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図書館とメディアの歴史 担当:後藤嘉宏 第3回(くらい)配付資料(4-1古代) 20170511 2017/5/11
図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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講義の古代(4-1)の箇所で主に依拠する本、等について
書物の歴史と読書の歴史 書物についてはエリク・ド・グロリエ著・大塚幸男訳『書物の歴史』(クセジュ文庫、白水社、1992年)の前半部にほぼ依拠して、他の資料も交える。略記号〔G〕 この本の疑問の点、他の本やネット情報による補足及び写真を付加。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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読書についてはシャルチエ&カヴァッロ『読むことの歴史:ヨーロッパ読書史』(大修館書店、2000年)にほぼ依拠。略記号(C)
他に、 オング『声の文化と文字の文化』(藤原書店、1991年)略記号(O) リチャード・E・ルーベンスタイン『中世の覚醒』(紀伊國屋書店、2008年)略記号(R) 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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本講義での時代区分 (ウィキペディアによる)
現在では古代、中世、近世、近代の4区分が一般的に用いられるようになった。 古代、中世、近世、近代の境界は概ね以下の通りである。 古代 - 中世 : 西ローマ帝国の滅亡 (476) 中世 - 近世 : 東ローマ帝国の滅亡(1453)、ルネサンス、大航海時代(1415~セウタ攻略)、宗教改革 (1517) 近世 - 近代 : 市民革命(特にフランス革命)(1789)、産業革命(イギリスで1750頃) 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ヨーロッパ中心の「古代」をみていく ギリシア→マケドニア→ローマ
古代ギリシア マケドニア王国(ギリシア語を喋るギリシアの一応、一員)の帝国化(BC338カイロネイアの戦いで都市国家をほぼ統一)→ヘレニズム文化(アジア・アフリカの文化(オリエント文明)とギリシアとの融合) マケドニア王国がローマによって滅ぼされる(BC168) 古代ローマの覇権の時代へ 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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本日の目的 中井正一は古代をギリシアに求め、そのオーラル性を強調する。
アレント、ハーバーマス、オング等、オーラルな部分の捉え方そのものにはかなり違いはあるが、いずれも古代≒ギリシア=オーラルとはいえる。 とはいえ、アレントはローマもソクラテス学派も中世的な観相(観想)の兆しのある時期ともとらえる。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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古代-オーラルという彼らの、というか極端な事例は(中井の図式含めて)妥当か?
実際の歴史は、オーラルなものの歴史というより、そこから文字や紙の原型が生まれてくる技術史という側面も強くある。 要は紙がなかったり希少だから、オーラルな時代だったともいえて、この推移を見るならば、時代移行論の方が有効ともいえる。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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書物の前史-最初の文字 粘土の書板 BC3500 スメル人(シュメール人)〔G17〕 メソポタミア、くさび形文字 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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亀甲文字 中国 骨、亀の甲 青銅に 亀甲文字〔G17〕
中国・殷(商)の時代に行われた漢字書体の 一つで、知られる限り最古の漢字。甲骨文字、甲骨文とも。亀の甲羅(腹甲)や牛や鹿の 骨(肩胛骨)に刻まれた(ウィキペディア)。 殷(いん、BC17世紀頃 –BC1046) 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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亀甲文字(画像) 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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アルファベットについて(1/2) アルファベット・・・楔形文字の生まれたのと、ほぼ同じ地域に、2000年後に生まれた(O,186)。
セム族あるいはセム語族によってBC1500頃。 ただしヘブライ語やアラブ語は母音を表す文字がないので、それを補って読む(O,187)。 他方ギリシア人は母音をもった完全なアルファベットを作る→他の古代文明に対する知的優位の確立(O,188)。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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アルファベットについて (2/2) ギリシア語のアルファベットのメリット(O,189) 1)誰でも簡単に覚えられる・・・民主的
アルファベットについて (2/2) ギリシア語のアルファベットのメリット(O,189) 1)誰でも簡単に覚えられる・・・民主的 2)外国語ですら処理する術を与える・・・国際的 ・・・音を視覚的な形に還元する。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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パピルスと羊皮紙・・・古代の書物 エジプト パピルス BC3000発明→ギリシアにBC7世紀→ローマにBC3世紀→713年ガリア(現フランス)地方・・・11世紀まで教皇庁が使う〔G18〕 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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パピルスの画像 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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中国 BC12世紀 筆と墨と絹 ヨーロッパ 獣皮 BC25世紀から 羊皮紙 BC2世紀 獣皮・皮紙・・・メモ用 書物はパピルス〔G19〕
羊皮紙その他、紙の前身 中国 BC12世紀 筆と墨と絹 ヨーロッパ 獣皮 BC25世紀から 羊皮紙 BC2世紀 獣皮・皮紙・・・メモ用 書物はパピルス〔G19〕 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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羊皮紙についてのネット情報(1/2) ( 「羊皮紙」羊皮紙は紀元前200年頃のペルガモン(Pergamum、現在のトルコ)で生まれ、「Parchment」の語源にもなっています。 (この地に)大図書館が建造された折にパピルスの一大産地であったエジプトと不仲であったため、それまであった筆記用の獣皮を発展させ、両面とも利用でき、冊子(本)として加工できるものとしました。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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羊皮紙についてのネット情報 (2/2) なお獣皮を記述用媒体とする文化自体は、紀元前2,500年頃のエジプトでの使用が最古の記録と見られています。 その後15世紀に安価な植物製紙が普及し、貴族や芸術家などの一部の層を除いて、羊皮紙の利用は減少していきました。ですが植物製紙と比べて1,000年以上の保存に耐える羊皮紙は、今日でも政治的、歴史的な用途などで用いられ続けています。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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羊皮紙の語源、ペルガモン図書館跡http://www.youhishi.com/travel5.htmlより 2017/5/11
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「ペルガモン」の ウィキペディア情報 ペルガモンは、小アジア(アナトリア)(現トルコ)のミュシア地方にある古代都市。スミュルナ(現イズミール)北方のカイコス川河畔にあり、エーゲ海から25キロメートルの位置にある。ペルガモンは、紀元前3世紀半ばから2世紀にアッタロス朝ペルガモン王国の都として繁栄したヘレニズム時代の都市である。 ペルガモンの文化の発展の度合いは、図書館が一時アレクサンドリアの図書館に次ぐ規模に達していたことに象徴されている。蔵書の作成に使われたパピルスは、品不足の影響もあって、エジプトのプトレマイオス王朝から輸出を停止されたほどであった。そのため、パピルスの代替するものとして、同国で羊皮紙が生産されるようになった。羊皮紙を表す言葉の語源はペルガモンに由来する(例・英語のparchment)。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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(ペルガモン図書館の補足情報) (アレクサンドリア図書館と)並び称されるのはアッタロス二世(紀元前159年没)により建設されたペルガモンの王室図書館であった。ここでは紀元前二世紀、マロスのクラテスのもと、ストア派の傾向をもち、寓意的な註釈をほどこす特別な学問が育っていた(フォルシュティウスほか『図書館史要説』日外、7)。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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パピルスと皮紙の使い分けhttp://www.pauline.or.jp/imamichi/imamichi02.php より。
イエスの時代にすでにパピルスと獣皮紙(=羊皮紙、ペルガメーナ、パーチメントとも同義)は ともに存在しましたが、獣皮紙は高価だったので、パピルスの輸入がむずかしいところ以外では パピルスのほうが好まれました →二つのネット情報はグロリエの獣皮紙、メモ用、パピルス、本用という記述とだいぶ違う。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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羊皮紙の巻子本の画像 羊皮紙の巻物ヘブライ聖書 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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当面する問題 結局、古代は、アレントのいうようなオーラルな時代だったのか、書きことば優位へと向かう時代だったのか?
あるいはその場合のオーラルの意味は、演説の意味なのか、弁証法的対話の意味なのか? そこでまずウォルター・オング( )の言及、次にシャルティエ等をまず見てみる。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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オングによるホメロス問題1/4 『イリアス』紀元前8世紀半ばにホメロスによって作られ、紀元前6世紀頃に文字化されたとされる。
ホメロスは決まり文句を繰り返し使っているということが、明らかになった(O54)。現代の文学の基準からすると、それはホメロスの評価を下げそうなことである。しかし、声の文化に属する人々の認識世界は、「きまり文句的な嗜好の組み立てに頼ってい」(O57)て、「いったん獲得した知識は、忘れないように絶えず反復していないくてはならな」かった。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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オングによるホメロス問題2/4 「知恵をはたらかすためにも、そしてまた効果的にものごとを処理するためにも、固定し、型にしたがった思考パターンがどうしても欠かせなかった」 (O57)。 プラトンの時代までに、人々は書くことを内面化・・・ギリシアのアルファベットの完成(BC700年頃)から数世紀(→アレント等の対比) 「記憶をたすけるきまり文句のなかにではなく、書かれたテキストのなかに、知識をたくわえる新しい道が開かれた」(O57)。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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オングによる、ホメロス問題3/4 もっともオングに言わせるとプラトン自身葛藤が。「書くことは、知識を処理する手段としては機械的で非人間的であり、書かれたものは尋ねられても即座にこたらえられず、記憶力をそこなわせるものだ、というように」(O58)。 書くことがない文化では、きまり文句や記憶しやすい言葉に頼らず思考して、その思考が成功したとしても、徒労である。というのも再現する術がないからである(O81)。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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オングによる、ホメロス問題4/4 「韻律にあうようにつくられたきまり文句が、古代ギリシアの叙事詩の構成を導いていたのであり、そうしたきまり文句は、話しのすじや叙事詩のトーンをそこなわずに、まったく簡単にいれかえることができた」(O125)とパリーという人のホメロス研究を通じて、オングは述べる。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ウォルター・オング(英語版ウィキペディア)1/2
Father Walter Jackson Ong, Ph.D. (November 30, 1912 – August 12, 2003), was an American Jesuit priest, professor of English literature, cultural and religious historian and philosopher. His major interest was in exploring how the transition from orality to literacy influenced culture and changed human consciousness. In 1978 Ong served as elected president of the Modern Language Association of America. 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ウォルター・オング(英語版ウィキペディア)2/2
In 1941 Ong earned a master's degree in English at Saint Louis University. His thesis on sprung rhythm in the poetry of Gerard Manley Hopkins (see An Ong Reader, 2002: ) was supervised by the young Canadian Marshall McLuhan. →マクルーハンの一応、弟子(年齢はほぼ一緒)。イエズス会の司祭。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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オング神父の顔写真 左 中 右 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ホメロス問題周辺1/2 そしてギリシアの隣国ユーゴの現代の吟遊詩人等を調査した調査結果から、吟遊詩人は他の吟遊詩人の歌を何年も聴くことで学び、手本となる詩人は同じやり方で二度と物語を歌わないが、紋切り型のテーマに結びついた決まり文句を繰り返して用いるという(O129)。 しかも読み書きを覚えるとテキストに囚われて、口承詩人をダメにするともいわれるという(O128)。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ホメロス問題周辺2/2 しかも話を聞いて、二、三日、熟成させる時を置いてから、話しを思い出し語り直すという(O130)。
ホメロスを声の文化の典型としてあげるオングであるが、『聖書』についても神父でもあるオングは同様に捉える。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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オングによる、ホメロスから聖書について(1/2)
「テクストによって支えられたそうした宗教的伝統においてもなお、さまざまなしかたで、声としてのことばに関係するものの優位が確証されつづけている。たとえば、キリスト教においては、聖書は礼拝において高らかに読みあげられる。なぜなら、神は人間に「語りかける」ものであり、けっして人間に〔文字を〕書きおくるものとは考えられていないからである」(O158)。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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オングによる、ホメロスから聖書について(2/2)
「父なる神は、子を「語る」のであって、書きしるすのではない。神の言葉であるイエスは、読み書きができたにもかかわらず(『ルカによる福音書』第四章十六節)なにも書きのこさなかった。「信仰は聞くことによるのであり」と『ローマ人への手紙』(第十章十七節)には記されている。「文字は人を殺し、霊は人を生かす。」(『コリント人への第二の手紙』第三章六節)」(O159)。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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オングによる、プラトン1 プラトン『パイドロス』の中でソクラテスに語らせた、書くことへの批判(O168-)。
1)精神のなかにしかないものを精神の外にうちたてようとする点で、非人間的。 2)外的な手段に頼るため、忘れっぽくなる。書くことは精神を弱める。 3)書かれたテクストは、何も応答しない。説明してくれといっても同じことの繰り返しのみ。 4)話される言葉は、自らを弁護できるが、書かれた言葉にはそれができない。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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オングによる、プラトン2 しかしイデア論的なプラトンの認識論は、上記の発言とは逆に、「声としてのことばにもとづく生活世界の計画的な拒絶」(O170)といえる。 イデアideaはギリシア語idein(見る)に由来し、形相formは見られたものとしての形を意味し、ラテン語の「見るvideo」と同じ語源。要は視覚的な形との類比において捉えられる。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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背景にあるオングの視覚批判1 この考え方の基本に師匠のマクルーハンと同様の、視覚と音声の対比の議論がある。
「視覚は分離し、音は合体させる。視覚においては、見ている者が、見ている対象の外側に、そして、その対象から離れたところに位置づけられるのに対し、音は、聞く者の内部に注ぎ込まれる」(O153)。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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背景にあるオングの視覚批判2 「視覚は切り離す。視覚は、一どきに一方向からしか人間にやって来ない。・・・ところが、聞くときは、同時にそして瞬時に、あらゆる方向から音が集まってくる。つまり、わたしは、自分の聴覚の中心にいる。・・・視覚が切り離す感覚であるのに対し、音は、このように統合する感覚である」(O153) 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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さらに書き言葉への批判 「一人の話し手が聴衆に話しかけているとき、聴衆は、ふつう、かれらのあいだで、また、話し手とのあいだにおいても、一体となっている。ところが、もし話し手が、手渡した資料を読むようにと聴衆に求め、聴衆の一人ひとりが自分だけの読書の世界に入ると、聴衆の一体性はくずれ、ふたたび口頭での話しがはじまるまではその一体性はもどらない。書くことと印刷とは人々をたがいから分離する。読者を表すことばには、「聴衆audience」に対応するような集合名詞や集合的な概念がない」(O157) 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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次にシャルティエ等の読書論からこのオーラルの問題を追う
「オーラル時代の書き言葉・・・音読の伝統に」という文脈で。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(1/18) ギリシア・・・語られる言語が「抗いがたい権力をふるっていた」(C33)
ホメロスの英雄が死ぬことができた・・・名声(クレオス)を得られるがため。 クレオス・・・名声、栄光・・・しかし語源的には「音声」 いわば音声として語られることで響き渡る栄光こそが、「クレオス」(C33) 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(2/18) ギリシア人があえてフェニキアのアルファベットを借用した理由もそこにある。
音声文字であるがゆえに、音声(栄光)を永遠に留めうると。「文字はクレオスの増加をもたらす役に立つ。例えば墓碑銘によって死者に今まで無かった形での後世が保証される」(C34)。 ギリシアの最初の読書は音読と推察させる。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(3/18) →表音文字を文字文化、視覚優位の典型とマクルーハンは位置づけるが、源流においては、むしろ逆という見方だ。
→言い換えると音読前提のアルファベットは聴覚重視、黙読普及後のアルファベットは視覚優位の抽象性を強めたものといういい方で、マクルーハンとシャルチエグループとの折衷も可能? 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(4/18) ギリシア語の「読む」の3つの含意 1)読み手の声が道具としての性格を持つ
ギリシアでの「読む」という動詞「分配する」を意味する。当初音声で記憶に残る分配、その後は、文字に残る分配 ギリシア最大の立法家カロンダスの法の公布・・・歌われることで公布(C39)。 ギリシア語の「読む」の3つの含意 1)読み手の声が道具としての性格を持つ 2)書かれたものはそれだけでは不完全で、音声化される必要がある。 3)書かれたものは読者に向けられるのではなく、聴衆に向けられる(C44-45)。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(5/18) ←連続記法、統一的な正書法の欠落・・・黙読で理解しがたい(音読前提ゆえの欠落) テクスト=織物
ギリシア時代の読書(5/18) ←連続記法、統一的な正書法の欠落・・・黙読で理解しがたい(音読前提ゆえの欠落) テクスト=織物 タテ糸・・・文字/ヨコ糸・・・音声(C45) 読まれる時の他者の肉体の占有「読まれるということは、時間と空間がどれほど隔たっていようとも、相手の肉体に力を及ぼしていることに他ならない。読んでもらうことに成功した時、書き手は他人の発声器官に働きかけ、それを意のままに用いている」(C46)。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(6/18) そのことから来る帰結 ギリシア・・・必然、強制から免れていることが市民=自由人の条件
よって、読むことは、筆者の支配を受ける楽器のような位置に自らを置く →読むことはいかがわしい行為(C46)。他方、書き手は尊敬もされる。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(7/18) 「読むことにおいて読み手は、少年愛における受動的関与者と同じ役割を果たし、軽蔑される。書き手は、同じく少年愛における能動的関与者と同じ立場にたち、支配し、尊敬されるのである」(C47)。 「・・・なぜ読み上げる任務をギリシャ人は進んで奴隷に委ねたか、理解することが出来る。奴隷とはまさしく主人に奉仕し、服従する存在に他ならない。奴隷は・・・「声を出す道具」である」(C47)。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(8/18) 「読むことは、市民であることと真っ向から対立する行為ではないにしても、ある種の節度をもって控えめに実行しなければ、悪徳と化する危険のある行為だったのである」(C48)。 →このようなシャルティエ&カヴァッロの共編著中のスヴェンブロの記述からも、アレントや中井のいうギリシアの文字言語への嫌悪は現代の研究水準からも裏付けられる。 ただアリストテレスのいう朗読に近い演説もアレント流の演説=活動=政治だとすると、「読むこと」の受動性への軽蔑というここでの文脈からどう評せるのか(自分の書いたものを読むのだから支配被支配に入らない?)という問題が生じる。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(9/18) 書かれたものを読む人は、書かれたものに従属するという考えも(先に挙げたのは書いた人に従属するという考え)。
主語のある墓碑銘「私はグラウコスの墓である」(C48)。→読み手が書かれたものの所有に帰する(C49)。「しゃべる遺物」・・・アニミズムで説明されてきたが、読み手の声を予め手に入れているとも・・・黙読の予兆(C52) 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(10/18) このような書いた人に読む人が従属するという思いこみからギリシア人を解放したのが、演劇の経験(C59)。
観客は自分の声を介入させずして聞けるので。 舞台と観客の隔たり=書かれたものと読み手の隔たり(双方とも従属しないという意味での「隔たり」)→「読み手はもはや書かれたものの道具にはならない。書かれた物が何の助けも借りずに自分からしゃべりかけてくるからである。読み手はただ受動的に聞くだけでよい」(C59)。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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(補足)ギリシアの演劇 ウィキペディア「古代ギリシアの演劇」「古代ギリシアの演劇(こだいギリシアのえんげき)または古代ギリシア劇(こだいギリシアげき)は、紀元前550年ごろから紀元前220年ごろの古代ギリシアで花開いた演劇文化である」「都市国家アテナイは当時の文化、政治、軍事の中心地であり、そこでディオニューソス神の祭りであるディオニューシア祭の一部として演劇を上演することが制度化された。そこで生まれたのが、悲劇(紀元前6世紀末)、喜劇(紀元前486年)、サテュロス劇(悲喜劇)という3つの戯曲のジャンルである。」 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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(補足)三大悲劇詩人についての情報 (ウィキペディアその他から)
エウリピデス、BC 。代表作は『メデイア』、『アンドロマケ』など。哲学者アナクサゴラスに学ぶ。「三大詩人の他に比べて現存する作品が多いのは・・・題名のアルファベット順に並べられた「全集」のうち、Η・Ιの部分が幸いに散逸を免れたためである」 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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(補足)三大悲劇詩人についての情報 (ウィキペディアその他から)
ソポクレス、BC497(5)-406(5)。代表作『オイディプース王』、『アンティゴネー』・・・ 『オイディプース王』はT哲学者アリストテレスが『詩学』で最も優れた詩が悲劇であり、悲劇で最も優れた作品であると絶賛。運命劇の典型。フロイトのエディプス・コンプレックスのルーツ。「ソポクレースは晩年に耄碌したとして、後見人を必要とする宣言をするよう息子たちから迫られたとも伝えられている。老詩人はこれに対して、法廷で当時未発表の自作『コローノスのオイディプース』の一節をそらんじてみせることによって反駁したと言われている」。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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(補足)三大悲劇詩人についての情報 (ウィキペディアその他から)
アイスキュロス、BC 。代表作『ペルシャの人々』『縛られたプロメテウス』『アガメムノン』。「ギリシア悲劇中唯一現存の歴史劇『ペルシアの人々』 Persai (前 472上演) はサラミス海戦 (前 480) の体験に基づく」。「アイスキュロスの悲劇《縛られたプロメテウス》では,火の神プロメテウスはやむにやまれぬ人間愛に促され,天上の火を盗み人間に与え,技術を授け,文明世界の創造のために己が身を犠牲にする崇高な英雄として扱われている」『世界大百科事典、平凡社、第2版』。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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(補足)ギリシア喜劇詩人 アリストパネス アリストパネス、BC 「代表作はソクラテスに仮託する形でソフィストを風刺した『雲』、デマゴーグのクレオンを痛烈に面罵した『騎士』、アイスキュロスとエウリピデスの詩曲を材に採り、パロディーなどを織り交ぜて優れた文芸批評に仕上げた『蛙』など。」。・・・ソクラテスを死罪にする世論作りに一役買ったともされている。ただし『雲』はソクラテスの死刑の20数年前の作品ではある。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(11/18) →黙読への流れ。
「黙読する物は書かれた物に聞き入る。それは、劇の観客が、俳優の発する「声で書かれた物」に聞き入るのと同じことである」「書かれたものにはしゃべる能力があり、読み手の能力が介入しないまでも、既に声を得ているのである。読み手はただ、自分の内面で、耳を傾ければよい」(C60)。 BC6世紀末に黙読が導入されたのではと(C63) 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(12/18) ヘロドトスのような歴史家・・・大量に読み、大量に書く必要性・・・黙読。自分の声を内面化する必要性(C66)。ヘロドトス(BC ) しかし黙読はギリシアでは基本的に専門家のみのもの。文字を書く専門家以外の「普通の読者にとっては、読むこととは常に声を出して読むことであり続けた」(C73)。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(13/18) 本屋はBC5世紀にアテネで生まれる〔G19〕 大きな工房で奴隷が写本
ソクラテス学派が活動・言論主体のギリシアを崩したとアレントはいいつつ、彼らの文字への嫌悪をいうが、本屋の成立時期と随伴。 ソクラテス 紀元前469年頃 - 紀元前399 プラトン 紀元前427年 - 紀元前347年 アリストテレス 前384年 - 前322年 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(14/18) シャルティエらによる、プラトンの書物嫌悪への解釈
プラトン《書かれた言説は絵のようなもの》・・・質問に答えてくれない・自分を繰り返すのみ、と。 しかし、自由な解釈を書物は認めてくれるはず、とシャルティエ&カヴァッロ。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(15/18) シャルティエらによると、ソクラテスがある種の書物の所有と学問や職業の営みを自明視していた証拠があるという(C13)。 紀元前5世紀末には、会話や宴といった社会生活のなかでの読書の図や絵が一般的になる(C12)。 ギリシアで様々な読書実践が行われていたが、5世紀末から4世紀にかけて、読める少数者が音読して多くの人々に伝達・情報の分配をする読書から、一つの本を繰り返し読む精読に移ったと考えられる(イソクラテス(BC )の証言から)(C15) 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(16/18) ヘレニズム(アレクサンドロス大王~プトレマイオス朝が滅びるまでのギリシア文化とオリエント文化の融合した300年間)は音声的な語りと書物の双方の重要な時代。作品の作成、流通、保存は書物を通じて(C16)。 古典時代の書物には、序文等で自著の要約をすることで、読者の便宜を図るという流れがすでにあった(C19)。ギリシアのポリュビウス(BC )の『歴史』の序文。プリニウス(BC23,24-79)の『博物誌』の冒頭。36巻の各巻の要約と関連する出典示す(C19)。 →索引が出来るのはCODEXになってからとオングはいうが、索引のような本の検索媒体への流れもこの時期からあった。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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ギリシア時代の読書(17/18) 音読理論と雄弁術(C19)
トラキアのディオニュシオス(BC170-90)(ディオニュシオス・トラクス、品詞を最初に唱えた文法学者) 声の表現力を組織する 読書は、個人的であれ、対聴衆であれ、声と仕草による解釈・・・弁論術の口演法に由来する・・・口演法は演劇の手法に由来 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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(参考)ディオニュシオス・トラクス (BC170年 - BC90年)のウィキペディア情報より1/2
はじめアレクサンドリア、のちにロードス島で活躍した。 『文法の技法』の主要な部分はギリシア語の形態論(どう単語が変化するかなどを調べる)についてであり統語論(言語の静的な構造を研究する)的な側面の記述はない。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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(参考)ディオニュシオス・トラクス (BC170年 - BC90年)のウィキペディア情報より2/2
トラクスはその著書の冒頭で文法を「詩人や散文家の実用的知識、一般的な使い方」と定義している。また彼の著作は当時の「現代語」であるコイネーしか知らなかった人々がホメーロスなどの古典文学を理解する際の手助けとなったと考えられている。 トラクスは品詞という概念を体系的に考えた最初の人である。 2017/5/11 図書館とメディアの歴史(後藤嘉宏)
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