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統語意味論:認知科学としての統語論の提案

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Presentation on theme: "統語意味論:認知科学としての統語論の提案"— Presentation transcript:

1 統語意味論:認知科学としての統語論の提案
上山あゆみ(九州大学)

2 「言語」の研究の対象 私たちの回りの数々のことばそのもの? ことばが生み出される過程に着目する
→ かなり雑多で不規則性が多い ことばが生み出される過程に着目する → 結果的に生成されたものの変異は大きくても、その生成過程の中には、規則的な部分を見つけることができる ことばの生成過程には、認知一般のシステムしか関与していないのか? No. 言語に特有なメカニズムが関与していると考えざるをえない。 いくら反復練習しても、特定の語配列と特定の意味解釈の組み合わせが結びつかない、という事実が存在するから。  「言語」というと、普通は、私たちの回りにあふれている数々の言葉そのものを指す。しかし、「言語を研究する」という場合、その出てきた言葉そのものを研究対象とする場合と、それらの言葉が私たちの頭の中から生み出されてきたその過程に着目する場合とがある。その「過程」には、認知一般のシステムしか関与していないという立場もある一方、生成文法では、人間の頭の中に「単語を組み合わせて文を構築する」という言語に特有のメカニズムが存在するという仮説が追究されてきた。文というものが一般的な認知システムによって習得されるものであるならば、どのような配列であっても、反復によって習得可能であるはずにもかかわらず、現実には、いくら反復練習しても、特定の語配列と特定の意味解釈の組み合わせが結びつかないという事実が存在するからである。

3 構造主義言語学における統語論 いまだに根強い考え方 言語(=記号の体系) 音素の配列 Phonology 意味 形態素の配列
Morphology Semantics 語の配列 Syntax 言語使用 Pragmatics 「単語を組み合わせて文を構築するメカニズム」とは、すなわち統語論である。構造主義言語学においては、統語論とは語の配列に関する規則群のことであり、意味論や音韻論とは独立のものであった。

4 Numeration (いくつかの単語の集合)
生成文法にとっての統語論 Lexicon Numeration (いくつかの単語の集合) Computational System PF (Phonological Form: 単語を構造化した、音関連の表示) LF (Logical Form: 単語を構造化 した、意味関連の表示)  それに対して、生成文法の言語観では、統語論は、音韻論や意味論と並列的な関係ではない。生成文法では、ことばを生み出すということは、単語を材料として、その構造を生み出すことであり、その構造を意味的な側面と音韻的な側面とから読み取ることによって、意味と音との関係性が成り立つと考えている。したがって、生成文法における統語論とは、直接、意味の議論にも音韻の議論にも影響を与えていくものなのである。

5 生成文法にとっての統語論 I-language Numeration PF LF R-language Lexicon
Computational System PF 観察可能な 音連鎖 LF  以下では、「結果物」としての言語をR-language、そして、R-languageが生成される過程に関わっている言語に特有なシステム、すなわち脳内辞書(Lexicon)と統語論をI-languageと呼ぶことにする。生成文法はI-languageを研究の対象にしているが、いくらI-languageが研究対象であっても、その仮説の検証を試みる際には、常にR-languageを利用せざるをえない。「生成される過程」の仕組みを検証するためには、どういう「結果物」が出てくるかということを観察するしかないからである。  従来は、統語論の研究は主に語順という、R-languageの音韻的特性に基づいて行われてきた。しかし、統語論が音と意味の両方の基盤を構成するものであるならば、R-languageの意味を観察することによっても、統語論の議論が可能であって当然である。本発表のタイトルにある統語意味論とは、R-languageの意味に基づいたI-languageの統語論の研究に対して仮に付けた名称である。本発表の目的は、統語意味論の基本的な考え方を紹介することである。 感知可能な「意味」 R-language

6 文理解のモデル SR 私たちが理解する「意味」= 1) 各語彙の意味 (Lexicon)
Working Table Computational System 知覚した音連鎖 Information Database Lexicon LF SR Numeration Phonology PF 内的に生成された音韻表示 Inference rules Formation  R-languageの意味に基づいてI-languageの研究をするためには、まず、統語論とR-languageの意味がどのように関連づけられるか、そのモデルが必要である。I-languageを研究対象とするならば、このようなモデルにならざるをえないということを、私は、上山(2005)以来、さまざまなところで主張してきた。  この図でComputational Systemというのが統語論のシステムである。Numerationとは、その入力となる単語を集合を指し、LFとは、その出力の1つで、これが意味解釈の基盤となる構造表示である。統語意味論では、LFから読み取られる「ことばそのものが表示する情報」を表すものをSR(semantic representation)と呼ぶ。統語意味論の目標は、SRを観察することによって、I-language、すなわち、Lexicon と Computational System の働きを明らかにすることである。 私たちが理解する「意味」=   1) 各語彙の意味 (Lexicon) + 2) 構造構築による変容 (Computational System) + 3) 世界知識等に基づいて推論で補われるもの(Working Table)

7 統語意味論の目標 文の意味というものは、どのような仕組みで構築されるのか? 私たちが理解する「意味」=
   1) 各語彙の意味 (Lexicon)  + 2) 構造構築による変容 (Computational System)  + 3) 世界知識等に基づいて推論で補われるもの  (Working Table) まだあまり研究が進んでいない構文について、意味に関する観察に基づいて、統語構造についての議論ができるようにすること いくつかの「用法」を持つ語について、その語が持つ共通の「意味」がとらえられるようにすること つまり、私が興味を持っているのは、文の意味というものが、どのような仕組みで構築されるのか ということです。 このモデルで考える以上、私たちが理解する「意味」というものは、 (i) Lexiconにおいて指定されている部分+(ii) 構造構築による部分+(iii) 世界知識を援用し、推論により補われる部分 の3つから成っているはずです。言い換えると、意味を観察すれば、その中に、Lexiconにおける指定の部分と、Computational Systemにおける操作の影響とが必ず含まれているはずです。課題は、その中から、3) を適正に除外し、1) と 2) の分担を最適の形にする、ということになります。 これが統語意味論とここで呼んでいるアプローチの目標になりますが、I-languageの仕組みを明らかにしたい、という意味では、従来の生成文法と何ら変わりはありません。また、従来の意味論研究は、結果的にR-languageの意味の研究になっている場合が多く、その成果はなるべく生かしたいとは考えていますが、I-languageという視点を意識することで、次の2点が特に変わってくるだろうと思っています。 (3) a. まだあまり研究が進んでいない構文について、意味に関する観察に基づいて、統語構造についての議論ができるようにすること    b. いくつかの「用法」を持つ語について、その語が持つ共通の「意味」がとらえられるようにすること

8 Information Database オブジェクト 項目名(attribute) 値(value)
 SRについての仮説は、R-languageの意味の観察によって検証されなければならないので、まずは、R-languageの意味を記述する装置を準備する必要がある。統語意味論では、言語使用者の脳内にある知識というものを、様々なオブジェクトについて、その性質が列挙されているデータベースとしてとらえる。 つまり、いわば Excel の表の1行を1つのオブジェクトとして、さまざまな項目名(attribute)が横にいろいろあげられており、該当するセルに値(value)が書き込まれているようなものである。 値(value)

9 Information Database 知識というもの全体をこの形でとらえたいので、ここでは、「オブジェクト」として、さまざまなモノだけでなく、デキゴトも含めることとする。知識データベースの例を挙げておく。 この知識データベースは、縦方向に無限に、つまり、無数のオブジェクトについての情報をためこんでいくだけでなく、横方向にも無限に、つまり、1つのオブジェクトに関して、様々な項目名について、その値を書き込んでいく可能性がある。 この表を右のほうへスクロールしていくと、たとえば次のようになっていくかもしれない。

10 Information Database

11 Information Database なかには、そもそもそのような項目名が適用しないセルもあるだろうし、値があってもいいセルであっても、その人の知識の中には値がない場合もあるだろう。

12 Information Database

13 Information Database

14 Information Database O3 [性別 :男 ; 身長 :低い ;年齢 :30~39 ;... ]
O5 [類1 :デキゴト ;名称 :○○海岸OL殺人事件; Agent:O3 ; Theme :O34 ; ..] O6 [名称 :北京オリンピック ; 開催年: 2008年 ; ] O8 [類1 :デキゴト ;類3 :追いかけた ; Theme :O9 ; Agent :O4 ; ... ] O10 [類1 :モノ;高さ :50cm ; 重さ :270g ; ... ] 表がここまで横長になってしまうと、書くときに面倒なので、以下では、関係する値だけを項目名と組み合わせて、このように表記することにする。

15 知識/情報の最小単位 このように考えてくると、知識/情報というものの最小の単位は、次のようなデータ式ということになる。
項目名(オブジェクト)=値  (例) 年齢(O4)=20 Agent(O8)= O4 「知識の更新」とは: データベースの中に新しい「オブジェクト」が追加される 既知のオブジェクトに新たに項目/値が追加される 既存の値が書き換えられる このような方式で「知識」というものをとらえると、まず、知識/情報というものの最小単位が定義しやすくなる。すなわち、このようなデータ式だと考えればよい。Excelでいえば、この式の左辺は、セルの位置を述べ、式の右辺で、そのセルに書かれている値が述べられている。データベースというものは、このようなデータ式の集合としてとらえることができる。  このように考えると、「知識状態の変化」というものも具体的にイメージしやすくなると思います。つまり、知識状態の変化とは、データベースの中に新しいオブジェクトが追加されたり、既知のオブジェクトに対して、新しく、特性記述が追加されたり、既存の特性記述が書き換えられたり、することを指すわけです。

16  言語の「意味」、文の「解釈」とは? 統語意味論では、ことばの「意味」とは、この知識データベースに働きかけるコマンド(指令)である、と考えたい。 文を「解釈する」場合、私たちは、 Working Table と呼ばれるスペース(≒Excel での作業用ワークシート)で、ことばがもたらす指令に従って、部分的で仮のデータベースを構築していくとする。 Working Table における(部分的で仮の)データベースは、もともと自分が持っている知識データベースと突き合わせることによって、「最適化」がはかられる。 では、ことばの「意味」とは何か? 16

17 R-languageの「意味」とI-languageの「意味」
Working Tableでの作業に対する「指令」の出所 各語彙の特性としてLexiconに記載してある指令 Computational Systemにおいて構築された構造から読み取られた指令 (i)と(ii)の指令を“最善の形”で遂行するために補助的に行われた変容 R-languageの「意味」 =Working Tableにおけるデータベースに含まれた情報 =上の (i), (ii), (iii) すべての結果を合わせたもの 特に(iii)が含まれているせいで、規則性が見えにくい I-language の「意味」の追究 =(i) と (ii) のタイプの指令を突き止めること ことばの「意味」とは、この知識データベースに働きかけるコマンド(指令)である、 と言ったが、先ほどのモデル図を仮定すると、その変容の指令の出処として、(i) 各語彙の特性としてLexiconに記載してある指令、(ii) Computational Systemにおいて構築された構造から読み取られた指令、そして、(iii) (i)と(ii)の指令を“最善の形”で遂行するために補助的に行われた変容、の3種があることになる。 先ほども述べましたが、R-languageの意味とは、この (i), (ii), (iii) すべての結果を合わせたもの、ということになる。これには特に(iii)が含まれているせいで、非常に規則性が見えにくくなってしまっている。I-language を追究する場合の目標とは、R-languageの意味を観察し、それをデータ式の集合としてとらえた上で、(i) と (ii) のタイプの変容がどの部分かということを突き止めること、ということになる。

18 提案 語彙語は、知識データベースに対して行う「指令」の種類によって、少なくとも3つのタイプに分けられる。
Select機能を持つS型の表現 Update機能を持つU型の表現 Link機能を持つL型の表現 それぞれの語彙語がどのタイプであるかは、Lexiconに指定されている(≒意味範疇)。 αとβが(同じように)Mergeしていても、αとβの「型」が異なれば、MergeがSRに及ぼす影響も異なってくる。 さて、ここまでが統語意味論のベースとなる考え方です。今日お話しする具体的な提案としては、これだけになります。

19 オブジェクトを「指示」するS型 Select機能: いわゆる「指示」に相当する S型の表現 Select機能を持つSR
田中一郎、山田くん、陽子ちゃん、... 学生、教師、弁護士、落下、隠蔽、出版、... 落ちた、落とした、勉強している、... 4人、52kg、5cm、10歳、... Select機能を持つSR 表現 αxn SR S: xn [attribute :α]          ↑       機能   データ式 attribute は、語彙的に決められている場合もある。 (固有名詞ならば「名称」、いわゆる普通名詞ならば「類」、等) 19

20 S型の語彙と、その対応SR ジョンx1 S: x1 [名称 :ジョン] x1 = O4
知識DB内の検索 x1 = O4 O3 [性別 :男 ; 身長 :低い ;年齢 :30~39 ;... ] O4 [名称 :ジョン ; 類3 :大学生 ; 年齢 :20 ; ... ] O5 [類1 :デキゴト ;名称 :○○海岸OL殺人事件; ...] たとえば、「John」という言語表現は、名前が John であるようなモノを指し示します。つまり、この表現単体に対応するSR とは、「名称がJohn であるようなモノがあるだろうので、それを探せ」というinstructionを持つことになります。私たちは、このような検索作業を一度にたくさん行う必要があるので、まず、Numeration で、単語にそれぞれ変数番号を付けておきます。これは、知識データベースにおけるオブジェクトの固有番号とは別です。あくまでも言語から情報を読み取る作業のために必要な仮番号です。John という表現もx1という仮番号がついてきたとすると、それに対応するSRとしては、 このように書くことにします。これは、Working Table に、たとえば このように書き込め、という指令です。 そこで、Working Tableに書かれている情報を手掛かりにして、知識データベースを探しに行って、 見つかれば、それで同定します。 同定が行われれば、Working Tableのほうに、知識データベース内の情報も入ってきます。 20

21 S型の語彙と、その対応SR あの大学生x5 S: x5 [類 :大学生] x5 = O4
知識DB内の検索 x5 = O4 O3 [性別 :男 ; 身長 :低い ;年齢 :30~39 ;... ] O4 [名称 :ジョン ; 類3 :大学生 ; 年齢 :20 ; ... ] O5 [類1 :デキゴト ;名称 :○○海岸OL殺人事件; ...] 他の表現も同様です。固有名は、オブジェクトを指示する働きをもつことが多いですが、他の表現であっても、オブジェクトを指示する働きは十分に持ちえます。 21

22 Select機能 Select機能 Working Table(≒作業用シート)の指定されたオブジェクト(≒行)を準備すること。
22 22 22

23 値を「記述」するU型 Update機能: いわゆる「記述」に相当する U型の 表現 Update機能を持つSR
穏やか、短い、大きい、すごい、 ... 木製、特大、突然、上々、... Update機能を持つSR 表現 αUn SR Un: xm [attribute :α] U型の語彙はNumerationにおける指標に「U」が付いているとする。 U型のSRにおける xmを「見出しオブジェクト」と呼ぶことにする。( xmがどのように決まるかは、すぐ後で。) 多くの場合、 attributeが何であるか語彙固有には決められない。 Select機能とは別に、単にWorking Tableに情報を書き込むだけの 「Update機能」を持つ語もあります。 Update機能とは、 23 23 23

24 Update機能 器用U3 Update機能 U3: x5 [_ :器用]
SR U3: x5 [_ :器用] Update機能 Working Table(≒作業用シート)の指定されたオブジェクト(≒行)に値を追加すること。 すでに値が書き込まれているところに「上書き」する可能性もある。 たとえば、「器用」という表現から何らかの(後述する)操作を経て、このような SRが生まれたとすると、これは、Working Tableの x5 の行のいずれかのセルに「器用」と書き込むことを命令します。 24 24 24

25 Link機能 「メアリの年齢を答えた」 ≠ 「年齢」と答えた =「34」と答えた Link機能
=「34」と答えた   Link機能 Working Table(≒作業用シート)において、直接、値を書き込むかわりに、他のオブジェクトのattributeを指定すること(≒別のセルにリンクをはること)。 3つの主要な機能の最後は、Link機能です。 考えてほしいのは、「メアリの年齢を答えた」という場合の意味です。 明らかに、これは 「年齢」と答えた、わけではなく、実際には、「34」なり何なり、メアリの年齢の値(value)を応えているわけです。 25 25 25

26 値を「参照」するL型 L型の表現(=attributeを表す表現) Link機能を持つSR 年齢、長さ、サイズ、人数、値段、...
作者、監督、実行犯、被害者、... 名称、色、職業、規模、出身地、場所、... Link機能を持つSR 表現 αxn(xm) SR Ln : α(xm) この場合のxmも「見出しオブジェクト」と呼ぶ。その決まり方については、後述する。 26 26 26

27 S型・U型・L型 S型 U型 L型 表現 αxn SR S: xn [attribute :α] ... 「行を準備する」 表現 αUn
SR Un: xm [attribute :α] ... 「値を書き込む」 L型 表現 αxn(xm) SR Ln : α(xm)   ... 「別のセルにリンクをはる」 S型/U型/L型について、まとめると、このようになります。 もちろん、この3つはSRが異なるわけですが、「表現」のほうの書き方も異なっていますので、この型の違いはComputational Systemにおいても「見える」違いということになります。  統語意味論では、S型/U型/L型という3つの意味範疇の区別を基盤に置くことによって、従来、∀や∃などの量化子を用いて分析されてきた解釈もとらえなおし、統語構造と意味解釈の関係性をより緊密に対応させることを目標としているが、本発表では、そこまで述べる余裕がない。以下では、「AのB」という最も基本的な「係り関係」の形式に限って考察し、この3つの意味範疇を区別することによって、統語構造と意味解釈の関係がどのように整理されるかという点のみを説明していく。 27 27 27

28 S型にならない名詞 名詞は多くの場合、Select機能を持つが、名詞の中には、Update機能しか持たないものもある。
木製の椅子 フロリダ産のオレンジ 特大の皿 突然の大雨 上々の出来 次の語順にはなれない。 *椅子の木製 *オレンジのフロリダ産 *皿の特大 *大雨の突然 *出来の上々 28 28

29 修飾(modification) 関係の非対称性
修飾という関係を、従来のように「集合の交わり」という対称的な概念でとらえてしまうと、このような非対称性が説明できない。 ok木製の椅子 ←→ *椅子の木製 okフロリダ産のオレンジ ←→ *オレンジのフロリダ産 → U型に対する統語的な制限であるとみなすべきである。 29

30 Merge Merge : 2つの要素を1つにする操作。主要部につながる branch を太線で表すことにする。 α1 β2 30

31 modification の構造 Lexicon での指定のままならば、SRは。。。 Mergeの結果、SRは。。。
黄色いU1 鳥x2 Lexicon での指定のままならば、SRは。。。 U1 : x? [色: 黄色い] S : x2 [類 : 鳥] Mergeの結果、SRは。。。 U1 : x2 [色: 黄色い] U型のSRの見出しオブジェクトは構造的に決まる。 ⇒ x2 [類 : 鳥 ;色: 黄色い] 31

32 U型とS型のMerge 下図のように、U型のsisterがS型であり、S型が主要部の場合、U型のSRの見出しオブジェクトはxmとなる。
見出しオブジェクトが決定しないU型のSRは、不適格(ill-formed)である。 αUn βxm Un: xm [_: α] S: xm [_: β] 32 32

33 S型とS型のMerge これに対して、S型同士が Merge した場合には、2つのオブジェクトの関係については、言語的にはわからない。
単に、「ジョンx1が何らかの意味でパソコンx2と関係がある」ということしか表されていない。(極端な場合には、「ジョンx1が独り立ちしたときに、メアリが購入したパソコンx2」というような可能性もありうる。) ジョンx1の パソコンx2 S: x1 [類1: モノ ; 名称 : ジョン] S: x2 [類1: モノ ; 類2 : パソコン] Relate x1 to x2. 33 33 33

34 「Relate」という指令の定義 Relate xn to xm.
「xn and xm are related.」であれば、それでよし。 そうでなければ、データベースに情報を加えて、「 xn and xm are related.」という状態にする。 xn and xm are related, if any of (i)-(iv) holds. xn = xm attribute(xn)= xm attribute1(Oy)= xn and attribute2(Oy)= xm xn and Oy are related, and xm and Oy are related 34 34

35 U型と S型の違い 「言語が表す意味」は、SRのみであり、relate という指令がどのような方法で達成されるかは、言語使用者がアブダクションで「解決」しなければならない。 (しばしば、このアブダクションが成功することを「理解」と呼ぶ。) 修飾部がS型の場合には、このように、主要部との関係がきわめて自由であるが、修飾部がU型の場合には、解釈の自由度がない。 黄色いマット ≠ 「黄色い花瓶がのっているマット」 ←U型のSRの見出しオブジェクトは構造的に決定されるため。  注目するべきなのは、U型のSRが関わっている場合には、(14)のような解釈の自由度が存在しないということである。「黄色いマット」という表現が「黄色い花瓶がのっているマット」と解釈されることは普通ない。「黄色い」は必ず(主要部である)「マット」の性質でなければならないのである。これは、「ジョンのパソコン」と言っても、必ずしも、「ジョン」がその「パソコン」の所有者とは限らないという事実と好対照をなしている。 35 35

36 L型とS型のMerge Lexicon での指定のままならば、SRは。。。 Mergeの結果、SRは。。。
S : x1 [名称: メアリ] L2 : 年齢(x3) Mergeの結果、SRは。。。 L2 : 年齢(x1) L型のSRの見出しオブジェクトは構造的に決まる場合もあるが、未決定のままでも不適格にはならない。 メアリx1の 年齢x2(x3) U型とS型のMergeにおいては、主要部であるS型が修飾表現であるU型の見出しオブジェクトになったが、S型とL型の場合には、主要部であるL型に対して、修飾表現であるS型が見出しオブジェクトとなる、という点が異なっている。 (17) 「メアリの年齢」のSR S1: x1 [類1: モノ ;名称: メアリ] L2: 年齢(x1) 36 36 36

37 L型は単独でS型を修飾できない L型は単独でS型を修飾できない 情報量の問題ではない *サイズの靴 ok 24の靴 *色の車 ok 赤の車
この靴のサイズは私には大きすぎる。 24は私には大きすぎる あの車の色は目立ちすぎる。 赤は目立ちすぎる その女性の年齢は、僕の年齢の倍だ。 34歳は、僕の年齢の倍だ 37

38 L型は単独でS型を修飾できない なぜ、L型は単独でS型を修飾できないのか? リンクをはると「自己言及」になるため
*サイズの靴 ok 24の靴 *色の車 ok 赤の車 *年齢の女性 ok 34歳の女性 リンクをはると「自己言及」になるため つまり、次のような Working Table があるところに、C2のセルに「=C2」と書き込むようなものだからエラーになるのである。 38

39 attribute に「値」を補うと修飾が可能になる
value+attribute 24のサイズの靴 赤い色の車 30歳以上の年齢の女性 attribute+value サイズが24の靴 色が赤い車 年齢が30歳以上の女性 39

40 U型とL型のMerge どちらのMergeでも、SRは。。。 車x4 車x4 赤いU1 色x2(x3)の 色x2(x3)が 赤いU1
S : x4 [類: 車] となり、U型とL型で1つのU型表現が作られる結果となる。 40 40 40

41 S型/U型/L型と Merge S型とS型 → Relate指令による関係づけ U型とS型 → S型=U型の見出しオブジェクト
S型とL型 → S型=L型の見出しオブジェクト S型とU型 → 不適格SR L型とS型 → 自己言及になってはならない L型とU型 → 1つのデータ式 U型とL型 → 1つのデータ式 S型/U型/L型のどれであるかによって、Working Table への働きかけが異なるので、その組み合わせによって、結果は大きく異なっているように見える。しかし、どれも、Computational System においては Merge という1つの操作なのである。 41

42 日本語の「~は~が~」構文 attribute+value になっているもの value+attribute になっているもの
 (24)や(25)は、英語への直訳が難しい構文であり、しばしば日本語特有の構文だとされる。 42

43 英語における value+attribute の例
John is [[value three years] [attribute old]]. This pool is [[value two meters] [attribute deep]]. この用法の場合、oldという語は、attributeを定める働きしかしておらず、valueについては、まったく述べていないことに気がついてほしい。(明らかに、3才児はoldではない。)つまり、英語の場合、少なくとも限られた構文においては、形容詞がL型となる用法を持っていることになる。形容詞が関わる構文については、日本語と英語の間にいろいろな違いがあることが知られているが、attributeをどのように表現するかという違いがその根底にあると思われてならない。 従来は、その特異性として「は」の機能に注目されることが多かったが、このように考えてくると、L型の語彙の特性に対して、何らかの言語差がある可能性も浮上してくるだろう。 43

44 統語意味論の目標と展望 文の意味というものは、どのような仕組みで構築されるのか? 私たちが理解する「意味」=
   1) 各語彙の意味 (Lexicon)  + 2) 構造構築による変容 (Computational System)  + 3) 世界知識等に基づいて推論で補われるもの  (Working Table) まだあまり研究が進んでいない構文について、意味に関する観察に基づいて、統語構造についての議論ができるようにすること いくつかの「用法」を持つ語について、その語が持つ共通の「意味」がとらえられるようにすること  以上、S型・U型・L型という3つの意味範疇の基本的な違いを紹介した。この分類は西山(2003)で提案されている分類と重なる部分も多いが、この統語意味論では、統語構造と意味解釈の対応の仕方をシステムとしてとらえる、ということをより重視している。これら3つの意味範疇を基本とした上で、様々な機能語の働きを記述していくことによって、言語の意味のシステムの理解が進んでいくことが期待できる。それはすなわち、統語論というものが言語全体のシステムの中でどのような役割を果たしているのかということを明らかにすることにつながるのである。 44


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