が市場に流れ、それが市場に大きな影響をもたらす よい商品を求めるのに有益な、客観的な情報を入手するためには、多くの他者とのコミュニケーションが重要である といった点です。
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Consumer’s Market の Case Study から得られた、方法論的考察
意義 シミュレーションにおいて、各主体の個性、限定合理性の概念、主体間の動的な相互作用など、他の手法では取り扱うことのできない特性を取り扱うことができ、ABSSの可能性を検証することができた。 限界 プログラミングのプロセスから発生する、モデルの恣意性、強い主観性が混入せざるを得ないという点で、科学的方法として物足りないという現状がある。シミュレーションの第二、第三、第四の目的を達成するためには、さらなる工夫が必要である。 ABSSの次のステージ モデルの共有と検証を社会的規模で展開することが、科学的方法には不可欠である。そのためには、モデルの相互利用を図るためのobjectの規格策定(標準化)や共有されるべきライブラリーの構築と運用が極めて重要である。 さて、では Consumer’s Market を Case Study として捉えたとき、方法論的にどのようなことが言えるのでしょうか? まず、実験の意義についてですが、各主体の個性、限定合理性の概念、主体間の動的な相互作用など、他の社会研究の手法では取り扱うことが困難であった特性を取り扱うことができるという、ABSSの可能性を検証することができたという点で非常に有意義な側面がありました。 しかし、同時に、モデルの恣意性や、強い主観性が混入せざるを得ないという点で、このままでは科学的方法論として、まだ物足りないと言うのが現状も確認されました。 つまり、一人で全部設計しようとすると、全部の言葉を定義して、全部のモデルを設計しなければなりません。でも、それだと言葉が圧倒的に不足してしまうし、主観に陥り、独り善がりになりやすいわけです。 実際、僕らが何かを考えるとき、必要な言葉を全て自分で定義し、誰のモデルも借りずに、考えようとするとどうなるか。勿論、考えることには意義があるでしょう。でも、そんなことしていたら、科学なんて成立しません。 これは、コンピュータを用いたABSSでも全く同じです。シミュレーションを行うことに意義があるかもしれませんが、それだけじゃ進歩はない。言葉の使い方やモデルの構造は数多くの適用がなされてこそ、その妥当性が確認され、客観的なものとなり、信憑性が高くなります。 そうなったときに、はじめて、シミュレーションの第二、第三、第四の目的が達成され得るわけです。そのためには、objectライブラリーや、ディクショナリー、或いは用語集のようなものを構築し、それを共有するとともに、モデルの妥当性を社会的に追及していくことが不可欠となるわけです。
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ABSSによるコラボレーション ABSSを利用した研究コラボレーション ― 社会科学の方法論としてのABSS モデル設計 社会構造分析
Object Library 心理モデル 市場モデル コミュニケーション モデル シミュレーション モデル設計 社会構造分析 利用目的 政策提言 政策効果の予測 社会構造の分析 マーケティング戦略 (各種モデルをプログラムとして記述) (モデルの選出) 社会構造 分析者 心理学 研究者 市場構造 設計 ・ Object ライブラリーを構築することで、ABSSによる社会的規模でのコラボレーションが可能となります。各専門領域の研究者がそれぞれにモデルを構築し、それを立体的に組み立てることによって、総合的な議論が可能となるわけです。
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知の組織化 提案する次世代型社会科学基盤の設計図 社会理論をプログラムとして表現 Case Study Existent Theory
Standardization Social Data 社会理論プログラムのライブラリーを構築 社会科学研究者 Verification Social Simulation 同時にこれは、プログラム化されたモデルの、統計的検証を可能とし、科学理論の新陳代謝あるいは進化のためのフィールドとしても機能するわけです。 そのためには、プログラムの適切な規格策定を行い、多くの社会科学研究者を受け入れるべき土台を作っていかなければならないでしょう。 Theory Metabolism 社会理論における知の組織化 社会構造の論理的的解明 近未来のシナリオの導出
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Future Work オブジェクトの規格策定(標準化) オブジェクトライブラリーの構築 社会的規模でのコラボレーションの活性化
―おわりに Future Work オブジェクトの規格策定(標準化) オブジェクトライブラリーの構築 社会的規模でのコラボレーションの活性化 現実世界からの観測データを活用 既存のモデルのオブジェクト化 リソースのパッケージ化 コラボレーション基盤としての拡充 現実世界への適用(→シミュレーションの目的) そこで、Future Work として、今後このような取り組みが必要になってきます。 (読む)
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まとめ ―おわりに オブジェクト指向の方法論を次世代型社会科学の基盤として位置づけることを提案した。
オブジェクト指向社会科学を、一般システム論の世界観に基づく分析を実践する手段として、科学的方法論の中で位置づけた。 Consumer’s Market のシミュレーションを通じ、これを具体的な形で実践し、その可能性と限界を示した。 今後の展開において、社会的コラボレーションの基盤を確立し、知の組織化を計ることの重要性を確認した。 最後に、本研究の成果をまとめて発表を修了します。 第一に、オブジェクト指向の方法論を次世代型社会科学の基盤として位置づけることを提案したこと。 第二に、オブジェクト指向社会科学を、一般システム論の世界観に基づく分析を実践する手段として、科学的方法論の中で位置づけたこと。 第三に、Consumer’s Market のシミュレーションを通じ、これを具体的な形で実践し、その可能性と限界を示したこと。 第四に、今後の展開において、社会的コラボレーションの基盤を確立し、知の組織化を計ることの重要性を確認したこと。
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修士2年間での研究成果 島 広樹, 「新しい時代の情報技術 ―ANSS構想― (Agent Network Simulation System)」, 富士総合研究所創立10周年記念懸賞論文(優秀賞受賞作品), 1998 島 広樹, 井庭 崇, 小澤太郎, 武藤佳恭,「情報流通ダイナミズムのエージェントネットワーク型シミュレーション」, 日本シミュレーション&ゲーミング学会第10回全国大会, 1998 島 広樹, 武藤 佳恭, 「情報流通ダイナミズムのマルチエージェント型シミュレーション-人工社会モデルに対するコミュニケーションモジュールの適用-」, 進化経済学論集第3集(進化経済学会第3回大阪大会研究報告), Mar , 1999 Hiroki Shima, Takashi Iba, Taro Ozawa, Yoshiyasu Takefuji, "Information Propagation and Price Fluctuation on Multi-Brand Market" , Computational Intelligence Methods and Applications: Soft Computing in Financial Markets, 1999 Hiroki Shima, Takashi Iba, Yoshiyasu Takefuji, "Agent-based Simulation of Black Box Product's Market", 1999
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Appendix
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社会モデルのプログラミング ― 社会科学の方法論としてのABSS
社会科学のモデルの中には、一般化されており、抽象度が高いため、そのままの形では機能しないものが多くある。社会科学の場合、見えないところに存在する多くの仮説を前提としていなければ、理論が成り立たない 。 社会シミュレーションを行うためのプログラミングの際には、完全な論理性が求められるため、見えない仮説を引き出し、それを論理化してやらなければならない。プログラマーはこうした曖昧な点を払拭し、論理的欠如を補うことが求められる。 ここで、オブジェクト指向社会科学において、注意すべき点をいくつか示しておきましょう。 ABSSの真髄は、社会や人間、生態系や生物、そしてモノや情報といったものを人工言語によってプログラミングし、システムをオブジェクトとして表現し、これらを相互作用させ、物事を階層構造によって理解しようとする点にあります。 当然モデリングする人の恣意性が混入せざるを得ないことになりますが、恣意性の混入が意識されている限りにおいて、論理的欠損状態にあるよりも、恣意的論理性がある方がまだマシである。恣意的論理性であってもシミュレーションを繰り返すことによって、その妥当性が統計的に認められることも考えられる。 このプロセスにおいて、ある社会理論やモデルが成立するために必要な仮説的前提群が次第に明らかにされていくことになるだろう。理論やモデルの前提を明確にできれば、それが妥当であるための条件を明確にすることができ、理論やモデルの不適切な適用を避けることができる 。
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Bottom-up アプローチ ― 社会科学の方法論としてのABSS
ボトムアップ型アプローチの背景には、システムが階層的に成り立っているという一般システム論的な世界観がある。 自然科学においては、このアプローチの妥当性はほぼ確認される。だが、社会科学の場合は、これを構成する要素をモデル化したものが、現実の動きを表現する能力において不確実性が高いという問題がある。 「モデルが極度に単純化され、その不確実性が高い場合においても、ボトムアップ型アプローチが有効であるかという問題」に帰結される。 これまでのアプローチでは明らかに行き詰まっている状況の中で、感覚的に理解しやすいボトムアップ型アプローチの有効性を信じ、期待を寄せる人が増えてきたという段階でしかないのである。 現象が論理的・数学的プロセスによって説明されるべきであると信じている限りにおいて、下位の現象に与えられるモデルと、上位の現象に与えられるモデルとの間に、論理的・数学的な整合性が取れるかどうかについて検証することが可能である点である。
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Agent-based Social Simulation
研究の目的 オートメーション化の流れ 肉体労働 → ブルーカラーの生産性向上 機械化によるオートメーション化 事務作業 → ホワイトカラーの生産性向上 コンピュータによるオートメーション化 我々の研究がどういった流れの中で位置付けられるかを見るために、 ここで、人類の発展を歴史的な流れの中で振り返ってみたい。 人間活動の発展は、まさにオートメーション化の流れと共にあるといって過言ではありません。 かつて、農工業が発展した背景には、機械を導入することで、肉体労働のオートメーション化を図り、農家やブルーカラーの生産性を飛躍的に向上させた。 また、第三次産業が発展した背景には、コンピュータを導入することで、事務処理のオートメーション化を図り、ホワイトカラーの生産性を向上させた。 このように、人類の発展はまさにオートメーション化と共にあったわけです。 社会科学が発展し、我々の社会を豊かなものと導いていくためには、頭脳処理のオートメーション化を図り、研究者の生産性を向上させるための、仕組みが必ず必要になってくるわけです。 我々は、社会科学の発展を促すために、思考作業のオートメーション化を促進するテクノロジーが、Agent-based Social Simulation であると位置付けています。 頭脳処理 Agent-based Social Simulation →社会科学 研究者の生産性向上 ???
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― 社会科学の方法論としてのABSS 観測の限界
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研究の目的 研究の目的 社会科学の 従来の社会科学の方法論 Agent-based 方法論 社会理論を文章や数式として表現
社会理論をプログラムとして表現 プログラムとして伝達 文章や数式として伝達 伝達・共有が高速かつ正確 伝達・共有の限界 コラボレーションの促進 モデルの適用 モデルの適用 頭脳や紙上で計算 コンピュータで計算 現存する社会理論は、経済学、法学、組織論等、多くの分野において我々の社会を豊かなものに導き、社会の発展に大きく貢献してきた。しかし、一方で、社会の構造は極めて複雑化し、それぞれの領域で取り上げられる、一側面的な議論では、その変動を説明したり、予測したしたりすることが困難になってきた。これは同時に、我々が直感的にそれを理解することや、一人の専門家が社会変動のプロセスを描くことが難しくなってきたことを意味する。 現在の社会を説明し、将来の社会を設計するには、各分野で取り上げられる理論を取り込み、多面的・立体的な議論を展開していかなければならない。( → ABSはそのための方法論 ) 本研究の目標は、社会メカニズムの論理的・構造的解明と、その改革提案ともいうべき、将来(近未来)のシナリオを描くことにある。 論理構造の限界 複雑な論理構造 計算速度の限界 高速な計算が可能 計算精度の限界 正確に計算 現実社会 現実社会
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